赤い帯に書かれた「中国3000年の歴史の必然…9億人の農民奴隷は2020年に蜂起する」という言葉にややビックリするが、自分の専門分野からの視点で見た中国の話は具体的だが、それだけにこだわらない広さと説得力を感じさせる本だ。
第一章 九億の農民から搾取する都市住民
第二章 中国人民解放軍が世界一弱い理由
第三章 田中角栄なき中国農民の悲劇
第四章 アメリカへの挑戦が早めた崩壊
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「中国の農村は本当に貧しいです・・・」
第一章を読みながら、いつもは「もういいよ・・・」と言ってもしゃべり続ける中国人の同僚が、この話題が出た時だけ、目線を下げて小さな声で、こんな事を言っていたことを思い出す。
ただ、私にとって面白かったのは、むしろ第二章だった。
******(これは私の小さな悩みだが・・・・)*****
「期日までに提出物を出さない」「備品を指定場所に戻さな」小さなビジネスルールを守らない中国人同僚の行動を理解できない時がよくあった。
ルール違反を指摘すると、思いもつかないような言い訳(本人的には理由説明)を繰り返す。何度も同じルール違反が続いたりすると、こちらもその都度注意するのをひるんでしまうが、ここでひるんではいけない。ひるむと「ルール違反してもいい」というのが標準になってしまう。小さい事でも都度都度しつこく注意するのだが、そうすると、返ってくる言い訳が、なんとなく「そんな小さい事を許してくださいよ」モードになる。更にその小さい事をいつまでも注意していると「なんだか注意している私の方が「こんな小さい事をいつまでも注意する心の小さい人」というような・・・・・「私の小ささ」がだんだんクローズアップされるような図式になってくる。
こうなると、向こうの言い訳の方が分が良くなってくるという。。。。。こんな事がたびたび繰り返される・・・
第二章を読んだ時、どうしてそのような行動をとるのか?どんな風に考えればいいのいか?そのヒントがここにあると目からうろこだった。
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科挙によって選ばれたエリートが主要な地位を占めている中国では武士道や騎士道の倫理はなく、官僚による陰謀や汚職が蔓延・・・・現在の外務大臣や報道官の言い草がなんとなく言い訳がましいのは、心のどこにも武士道や騎士道がないから・・・・
「約束が絶対ではない社会」という社会が存在すると思っていなかった私の甘さを認識させてくれたのが、第二章で書かれている『武士道も騎士道もない中国の悲劇』という箇所だ。
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本を読み、納得し、さらにそれを自分の体験に落とし込んで考える・・・・
大げさかもしれないが、読書の醍醐味を実感する出来事だった。
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追記:
本の中でカリスマ性が全くないと酷評されていた習近平の新聞記事が気になる。
これも本を読んだおかげだろう。
2018/1/1から人民武装警察部隊の指揮権を習近平がトップを務める中央軍事委員会に一本化するとのこと。政変に利用されることを防ぐためだといわれている様子。
そして10月に行われた共産党大会の演説での拍手が71回だったという記事。
新聞記事だけ見ると、彼に全権力がスムーズに集中しているようにも思えるが、この本を読んだ後は、必死に権力にしがみつく裏の構図にも注意しなければと思う。