妻と娘を突然の事故で亡くしたっ男性の元に突然訪ねて来た一人の男性。二人は自分の元にやってくる際に事故に遭ったというその男性は、「彼女は以前僕が愛した女性の生まれ変わりです」と簡単に信じられないような言葉を口にするのだ。
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覚えている事で幸せが訪れる時もあれば、逆に辛くなる事もある。全ての出来事を忘れる事が出来なければその記憶に押しつぶされてしまうから、人は忘れてしまうのだとも聞いた事がある。
この映画は、なんだか一方的に覚えているという描き方が非常に強いように思う。そのせいで覚えている事が幸せに繋がっているとは思えない印象が強く残ってしまうのだ。そのせいだろうか。ポスターはファンタジー色が強い物だが、私にとっては映画の内容は単純なファンタジーというより、ファンタジーホラーミステリーと感じてしまうものだった。そして主人公を演じるのは大泉洋のはずなのに、何故か「大泉洋 蚊帳の外感」を感じてしまう。最後に彼が決して蚊帳の外ではないという事も分かるのだが、それでもどうしてもそんな感じが拭えない。
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映画の中では、高田馬場にある早稲田松竹という映画館と1980年12月8日というジョン・レノンの命日が大事なポイントとなり、劇中で彼の歌うウーマンが何度も何度も繰り返し流れる。
当時、高校生だった私にとってもこの日は印象的な日だった。暫くの間、ラジオからは、ウーマン、スターティングオーバー、ビューティフルボーイ・・・彼の歌が繰り返し繰り返し流れて来、その歌を聴きながら期末試験の勉強をした事が忘れられない。そして早稲田松竹も若い頃何度も通った映画館だ。
私にはそんな個人的な想い出が有った為、何度も繰り返されるウーマンも受け入れやすいものだったが、何度も流れるウーマンを負担に思った人もいると思う。そんな風に繰り返しが好意的に思われずに何か重い物に感じられる所がとても残念な感じだった。
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目黒連演じる大学生と有村架純演じるどこか謎めいた女性のエピソードを描いたパートは、ややつかみどころのない感じはしたが、ホラー感は全くないものだった。彼のバイト先、そして一人暮らしの彼の部屋。1980年代が素敵に描かれている。