現在の日本の凋落ぶりは悲しい限りである。戦後日本が大きく経済成長した理由は数多くあるが、瓦解した理由は一つしかない。それは非正規雇用の門戸を大きく開いたことにある。
雇用する側は賃金を支給するだけではなく、社会的な労働者の保障など人権なども保障する立場にある。それができない被雇用者は、工事現場や災害地域など医師や特殊技能者など、連続雇用ができない場合に限られていた。企業など雇用者側から弱い立場の労働者を守るためである。
小泉純一郎はこれを多くの業種に広げた労働者派遣法を立ち上げ、解雇も労働条件も雇用者が一方的に決めることができ、団結権すら事実上奪ってしまった。
大阪の大企業に就職した友人がいたが、8年ほど北海道に出向して本社に戻ると、非正規雇用者が3割にもなっていた。さらに数年経つと半数になり、習熟した部下がほとんどいなくなり毎年毎年新入りが手足となったが、足手まといだったと嘆いていた。会社の人件費はこの間半額になり、労使交渉すらなくなったというのである。そりゃ企業は潤う訳である。
日本のGDPは7割は個人消費であったり、景気変動の巾がせまいのは、こうした安定した市場が恒常的に日本にあったからである。企業は潤っても物が次第に売れなくなる、更なる人件費削減は労働者にかかってくるばかりである。
派遣会社が非正規雇用の社員を企業に送り付け、1年以内に別の人物に変え労働者の団結権を奪う。こうした法律を作った竹中平蔵は、国会を抜け出し派遣会社を立ち上げぼろもうけである。東京オリンピックでは、前年比100倍の暴利で懐を潤している。どうしてこれが犯罪でないのか理解できないが、竹中平蔵は紛れもなく日本経済をむしり取ってボロボロにした張本人である。労働者はすべて非正規にするべきと竹中は発言しているが、個人的な金儲けしか頭にない人物である。
現在すでに非正規雇用者は労働者の半数になっている。為政者は主婦業を抜けた女性や、定年退職した後の非正規雇用者を念頭に、辞める自由がある立場を強調する。が、一定の収入の保障下にある人物を引き合いに、国家経済を論じるのは無理がある。
経済は国全体の生産額を指標にするが、企業とりわけ大企業は潤っているから、景気動向は良好ということになる。労働者も正規雇用たちは連合などに属し、労働者貴族となる。同一労働同一賃金にされては、正規雇用者はたまらない。彼らは体制側につくことになり、労働者は分断されることになる。
現実に上の表のように、非正規雇用者は明らかに収入が少ない。その外に労働三法から外され、休日も労働時間も、何より雇用関係すら危うい労働者の、労働の質が高くなるわけでない。数字に見えない労働の質の低下が、市場の力を落す作用もある。
こうして社会全体の活力がなくなり、権力者に従順な無気力な労働者で街を満たすことになる。社会保障基盤を危うくするし、少子化への道を大きく開き、福祉社会への道を閉ざす。
非正規雇用の無制限な拡大は諸悪の根源である。