時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

繊維自由化をめぐるせめぎ合い

2005年09月04日 | グローバル化の断面
  このサイトでも度々報じたように、本年1月1日からの繊維製品の完全自由化は、たちまち先進国側からの抵抗を招き、輸入クオータ、自主規制などゆり戻しが始まってしまった。ところが、自由化後、予想を上回る(あるいは予想通り)の事態の展開に、対応策が追いつかない間に現実の貿易は容赦なく進行している。ヨーロッパ諸国の小売業者は安い中国製品で生き残りを図っていたところ、国境で輸入が差し止められ、滞貨が山積するとともに、店頭に商品がなくなってしまうという状況が生まれている。
  中国繊維製品の多くは、EUと中国政府が6月に暫定合意したばかりの数量上限をオーバーしており、国境で差し止められている。小売商の側からすれば、秋物商品はすでに発注したものであり、今になって差し止められては商品棚が空のままで、小さい店はつぶれてしまうとヨーロッパ委員会に強く抗議している。確かに、業界団体が言うように、支払いなどもすでに済んでいる商品も多いようだ。
  ここオックスフォードの衣料製品を扱う店をみても、品揃えが不足している印象を受ける。商品の生産地をみても、中国、スリランカなどの表示が目立つ。しかし、品数は少ない。
  ヨーロッパ委員会としても、難しい立場だが中国製品をなんとか受け入れざるをえない羽目になっている。
  他方、フランス、スペイン、イタリアなどの伝統的な繊維・ファッション産業を抱えるところは、自国産業の保護のためにも流入阻止を訴えており、どこで妥協するか予断を許さない。時間の経過は早く、来年の契約期が迫っており、関係者は対応に忙しい。
  ヨーロッパは繊維産業の要請も強く、アメリカと同様に中国に2008年までは自主規制を望んでおり、完全自由化を押し戻して、少しでも先にしたいと考えている。こうした抵抗がいかなる結果を生むか、理論的には結論は出ているものの、現実の世界においては難題が多い。

Reference
The Economist August 27th 2005
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする