菅総理が9月の所信表明で表明した、TPP受け入れ論議は誰の目にも唐突で奇異ですらあった。そもそもTPPとは、シンガポールとニュージーランドのFTA(自由貿易協定)でしかなかた。これにチリとブルネイが加わって、現在P4と呼ばれている。これに、昨年アメリカが加わった。
アメリカ参入の目的は、経済成長著しい中国とインドにあやかるために東南アジアへの進出であった。オバマはその足掛かりに日本を必要としているのである。インドも中国もTPPへの参加は不透明である。オバマは、TPPをFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)へのステップであると表明している。
TPPそのものは、協定ではない。原則がないのである。あえて原則と言えば、無関税とすることが、原則である。と言うよりも唯一の思想である。あらゆる品目で関税撤廃がなされなければならない。唯一論議となるのは、工程への時間である。EUもロシアも中国もこれを容認していない。
TPP交渉で最も日本の相手となるのが、アメリカである。アメリカは日本に求めている最も大きな撤廃は、郵政事業の民営化である。アメリカが参入したいのは、郵便事業ではなく保険と貯金である。民主党は郵政改革案を、連立の国民新党とどう折り合いをつけるのだろうか。政策矛盾を抱えたままで民主党政権は立ち行かなくなるのではないか。
アメリカにとって最も美味しいのは、日本国内の事業参入である。そのためのゆう貯の開放であり、牛肉の規制撤廃である。アメリカあらゆる制度について、内外無差別を主張する。この中には公共事業もあり、すでに英文での事業案内を要求している。
なぜこうも唐突に、民主党政権はTPPを打ち出したのであろうか。それはm普天間でもめた日米関係の修復にある。アメリカへの謝罪であると言える。民主党政権が、東アジア構想や普天間に海外移転を口にしたが、それらはアメリカに大きく不安を与えるものであった。
菅政権になってからは、これらの政策を大きく転換させ、日米同盟の深化を打ち出し、自民党政権以上にアメリカに依存する体質を露わにした。その一つが、TPPである。そうして見ると、菅首相の発言は唐突ではなく、一つの過程であることが見えてくる。