私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

ベルリンに堕ちる闇

2022-02-20 19:29:17 | たまに読んだ本

1939年のクリスマス。ベルリンで起きた殺人事件の担当に当たる事になる刑事。

レイサー出身の刑事というある意味異色の経歴を持つ彼が管轄外の事件を担当する事になったのは、彼がナチス党員でないために、忖度しない捜査をすると思われたからだ。

1933年にナチ党が政権を掌握すると、その他の全ての組織団体をもあっという間に掌握していく。社会秩序の維持と偉大な国家の再建を望んだ対価に国民が気づいた時にはもうナチ党が全てを牛耳ることになっていたのだ。

事件を担当することになった刑事は、「ナチ党員になるならないは刑事の仕事を全うすることと関係はない。」という思いから、積極的に党員になる事を選ばない。ただ、党員でない故に捜査に当たるも、捜査するにあたりありとあらゆる所でナチ党がコントロールする偏見という感情が影を落とす。それに声を荒げる事は出来ず、いわゆる大人の対応でやり過ごしながら捜査を続けている刑事。

1939年のベルリンでは、まだ皆本当に戦争がどうなるのかを様子を見ているような状況だ。手に入る食材の幅は狭まってはいてもホテルのレストランは開いており、最高級のワインは飲めずとも、クリスマスディナーを辛うじて楽しむ事は出来るのだ。その後どのような事が彼らに起こるのか分かっていながら読み続ける事でなんとも不思議な気分に襲われる。犯人は分からないのに、彼らの進む未来が分かっているというのは、まるで犯人の分からない刑事コロンボを見ているような気分になるとでも言ったらいいのだろうか。

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ミステリーを読みながらも、ドイツがナチ党に投票した事でどのような事になっていったのかを一緒に感じられることは、歴史ミステリーならではの醍醐味だろう。ナチ党は子供たちへの教育現場までも支配し、子どもと親たちの間に分断が生まれる。ヒトラー達を見掛け倒しの道化師と思っていたはずなのに気づいた時はもう取り返しのつかない所に行ってしまった事実。偏見や差別のコントロールによって自分達の生活が疑心暗鬼になりそこから抜け出す道がないさま・・・

殺人事件の捜査と同様に1939年のドイツの様子にも緊張感を感じながら読み進める。

 


家じゅうの「めんどくさい」をなくす。――いちばんシンプルな「片づけ」のルール

2022-02-05 20:33:58 | たまに読んだ本

私は子どもの頃から「面倒くさいからやりたくない」が口癖だった。

どうかすると、食事の際に嫌いな物を食べられない言い訳をするのが面倒臭くなり、「疲れているからもうご飯は食べたくない」と余計面倒臭くなるような嘘までついたりして、両親に叱られたりする面倒で我儘な子どもだったと思う。

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今、身の回りの物が少なく、持ち物の整理が好きなのも、面倒臭い事が嫌いな事にかなり関係があると思っている。

何か探すのが面倒なので、探さなくてもいいようするのはどうすればいいか色々考え、「保存や保管の際に同じものはグルーピングすると使う時に探しやすい。使う時の動線を考えて物を配置する。」という自分なりの二つのルールを守るスタイルに行きついた。

物をグルーピングしておけば、自分の持ち物の量を把握しやすいし、何が多すぎで何が足りないかを目で測る事が出来る。

朝から寝るまで家の中でどんな風に動き、どこで何を使うか考えて物を設置すれば、自然と使わない物はその動線から追い出されるし、使う物は使うべき場所に自然と戻る事になる。

面倒臭いを基準にこんな二つのマイルールを探し出すのに、私は何年もかかってしまった。もっと若い頃にこの本があったらよかったのに・・・と思う。

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今、片づけをスピリチュアル的な面から見つめる事も多々あるけれど、私は片づけは技術的な面が大きくて、性格や考え方ああんまり関係ないように思う。悩んでいる人は、片づけ方のコツを習得するチャンスがなかっただけではないだろうか?

会社でも新人研修に「書類の整理方法」や「机の片づけ方」という研修があればいいのに・・・と思う。(それとも今はそういう講習もあるんだろうか)

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私が片付け本を色々チェックするのは、自分の技術の更なる向上を目指しての事。新しい発見があったり無かったり色々だが・・・・

 

 


ブラックサマーの殺人

2022-01-24 21:30:57 | たまに読んだ本

以前担当した殺人事件の被害者が生きて姿を現した事で、冤罪事件の当事者となる刑事。娘を殺した罪で刑に服していたカリスマシェフは、本当に娘を殺さなかったのだろうか?

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死体が出ないまま、状況証拠だけで刑に服す事になったカリスマシェフ。そして6年後、唐突に姿を現す殺されたはずの娘。何故、今なのか?事件当時見つかった数々の証拠は一体なんだったのか。カリスマシェフが刑務所から出てくる前に、残された時間と戦いながら、事件の再調査を行おうとする刑事。

事件当時、カリスマシェフがいかに胡散臭かったかが色々語られるのだが、6年後に発覚した出来事もそれと同じ位胡散臭いのだ。大体、死体亡きまま有罪に出来るのか?などと突っ込みたくなる部分がかなり多い。それでも読み進めてしまうのは、舞台となるカンブリアの景色を想像しながら読める事と、冤罪の疑いをかけられた刑事ワシントン・ポーを、熱い友情を持って助けようとする分析官のブラッドショーの稀有なキャラクターがあっての事だ。

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人気のあるミステリー作品がシリーズ物であることはよくあると思う。
特に海外ミステリーは発刊されるまでにタイムラグがあるし、日本語訳が出る時点で「海外で人気があり、日本でもある程度の購買が見込まれる」ということだから続編があることはとても多いと思う。
私もシリーズ物を読もうと思う時は、面白かったら読み続けるということを念頭に置いて手に取るようにしている。(海外ミステリーは読者減少もあり、一冊の単価が上昇気味だ。読めるという喜びの方が大きいので、値段の事をあれこれ言うのは野暮だとは思うが、それでもなかなかの値段であることは確かだ)
この作品は、作者が「これをシリーズ物にしよう」というやる気が1作目の行間から溢れ出ている作品だった。やる気満々な気持ちは、とにかく饒舌な謎解きの部分にも表れていると思う。1作目もそうだが、2作目もなかなか長目の謎解きだ。

私は舞台となるカンブリアの描写やその景色を想像しながら読むのが楽しいし、ブラッドショーのキャラクターが興味深いので、この続きが出たら読もうとは思っているのだが、それと同じ位、「次はキャラクターや、舞台となるカンブリアに頼りすぎないストーリー展開であって欲しいとも思っている。

 

 

 

 


ストーンサークルの殺人

2021-12-17 21:55:00 | たまに読んだ本

イングランドの北、カンブリア州のストーンサークルで男性が次々と焼き殺されるという殺人事件が起こる。

事件の捜査に当たることになったのは、捜査中のトラブルで停職となり、穏やかな生活を送っていた元刑事。自分が事件に関係ある事を指す物証が出た事から期せずして捜査現場に戻る事になるのだ。

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やや個人プレーが過ぎる刑事が、世間常識に疎くしかし的確な情報分析で捜査に食らいついて行く女性のパートナーと一緒に、何の関連性もないと思われた被害者の関係性を洗い出し、捜査に当たる。

ワシントン・ポーという珍しい名前の主人公には、どこかマイクル・コナリーのハリー・ボッシュを思い出させるところがある。(これは訳者もあとがきで指摘している通り)

事件の謎を解くカギが次々と調子よく見つかるのが気になるものの、それをカバーするのが情報分析に長ける女性部下のティリーの存在。情報分析のプロであっても、コミュニケーション能力にやや問題があり、自分のスタイルを崩せない彼女が、ポーと一緒に仕事をしていく中で、どんどん変わっていくのだ。ミステリーでありながら、劇的な変化を遂げる彼女の成長物語としても読める位、パワーのある印象的なキャラクターだ。

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『イングランド カンブリア 景色』という単語で検索をすると、猟奇的な殺人事件の舞台とは到底思えない綺麗な景色が次々と出てくる。そんな景色を見ながらストーンサークルで行われる殺人事件の話を読み続ける。

 

 

 


雪が白いとき、かつそのときに限り

2021-01-09 19:59:47 | たまに読んだ本

 

 

 

冬の学生寮で発見された少女の死体。それから5年後、当時の事が又学生たちの話題に上るようになり、その事について調査を始める生徒会の学生達。

学校を舞台にした推理小説ではあるけれども、推理云々より、気になった事が別にある。

『まだ何も成し遂げていないけれど、自分は何か出来るはず』と根拠のない自信とその自信故に不安を抱える少女の我儘な葛藤をどう考えればいいかという事だ。

子どもでもない。しかし俗世にまみれた大人とは違う。そうは思っているものの、段々と俗世にまみれた大人に近づいていることをどこかで怯えている少女。それを打ち消すために、様々な論理を繰り出し、多くを語り多くを否定していく。

それを若さゆえの葛藤と受け入れられるか。独りよがりの我儘としか思えないか。読む方もなかなか厳しい判断を迫られると思う。

私は、誰もが感じた学生時代の焦燥感とは簡単に片づけられない何か嫌な雰囲気を感じてしまい、あまりのめり込む事が出来なかった。

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ミステリーの中でもハードボイルド系が好きな私の好みではないということか・・・もっとこの小説の魅力を探し出せればと思ったのだが・・・やや残念。

 


棚からつぶ貝

2020-11-22 19:56:51 | たまに読んだ本

 

 

日曜日の夜、テレビを楽しむならイッテQ!だ。

大河ドラマ、ポツンと一軒家などの選択肢があっても、ながら見というかなりやる気のない見方であっても、ほぼ100%イッテQ!を選んでいる。潜在的イッテQ!視聴者故、番組の裏話が分かる各種エピソードはどれも楽しいのは当然である。(裏話が面白いのは、視聴者ならではの特権だ。大いに楽しまないと・・・)

感謝の気持ちがあるエッセイ故、マイナス要素がないのもいい。各種ハンサムウーマン列伝(木村女史、あさこ女史、そして最近ママになった北川女史。。。)は、読んでいて気持ちがいい。私も前向きに毎日で頑張りたいと自然と活が入る。日曜日の午後に読むのはピッタリだ。

本来ならこの勢いで今日の夜も「イッテQ!」を楽しみたいところだったが、なんと今日は「日本シリーズ第2戦 巨人VSソフトバンク」でイッテQの放送はないらしい。

まだ、5回の裏、7対0でソフトバンクが勝っている...今日はポツンと一軒家を見る事になりそうだ。

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装丁がシンプルで可愛らしかった。エッセイ本の装丁はグイグイ押してくるものが多いように思うのだが(あくまでも私見・・・)この本はそんな圧もなく、すっと手に取る事が出来た。正直、この装丁でなかったら平台から手に取ってレジに持っていくことはなかったかもしれない。

 

 


特捜部Q―アサドの祈り―

2020-09-14 20:51:24 | たまに読んだ本

地中海で溺死したアフリカからの難民の話で始まる特捜部Qシリーズの第8弾。

特捜部が捜査に当たる事件とメンバー達の人生がシンクロするこのシリーズだが、メンバー達にも自分の事を話さずにいたアサドの過去が明らかるなる今回のストーリー。読み続けていた人は、薄っすらと想像していただろうアサドの人生が、考えていたものよりももっと激しく辛いものだったことを知り息を呑むだろう。今までのストーリーの中で彼が発した言葉の数々を思い出して反芻せずにはいられない。

これぞシリーズ物の醍醐味だ。

そして今回ほど、世界が直面している様々な出来事が繋がっていると実感したことはない。繋がり方に濃い薄いはあるかもしれないが、確実に繋がっており、アジアの端で読んでいる私も、世界の出来事に無関心ではいられないことを実感する。。。

 

 

 


三体Ⅱ 黒暗森林

2020-07-27 20:39:04 | たまに読んだ本

正確に言うと、まだ「三体Ⅱ 黒暗森林」は読んでいない。今日のお昼休みに買ったのだが、その時の話・・・・

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勤務先に近い神保町は古本屋街として有名だが、三省堂書店のように新刊を扱う店も多いし、中国語書籍を専門に扱う東方書店やアジア圏の書籍を扱う内山書店もあったりする。
そんな事もあり、中国語の教本や中国関係の新書を購入したい時は見つけやすいこれらの店に足を向けることが多い。

三体の事を知ったのも、これらの書店に立ち寄った際に、ポスターが堂々と飾られていたのがきっかけだった。
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学生時代から海外ミステリーが好きだったため、早川書房、と東京創元社はとても身近な出版社だった。どちらもミステリーラインだけでなく、SFラインも充実している出版社だったが、私は「タイムトラベル」「地球外生物との対決」「宇宙」というSFのキーワードにあまり興味がなく(理由は自分でも分からない・・・)手に取った事もなかった。
今回、この三体を手に取ることになったのは、上述した通り、東方書店と内山書店のポスターのおかげだ。
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三体は購入してすぐに面白く読んだのだが、SFについては初心者な事もあり、どんな風に感想を書いていいのかわからず、そのままになってしまっていた。
各種レビューを読むと中国語名に違和感があり読むのに苦労したという感想があったが、私は幸いその点で悩まされることはなかった。更に文化大革命をきっかけにストーリーが始まったため、SFと身構える前に話の面白さに引き込まれたのも読み続けられた大きな理由の一つだ。
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今日、昼休みに「三体Ⅱ」を購入しようと東方書店に立ち寄ったのだが、その時にパートⅡが上下巻に分かれている事に気づく。
「ああ 2冊・・・」と小さくつぶやきながらレジに本を差し出すと、お店の人は「そうなんですよ・・・上下巻で・・・」と、申し訳なさそうに相槌を打ってくれた。
2冊に分かれているのはお店の人のせいではない。出版社の戦略である。どうしようもない独り言に相槌を打ってもらった事に感謝しつつ、「でも 続きが読みたいので・・・いいです。2冊で・・・」と言うと、「昨日の夜遅く、フジテレビで放送された作者のインタビューは見ましたか?」と更に話を広げてくれた。

知らなかった事を伝えると、「YouTubeでも見られるようなので、チェックしてみてください」と教えてもらい、下の映像に行きついた次第・・・・

 

#6 劉慈欣インタビュー~うけ【世界SF作家会議】

 

 


八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

2020-06-04 20:41:49 | たまに読んだ本

最初にこの本を読んだのは1年近く前、香港でデモが激しくなった頃だった。
中国語の先生が「800万の人口の地でどうやったら200万もの人が集まってデモが出来るのか」とその数字について疑問を投げかけた事がきっかけだった。
その際「天安門事件の時も、すごく大きく報道されていたけれど、あの時だって参加している人は学生だけで、一般市民は生活に支障があって大変だった。」という内容の話をしていたのだ。

私は、今香港に住む人々は自分達を中国人でなく香港人と考えている事、中国に飲み込まれることを、一国二制度を失うことを恐れているであろうということを伝えると、「何も悪い事しなければなんの問題もないのよ。それの何が問題なの?」日々の生活を犠牲にしてまでデモをする心情が分からないとの事だった。

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「何も悪い事をしなければ、国家統制の元で平和な社会(たとえ制約があっても平和に変わりはない)の恩恵を享受できることが出来る」という内容の話を自分なりに理解したいと思って、その手助けになればと思ってこの本を手に取ったのだった。

結局1年前には感想をうまくまとめることが出来なかったのだが、31年目を前に更に締め付けが厳しくなるだろうという報道を目にして、今月に入り、もう一度読み返してみたのだ。

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運動が学生と知識人だけで盛り上がり、一般市民の参加が無かった事。学生も自分達の運動の正しさに酔い、落としどころを考えて行動出来なかった事・・・その運動が参加した人の人生にどんな影響を残したのか、また、活発に活動したはずの学生がどのようにフェードアウトし、今何を考えどんな風に生きているのか・・・最後まで読み進めると、一つ一つのインタビューがパズルのピースのように思えてくる。

一つ一つのピースを組み合わせ、31年前の出来事がどのように今に続いているのかをこれからゆっくり自分で考えて見たいと思う。

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あの当時運動中心にいた学生たちの子供たちは、今大学生あるいは社会人になったばかりの年代だろう。経済的に成功している人も多いはずだ。

「何も悪い事をしなければ、国家統制の元で平和な社会(たとえ制約があっても平和に変わりはない)の恩恵を享受できることが出来る」という幸せを手放すはずはないと思う。私は「天安門事件」が再び起きる確率はとても少ないだろうと思う・・・・

 

 

香港警察、コロナ理由に天安門事件の追悼集会認めず 過去30年で初

香港議会、中国国歌の侮辱禁止条例案を可決

 

 


元年春之祭

2020-01-07 21:48:11 | たまに読んだ本
前漢時代の中国を舞台にしたミステリー。
漢文の知識の無い私でも、キーとなるポイントは印象的に語られるので、道に迷うことはない。
ただその時代の常識とその時代の考え方・・・それをどんな風に想像し、どのように自分の中で消化するかは又別の問題だ。

私はその過程で「薔薇の名前」を思い出した。
私以外にもそんなに考える人は多いのでは無いかと思う。

その時代、個人の力ではどうする事も出来ない問題を、少女特有の我儘さに絡めて語るくだりはこの本特有の物。
 

ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在

2019-11-28 21:24:58 | たまに読んだ本

私の身に起きたこと ~とあるウイグル人女性の証言~

先日、やや唐突に上のウイグル人女性の証言をもとに書かれたものをリンクしたが、この本を読むとその背景が良く分かるし、分かりづらいこの問題を理解する手助けになる。少なくとも私にとっては、かなりありがたい本だった。

近未来の恐ろしいSF小説を読んでいるような気分になったのだが、これが近未来の話でなく、今現在の話だということが何よりも恐ろしい。

子どもの頃「お化けが怖い」とべそをかいていた私に父親が「お化けは人間を虐めないよ。生きている人間が一番怖いんだよ」と言っていた。この本を読みながらその話を思い出した・・・・

 

ウイグルに関する内部文書、中国の人権侵害裏付け=米国務長官

 

ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在 (PHP新書)
福島 香織
PHP研究所

13・67

2019-08-26 20:48:53 | たまに読んだ本

香港ノワール映画が好きで、推理小説なら警察物が好きな私にとって、2013年から1967年に遡り、事件と警察と香港が描かれるこの本が面白くないわけがない。
発売されてすぐに手に取り、その後も折に触れ各章(6章に分かれているが、その読み応えから1章が1冊の小説とも思える位だ)を読み返してきた。
今日まで感想が書けなかったのは、著者あとがきと訳者あとがきに、私の書きたいことや不思議に思った事がとても簡潔にまとめられており、私の駄文など却って邪魔になるなと思ったからだった。

警察イコール正義と考えていいのか、2013年の香港に1967年の香港と同じ「おかしな」空気があるのではないか・・・・

著者はあとがきにこんな内容の事を書いているが、「逃亡犯条例」改正案をきっかけとする香港のデモが12週目に入った今、この本を読み返すと、出来事の始まりはあの日、あの時から始まっていたのではないのか?私達も気づかないうちに物事は深く静かに進行していたのではないのか・・・というような、不思議な感覚に襲われる。

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8/24、8/25の抗議行動で、警察はデモ鎮圧用の放水砲を始めて使いバリケードを除去しようとしたが失敗。警察は、催涙弾で強制排除を行ったようだ。

前回、香港に行った際には、この本を飛行機の中で読みながら香港に向かった。
次は、舞台となっている場所を回ってみたいと思っていたのだが・・・・渡航出来るのはいつになるだろうか。

 

13・67
陳 浩基
文藝春秋

ブルーバード、ブルーバード

2019-06-30 19:25:47 | たまに読んだ本

テキサスの田舎町で弁護士の黒人男性と白人の女性の遺体が発見される。停職中の黒人テキサス・レンジャーがその事件を探ろうとするのだが・・・・

白人、黒人、お互いにとって守るべき故郷であるテキサス。田舎の小さい街ゆえ、人間関係は狭いが、お互いの思いも利益も合致しない。それは黒人同士、白人同士でも同じ事で、濃い人間関係にトラブルが生まれると更に深い傷を残すことを改めて感じざるを得ない。そしてそのトラブルに麻薬やアルコールが更に深い影を落とす。

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白人至上主義の犯罪組織、アーリアン・ブラザーフッド、オブ・テキサス(ABT)の存在が繰り返し語られることに驚く。

恥ずかしいが私は名前さえも知らなかった。ABTの存在を知ったことも、この本を読んだ収穫の一つだ。

John Lee Hooker - Bluebird  

 

ブルーバード、ブルーバード (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
高山 真由美
早川書房

スッキリ中国論 スジの日本、量の中国

2019-05-12 18:51:25 | たまに読んだ本

同僚は、中国大使館に書類の届け出に行った際に、割り込まれてびっくりしたそうだ。

「中国人の人が大使館の人に質問したかったみたいで、質問しながら私の前に割り込んできたんです。その割り込み方が自然で。。。。大使館の人も普通に対応して、またその質問に他の中国人の人も乗っかって。。。ぼーっとしていると、自分の順番がいつまでも来なくなっちゃいます。」

私が社内で聞いた限りは、この話は「中国大使館あるある」になっており、皆「中国大使館は中国だと思ってのぞむべし」と言っていた。

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以前私も、こんなような内容の文章をブログにアップしたことがあった。

(その時の文章のまま 関係部分のみの抜粋)

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『「期日までに提出物を出さない」「備品を指定場所に戻さな」小さなビジネスルールを守らない中国人同僚の行動を理解できない時がよくあった。

ルール違反を指摘すると、思いもつかないような言い訳(本人的には理由説明)を繰り返す。何度も同じルール違反が続いたりすると、こちらもその都度注意するのをひるんでしまうが、ここでひるんではいけない。ひるむと「ルール違反してもいい」というのが標準になってしまう。小さい事でも都度都度しつこく注意するのだが、そうすると、返ってくる言い訳が、なんとなく「そんな小さい事を許してくださいよ」モードになる。更にその小さい事をいつまでも注意していると「なんだか注意している私の方が「こんな小さい事をいつまでも注意する心の小さい人」というような・・・・・「私の小ささ」がだんだんクローズアップされるような図式になってくる。
こうなると、向こうの言い訳の方が分が良くなってくるという。。。。。こんな事がたびたび繰り返される・・・』

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このような出来事をどのように理解すればいいのかが、スジと量をキーワードにまとめてある本だ。考え方のヒントを与えてくれる本で非常に有難かった。

闇雲になぜなぜ?と思うより、何かを基準にして考えていく方が分かり易い。

 

スッキリ中国論 スジの日本、量の中国
田中 信彦
日経BP社

藍を見つめる藍

2019-03-28 21:32:39 | たまに読んだ本

SNSで自分の好みの女性を見つけてしまった男性は、彼女がSNSに次々と上げる日々の行動の数々を逐一チェックするようになる。固有名詞が無くとも無防備に上げた写真から、行間にあるちょっとしたヒントから、彼女を特定することなど男性にはあまりにも簡単なことだったのだ。読みながらSNSと現実の境界線が無くなることを感じ、男性の見えない相手への執着心に恐ろしさを感じていたのだが、見えない恐ろしさはそのままに、ストーリーは想像もしない方向へ一気に進んでいく。

男性の目を通した女性の姿のリアルさに驚き、それゆえあっという間にストーリーに飲み込まれていく。男性の行動に驚きつつも、人の気持ちの複雑さを改めて感じずにはいられない。

 

世界を売った男 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋