映画「オッペンハイマー」が数多くのオスカーを受賞した。原爆開発の科学者で、ロスアラモス国立研究所の初代所長 ロバート・オッペンハイマーの映画化に、冷やかに見ていた。それは、「戦争を終わらせる手段として原発は有効だった。多くのアメリカ兵の命を救った」と発言していた、時のアメリカ大統領トルーマンの言葉があったからである。
世界初の原子爆弾を成功させた1945年7月26日は、連合軍が日本にポツダム宣言を突き付けた日である。トルーマンはスターリンに、ベルリン郊外ポツダムの会談場で、巨大爆弾を成功したと嬉々として耳打ちしている。上図は、原爆が持つ放射性物質の危険などの意識がなく、ビキニ環礁辺りでは平然と眺めていた時代のものである。
その後世界は東西冷戦構造の下、果てしない核開発の競争に突入する。
開発者のオッペンハイマーは、広島長崎の惨状に苦しんでいた。終戦直後トルーマンに謁見した時、「私の手は血で染められた」と述べ、オッペンハイマーは激怒された。
オッペンハイマーは悩み、ほどなく核開発から身を引いたが、科学者としての業績と、世界に広がる大量破壊兵器となった原爆の存在に苦しんだ。オッペンハイマーは、核兵器が戦争に用いられないように訴え続けていた。
クリストファー・ノーラン監督は、その辺りのオッペンハイマーを忠実に表現しているようである。実在の人物を通して、アメリカが戦果という賞賛や抑止力などという幻影から、核兵器の恐怖をアメリカが実感するきっかけになればと思うと述べている。
この映画は被爆者からも評価が高い。この映画を近いうちに見る機会があればと思っている。
しかもNHK特集の最後には監督の息子の話が出てくるのですが、今のアメリカリベラルメディア知識人の特徴なのか、「核兵器云々よりも地球温暖化が、より問題だ」(核戦争より。地球温暖化だ)と言い切ったのですからガックリ。こりゃあ駄目です