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公開まで映画の内容に関する情報を明らかにしない手法で公開された、スタジオジブリの作品「君たちはどう生きるか」
公開2日目に観た際の感想は、「ネタバレなし」という縛りで書いてみたが、公開からしばらくたち、ネットや新聞でも内容に触れた記事も目に付くようになったので、忘れないうちに2,3書き留めておきたい。
入院中の母を空襲による火事で亡くした主人公の眞人は、父が亡くなった母の妹であるナツコと再婚する事を知り、更に既に彼女のお腹の中に新しい命が宿っている事を知っても非常に礼儀正しい態度を取る。ナツコはもっと甘えて欲しいようなそぶりを見せるが、それは無理というものだろう。
ややそっけない態度ではあるものの、悪態をつくわけでもない。彼なりに、自力で乗り越えなければならない事を分かっていての行動だと思う。更によく分からない世界に迷いこんだ後は、自分の意志で「父さんが好きなナツコさんを助けたい」という思いをキチンと見せる。
転校後、父の裕福な暮らしぶりから周りとなじめずに、石で自らの頭を傷つける突発的な行動をとっていた眞人は、不思議な世界に迷いこみ、そこから戻って来た時には、自分のすべき事と向き合える少年になっていたのだと思う。
反対に彼の父親であり軍需工場を営む父親は、その裕福な暮らしぶりの為に息子が学校で疎外感を感じている事も気づかないようであり、更には戦後も戦時中と同様に裕福な暮らしぶりであることがうかがえる。その様子からは、若い眞人が戦争という辛い経験を乗り越えて、ひとり大人になった事も気づいていないのではないかとも思わせるものがある。大人はもう自分の世界が出来上がっているのだ。
私は、不思議な経験をした少年が、大人になる過程を見せる物語だと思って映画を楽しむ。