地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

韓国鉄道新事情09 (2) 京義線複線電化!

2009-07-14 14:27:00 | 韓国の鉄道


 「ヌリロ」の登場と並ぶこの初夏の韓国国鉄二大ニュースといえば、京義線・ソウル=ムン山(ムン=さんずい+文)の複線電化開業でしょう! 
 京義線といえば、かつて釜山から鴨緑江を越えて中国大陸へと向かう最大の幹線の一部分を構成し、「のぞみ」「ひかり」「大陸」に代表される長距離優等列車が駆け抜けた由緒ある路線です。しかし、第二次大戦による日本支配の崩壊後は、東西冷戦の中で南北朝鮮が分裂し、朝鮮戦争が勃発した結果、京義線は38度線で完全に分断され、長らく韓国側ではソウル=ムン山間で客車鈍行(ピドゥルギ[鳩]号)が細々と運行されるのみでした。これが1990年代に入るとロテム製のCDC (Commuter Diesel Car) 9500系の運行に変わりましたが、平日ラッシュ時を除けば1時間間隔という、巨大首都近郊路線にあるまじき零落ぶりだったのは相変わらず……。そして北朝鮮側は、平壌中心主義に基づいて開城=平壌間が「平釜(平壌=釜山)線」、平壌=新義州(中朝国境)が「平義線」と改称されていますが、資材不足で複線化もままならず、石油不足もあって電化されるも極端な電力不足に陥る中、東欧・ソ連技術の成れの果てのようなELが青息吐息の低速で走っているのが現状……。そんな中、南北の国力格差が圧倒的になる中で余裕が生じた韓国側では、もう北朝鮮は戦争を仕掛けるだけの国力があるわけないと割り切ったためか、近年は対北防衛の最前線であるはずの京義線沿線での住宅開発が本当に目覚ましく、CDCの運行および並行するバス網だけでは明らかに輸送力の限界が見えていました。加えて、金・廬大統領時代における南北関係改善をうけて京義線が38度線をついに越えた結果、将来の正式な南北直通 (さらには中国・ロシア方面直通) 長距離列車の運行を視野に入れた施設改善の必要性も生じました。
 そこで、京義線は単線のヘロい路線から、途中駅の多くに緩急待避線を備えたデラックスな複線電化路線へと姿を変え、ついに7月1日に電化開業を迎えたという次第……。いや~たまたま出張するタイミングに、このような歴史的画期が訪れるとは嬉しいじゃありませんか!!



 というわけで、ソウル滞在中は宿&用務先最寄りの新村[シンチョン]駅からスタートし、京義線新時代の幕開けをさっそく見物した次第ですが……のっけからとんでもない落とし穴が! (-_-;) 単に「ソウル=ムン山間は広域電鉄化」ということだけしか予備知識がなかったため、「ま、とりあえずソウルから1つ隣の駅でも1時間間隔という凶悪ダイヤからはおさらばし、それほど待たずに電車が来てくれることだろう」というノリで、ノホホン……と新村駅に向かったところ、な、何ぃぃぃ~?? 土曜休日は終日1時間間隔って一体どういうこっちゃ……。しかもここ新村は、日本で言えば渋谷か原宿のような場所だぞオィ……(激鬱)。
 仕方がありませんので、約45分後にムン山行が来るまでは、水色[スセク]を出庫したセマウル・ムグンファや、高陽[コヤン]を出庫したKTXを撮って遊び、いざムン山行に乗車~。京義線用に配置された新型電車は、中央線に配置された交流オンリーの6000系電車と基本的には同じだと思いますが、最近の韓国国鉄の6ケタナンバーはまだ良く分からん……(^^;)。はっきり言ってロテムデザインではあるのですが、アルミ製に変わって何やら日立Aトレインっぽいだけでなく、雨樋が醸し出すちょっと古風な雰囲気と相まって、何やら1号線直通用の1000系・田の字窓車残党組に何となく似てるな~というわけで好感を覚えます (笑)。とりわけ、Wパンタ装備車の屋根がズラ~リ並んだ碍子で埋まっているあたり、如何にもゴツくてイケてます (爆)。ただ、車内に入ってしまうとホントにただのロテム製なんですよね……(^^;
 それはさておき、何故肝心の新村駅では1時間間隔だったのか……というナゾは、2つ隣の新設駅・デジタルメディアシティ(DMC) 駅で氷解しました。京義電鉄線は基本的に、かつて存在した龍山=水色間の貨物線跡地を活用して、DMC駅から龍山駅に到達したのち中央電鉄線に直通させる計画のようで(既に路線図などでは中央線と京義線が同じ色で示されています)、ソウル=DMC間はあくまで従来からの利用客に配慮した半ば「おまけ」のような存在として位置づけられているとは……。そして、龍山=DMC間の新線がまだ完成していないため、10~15分間隔で運行されている列車の大部分がDMCでの折り返し運転とされ、さらにソウル中心部へ向かう客には、大谷[テゴク]及びDMC駅における地下鉄3・6号線への乗り換えが推奨されています。
 というわけで、着いてみるまで存在すら知らなかったDMC駅 (^^;) 及びすぐ隣の水色駅にてしばし、折り返し列車の様子(1枚目の画像)や、長距離列車がたむろする水色車両基地の様子をウォッチしたのち(DMC駅と新・水色駅は、水色車両基地ウォッチ&撮影を心から楽しめる超オススメ新スポットだと断言できます^O^)、DMC始発の列車に乗ってムン山に向かいました。あ、ちなみにソウル発着の列車は、京義線電化開業ブーム(テレビでも話題の的)と相まって混んでいますので、のんびり・まったりと乗車を楽しみたい方はDMC発着の列車がオススメ。
 そこで、まずは何に驚いたかと申しますと……何と、ソウル郊外線との分岐駅である陵谷[ヌンゴク]までは複々線が続いたこと! ソウル発着の列車とDMC折り返し列車(将来の龍山・中央線直通列車) はそれぞれ別系統と位置づけられていることから、この複々線区間でもそれぞれ別の線路を走るのですが、現状では宝の持ち腐れっぽいような (^^;)。細々と貨物列車が運行されているだけのソウル郊外線の沿線も宅地化が進んでいることから、将来は複線電化のうえ京義線に乗り入れるという構想でもあるのでしょうか……(とりあえず、3号線大谷駅から見下ろす郊外線の雰囲気からは、その可能性は全く感じられないのですが ^^;)。
 さらに進みますと、(不正確なうろ覚えで恐縮ですが、確か) 白馬・一山・雲井・金村・月籠といった駅が副本線を備えたデカい駅に姿を変えている……。とくに、2枚目の画像は月籠駅到着シーン。この直線を、いずれは開城・平壌・妙香山・新義州・瀋陽・北京 etc...行きの列車が駆け抜けるのだろうかと想像するとワクワクしますが、その前にまず北朝鮮がつぶれるか開放体制に移行するかしてくれないと困りますなぁ (苦笑)。
 そんなこんなで巨大な車庫、および北の侵攻を遅らせるための爆破ブロックが見えて来ますと、終点のムン山に到着~。記念装飾はホームに横断幕がある程度で、コンコースや駅前には何の装飾もないのが拍子抜けでしたが、日本人の50~60代オッサングループを含む老若男女の試乗客で賑わうコンコースは、まさに京義線のいまを象徴していたのでした……(つづく)。
 そういえば大事なことを記すのを忘れていました。ソウル駅での京義線改札は、従来の列車線改札とも別の位置(東西自由通路を西に抜けて階段を下りたところ)に設けられております。地下鉄1・4号線からの乗り換えは徒歩で10分程度を要するほか、一旦改札を出るため運賃は別計算となります。通し運賃にしたい方は6号線でDMC駅、もしくは3号線で大谷駅へどうぞ……。