農水省が世界は有機農業に向かっていると聞いて付け焼刃としか思えない、「みどりの食料システム戦略」を打ち出した。温暖化の世界の動きに岸田政権が突如として、カーボンニュートラルなどと言い出したことに酷似する。新自由主義を掲げてきた自民党にとっては、いかにも不慣れなテーマである。これまでそうしたことに耳を傾けなかった政党には基本的な考えが抜けたままである。「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに目指す姿として、次の7項目を掲げている。
- 農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
- 化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減
- 化学肥料の使用量を30%低減
- 耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大
- 2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現
- エリートツリー等を林業用苗木の9割以上に拡大
- ニホンウナギ、クロマグロ等の養殖において人工種苗比率100%を実現 等
何とも立派な方針であるが、ほとんどがこれまで自民党農政が潰してきたものである。背景も基盤もないばかりか、思想も研究者すら危うい。30年で50倍にしなければならない。天文学的数字だと思われる。
食料危機、農業消滅、地域崩壊については何も触れていない。更には、ゲノム編集、デジタル農業、更にはタネの自由採取を制限したが、有機農業はタネの選定などから始めるが、タネの調達をどうするのか。
ここには農業の主要なところを企業に委ねてしまう体制が必要になる。人材養成も研究体制もこれまでの農政で破壊してきた。企業にしかも海外の巨大企業に投資効果を理由に、技術も利潤も委ねてきた。
本草案には副題として、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案」と記載されている。これまでの農政を見てきた者にとって、彼らは真逆のことをすると言い出したと見えるが。。。。
有機農業には有機のタネが必要になる。どうなっているのかという16日の衆議院予算委員会での、藤岡隆雄議員が質問にたいし、農水大臣は有機のタネを扱う業者の情報をホームページで発信している、と答弁したそうです。
添付の表を見ていただければわかる通り、日本の有機農業は高齢者の方と新規就農の極々少数でしかありません。日本は22年ほど前に有機農業の指針を出していますが、中身はバラバラで有機認証団体は何百とあります。すべて民間です。
タネは絶望的です。今回の指針は企業がどれだけ儲けることになる中判りませんが、農村の基本的な危機、地域崩壊については全く触れていません。