何時ころからか、日本人は食べものを粗末にするようになった。職業を聞かれて、「〇〇で食べてます」とか、「あの頃は食べるのがやっとだった」とか苦しい時代を振り返ることもある。食料は、人が生きていくうえで欠かすことのできないものである。かといって。他の商工業製品のように倍量消費することもできないし、3割も少なくなれば死に直結する。
生活費に占める食料の割合で、生活のレベルを知ることができる。エンゲル係数であるが、近頃の政府の発表する恣意的な数値より指標になる。予算委員会で、日本人のエンゲル係数が上がっていると問われて、この国のバカの象徴ともいえる安倍晋三は、「高級な食材を食べるようになったからだと」場末のコントのような、アホ回答をしたこともある。
安倍晋三が政権の座に就いてから。食糧の自給を全く主張しなくなった。上記のような理由で国民の欠かすことのできない食料こそが、最も貴重な戦略物資である。食料を自給しない国家は独立国家とは言えない。もっとも日本は、アメリカの隷属国家に成り下がっている。その表れが、食料自給率の低下である。
少子高齢化は均等に生じない。へき地、農村に先行して発生する。農村に住む人たちを、「イナカモン」だの「ヒャクショウ」だのと見下されて、若者たちは農業への職業観を低下させたのは、商工業優先政策のなせる業である。TPPなどの貿易交渉で今でも犠牲にされているのが、農業である。
もう一つ大きな理由が、国民を土から離したことである。日本は進化しているのではなく、都会化しているのである。食料生産の現状を知らない都会の人たちが、食料を廃棄するのである。食べものがなくなればどっかの国から買って来ればよい、という考えは食料の実態を知らないからである。ほどなく食糧危機が来る。必ず来る。そんな中で多くの食料が廃棄されている。
廃棄される食糧は一人当たり一日139g、年間51㎏である。ほぼおコメの消費量に匹敵する。
年間廃棄量は641万トンである。一般家庭からは291万トン(45.3%)、食品製造業から137万トン(21.3%)、外食産業から133万トン(20.7%)、食品小売業から66万トン(10.3%)、食品卸売業から16万トン(2.5%)である。
巷間言われている賞味期限による廃棄は小売業者が主体であろうからそれほどでもない。国連の持続可能な開発目標(SDGs)も、食料廃棄減少へ目標を掲げている。フランスでは一定の規模がある販売店では食料廃棄を禁止する法律が、2年前に通過している。
都会の2,3次産業の人達に1次産業の実態を何らかの形で体験させるか、もっと大きな視点から農業を国家規模で保護しなければならない。
現在日本の行っている農業政策は、大金をつぎ込んでまるで社会主義のように大きな施設で生産するように仕向けているだけである。安全な食料生産を健全に育成などしていない。税金をつぎ込んで農業周辺産業を潤しているだけである。