減反政策の思想が農民の心を貧困にさせた。
減反政策、即ち生産を止めると金を出すという、もうすぐ起きる、あるいはすでに始まっている食料問題をまるで知らぬかに、食料生産を抑制する愚策は、自給率37%(実質10%台)という世界最低の農業政策、食料政策を現出させている。
先ごろ亡くなられた農民作家の山下惣一さんは、中学卒業すると国のミカン増産政策に沿って、南向きの棚田を買いミカン植えた。ミカンは6年目からとれるが、収入につながるようになるのは、10年目からである。ようやく彼が成人になって収穫できる頃、増産奨励の結果大暴落したのである。
結局はミカンの木を切れば補助金を出すということになるが、生産を止めると金を出すという、農政としてはあってはならない政策がこの後連綿と続くのである。
その後のコメ余り現象は、戦後の食糧難の時代を乗り越えた結果である。作りすぎではなく、食料の質の転換であるが、これにアメリカの余剰穀物を日本が受けたことに始まると言って過言ではない。アメリカは日本に余剰になった小麦を売りつけ大成功した。コメを食べるとバカになる脚気になると、大々的なキャンペーンが功を奏した。この時に日本各地をキッチンカーが走って、パン食の優位性を訴え、行政は生活改良普及員や農業改良普及員を農村に張り付けた。コメが待ったのはそのせい先の結果である。
国は増産計画を進めた結果のコメ余りに、青刈りなどしてコメ生産を潰すと金を出す政策に、1兆円も払うことになるのである。
小麦の次には畜産食品の奨励である。これはアメリカのトウモロコシを、飼料用として売りつけることに成功したのである。今では、畜産食品の玉子も牛乳も豚肉も牛肉も、そのカロリーの10倍以上のアメリカ産のトウモロコシが給与されている。遺伝子組み換えで肥培管理に関するする情報は全く不明の商品である。
今では人間の口に入る穀物より、多くの飼料用穀物が輸入されているのである。食料危機が目前にありながら、世界の12億の人間が飢餓の中にいながら、先進国の家畜は飽食に喘いでいる。こんな矛盾をいつまで許すのか。
今回のクワトロショック(異常気象、コロナ禍、ウクライナ戦争、円高)はそうしたことが、少し早めに露呈したに過ぎない。農業を食料を、金さえ稼いでいればなんとでもできるという、商業主義志向の結果ともいえる。事実鈴木俊一財務大臣は、食い物がなくなれば買ってくればいいと述べている。
国際分業論に、食料は馴染まない。21世紀は、環境を汚染し続けてきた農業から、家族型小農へ、有機農業への転換しなければならない世紀である。
昨日本ブログで述べた自給飼料優先の酪農家は、それ程の影響は受けてはいない。有機農家もほとんど影響ないと述べている。健康な家畜からの畜産品、健全な大地からの農産物、消費者は価格以外の食料の姿を選択肢にしていただきたいと思うのである。