いつからか年末に出版されるのが恒例になったケイ・スカーペッタ検屍官シリーズの最新刊。
(アメリカではもうこの続きが出版されている様子)
検屍官から始まり、業火あたりまでは毎回楽しみにしていたのだが、その後は自分の中で熱も冷め、毎回ある意味惰性で読んでいたシリーズ。惰性ならやめればいいのだが、読むのを止めてしまうほどの失速ではなかったため、結局ここまで読み続けることになってしまった。
殺人容疑者から、スカーペッタが逆指名される今回は、「読むのを止めなくて良かった」という思いがする作品だった。
前回までは登場人物がどんどん疲弊し続け、起こる出来事がどこまでも暗いという救いようのない状況だったと思う。今回は、前回の大きな出来事を契機に登場人物全員が何かをやり直さざる得ない状況になっており、それが新しい気持ちで読み進めることが出来た大きい要因だと思われる。
勿論、ネットで起こる誹謗中傷、寒い季節に起こる殺人事件は暗く、救いようのないものだ。しかし今回は初期の頃に感じた緊張感を感じる展開だった。
しかしメールを使ったトリックなど、初期の頃には考えられなかったものだ。同じシリーズなのに、本当に時の流れを感じる。
今回はタイトルが主人公の名前というかなり挑戦的なもの。ケイが誹謗中傷の中に放りこまれたことにより、読み手の私達も長いシリーズで語られてきた彼女のキャラクターや行動様式を再びなぞるような造りになっている。
キャリアを重ね、社会的な地位が上がっても、いつもいつくしみの気持ちを持ち、決して傲慢でないということが、ずっと語られるのだが、これは作者が読者に対して語っていることではないかとも思える。
ずっと読み続けてはいたが、主人公であるスカーペッタに対しては、仕事に対してプロフェッショナルであり、優しくはあっても理知的であり、自分に対しても他人に対しても厳しいというイメージしか持っていなかった。非常に興味深い人間だとは思っても、深い愛情と愛着を感じる人物であるとは言い難かった。
弱い者を助けるという仕事ではあっても、どこか強くなければ生きていく資格がないという、何か切り捨てられるようなイメージを彼女に対して持っていたことも確かだった。
今回は、作者が全力で彼女の魅力(主人公と著者を重ねてみる見方もあるようなので、そう考えたら自分自身ということになるだろうか)を再確認して欲しいと書いたような作品と思えてならない。
根底にあるそのパワーが、久しぶりにこの作品を面白くしていると思えてならない。
(アメリカではもうこの続きが出版されている様子)
検屍官から始まり、業火あたりまでは毎回楽しみにしていたのだが、その後は自分の中で熱も冷め、毎回ある意味惰性で読んでいたシリーズ。惰性ならやめればいいのだが、読むのを止めてしまうほどの失速ではなかったため、結局ここまで読み続けることになってしまった。
殺人容疑者から、スカーペッタが逆指名される今回は、「読むのを止めなくて良かった」という思いがする作品だった。
前回までは登場人物がどんどん疲弊し続け、起こる出来事がどこまでも暗いという救いようのない状況だったと思う。今回は、前回の大きな出来事を契機に登場人物全員が何かをやり直さざる得ない状況になっており、それが新しい気持ちで読み進めることが出来た大きい要因だと思われる。
勿論、ネットで起こる誹謗中傷、寒い季節に起こる殺人事件は暗く、救いようのないものだ。しかし今回は初期の頃に感じた緊張感を感じる展開だった。
しかしメールを使ったトリックなど、初期の頃には考えられなかったものだ。同じシリーズなのに、本当に時の流れを感じる。
今回はタイトルが主人公の名前というかなり挑戦的なもの。ケイが誹謗中傷の中に放りこまれたことにより、読み手の私達も長いシリーズで語られてきた彼女のキャラクターや行動様式を再びなぞるような造りになっている。
キャリアを重ね、社会的な地位が上がっても、いつもいつくしみの気持ちを持ち、決して傲慢でないということが、ずっと語られるのだが、これは作者が読者に対して語っていることではないかとも思える。
ずっと読み続けてはいたが、主人公であるスカーペッタに対しては、仕事に対してプロフェッショナルであり、優しくはあっても理知的であり、自分に対しても他人に対しても厳しいというイメージしか持っていなかった。非常に興味深い人間だとは思っても、深い愛情と愛着を感じる人物であるとは言い難かった。
弱い者を助けるという仕事ではあっても、どこか強くなければ生きていく資格がないという、何か切り捨てられるようなイメージを彼女に対して持っていたことも確かだった。
今回は、作者が全力で彼女の魅力(主人公と著者を重ねてみる見方もあるようなので、そう考えたら自分自身ということになるだろうか)を再確認して欲しいと書いたような作品と思えてならない。
根底にあるそのパワーが、久しぶりにこの作品を面白くしていると思えてならない。
スカーペッタ〈下〉 (講談社文庫)パトリシア コーンウェル講談社このアイテムの詳細を見る |