時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

スターの表情:演技と素顔

2009年02月18日 | 雑記帳の欄外

 偶然、ゴールデン・グラブ・アワード(GGA)の授賞式の中継を、ABCニュース*で見た。いつも、この時期に開催されるようだが、特に関心もなく、これまでは見たことがなかった。誰が最終的に受賞するかは、ハリウッド外国人記者クラブ会員の無記名投票で決まるらしい。投票結果は、金庫に厳封されて、授賞式会場で発表の瞬間までは公開されないとのこと。

  華やかな会場で、着飾った多数のスターやその家族、関係者たちが見つめる中、次々と受賞者が発表される。名前を告げられた受賞者はそれぞれに驚きや喜びの表情でステージに上がり、感謝の言葉を述べる。  

 出席している受賞候補者は自分が候補 nominees に上っていることくらいは予期して出席しており、受賞の栄誉を受けた時のスピーチなどをあらかじめ頭に置いているであろうことは十分予期できる。各賞4人の候補がノミネートされた後、最終受賞者の名前が読み上げられる。最終的に受賞者として選ばれた瞬間の表情や、直後のスピーチが大変興味深かった。

 いうまでもなく、TVカメラなどなんとも思っていない業界人であり、演技と実際の感動の境界がどのへんにあるのか、なかなか見極めがたいのだが、それにしても面白い。始めての受賞者の中には感極まって、涙ぐんだりする人もいたり、あらかじめ感謝する人々を書き留めてきて読み上げる人もいる。他方、過去に受賞やノミネーションを経験しているスターたちは受賞慣れ?していて、当然ながら落ち着いている。受賞するのは当たり前という表情すらうかがわれる。  

 いずれもきわめて個性的で、人に訴えるスピーチとはいかなるものであるかが、よくわかる。全体として、感情を率直に表すスピーチが印象的だ。大スターたちは、こうした儀式には慣れていて平然としている。会場を手玉にとっているような感じさえする。しかし、それでも主演女優賞を受けたケイト・ウインズレットの場合は、会場とのやりとりなどが印象的だった。イギリス人とアメリカ人の差なのかもしれないとふと思った。かつて、いまや大女優として圧倒する風格のヴァネッサ・レッドグレイヴについても、同じような印象を受けたことがあったが、ケイト・ウインズレットの場合は、今後どんな変化をみせるのだろうか。 

 印象が強かったのは、「セシル・デミル賞」を受賞したスティーヴン・スピルバーグ監督の受け答えだった。大物監督の話だけに、この時だけは会場は静まりかえっていた。この監督は早撮りで知られるが、そのわけを推測させる答があった。監督は、セットやリハーサルなど映画の伝統を重んじながらも、インスピレーション(ひらめき)を大変大事にしているという。鉄道模型を使った衝突場面などでも、迫真力をもって撮れるか、不安感がつきまとうことが制作の緊張感となるようだ。あまり何度もリハーサルをすると、そうした緊迫が劣化するらしい。インスピレーションが生きている間に撮影するということなのだろう。いまさら賞など、どうでもいいという感じも見せたが、並みいる
関係者が静かに聞き入るほど、大物監督の重みを十分感じさせた。


ABCNews BS2 2009年2月15日

コメント
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