金融危機は「実体経済」へ影響を及ぼすことで、危機が増大する。つまり、今起きている金融危機とは金融経済の出来事なのである。
それでは、金融経済とは一体何だろう。1980年代から、ソビエト崩壊を受けて競争相手のいなくなったアメリカは、実体経済、つまりモノ作りの現場からもっと儲かる世界へとシフトしていったのである。
金融市場のグローバル化を推進していったのであるが、結局は金のあるところが最終的に儲かるシステムになっている。モノ作りをやる連中に資金的な援助を繰り返し、実体のない金貸しの経済社会が膨らんでいったのである。
WTOもそうした、アメリカの経済のグローバル化の一環として進められた。ところが、金融経済とは実質的にマネーゲームであり、ばくち事業である。ヘッジファンドの出現などによって投機的性質が鮮明になってきたのである。
金融経済は、常時株式市場を活性化させて、右肩上がりのインフレ状態でなければならないのである。このわずかでも上がることで利益を生み出す非実体経済システムは、社会構造上の上下関係が逆転しているように思える。
こうした動きは、アメリカが生みだした金融経済のグローバル化のおかげで、アメリカ一国が破たんすればいいものを、世界各国へと波及させることになったのである。
素人目に見て、あるいは実体経済の中にいる人間の目から見て、こんなものはいずれは行き詰まるのは明らかであことが解る。農業こそ、実体経済そのものであるからである。
これにイラク戦争によってアメリカ経済が大きな痛手を被ったことが、更に拍車をかけることになったのである。
市場が経済を決めるとする新自由主義者たちは、楽観論しか持ち合わせていない。公的資金の注入は新自由主義の終焉と、アメリカ外交の破たんを意味しているといえる。