韓国鉄道公社(KORAIL) は最近、「世界一等・国民鉄道」というスローガンを掲げ(国鉄を失って22年を経た日本は「ふっ……まだまだ甘いぜ」と言えなくなってしまったのが悲しいところ -_-;)、新型車両導入や在来単線の複線電化&線形改良などさまざまなリニューアル策を打ち出しつつありますが、このたび私が約2年ぶりに韓国に出張するタイミングに合わせるかのように、目新しい事物があれもこれもと姿を現して来たではありませんか! ふだん新型車両の類には余り興味がない私ですが、それがたまたま訪れる外国ともなれば話は別 (笑)。しかも、久々に日本技術を導入した車両の登場や、鮮鉄以来の由緒ある大幹線の復活 (?) を予感させる複線電化ともなれば、出張中に時間を何とかひねり出して自ずと初物食いしてみたくなるというものです (^^;)。
というわけでお伝えする韓国鉄道新事情……やはり何はさておき、取り上げるべきは新型特急電車「ヌリロ」でしょう!! 従来韓国国鉄の在来線は、豪華な順にDPPまたはPCによる特急「セマウル (新しいコミュニティ)」、PC・DC・EC急行「ムグンファ (無窮花)」、PC・DC準急「トンイル (統一)」といった優等列車が運転されて来ましたが、トンイルや超少数派のECムグンファは既になし……(-_-;)。現存するセマウルやムグンファも、一部ムグンファに新型客車が投入されているのを除けば、既に老朽化が進んでいるのは否めず、そろそろ大量置き換えの予感がするのは否めません……。そこで韓国国鉄としては、車両置換や線路新線化などに合わせ、思い切って朴正熙独裁時代臭が漂う列車名を捨て、新しいサービスに合わせた列車名を打ち出すことにしたようで、打ち出された二大看板はその名も「ビチュロ」と「ヌリロ」! まぁ、日本語と韓国語の音感は全く異なるため、イキナリこういう固有名詞を目にすると「?」「何かヘン」という感じになりそうですが (^^;)、意訳するとすればそれぞれ「光のように」「どこへでも」となるでしょうか……(「ビッ」=光。「ヌリ」=世界・天下)。このうち、セマウルに取って代わる「ビチュロ」は当面登場しないようですので、去る6月からソウル=水原[スウォン]=天安[チョナン]=新昌[シンチャン・長項線]というルートで走り始めた「ヌリロ」が、まさに韓国在来線新時代の幕開けを意味しています。
そんな「ヌリロ」、とくに何が注目に値するかと申しますと……久々に日本との合弁によって製造されたということです! 韓国における日本技術由来の電車といえば、地下鉄1号線~京仁・京釜・京元線系統を走る田の字窓電車がパッと思いつくところで、地下鉄2号線の2段窓車もその雰囲気に近いものがありますが、どちらも激減しているのが現状……。まぁ、現在ソウルでも大いに幅を効かせるVVVF車の核心部分は日本技術のライセンス生産によっているそうですので、日韓両国の技術は未だに密接なつながりがあるわけですが、いくらロテムデザインの車両が増えてもうれしくないと申しますか……。そこにこのたび登場した「ヌリロ」は、正面デザインこそ最近の韓国国鉄の趣味を反映してロテムっぽい雰囲気となっていますが、よりシャープな印象には好感が持てますし、何と言っても車体構造全体が「フレッシュひたち」そのまんまっぽく見えるところがいとをかし……(^^)。特に、窓枠の構造や車体断面など、まさに既視感炸裂です (笑)。それでいて、電車線ホームと列車線ホームの双方に対応した自動ステップが装備されているだけでなく (実際の動きを見ていると思わず感心……。但し相当落差がありますので、動作時には絶対に立たないよう!)、クーラーはちょっと古風なデザインの韓国製のものが載っかっているなど、もちろん韓国独自のスペックも満載です。いや~、日本国内の新型特急電車への趣味的関心は極めて薄い私ですが、台湾の「タロコ」と同様、日本風最新車両が外国ナイズされて走っているのを見るとどうしてもワクワクしてしまうんですよね……(^^;)。あるいは、最新ボディにゴツめなクーラーの組み合わせで、思わず気になってしまう存在といえば名鉄新5000系……。それに近い雰囲気をどうしても「ヌリロ」に感じずにはいられないわけです、はい (私だけかも知れませんけど ^^;)。
というわけで、短いソウル滞在の間、何とか頑張って「ヌリロ」の撮影と乗車をこなしてみたのですが、KORAIL公式HP記載の時刻表でも明らかな通り、現在「ヌリロ」は京釜線ソウル近郊区間の通勤&ちょこっとお出かけライナー的存在として走っており、平日はラッシュ時を中心にそこそこ運行されているものの、土曜休日は一気に本数が激減して午後以降数本のみとなってしまうので注意が必要です。1枚目の画像は、5日(日)の夕方、撮影名所の南営[ナミョン]駅でゲットしたものですが、直前まで清涼里行き電車と下りムグンファが2重にかぶり続け、「うがが……休日はヌリロの本数少ないのにこれかよ!」と肝をつぶしそうになりました (滝汗)。
いっぽう下の画像は、日本に帰国した6日の朝、午前中の用務の前に散歩がてら試乗したいと思いまして、朝7時3分発・新昌行きの切符をゲット、新昌から来た朝1番の「ヌリロ」の入線を撮影したカットです。ふと気が付いてみると……南営で撮影した編成と同じくトップナンバーで来てくれたではありませんか!\(^O^)/ 「ヌリロ」は最初の1編成のみ日立で製造され、2編成目以降は韓国でのノックダウン生産となっているようですので、純粋な日本製に会えたのも良かった良かった♪ なお、ソウルでの「ヌリロ」の発着は、列車用低床ホームと電車用 (ラッシュアワーのみ運行されるソウル=天安急行用) ホームの両方からとなりますが、7時3分発は列車線ホームから発車ですので撮りやすくてラッキー♪
撮影後はさっそく車内に入ってみたのですが……デッキとの仕切が半透明な素材となっている他は、あらゆる面でまさに「フレッシュひたち」! そういえば天安・新昌までのライナー的存在であるところもまさに「フレッシュひたち」! う~む、ここまで存在形態が似ているとは……(笑)。
但し、走りはさすが標準軌! ソウルから永登浦[ヨンドゥンポ]までは列車の間隔が詰まっているためノロノロ運転でしたが、永登浦からは一気に加速してあっと言う間にセマウルと同じく140km/h前後に達してしまいました。ここらへんはフレッシュひたち、完敗です (笑)。
今回は時間の関係で、永登浦の次に停車する安養[アニャン]で下車し、メチャ混みの普通電車に乗ってソウルへ戻ったのですが、うーん、せめて水原まで乗りたかった……。肝心の乗車率はまだまだこれから知名度を上げる段階ゆえ「ほどほど」といったところでしたが、ソウル首都圏近郊における速くて快適な足として一層の成長を期待したい……と思ったのでした。ちなみに、運賃体系はムグンファと全く同じです。