もう5年も前になるが、本ブログで木材の現状について書いたことがある。TPPが今日のように騒がれるずっと前である。木材は1964年に自由化された。関税が撤廃されたのである。関税がなくなることで、国内の住宅は安価になり、消費者は恩恵を享受する。・・・ということになる。
おかげで国内の林業は廃れる一方である。日本では先進国で、最も森林面積率が高く、70%を超える。農村よりも林業の村から、限界集落となっている。戦時中に植えられた杉を思い起こしていただきたい。
戦時中に、♪これこれ杉の子起きなさい♪ と、植林の歌が子供たちに教えられ、早熟のスギが大量に植えられた。木材の関税がなくなる頃、20年が過ぎた杉はちょうど成木になり、伐採適期になっていた。外材に押され杉の伐採は無きに等しくなった。
そして起きているのが、スギ花粉症である。誰が予測したか?誰が事前にスギ花粉症が国民的疾患になると、関税撤廃の時に警告したか?
更には、杉は山のすそ野かせいぜい中腹に植林されていた。根が浅く保水力がないからである。先人の知恵を逸脱して植林された杉は、洪水で大量に倒壊し流され、報道で繰り返し見ることになる。
左の表は、我が国の木材の自給率と外材の利用状況である。もう20年ほど前から自給率が、20%程度に下がっている。どんな山の中でも、学校は鉄筋になり、木造の校舎はなくなってしまった。裏山に手ごろな木があっても利用しない。山は荒れ放題である。
もっと考えられないことも起きている。安価な外材の輸入先は、アメリカ、カナダや
ロシアの寒冷地帯と、途上国の熱帯雨林である。木材の自由化で、熱帯雨林が消えて環境問題になると誰が警告したか。
上記のように日本は森林大国である。十分に木材の国内自給は可能である。目先の経済原理だけで、関税を撤廃して消費者に安価なものを供給して、失うものがいかに大きいか、後世になって検証しても意味がない。
これから起きるであろう、安倍内閣が容認することになる無関税システムのTPPに反対することが、後世の人たちへの贈り物になるのである。身を持って体験されている、都会のスギ花粉症の人は、TPPを深刻に考えるべきである。