「家畜福祉」をご存知であろうか?家畜を、畜産物を生産する機械ではなく、「生命を持った動物」として扱うべきだと言う考え方である。ヨーロッパを中心に、家畜に苦痛を与えない自由に生活できるようにすべきと、家畜福祉の概念が提唱されているのである。
最もわかりやすい例が、採卵鶏である。トリインフルエンザなどで騒がれている採卵鶏である、が彼女たちは、狭いケージの中で一生を終える。何段に組まれたケージには水と餌しか与えられず、羽根を伸ばすことも砂浴びすることも、歩くことさえできない状態である。
彼女たちは、効率良く卵を産むために改良された品種である。飢餓中枢も押えられ、ひたすら卵を産むのである。ケージそのものも、閉塞した無機質な空間である。成鶏になるまで、10回以上のワクチンを接種される。
彼女たちに、砂遊びをできる空間と水遊びできる設備を与えるように、EUの家畜福祉の基準は規定している。間もなく、ヨーロッパでは、ケージでの養鶏が禁止されることになる。
こうした考え方は、畜産以外の農業分野では「有機農業」と言われている。清算す土地に化学肥料や農薬を多量に投与することなく、生産性は落ちても本来の形で生産するとする考え方である。
当然その結果として、卵の価格に反映されることになる。つまり、家畜を単なる生産する機械と扱うことで、安価な卵を市場に出し続け、「物価の優等生」ともてはやされたのである。
豚も牛にも同じことが言えるようになる。乳牛で、大きな利潤をあげているのがフリーストールと言われる、閉塞されて空間で輸入穀物を大量に与えて、大量の牛乳を生産している農家である。経済効率最優先の結果である。個体管理がおろそかになるし、獣医師が忙しいばかりである。
こうした効率性優先の農業、畜産は不健康な生産物を市場に出すことになる。消費者の方々は、こうした生産過程の気を配ることなく、価格最優先で商品を購入する。
消費者は、非生産効率と思われる飼養方法に関心があるだろうが、現実にはそれ以上に価格を重視する。今一度家畜の扱われ方に関心を持っていただきたいものである。家畜福祉の考え方は、OIE(世界獣疫事務局)が統一した考え方を提案することになり、鶏はほぼ完了し乳牛についてもほどなく提案されることになる。