詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(90)

2024-03-27 00:07:01 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「日がな一日野を歩いた……」。

生命の眼を覗く。生命の眼は我等の眼差を返す。

 同じことばと違うことばが交錯する。あえて書くと、「我等の眼が生命の眼を覗く。生命の眼は、我等の眼に、我等の眼差しを返す」。生命の眼のなかで、我等の眼差が反射し、帰ってくる。我等が覗いたのは、我等の生命の眼。そして、それは「反射する」ではなく、もっと積極的な「返す」という動き。「反射する」なら、鏡や水でもできる。しかし、「返す」は違う。そこには「動き」がある。「覗く」が動きだから、やはり動きとしての「返す」が絶対的に必要なのだ。
 繰り返される同じことばが、違うことばのなかにある「本質的な同じもの」を強烈に浮かび上がらせる。生きていることは、「動く」ことである。「動く」ものは死なない。つまり、決して消えない。なくならない。それを「生命」と呼ぶ。

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(89)

2024-03-25 21:23:39 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「マルメロの林にたゆとう風……」。

蘇りの形象は

 二連目の、第一行。これだけでは何のことかわからない。主語(あるいはテーマ)が提示されているだけである。つまり「文(名詞+動詞)」になっていない。しかし、「文」にならないことによって、逆にドキリとさせるものを含んでいる。この一行に、ほんとうに「動詞」は存在しないか。
 「蘇り」のなかに「蘇る」という動詞がある。ギリシャはいつでも「蘇る」と詩人は言っているのだ。それは、どんな風にか。この詩に書かれている「形」に。詩人が「形象」と呼んでいるすべての「形」に蘇る。だれも、それを壊せない。だれも、それを阻止できない。なぜなら、それはことばとして生きているからである。
 この一行は、もっとわかりやすい形に翻訳できたかもしれない。しかし、中井は、ここではあえて「わかりにくい」形で翻訳しているように感じられる。わかりやすかったら、ことばは読みとばされ、既成の文体のなかに消えてしまう。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(88)

2024-03-20 22:29:20 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「私は愛する名に生きた……」にも「再生」に通じる一行がある。

我が生命(いのち)尽きるとも変わらぬ海の轟きの中に。

 一行と書いたが、この一行は一連目の最後と最終連の最後にある。つまり、繰り返されている。だから二行ということもできるのだが。
 海の轟きは変わらない。だから、私はいのちが尽きても「再生する」と私は「誤読」するのである。そして、「我が生命」の「我が」とは「私」ひとりではなく、「我々」なのである。「我々」だからこそ、「私」はいつでも「我々」なかに「再生」する。「我々」とは「海の轟き」である。ギリシャは海と共にある国だ。ギリシャ人は海と共に生きている。
 ところで。
 この「再生」ということばを抱え込むこの三篇には、もうひとつ、共通するものがある。タイトルがいずれも書き出しの一行と重複する。ただし、本文に「……」はない。タイトルにだけ存在する。
 もしかすると、原文にはタイトルがないのかもしれない。「無題」の詩かもしれない。しかし、中井はそれを区別するために書き出しの一行をタイトルとし、そのあとに「……」を追加したのかもしれない。「……」を重複させることで、三篇をひとつの作品であると暗示しているのかもしれない。(タイトルに「……」がある作品はほかにもあるのだけれど。)
 それにしても、というのは奇妙な言い方になるが。
 このエリティスという詩人は、なんとギリシャ的なのだろうと思う。あらゆることばが、ギリシャ悲劇やプラトンの著作にあったような気がしてくる。私はギリシャを実際に知っているとは言えないけれど、どのことばからもギリシャの光、匂いが噴出してくる。
 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(87)

2024-03-19 21:23:26 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「コリントの太陽を飲む……」にも「再生」ということばが登場する。これも、終わりから二行目である。

ずいと見渡せば世界は再生する、

 一行のみの引用と決めて書き始めたので、方針は変えないが、もし二行引用すれば、この詩と「艶やかな日、声のホラ貝……」の最後の二行がとても似ていることがもっと明確になる。
 ここに書かれている世界は「わが愛するもの」のことであり、それはギリシャということになる。詩人はいつもギリシャを見渡している。彼にはギリシャの全部が見える。
 「ずいと」ということばが、なんともいえず、肉体を刺戟してくる。実際に、見渡している、そのときの目つきが生きている。
 だから「世界は再生する」は、そのまま「肉体は再生する」という感じで響いてくる。「ずいと」をギリシャ語でなんというのか知らないが、詩人がなんと書いているのか知らないが、「ずいと」ということばのまっすぐな太さが、とてもすばらしい。中井以外の人間には思いつかない「訳語」だと思う。


 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(86)

2024-03-15 21:42:33 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「艶やかな日、声のホラ貝……」の最終連、その終わりから二行目。

わが愛するものはすべて絶えず再生し、

 この「すべて」は二連目で繰り返されている「ギリシャ」のことである。なぜ、「すべて」と書くのか。「すべて」が破壊されたからである。だから「すべて」と書かずにはいられない。そこには強い祈りがこめられている。「絶えず」も同じである。破壊されても、破壊されても、そのつど再生する。
 そういう「意味」とは別に。
 私は「わが愛する」の「わが」の表記に、ふいに胸をつかれた。「わが」に似たことばは、この詩では「私」が出てくる。「男」が出てくる。それから「我が手」「我が空」のように漢字で「我が」と書かれた部分がある。
 また、「わが」とは別の「きみ」ということばもある。
 たぶん、この「きみ」が「わが」に含まれている。つまり「わが」とひらがなで書くとき、そこには「われわれ」という響きがある。「われ」が愛し、「きみ」が愛するもの「すべて」というとき、それは「われわれすべて」ということになる。
 漢字で書かれていた「我が」が「わが」に変わった瞬間、世界が解き放たれ広がったように、私は感じたのだ。「わが愛するもの」の直前の行が「我が空は」であり、漢字とひらがなが並んでいることも、その印象を強くし、さらに最終行が再び「わが愛するものはすべて」と繰り返されることが、その印象をさらに強める。
 中井は、ふつうのひとなら統一してしまう表記をわざと不統一にすることで、ことばのニュアンスを深めていく。
 中井の耳は鋭いが、同じように目も鋭い。中井は、「文字を見ると色が見える」と語っていたが、見えるのは色だけではないのだろう。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(85)

2024-03-14 23:41:54 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「夏の身体」。

不死の一瞬を再発見する。

 「不死」は「いのち」。生きているということ。しかし、この行が「生を再発見する」、あるいは「いのちを再発見する」だとしたら、たぶん、印象は弱くなる。
 「不死」は単純な「いのち/生」を意味しない。「不死」のなかにある「死」ということばが否定されることで、その奥から「いのち/生」が新しくよみがえってくる。「死」を越えて、よみがえってくる。この超越の運動が、詩の、ことばのいのちである。
 この詩には「比喩」がたくさんある。「ヴィーナスの丘」とは「恥丘」のことだが、こういう「比喩」は何かをあらわすのではなく、何かを隠すことによって、逆に隠されたものを思い出させるという働きをしている。「恥丘」(このことばは、もはや死語かもしれない)を「ヴィーナスの丘」ということばで隠す。すると、人間というのはスケベなものだから、その隠されたものを「見たい」と思い、探す。そして「恥丘」を見つけ出し、にたりと笑う。この「探し出す」という行為をあおるのが「比喩」なのである。つまり、「比喩」とは、挑発なのである。
 そう考えると、「不死の一瞬を再発見する。」の「一瞬」も、とてもおもしろい。挑発は、いつでも「一瞬」である。気づかないひとは、気づかない。「比喩」に感動するひとは多いが、「比喩による挑発」は「一瞬」のことである。感動しているひとは、「一瞬の挑発」を見逃している。詩人は「不死を再発見」したのではなく、不死の「一瞬」を再発見したのである。「不死」ということばの、そのことばのなかにある「衝突」を。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(84)

2024-03-13 23:03:25 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「その夜をもはや知らぬ……」に、矛盾がある。
                  
その夜をもはや私は知らぬ、死の恐ろしい無名性を。

 「もはや知らぬ」ということば自体が矛盾である。「もはや知っている」という表現は可能でも、「もはや知らぬ」とは言えない。「知る」ことによって「状況/状態」が変わってしまうからである。
 「きみのことは、もう知らない」という言い方はある。これは、「私はもう関係しない」という意味である。いちばん近い言い方には「もう忘れた」がある。だが、この「もう忘れた」は、たとえば「昔、その本を読んだが、ストーリーはもう忘れた」という「忘れた」とはずいぶん違う。
 「きみのことは、もう知らない(きみのことは、もう忘れた)」というとき、「きみ」を「忘れようとしている」であって、実際は「忘れてはいない」。それは言いなおせば、「まだ覚えている」であり、「決して忘れない」と言うのに等しい。言っている相手(対象)が自分と切り離せないときに、切り離せないと自覚したときに、ひとはこういう「矛盾」した表現をつかうのである。

その夜をもはや私は知らぬ、死の恐ろしい無名性を。

 「夜」を「忘れる」ことはできても、「死の恐ろしい無名性を」(名前をひとりひとり数え上げていることができない死、つまり無数の死、戦争で死ぬと多くの場合個人名は消え「人数」になってしまう、その無名性を)、詩人は決して「忘れない」と言っているのだ。「無数のひと」に、無数であるから無名になってしまう戦争の死。そういうことが起きたことを「忘れない」。詩人は、そう言っている。
 「その夜をもはや知らぬ」は、少しことばを変えながら、詩のなかで繰り返される。その繰り返されることばという点から「狂えるザクロの木」を読み返すと、また、違ったものが見えてくる。
 「その夜をもはや知らぬ……」という表現のなかには、慟哭がからみついた矛盾がある。ことばを繰り返すたびに、隠されていた奥にあるもの、慟哭が噴出して出てくる。それを明るみに出すために詩人はことばを繰り返している。ことば「矛盾」にこそ目を向けろと。
 同じことが「狂えるザクロの木」にも言えるだろう。狂っているのはザクロではない。狂っているのはザクロ以外のものである。ことばのなかに隠された矛盾が読み取れないとしたら、それは「世界」が狂っているかもしれない。ザクロを狂わせた「世界」の方こそ、狂っているのであり、ザクロが狂ってしまったのはザクロが正常だからである。


 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(83)

2024-03-07 00:12:50 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「狂えるザクロの木」は強烈な詩である。朝の中庭。南風が吹き抜けている。そこに、一本の木。

おお、あれが狂ったザクロの木か、

 これは一行全体ではなく、一行の後半部分であり、この「おお、あれが狂ったザクロの木か、」ということばが詩のなかで何回も繰り返される。しかし、それは正確な繰り返しではない。二度目からは「おお、あれが狂ったザクロの木か?」と疑問符がつく。最初の「おお、あれが狂ったザクロの木か、」と疑問符ではなく、読点「、」である。
 これは非常に大きな違いである。中井は、その「違い」を書き分けている。(原文に疑問符があるか、ないか。私は、それを知らないが。)
 最初の「おお、あれが狂ったザクロの木か、」は疑問ではなく、確信である。見た瞬間に「狂ったザクロの木」と直観した。その直観を明確に示しているのが「あの」という指示代名詞である。
 「あの」ということばで何かを指し示すとき、その「あの」は発話者と聞く人とのあいだに「共有」されている。詩人は、そのザクロの木について何度も聞いたことがある。聞いて知っているから「あの」ということばが出てきた。そして、直観で確かにそうだと思ったから、疑問符なしで、疑問符というよりはむしろ感嘆符「!」を、詠嘆をこめて、そのことばが知らず知らずに漏れて出たのである。
 それからである。
 その「あの」、聞いて知っている「あのザクロの木」、その知っている「もの」は何なのか。それを詩人は次々にことばにしている。知っていると思っていること、「あの」と呼ばれるためのエピソード(特徴)をつぎつぎにあげていく。イメージが太陽の光のように広がり、散らばる。そのイメージの、どれが「核心」なのか。それは、わからない。そのザクロが「あのザクロ」だと確信している。しかし、「あの」が一体なのなのか、それをひとつのものとしてはつかめない。それは、詩人が、そのザクロをとおして、ほんとうに見たかったのは何なのか、という厳しい自問でもある。
 「これが、あの(みんなが言っている)狂ったザクロの木ですか?」と詩人が質問し、だれかが「そうです、これが狂ったザクロの木です」と答えたとしても、それは詩人にとっては「答え」ではない。「答え」は詩人にしかわからない。自分で判断するしかない。この苦しみ。
 直観には、何の苦しみもなかったのに。
 タイトルが「狂える」となまなましい形で書かれているのも、中井の書き分け(訳の工夫)である。直観は、ザクロの木と一体になって、いま「狂っている」のである。「狂える詩人」になって、ことばがもがいている。
 見た瞬間の「直観」だけが、絶対的な正しさとして、存在している。それを証明するのが、疑問符のない「おお、あれが狂ったザクロの木か、」である。

 

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(81)

2024-02-20 20:37:03 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「青い記憶の歳」。「年」ではなく「歳」なのは、そこに「人間」がいるからである。詩人は思い出している。「ある年」ではなく「あの歳」を。

悲しみである。

 ほかの行は、それぞれに長い。だから、そこに「意味」を見つけ出すことができる。つまり感情移入することができる。感情移入することで、読者は、そのことばを書いた詩人になることができる。
 しかし、この「悲しみである。」という一行は、それができない。
 「悲しみ」は、だれもが知っている感情である。そして、その「悲しみ」にはいろいろなものが含まれている。「悲しみ」だけでは、そのいろいろがわからない。だから感情移入できない。
 ここでは、詩人は読者を拒んでいる。
 詩の中には、いろいろな「悲しみ」につながることばが書かれている。どのことばも「悲しみ」につながる。しかし、その肝心の「悲しみ」は、中心において読者を拒んでいる。それは別の視点から見れば、詩人自身をも拒んでいるのかもしれない。どんなことばにも汚れない純粋な悲しみ。それこそが記憶である、と詩人は言うのだろう。

 

 

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(80)

2024-02-14 21:54:32 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「岩の小舟溜まり」。

聞け。言葉は老いたる者の叡知。

 この一行は、不思議だ。突然「言葉」が登場する。「言葉は叡知」を「叡知は言葉」と読み直すこともできるだろう。そのとき「老いたる者の」という修飾語を必要とするかどうかは、わからない。いや、そうではなく、この一行では「老いたる者」が、間接的に、重要なのかもしれない。
 間接的に重要、というのは奇妙な言い方になるが。
 言いなおそう。
 もし「老いたる者」のかわりに「若者の」ということばがこの一行にあったとしたら、その前後の表現はどうなるのだろうか。
 「肉体は若者の叡知」とならないだろうか。「叡知は肉体」である。それは「肉体は叡知」にかわり、そして、その「叡知」は「無知(恐れを知らない)」かもしれない。そこには輝かしい「いのち」がある。「いのち」は「叡知」など必要としない。
 そのとき、「聞け。」はどうかわるか。
 「見ろ(見よ)」に変わるかもしれない。
 この詩のなかに繰り返される「きみ(の)」ということばから、私は、「きみの若い肉体」を見ている「老いたる詩人」を反射的に思い浮かべる。「私」がだれか、この詩では書かれていないが。「聞け。」と言った人は、「きみ」よりも「老いている」。もし、「きみ」と同じ年代ならば(若いにせよ、老いているにせよ)、「聞け。」と呼びかけたあと、「老いたる者の」ということばは書かれないだろう。
 「聞け。」という強い響きが、そういうことを想像させる。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(79)

2024-02-13 22:43:14 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「サントリーニ島讃歌」。

世界に躍り出た初子。

 「初子」には「ういご」のルビがついている。いまも多くの人がつかうことばかどうか、私は知らないが、自分ではつかわないし、聞いた記憶もない。しかし、読めば、意味はわかる。音を聞いてだけでも、たぶん、文脈から意味はわかる。このあとには「海の産んだ子。」という補足的な一行もある。そして、たぶんその補足的な一行があるからこそ、「初子」ということばを中井は選んだのかもしれない。
 つまり、ここでは「わかりにくさ」が選ばれているのだ。わかりにくいことばで読者を立ち止まらせる。そして、いったん立ち止まったあと、簡単なことばで想像力を後押しする。ことばの動きに緩急が生まれる。想像力に緩急が生まれる。そのリズムに合わせて世界が豊かになる。
 中井は、さまざまなことばで「意味」を超える。「意味」よりも、ことばに向き合ったときの「刺戟」を大切にする。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(78)

2024-02-07 22:33:54 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「日の青春」。「青春の日」ではない。しかし、「青春の日」であり「日の青春」でもあるだろう。それは融合している。その融合は、

東西南北の風に

 という一行にもある。あるいは、この一行にこそ象徴されているというべきか。
 現実には「東西南北の風」というのはない。しかし、中空は東西南北に開かれている。そこにはどんな風が吹いてもいい。可能性、しかも開かれた可能性が存在する場所がある。同じように、開かれた可能性としての時間がある。青春だ。
 もしかするとエリティスは「東西南北の風」とは書いていないかもしれない。あらゆる方向に吹く風のように書いているかもしれない、と私は想像してみる。それから、もし中井があらゆるということばをつかうなら「凡ゆる」と漢字で書くかもしれない、と思ったりした。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(77)

2024-02-05 22:46:43 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「エレニ」は恋人の名前だろう。この詩も長いのだが、

後悔はもう、見えない音楽、暖炉の火、壁の大きい時計のチャイムに変わった。

 この一行が、私にはいちばん印象に残る。「後悔(する)」と「変わった」が呼応する。そう、何かが「変わった」のだ。「変わる」という動詞は、この詩の中に、ここに一回だけ出てくる。しかし、それは随所に隠れている。
 「見えない音楽、暖炉の火、壁の大きい時計のチャイム」の三つの「もの」は、どうつながっているか。つないでいたのは「エレナ」だろう。つまり「エレナ」が「変わった」言うことなのかもしれないが、詩人が「変わった」のだとエレナは言うかもしれない。
 それは、区別がつかない。
 ただ「変わった」ということだけがある。そして、悲しいことに「変わった」と理解するのは「変わらない」何かである。それが「後悔」を支えているというと奇妙な言い方になるが、「変わらない」何かがあるからこそ「後悔」が生まれてくる。
 この「後悔」と「変わった」の呼応が、「後悔はもう、」の読点「、」(呼吸の変化)に深く沈んでいく。
 長い詩だが、ここには、その深い沈黙がある。たくさんのことばが書かれているが、そのことばが生まれてくる「底」に沈黙がある。沈黙から生まれ、沈黙へ還っていく、詩人のことば。

 


 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(76)

2024-02-03 20:42:05 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「記念日」は長い詩である。四連で構成されている。どの連も、

私の人生もここまで来た。

 と、始まる。
 なぜ繰り返したのか。書いても書いても書き切れないからだ。書く度に、書いたことの奥から、また書かなければならないことが現われてくる。それは、詩人がいるところへ打ち寄せる波のように。
 それは一行であって、一行ではない。そして四回繰り返されているのだが、四行というわけでもない。絶対的な一行なのだ。繰り返すことで、ほかのすべてのことばを飲み込み、融合させてしまう。

 

 

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(75)

2024-02-02 23:25:20 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「七つの夜想曲」は文字通り七つの作品群。書き出しの「夢は夢に続いて」のことばどおり、ことばがことばにつづいて広がる。象徴的な一行なので、この書き出しについて書こうかとも思ったのだが、

朝 残ったは消えそうな影、

 「Ⅱ」の二連目に登場する、この行。「夜想曲」なのに「朝」が出てくる。そのあとに、一字分の空白、一字空き。「残ったは」の「は」のつかい方というか、「残ったのは」ではなく「残ったは」という言い方、そして行末の読点「、」。非常に工夫が凝らされている。
 この詩では、中井は、読点、句点を駆使してリズムに変化を与えている。行末に句読点がないものもあるが、それは句読点がないのではなく、一字空きが見えない形で書かれているのかもしれない。もしそうであるなら、「朝 残ったは消えそうな影、」は「改行」を隠していることになる。句読点では表現できない、第三の「呼吸」のようなものが、この一行にはあるのだ。
 その印象的な「呼吸」が影響して「残ったは」という表現が生まれてきている。
 「残ったものは」と書いてしまえば、意識は「もの」に向かう。しかし、「残ったは」の場合は「もの(対象)」に向かわずに、意識は「残った」という運動(動き)の方に向かう。動き(運動)なので、それは「見ている」ときにだけ存在する。「見ていない」と存在しない。言いなおすと「見逃す」ということがある。
 そうした運動のあとに「消えそうな影、」がやってくるのだが、これがまた不思議である。「朝」なのに、「影」には「消えそう」という修飾語がついている。朝の光が差してくれば「影」は消えないだろう。「消えそうな影」とは何のか。
 疑問を、あるいは読者の好奇心を引きずったまま、行末に読点。つまり、この一行には「つづき」があると予告している。「夢は夢に続いて」の「続く」という動詞が、この読点のなかに「意識/意味」としてよみがえってくる。
 さて、行末が読点ならば、そして読点の前が「名詞(影)」ならば、読点の部分に「助詞」が隠れていることになるが、そして日本語の場合「助詞」は必然的に「動詞」をも要求するが、隠れている助詞につづいて隠れている動詞は何か……。
 書き出しに引き戻されるように感じながら、その音楽にあらわれる「繰り返し」のようなリズムに、私は、突き放され、引きずり込まれ、酔ってしまう。
 原文との比較なしにこんなことを書くのは、たぶん危険なことかもしれないが、私は、こういう訳の工夫に、中井の「シンクロする力」を感じる。中井は詩人の感覚とシンクロし、その揺れ動きをそのまま再現していると感じる。

 

 

 


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