詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

学者は何を明らかにし、何を隠すか

2022-04-01 17:26:12 |  自民党改憲草案再読

学者は何を明らかにし、何を隠すか

  慶応大学教授・細谷雄一の、「ロシアもウクライナも両方悪い」は不適切という連続ツイートが評判になっている、という。細谷は「国際法」を引用しながら、論を展開している。とても明瞭な論理であった。
 しかし。
 私は、問題の立て方に疑問を感じた。
 ロシアとウクライナとどちらが悪いか。「両方悪い」はもちろん完全に間違っている。侵攻したロシアが悪いに決まっている。だから「ロシアもウクライナも両方悪いは不適切」というようなことは、国際法を持ち出さなくたって、だれにだってわかる。
  ということは、逆に考えると、なぜ細谷が国際法を持ち出して「ロシアもウクライナも両方悪いは不適切」と言ったのか、その理由を考えないといけない。
 何を隠そうとしている? 何か隠そうとしていないか。

 ウクライナへのロシアの侵攻。それはその局面だけを見れば、ウクライナで起きているロシアとウクライナの軍事衝突である。これは、もちろんロシアが悪い。
 しかし、この問題をロシアとNATOのどちらが悪いか、と考え直すとどうなるか。もちろん、ここでもロシアが悪い。NATO軍はウクライナには存在しないのだから、NATOに悪い点はなにひとつない。
 しかし、それをさらに、地理上の軍事支配、ロシアの世界戦略とアメリカの世界戦略のどちらが悪いか、というふうに拡大するとどうなるか。日本はアメリカの戦略にべったりくっついているから、アメリカの戦略から世界を見てしまうが、それが正しいかどうか吟味しないといけない。なぜアメリカはNATOの東方拡大を押し進めているのか、ということを考えないといけない。断定はしないが、NATOの東方拡大戦略がなければ、今回の問題は起きなかったかもしれない。もちろん、先にウクライナに侵略したロシアが悪いのだけれど、問題を解決しようと考えるならば、起きている事象だけではなく、背後の問題を見ないといけない。
 さらに、ここからがポイントなのだが。
 ロシアの世界戦略とアメリカの世界戦略は、単に「地理/領土/軍事力」の問題にとどまらないことに目を向けないといけない。
 いまの世界は、軍事力のバランスだけで成り立っているわけではない。軍事力ではなく、経済力で動いている部分がある。世界戦略は、経済システムまで含めてみつめないといけない。別のことばで言えば、「金儲け」の問題を考えないといけない。経済が世界を動かしている。資本主義国ではないロシアや中国を巻き込んで、経済が世界を支配している。その力関係は、たとえば「円の価格」「ドルの価格」に反映されている。
 武力衝突(戦争)は、ひとの命に直結する。銃で脳を撃たれれば人間は即座に死んでしまう。しかし、経済が困窮し、食べるものがない、という状態に追い込まれて人間が死ぬには時間がかかる。だから経済システムの衝突による戦争は、なかなか把握しにくい。実感として、戦争という感じがしない。円安が進んだからといって、急に、人間が死ぬわけではない。
 でも、現実には経済戦争が起きている。そして、この経済戦争の被害は、実際に軍事戦争が起きているウクライナだけにとどまらない。
 4月1日になるのを待っていたかのように、日本ではいろいろなものの値上げがはじまる。まるでロシア・ウクライナの戦争が拡大するのを待っていたかのように、である。
 これにはアメリカ型の資本主義とロシア経済の戦争が大きく影響している。石油、天然ガスが値上がりし、小麦が値上がりする。つられていろんなものが値上がりする。「原料が高騰しているから」という理由で。そこには便乗値上げもあるかもしれない。消費者は、価格決定の過程を詳細に把握しているわけではないから、「適正な値上げ」かどうかなど判断できない。
 これを消費者ではなく、経営者(資本家)から見れば、どういうことになるか。ロシアの経営者は別にして、アメリカの経営者(アメリカ資本主義の経営者)は金儲けの絶好の機会なのだ。値上げさえすれば赤字にならずにすむし、少し余分に値上げしてもそれに気づく消費者は少ない。何よりも軍需産業は、武力戦争が続いてくれれば続いてくれるだけ、金がもうかる。もしかすると、アメリカの軍需産業は、世界の心配とは無関係に、金儲けができると喜んでいるかもしれない。
 細谷の発言は、この問題を、すっぽりと隠している。経済戦争には「国際法」がないからだ。どこの国に何を売ってはいけない、どこの国から何を買ってはいけないという「国際法」がないからだ。原油の値段の上限は〇〇ドルである、というような「国際法」はないからである。
 細谷は、いま、世界を支配しているのは「武力」だけではない、「経済」が世界を支配しているという問題を隠している。そして「経済戦争」の犠牲になるのは、武力衝突が起きている現場の人間だけではなく、世界中の人間(資本家ではない人間、市民)であるという問題を隠している。
 それは逆に言えば、そういう一般の消費者、一般の市民の経済的困窮は無視して、アメリカの軍需産業を中心とする資本主義が金もうけできればいいという思想を隠しているということでもある。

 

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鈴木一人「「正義」と「利益」の間 問われる選択」

2022-03-31 10:49:00 |  自民党改憲草案再読

鈴木一人「「正義」と「利益」の間 問われる選択」(読売新聞、2022年03月31日朝刊・14版・西部版)

 ロシア・ウクライナ問題に関連して、東大教授・国際政治学が「「正義」と「利益」の間 問われる選択」という文章を読売新聞、2022年03月31日朝刊・14版・西部版に書いている。
 学者の文章なので、あたりまえだが破綻がない。論理が完結している。こういう文章を読むと、反論のしようがない。反論したところで、それはすでに鈴木のなかでは折り込み済みのことなので、即座に論破することばを展開するだろう。そういうことが「見えてしまう」文章で、つまらない。
 このことは後で再び書く。
 鈴木が文章が、文章のなかで完結し、どこにも「間違いがない」ということを承知した上で、しかし、私はあえて書いておきたい。「間違える権利」をもったふつうの市民(学問からはほど遠い人間)として、疑問を書いておく。
 鈴木はロシアに対する「経済制裁」について、ふたつの誤解がある、と指摘する。
↓↓↓↓↓
 第一の誤解は、この制裁の目的に関するものである。制裁の目的はロシアの攻撃を止めることでも、プーチン政権を倒すことでもない。その目的は戦争のコストを上げることである。経済制裁により外貨の獲得や半導体の調達が難しくなることで、戦争を続けることを難しくさせることが目的である。
↑↑↑↑↑
 これは、とても論理的だ。鈴木の「誤解」という指摘に、そうか、誤解だったのか、と気づく。
 でもね、私はばかだから、「私が誤解していたのか」で終わらない。
 鈴木は、ここで「戦争のコスト」ということばをつかっている。つまり、戦争には金がかかる。軍備に「外貨」や「半導体」がどれだけ重要なものなのか、鈴木は書いていないので追及のしようがないが。
 私が「戦争のコスト」で最初に思い浮かべるのは、武器の材料、軍備を動かす燃料である。鉄などの原料がロシアにどれだけあるか知らないが、石油などの燃料はかなりある。輸出しているくらいだからである。たぶん、燃料には困らない。
 一方、戦争というのはロシアだけが武器を消費する、燃料を消費するわけではない。相手国も消費する。ウクライナは、どれだけ武器を自前で調達できるのか。NATO加盟国から武器の支援がつづいているようだが、それはいつまでつづけられるのか。
 この問題は、どうやって武器を調達するかという問題につながる。戦争は武器を消費し続ける。つまり、武器を増産し続けなければならない。そのとき、その武器の増産で「儲ける人間」がどこかにいるはずだ。
 鈴木は、この「利害関係(経済関係)」を省略して「論理」を「完結」させている。「論理」を「閉じている」。
 これは逆の見方をすれば、鈴木は「武器商人」を支援する論理を展開しているということである。「武器商人」、武器を売ることで利益を上げているひとのことを見ずに、ロシアがどこまで戦争を遂行できるか。経済破綻で、遂行できなくなるだろう。そういう方向へ追い込むために、「経済制裁」は有効である、と言っているのである。「経済」であるかぎりは、利潤についてふれないかぎり経済を語ったことにはならないと思う。
 鈴木の「論理」は「ずるい論理」である。
 
 鈴木が指摘する第二の「誤解」。
↓↓↓↓↓
 第二の誤解はSWIFT制裁に関するものである。SWIFTからロシアを切り離すことは「金融版核兵器」などと呼ばれるが、それは適切ではない。SWIFTは送金情報を電子化して通信する仕組みであり、SWIFTから切り離されてもファックスなどの手段で送金はできる。送金の手間は増えるという問題はあるが、送金はできる。むしろ、送金を止める効果があるのは米国による金融制裁であり、制裁対象となった銀行ではドルの取引が出来なくなる。
↑↑↑↑↑ 
 こういうことは、まったく想像もできないことなので、そうなのだろうと思って読んだ。
 私が気になったのは、最後の「結論(?)」部分。
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 制裁によって撤退を余儀なくされた日本企業も、そのビジネスを失い、利益を得られなくなる。しかし、自国企業の損害のために制裁しないという選択をすれば、それだけ戦争が長引くことになる。経済的利益と政治的正義の中で何を選択するかが問われている。
↑↑↑↑↑
 ここで初めて「利益」ということばが出てきた。最後まで鈴木は「利益」ということばを隠して文章を書いていたのだが、どうしてもつかわざるを得なくなった。「政治的正義」のように「経済的正義」ということばをつかえればいいのだが、それができない。
 だから、ここから逆に、「経済的正義」とは何か、という視点から、今回の問題を探っていけば違うものが見える。鈴木が必死になって隠しているものが見える、ということである。
 鈴木が懸命に隠している「経済的正義」が、いまの世界を考えるときの、重要なキーワードなのだ。
 「利益」に関して言えば、最初に書いたように、武器商人(軍需産業)は戦争がある限り「利益」を上げ続けることができる。そして、その戦争を有利に進めるために「経済制裁」という名の「経済戦争」が続くとき、軍需産業以外の企業は「利益(経済利益)」が制限される。これは、ロシアも他の国も同じ。そして、この企業の経済的利益が損なわれるとき、それは市民の利益が損なわれることでもある。物価が高くなる。いままで買っていたものが買えない。いままでとは違う生活をしなければならない。「経済的正義」は、どこへいった? 「経済的正義」は、どこにある?
 軍需産業はもうかる。利益がある。それ以外の企業、ふつうの市民は経済的に苦しむ。これが「経済的正義」と言えるか。軍需産業の利益のために、市民は経済的に苦しまなければならないのか。軍需産業は、利益を確保するために、世界で戦争を仕組んでいるのではないのか。

 さらに飛躍して、こう考えることができる。
 いま世界中で貧富の格差が拡大している。巨額を抱えた富裕層がいる一方、毎日の食事にも困るという貧困層がいる。こういう状況は「経済的正義」といえるのか。「資本主義の正義」とは、こういうことなのか。
 「経済的正義」を求めてというか、「経済的不正義」に対する抗議として、世界でいろいろな問題が起きている。アメリカへのテロ攻撃も「政治的正義」の問題であると同時に「経済的正義」の問題でもあるだろう。アメリカは世界の貧富の格差是正にも目を向けろ、アメリカの利益だけを優先するな。

 私の書いていることは「間違っている」。だいたい「経済的正義」ということばなんか、ない、とひとは言うかもしれない。
 私は「学者」ではないので、そういうことは気にしない。私は私の知っていることばで、私の感じていることを書く。それが「学会(?)」で通用しないことばだとしても、そんなことは私の問題ではない。「学者」ではないのだから。
 それに。
 「間違い」について言えば、民主主義とは「間違い」(自分とは違う意見)の存在を受け入れることだから、「間違い」を受け入れられない社会にこそ問題があるということになるだろう。
 こういう例が適切かどうかわからないが。
 たとえば同性愛はかつては、道徳問題としてだけではなく、法律で禁止されていた国もある。「同性愛禁止=正義」だった時代がある。いまでも、そう考えている人間もいる。でも、少しずつ、世界は寛容になってきている。かつては「間違い」だったものを「間違い」とは呼ばなくなってきている。
 「同性愛禁止=正義」を「戦争」と結びつけて考えると、とても興味深いことがわかる。軍隊に同性愛者がいたら、風紀が乱れる。軍隊の統制がきかなくなる、という意見があるかもしれない。でもね。軍隊が必要ない、戦争なんかない世界があるなら、その軍隊のない世界の方が「正義」であり、軍隊に頼って世界を支配するのは「間違い」。軍隊の統制を乱し、戦争の遂行を不可能にする「同性愛ことが正義」ということになるだろう。「同性愛」から「同性」ということばを省いて「愛こそが正義」ということになるだろう。
 私は鈴木の学生(鈴木に教えてもらっているわけではない)ので、鈴木からどんな「採点」をされようと、ぜんぜん気にならない。ほかの「学者」から、何を言われても気にならない。
 「完結した論理」をつついて、ここが私の知っている日常の考え方では理解できない、ほころびをつくってみせる、というのが私のことばの動かし方だ。

 

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「ことば」はどこへ行くのか

2022-03-28 17:50:33 |  自民党改憲草案再読

 2022年03月25日の読売新聞(14版、西部版)1面に、バイデンがワルシャワで演説したという記事がある。
↓↓↓↓↓
 【ワルシャワ=横堀裕也】米国のバイデン大統領は26日、ポーランドの首都ワルシャワで演説し、ウクライナ侵攻を命じたロシアのプーチン大統領について、「この男が権力の座にとどまってはならない」と非難した。「自由を愛する国々はこの先何十年と結束を保たなければならない」と述べ、民主主義陣営に向けて、ロシアへの対抗とウクライナ支援を呼びかけた。
↑↑↑↑↑
 読売新聞は見出しで「権威主義へ対抗 訴え」とバイデンの演説を擁護しているが、「この男が権力の座にとどまってはならない」ということばはバイデンが言うべきことばではないだろう。プーチンと交渉する意思があるなら、絶対に言ってはならない。それが「外交」の基本だろう。「外交」は「ことば」でおこなうものである。
 これは、こう考えてみればいい。バイデンが、たとえば岸田のことを批判して「この男が権力の座にとどまってはならない」と言ったとしたら、では、今後の日米関係を交渉するのに、いったい誰を相手に交渉するのか。
 さらに、プーチンがアメリカの政策(NATOによるヨーロッパ支配)を批判する過程で、バイデンを「この男が権力の座にとどまってはならない」と言ったら、ロシア・ウクライナで起きている問題はどうなるのか。
 日本では(そして、たぶんアメリカの主張する自由主義/資本主義、別の見方をすればアメリカの軍事産業支援システムが横行している国では)、アメリカが「自由を愛する国々」の代表であり、バイデンはそのリーダーということになるが、ロシアやアメリカの経済制裁に苦しんでいる国から見れば、バイデンはアメリカの軍需産業を利用している権力者であるだろう。そういう国から見れば「バイデンが権力の座にとどまってはならない」ということになる。
 ある国の代表者に対して「この男が権力の座にとどまってはならない」と言った瞬間から、「ことば」による交渉は不可能になる。
 これはだから、ことばを変えて言えば、バイデンがプーチンとの「交渉」を拒絶するという宣言になる。「ことば」ではプーチンと「交渉」しない。
 では、何で交渉するのか。「武力」と「資本力」である。そして、「武力」こそ、アメリカはいまは直接行使していないが、「資本力」を行使した「経済戦争」を遂行している。他の国にもその「経済戦争」に参加するように促し、それにしたがって多くの国が「経済戦争」に参加している。
 「経済制裁」は「経済戦争」ではない、という人がいるかもしれない。
 しかし、実際に起きていることはどうか。ガソリンをはじめ物価高がはじまっている。これは、これから先拡大する。ほしいものが買えない、という状況が進む。そのとき為政者はどういうか。いまはロシアと戦争状態にある。この戦争を勝ち抜くまでは(ロシアを同じ経済システムで支配してしまうまでは)、「ほしがりません、勝つまでは」の精神で、この戦争に協力しなければいけないと言うのである。
 こういうとき、いちばん困るのは「資源」のない国である。
 アメリカもロシアも広大な土地と資源を持っている。日本には何もない。アメリカもロシアも、それなりにもちこたえることができる。しかし、日本はもちこたえられない。ロシアは、ロシアの内部で「資源」を分配すればいいだけだから、かなりもちこたえるだろう。アメリカは、世界の国に「資源」を分配するか。どうしたって、アメリカの内部での「資源」を分配を優先することになるだろう。その結果として、「アメリカの資源分配システム」が世界を支配することになるだろう。いまアメリカの軍需産業の金儲け主義が、世界の軍需を支配しているように、すべての分野でアメリカの世界支配がはじまる。
 脱線した。
 「この男が権力の座にとどまってはならない」ということばをロシアは(そして、他の国は)どう受け止めたのか。
 読売新聞には、アメリカの反応を書いている。
↓↓↓↓↓
 米ホワイトハウス関係者は「『プーチンの他国への力の行使が許されるべきではない』というのが大統領の発言の趣旨だった。体制転換について語ったものではない」と米メディアへの釈明に追われた。
↑↑↑↑↑
 「釈明に追われる」ようなことばは、すでに「外交のことば」ではない。
 それはそれとして。
 では、日本(岸田政権)は、このことばについて、どう言っているか。何か言ったのかもしれないが、読売新聞には何も書いていない。他国の反応も書いていない。これは、おかしいだろう。他国の反応はともかく、最低限、岸田がバイデンのことばをどう受け止め、それを岸田自身のことばでどう言いなおすか。そのことはジャーナリズムの仕事として、絶対にすべきことである。
 「外交」は、ある意味では「嘘のつきあい」である。ことばによる「ごまかしあい」である。これを「妥協」ということもできるが、あくまで「ことばの戦争/思想の戦争」であって、そこでは勝っても負けても、それぞれの国民が命を落とすことはない。
 その「最後の一線」のようなものをバイデンは踏み越えた。このことに対して岸田が沈黙しているのだとしたら、その責任は重い。米メディアさえ、追及している。読売新聞ははっきりと「米メディアへの釈明に追われた」と書いている。為政者のことばを追及するのがジャーナリズムの仕事だからである。読売新聞は、その仕事をアメリカのメディアに任せっきりにしている。
 「ことば」を取り戻すことが、「平和」へ踏み出す一歩であるべきだ。

 さらに思いついたまま書いておくと。
 アメリカは、西欧諸国にウクライナへの武器支援を促し、武器支援をした国の軍備の穴埋めにアメリカの軍備を売りつけるという商売(金儲け)をしているように私には見える。(実際の取引を確認したわけではない。)今回のバイデンの発言は、実際にプーチンとバイデンが交渉するわけではない(おこなわれているのは、ゼレンスキーの代理とプーチンの代理の交渉、アメリカ以外の国の仲介による交渉である)ことを「利用」した発言とも言える。アメリカが武力戦争に直接参戦しないように、アメリカはロシアとの直接交渉には参加しない。陰から「おいしい部分」だけをつまみ食いしようとしている。バイデンの「この男が権力の座にとどまってはならない」は、ある意味では「ことば(外交)」の後方支援なのである。後方支援にとどまっている限り、攻撃されるおそれはない、という「安心感」に居すわって、バイデンは発言している。
 この、なまくらな(直接は何もしないが、影響力は行使する)というアメリカの無責任な姿勢は、もっと追及されるべきことである。

 

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情報は「公開」されているか

2022-03-25 12:12:42 |  自民党改憲草案再読

情報は「公開」されているか

 北朝鮮のミサイル発射について記事を読んだときも感じたことだが、「情報」は完全に公開されているのか、非常に疑問に思う。
 たとえば、2022年03月25日の読売新聞(14版、西部版)の2面に、コロナワクチンについて「4回目接種 5月にも/政府方針 感覚短縮 議論へ」という記事がある。
↓↓↓↓↓
 政府は24日、新型コロナウイルスワクチンの4回目接種を巡り、当初の想定から1か月前倒しし、5月にも始める方向で検討に入った。昨年12月に開始した3回目接種からの間隔を当初の「6か月以上」の想定から短縮するかどうかについて、厚生労働省の専門家分科会で議論する。
 専門家分科会は24日、政府が4回目接種を公費で行う「臨時接種」として準備を開始することを了承した。厚労省は分科会で、4回目も米ファイザー製か米モデルナ製を使用し、3回目との間隔は「6か月以上を基本としつつ、諸外国の動向を踏まえ改めて検討する」との案を示した。
↑↑↑↑↑
 すでにファイザーが「4回目接種」を米政府に要請したというようなニュースが先日あったが、読みながら思うのは、えっ、コロナ感染は終息しないのか、ということである。まだまだ拡大すると「専門家」あるいは「政府関係者」は見ているのか。
 その根拠は?
 オミクロン株のときもそうだったが、「感染力が強い」という報道があり、あっというまに感染は拡大した。感染力が強いという情報は正しかったわけだが、なんというか……そんなに危険なことがわかっているなら、もっと他の方法があっただろうと思うのに(たとえばワクチン接種を急ぐとか、規制を厳しくするとか)、どうも対策が「後手後手」になっている。
 「4回目を前倒し」という計画を持っているということは、「コロナの第6波」は確実にやってくるという「情報」がどこかにあるということなのではないのか。もしそうであるなら、それをきちんと知らせるべきではないのか。
 日本では「規制解除」政策が取られたが、それでよかったのか。
 たとえば、ここ数日の新規感染者。読売新聞の報道では、
22日、2万0231人、
23日、4万1038人、
24日、4万9930人、
 と増えている。それなのに、25日の新聞(web 版)は「都内8875人、医療提供体制の警戒レベルを引き下げ」という見出し。
↓↓↓↓↓
 国内の新型コロナウイルス感染者は24日、全都道府県と空港検疫で4万9930人確認された。死者は126人、重症者は前日より25人減の891人だった。東京都の感染者は8875人で、1週間前から414人増え、3週間ぶりに前週の同じ曜日を上回った。病床使用率は28・7%で、約2か月ぶりに30%を下回った。都は4段階で評価する医療提供体制の警戒レベルを最も深刻なレベルから1段階引き下げた。
↑↑↑↑↑
 見出しに「嘘」は書いていないが、なぜ「医療提供体制の警戒レベルを引き下げ」の方に注目させる? 「印象操作」ではないのか。
 ふつうの市民が知り得ない「情報」がどこかにあり、私たちは、その「情報」にふりまわされて「現実」を見ていないか。
 だいたい、読者が前の日の新聞を引っ張りだしてきて、ほんとうに減っているのか増えているのか確かめないといけないというのは、「情報」のあり方としておかしいだろう。
 日本の感染状況だけに限らない。累積感染者はフランスは2468万人、イギリスも2000万人を超え、あのドイツでさえ2000万人目前。隣の韓国も1000万人を超えた。この状況を分析した「情報」がどこかにあるはずだが、それが伝わってこない。
 コロナ感染のような、実際に「身近な問題」でもこうなのだから、ロシア・ウクライナ情報になると、「見えない情報」が無数にあるはずだ。
 たとえば、アメリカの軍需産業は、今回の問題でいくら儲かっているのか。(儲かると予測を立てているのか。)あるいは、スイスまでロシアへの経済制裁に参加したが、スイスの銀行でさえ、今回のコロナの影響で経営が苦しくなっているのか。
 もっと身近なことを言えば。
 ロシアからの天然ガス、石油の輸入がストップすることで、日常消費の物価はどれくらい上がるのか。ガス代、電気代だけではないだろう。きっと「想定」があるはずだ。その「想定情報」を知っているのは誰までなのか。なぜ、市民は知らされないのだろうか。
 原料の値上げを、企業は商品(サービス)の値上げに転嫁できる。赤字にならずに方法がある。しかし市民には対処方法がない。どれが適正な値上げなのかも判断できない。きっと「便乗値上げ」によってもうかる企業も出てくるはずだ。「いまは消費者が苦しいとき。企業は内部留保している利益をいまこそ市民のために提供しよう」というような企業が出てくるとは思えない。トヨタがその「旗振り」を買って出るとは思えない。連合か、企業に「内部留保を吐き出せ」と要求するようには思えない。

 ネット上ではいろいろな「ことば」が飛び交っているが、「情報」はどこにあるのか。見極めることがむずかしい。「情報」を探し出すのがむずかしい。
 私は貧乏なので新聞は一紙しか取っていないが、複数の新聞を読み比べれば何かもっとわかるかもしれない。ネット時代で「情報」があふれているようにみえるが、実際は、情報をあふれかえさせることによって、ほんとうに大切な情報を隠すという操作がおこなわれているかもしれない。

 

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ニュースではなく、情報の読み方(北朝鮮のミサイル報道)

2022-03-25 10:26:51 |  自民党改憲草案再読

ニュースではなく、情報の読み方

 新聞には「ニュース」があふれている。たとえば、2022年03月25日の読売新聞(14版、西部版)の1面のトップは「北、新型ICBM級発射/最高高度6000キロ超 最長71分飛行/北海道沖150キロEEZに」という見出しと記事。ニュース(事実)は、見出しを読めば十分にわかる。しかし、私が注目したのは「ニュース/事実」ではない。
 本記に連動して「許されぬ暴挙」と岸田が批判したという記事がある。そこにこんなことが書いてある。(番号は、私がつけた。一部補足)
↓↓↓↓↓
 ①北朝鮮からミサイル発射予告はなかった。航空機や船舶への被害や国内への落下物は確認されていない。②政府は「領域内落下や我が国上空通過が想定されなかった」(松野氏=官房長官)とし、ミサイル発射などを知らせる全国瞬時警報システム「Jアラート」はつかわなかった。
↑↑↑↑↑
 ①の「発射予告はなかった」は、どこから得た情報なのか。書かれていない。まさか読売新聞に北朝鮮が予告してくるわけはないから、きっと、政府関係者から得た「情報」なのだと思う。次の「国内の被害は確認されていない」というのも、読売新聞が独自に調査した結果ではなく、政府関係者の発表(?)を書いている。
 さて。
 ②だが、とても奇妙だ。安倍が首相の時代、何度も「Jアラート」が発令され、ビルのなかで頭を抱える避難行動(?)が報道されたが、あれは「領域内落下や我が国上空通過が想定され」たからだということになるが……。どうして、そういうことが「想定」できたのか。
 ①とあわせて考えると、北朝鮮から「発射予告」があったから、そういうことができたのではないのか。当時も、発射日には安倍がかならず官邸にいて、すぐ記者会見をした。まるで「発射情報」を事前に把握していたのではないのか、ということが言われた。
 (私は「発射予告があった」と推定していた。どこに落下するかも、きっと「予告」があったと思う。落下物で船舶が被害を受けると問題になるだろうから、そういうトラブルは北朝鮮だって回避しようとするだろう。)
 今回は、それがなかった。なぜか。たぶん、世界の目が「ロシア・ウクライナ」に向いているので、その目を北朝鮮に向けさせるには、いままでとは違った「衝撃」が必要と北朝鮮が判断し、あえて予告をしなかったのだろうと思う。
 あるいは、北朝鮮から予告はあったが、その「情報」は不十分で、たとえば、いままでのように日本のEEZ圏外に落下すると「想定」してしまったのかもしれない。その「想定間違い」を指摘されると問題になるので(想定能力がないと判断されてしまうので)、「予告はなかった」「想定しなかった」「Jアラートはつかわなかった」という「ストーリー」を読売新聞にリークしたのかもしれない。(「予告」はほんとうはあったが、見落としていたのかもしれない。)
 問題は、ここから。
 もし、読売新聞に載っている、この「作文(ニュースの裏話)」が「事実」だとしたら、予告がなかったから適切な対処ができなかったというのが事実だとしたら、これは、もうむちゃくちゃだね。
 実際に戦争が起きれば、北朝鮮は日本対して、「〇〇へ向けてミサイルを発射する」と予告してから発射するわけではないだろう。突然、発射するだろう。そうすると、日本のシステムでは、そのミサイルがどこに飛んでくるか推測できない。「Jアラート」も発令できない。ビルのなかで頭を抱え、避難するということももちろんできない。「Jアラート」なんか、役に立たないのだ。
 「予告されなかった発射」のときこそ、あらゆることを想定し、即座に「Jアラート」を発令してこそ、「Jアラート」の意味がある。「予告されなかった」などと、平気で「内輪話」をもらしたのは誰か、そして、こんな「内輪話」をもらしてしまえば、そこからどんな問題が浮き彫りになるか考えない読売新聞の記者はどうかしている。きっと「私だけが聞き出した特ダネ」と思って、大はしゃぎで書いたのだろう。編集者も、その大はしゃぎに載ってしまったのだろう。(ウェブ版では、岸田の談話の記事の後半、つまり「予告云々」の部分は、私が読んだ限りでは省略されている。)

 さらに。
 この朝刊の記事は、かなり混乱している。この「作文」の前には、こういう事実がある。https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220324-OYT1T50224/ 
↓↓↓↓↓
 政府は24日午後、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性がある飛翔体が同日午後3時35分に、青森県沖の排他的経済水域(EEZ)内に落下する見込みだと発表した。船舶への注意を呼びかけている。
 政府は24日午後、北朝鮮から発射された飛翔体が落下したとみられると発表した。
↑↑↑↑↑
 時系列で整理すると。(読売新聞の記事を参照)
①24日午後2時33分、北朝鮮がミサイル発射
②(時間不明)日本が、午後3時35分にミサイルが青森沖に落下すると注意発令
③午後3時44分、ミサイルが落下
 ミサイル発射がわかった段階で、落下地点を予測して、政府は船舶に注意を呼びかけている。それは正しい行動なのだが、では、以前は、どうしていたのか。北朝鮮がミサイルを発射した、それで「Jアラート」と発令したということは聞いたことがあるし、新聞でも写真つきで避難行動が報道されたが、「船舶に注意した」という記事は書かれていない(私は読んでいない)。つまり、「予告」にしたがい、事前に船舶には注意を呼びかけていたが、それを秘密にしていたということだろう。つまり、安倍の「Jアラート」と市民の避難活動をアピールするために、船舶へも注意してきたことを隠していたということだろう。
 少し考えてみればいい。こんな記事がある。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220325-OYT1T50170/
↓↓↓↓↓
【ソウル=上杉洋司】北朝鮮国営の朝鮮中央通信は25日、金正恩朝鮮労働党総書記の命令に基づき、北朝鮮が24日に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲17」を試射したと伝えた。正恩氏が現地で試射の全課程を指導した。北朝鮮が24日に発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下したミサイルを指すとみられる。
↑↑↑↑↑
 北朝鮮のやっていることは、金のことばにしたがえば「試射」であり、「実戦」ではない。「試射」で誰かが犠牲になれば(外国人が死んでしまえば)、それは大問題になる。だから、「試射」の前には「試射する」と「予告」するだろう。
 予告したのに、事故を回避しなかったとしたら、その責任の一端は回避しなかった方にある、と言い逃れができる。
 大きな犠牲が出るかもしれないときは、責任者は、それくらいのことはするだろう。

 ここからも、安倍は、北朝鮮の「予告」を自分の保身のために利用したいたことがわかるのだが(推測できるのだが)、「情報」がここまで操作されたものであるなら、私たちは、ていねいに「情報」を読み解く努力をしないと、完全にだまされていしまう。いま、何が起きているか、さっぱりわからなくなる。

 さっぱりわからなくなる、といいながら、私が読売新聞を「愛読」しているのは、今回の「予告はなかった」のような、おもわぬ「作文」が読売新聞には満載されているからだ。「私は、政府筋からこんな情報をつかんだ」と「リークされた情報」を得意になって書いているからである。政府のなかで何が起きているか、政府が何をしようとしているか、それを推測するのに、とても役立つからである。
 私の推測は「妄想」かもしれないが、私は私の「ことばの論理/自律性」を頼りに、考える。

 

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「ことば」は、どこへ行ってしまったのか。

2022-03-24 10:25:59 |  自民党改憲草案再読

 読売新聞2022年03月24日の朝刊(14版・西部版)1面に、国際部長・五十嵐文の「持久戦の覚悟がいる」という論文(?)が載っていロシアのウクライナ侵攻1か月、ゼレンスキーの国会演説を踏まえての文章である。
 そこに、こういう数行がある。
↓↓↓↓↓
 持久戦の覚悟がいる。日米欧はエネルギー調達難などの返り血を浴びても、対露圧力を維持できるか。アジアでは、台湾を武力統一する構えの中国を思いとどまらせることができるかどうかにつながる問題だ。
↑↑↑↑↑
 私は、こういうときだからこそ、ことばは慎重につかうべきだと思う。
 五十嵐は「返り血を浴びる」ということばをつかっている。「返り血を浴びる」には、①直接的な意味と、②比喩的な意味とがあると思う。
 ①は敵を切る。そのとき血が流れる。それが自分のからだを汚す。
 ②は、何かをすることで、それが痛みをともなう。たとえば、ロシアに日米欧が経済制裁をする。すると、ロシアが原油、天然ガスなどの供給をとめる。その結果、燃料を輸入に頼っている日本は打撃を受ける。
 今回の意味は、②である。
 問題は、実際に戦争が起きている、人の血が流れているときに、②の意味で、比喩的にことばをつかうことの「意義」である。「困難が生じる」ということの「強調」ではなく、もっとなまなましい感じがする。
 どこかで、日本(日本人)も、どこかで実際に「血を流す」必要がある、日本も「戦場」なのだ、という印象を引き起こす。たしかに「経済戦争」という側面はあるが、どうしたって、そういう「目に見えない血」ではなく、人間が実際に流す血を連想させる。
 その結果として、私は、「これではまるで戦争をあおっているようだなあ」と感じる。不必要に「血」ということば、「死」を連想させることばは、こういうときには避けないといけない。感情が先走りしてしまう。少なくとも、言論に携わる人間が、こんな煽情的なことばを安易につかってはいけない。
 で、思うのは。
 私は「安易につかってはいけない」と書いたが、五十嵐は「安易につかっている」のではないかもしれない。意図的に、戦争へ向けて、読者の感情に訴えかけようとしているのだ。
 それは、それにつづく台湾問題についての文章を読めば明らかだ。
 「台湾を武力統一する構えの中国」と書いているが、その根拠は何か。中国が「台湾を武力統一する」という方針を掲げているのか。軍備を増強している、台湾の近くで中国軍が活動している、ということなら、アメリカも日本も同じだろう。どこまでを「台湾の近く」と定義するかはむずかしいが、アメリカ海軍が太平洋の西の端までやって来ているのだから、中国海軍が東シナ海へ進出したとしても、批判されることではないだろう。何もアメリカの西海岸まで中国海軍が出かけていくわけではない。グアムやハワイ近海で活動しているわけではない。
 中国から見れば、アメリカは台湾を利用して、中国大陸に軍事的圧力をかけようとしている、と見えるかもしれない。
 「軍事的な境界線」というのは、とてもあいまいである。それまで活動していなかったところで軍備を展開すれば、それが他方にとって脅威であるというのであれば、つまり、中国海軍が東シナ海(太平洋)に進出してくることがアメリカにとって(あるいは日本にとって)脅威であるというのであれば、NATOの東方拡大はロシアにとって脅威だろう。
 ロシアが脅威だからNATOは東方拡大の必要があるというのなら、中国はアメリカ海軍が脅威だから(台湾を占領するのではないか、台湾にアメリカ軍の基地を造るではないか)、対抗措置として太平洋に進出していると言うだろう。
 五十嵐は、アメリカの政策にそのまま同調しているから、ここでも「台湾を武力統一する構えの中国を思いとどまらせることができるか」と書いているのだが、ロシア・ウクライナ問題が緊急事態なのに、いま、ここで、わざわざ台湾問題を持ち出してくるのは、ウクライナ問題を台湾問題に利用しようとしているからではないのか。
 問題は、ロシアではない。ロシアについては、もう経済制裁で追い込んだ。問題は中国なのだ、ということだろう。
 連動して、「ウクライナ支援/大統領演説にどう答えるか」という社説では、こう書いている。(筆者は明記されていない。)
↓↓↓↓↓
 中国は、東・南シナ海で軍事的な行動を活発化させている。日本は各国と連携し、力による一方的な現状変更は決して認めないという国際ルールを踏まえた立場を明確にしていくことが重要だ。
↑↑↑↑↑
 いま、いちばん考えなければならない問題は、ロシア・ウクライナ問題である。それに専念にしてことばを動かすべきなのに、ここでも中国を引っ張りだしてきている。
 だいたい「力による一方的な現状変更は決して認めないという国際ルール」と書いているが、その「現状」はどうやってつくられたものなのか。アメリカの軍事力が一方的につくりだした「現状」をそのまま固定するということではないか。
 沖縄のアメリカ軍基地、北方四島のロシアの占有。その「現状」もまたアメリカやソ連が結託してつくった「ルール(戦略図)」であるだろう。その「現状」を改善するために武力をつかってはいけないというのは、それはそれで「正論」だが、それが「正論」であるためには、「現状」が果たして「正しい」ものなのかを検討していく「場」が必要だ。「ことば」による「場」を確立することが大切だ。
 こういうときに「返り血を浴びてでも、持久戦を戦い抜く覚悟がいる」というような、「いさましいことば」で「見得を切る」のは、どうしたっておかしい。
 ロシアに冷静になれ、とほんとうに説得する気持ちがあるなら、まず、ロシアに言及することばは冷静でなければならない。五十嵐の論文は、ロシアに直接語りかけることばではないから冷静である必要はないというのかもしれないが、そういう姿勢がおかしい。読者にも、「読売新聞は冷静に思考している」とつたえないといけない。逆のことをしている。ウクライナの次は台湾だ、台湾の次は日本が戦争で支配されるとあおっている。
 いま、いちばん避けなければならないのは、こういう「戦線拡大」である。「戦線拡大」をあおることばは避けなければならない。「返り血を浴びる」には、「①は敵を切る。そのとき血が流れる。それが自分のからだを汚す。」があることを思い起こそう。五十嵐は、間接的に、台湾有事のときは、日本は中国人と戦い、返り血を浴びる(中国人を殺す)ことが重要だ、その準備をしようと言っているのだ。私の「読み方」が「誤読」なら「誤読」でかまわないが、そういう「誤読」をされないようにことばを選んで書く、ということが、いまジャーナリズムに求められている。

 

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電力需要逼迫?

2022-03-23 10:14:42 |  自民党改憲草案再読

 読売新聞2022年03月23日の朝刊(14版・西部版)に、関東、東北で電力需要が逼迫している、というニュース。「電力逼迫 停電は回避/東電管内 使用率一時100%超/きょうも節電要請」という見出し。
 でも、なぜ?
↓↓↓↓↓
 今回の需給逼迫は、16日に福島県沖で起きた地震により、一部の火力発電所が停止したことが大きい。22日の気温低下で暖房などの電力需要が膨らみ、対応できなくなった。
↑↑↑↑↑
 これだけでは、理由がわかりにくい。2面に解説が載っている。東電の説明によると、
↓↓↓↓↓
 16日の福島沖地震では、計13基の火力が停止した。その後は7基が再稼働したものの、6基は動かないままだ。設備の被害が主因とされる。(略)現状で失われている供給力は計約450万キロ・ワットと、東京電力と東北電力管内の需要の1割弱を占める。
↑↑↑↑↑
 かなりわかりにくい。火力発電所が6基稼働していない。そのために450万キロ・ワットの電力不足が起きる可能性があった。6基で発電している量は、450万キロ・ワットで、それは全体の使用料の1割。
 では、全体は?
↓↓↓↓↓
東電は先週時点で、22日の最大需要を4100万キロ・ワットと見込んだ。(略)それが、前日までの天気予報で東京都を中心に想定以上の寒さになることが判明。東京電力管内の需要は4500万キロ・ワットにまで膨れあがった。
↑↑↑↑↑ 
 4500万キロ・ワットの電力需要が見込まれるのに4100万キロ・ワットの供給力しかない。不足の400万キロ・ワットは、稼働していない火力発電所(6基)が担っていたことになる。しかし、記事の最初の方には6基で450万キロ・ワットと書いてある。50万キロ・ワットは、何処へ消えた? 稼働していたら50万キロ・ワットの余裕があったはずだと言うこと?
 どうも、書いている「事実」に疑わしいところがある。不足すると書かれている450万キロ・ワットは、予想される需要4500万キロ・ワットの1割であって、実際の発電量ではないのかもしれない。
 では、実際の6基の発電総量は? わからない。何かが隠されている。
 4100万キロ・ワット+400万キロ・ワット=4500万キロ・ワット。これではぎりぎりだね。それで50万キロ・ワットの上乗せ(余裕)が必要ということで、最初の「450万キロ・ワット」という数字が導き出されているのかなあ。しかし、その不足分はどうした?
↓↓↓↓↓
22日に西から東へ実質的に融通できたのは約60万キロ・ワットにすぎず、不足分の解消には至らなかった。
↑↑↑↑↑
 じゃあ、実際、どれだけ足りない?
4500万キロ・ワット-(4100万キロ・ワット+60万キロ・ワット)=340万キロ・ワット
 でも、「節電」のおかげで、停電にまではいたらなかった。
 なんともわかりにくい。

 私なりに整理しなおすと、22日の電力総需要量は4500万キロ・ワット。しかし、東電には4100万キロ・ワットの発電能力しかない。他の電力会社から融通してもらえるのは60万キロ・ワット。340万キロ・ワット足りない。節電してもらうしかない。そして節電してもらって「停電」を回避できたということになるが。
 途中に出てきた「450万キロ・ワット」「400万キロ・ワット」と火力発電6基との関係が、どうもおかしい。数学的、というより、算数的に、説明になっていない。私の足し算、引き算能力では、数字の「意味」がわからない。だいたい、「16日の福島沖地震では、計13基の火力が停止した。その後は7基が再稼働したものの、6基は動かないままだ」という記事からは、東電の火力発電所の「総基数」がわからない。まさか7基で4100万キロ・ワットを発電しているわけではないだろう。さらに何基あるかわからないが、そのすべてが100%の出力(?)で発電しているわけでもないだろう。残りのすべてが100%稼働しても、なおかつ400万キロ・ワット不足するのか。
 隠されている数字が多すぎて、「事実」がわからない。
 でも、その「わかりにくい事実」のあとに、とても「わかりやすい」文章がある。その「わかりやすい」文章を導き出すために、ややこしい文章(事実関係が不明な、数字の羅列)があったのだ。
 この読売新聞の記事は、何が書きたかったの。
↓↓↓↓↓
 原子力発電の再稼働を先送りしてきたツケも大きい。国内で稼働する原発は現在、西日本に集中している。東日本大震災の影響を大きく受けた東京電力や東北電力は再稼働しておらず、主要な電源を火力に頼っている。災害が需給の逼迫をもたらしやすい構造にある。
↑↑↑↑↑ 
 原発の再稼働が必要だ、というための「論拠」として書かれた記事なのだ。「作文」なのだ。
 その証拠に、23日の社説「電力逼迫警報/供給体制の強化が不十分だ」の最後には、こう書いてある。
↓↓↓↓↓
 供給増には、出力が安定した原子力発電所の活用が有効だ。政府は安全性が確認できた原発の再稼働を後押ししてもらいたい。
↑↑↑↑↑ 
 私には、これは、どうみたって原発にこだわる自民党の政策の後押しにしか見えない。「電力需要逼迫」は事実なのか。原発再稼働を誘導するための「演出」ではないか、とさえ妄想するのである。
 なぜ、そんな妄想をするか。
 安倍は、ロシア・ウクライナ問題に関連して「核共有構想/核シェア構想」を持ち出した。それは単にアメリカの核を借りるということで終わるのではなく、きっと自前の核にもつながる。日本でつくって、アメリカに提供する、ということも含まれるかもしれない。核兵器をつくるには、原料確保のために原発が必要なのだ。
 プーチンは「核使用」をちらつかせたが、安倍あたりは、それに対して恐怖心をもつというよりも、「対抗手段として日本も核を持つべきだ」という主張を展開できるチャンスと受け止めて、はしゃいでいないか。そのはしゃぎに便乗し、原発の必要性を訴えるために「電力需要逼迫」を騒いでいるのではないのか。

 そういうことと、関係がないようで、関係が深そうなのが、経済面に載っている「円安」の記事。6年ぶりに120円台。
 輸入に頼る日本は、これから「物価高」に苦しむことになる。輸出産業は、円安で輸入が拡大するだろうが(トヨタはそれを見越して春闘の賃上げに応じたのかもしれない)、庶民は値上げラッシュに苦しむ。電気代、ガス代も、原料が輸入頼みだから、どんどん上がる。これも「原発再稼働」に利用されるだろう。
 ロシア・ウクライナ問題も、大地震も、自民党と大企業は、「自己利益」のために利用しようとしているようにしか見えない。

 だいたいねえ。
 11年前の東日本大震災で、いったん地震が起きればどういうことになるのか、電力会社は想定できたはず。原発に頼らない発電体制を確立しないことには、電力不足になるのはわかっていたはず。その対策を、まさか「火力発電」だけでまかなえると考えるはずがないだろう。地震のときは火力発電だって被害を受けるのだから。
 11年間、何もせず、原発再稼働を頼みに経営してきた。いま、再び、原発をアピールする好機だ、と思っているのだろう。原発が稼働中だったらどうなったか、などと考えないのだろう。
 ウクライナ問題では、ロシアが原発を攻撃したと騒いでいるが、日本が原発を攻撃されたらどうなるかは考えないのだろう。原発を動かして金儲けができればいい。原発を稼働させて核の原料を確保すれば、自民党が会社を支えてくれる、としか考えないのだろう。
 私は「懐疑派」というよりも「邪推派/妄想派」の人間だから、どうしてもそんなことを考える。

 

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「春闘」から思うこと

2022-03-20 12:02:11 |  自民党改憲草案再読

 読売新聞2022年03月18日の朝刊(14版・西部版)に春闘の中間報告の記事があった。「賃上げ 平均2・14% コロナ前に迫る」。
↓↓↓↓↓
 連合は18日、2022年春闘の第1回集計結果(回答数776組合)を発表した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた平均賃上げ率は、前年の同時期と比べて0・33ポイント増の2・14%だった。1回目の集計では、コロナ禍前の19年春闘の2・16%以来の水準に回復した。
↑↑↑↑↑
 賃上げが進むのはいいことだが、どうして突然賃上げブームになったのか。その「理由」がどこにも書いてない。
 コロナが完全に終息したわけではないし(ファイザーは4回目のワクチン接種をアメリカ政府に求めた、というニュースがあったはずだ)、ロシア・ウクライナ問題が解決したわけではない。ロシア・ウクライナは解決エスカレートしている。20日の「読売新聞は、ロシアが超音速ミサイル使用」とつたえている。(これは、春闘の統計前のことだけれど。)
 読売新聞は、春闘の記事の最後に、こう書いている。
↓↓↓↓↓
 22年春闘は、コロナ禍からの業績回復を受け、大手企業の賃上げ率が2年ぶりに2%台を回復しそうな勢いだ。16日の集中回答日に自動車や電機で満額回答が相次ぐなど、前年を上回る回答も目立つ。一方、小規模な企業の回答が進むと、賃上げ率は下がる傾向があり、賃上げがどこまで広がるか注目される。
↑↑↑↑↑
 賃金格差が広がるかもしれない、という予測だ。
 ここから、私は別のことを考えた。

 いま緊急の問題はコロナだけではなく、ロシア・ウクライナ問題である。「武力戦争」の背後で「経済制裁」という名の「経済戦争」が起きている。ロシアを「経済制裁」で敗北に追い込む、という作戦である。手段としては、ロシア製品の輸入禁止が起きている。これは、私たちの生活にどう影響してくるか。(ロシア人の生活にも影響があるのだろうけれど、私は個人主義的な人間なので、そこまでは考えない。)
 いろいろなものが値上がりする。天然ガスを初めとする燃料の輸入がストップすれば、天然ガスの値段が上がる。電気代が上がる。最近話題になっているが、ガソリン代も上がる。小麦(ウクライナ産が多いかもしれない)の輸入が減れば、パンも値上がりする。ほかの菓子類も。……こういうことは、すでにわかっている(想定されている)。
 ここからが問題。
 大手の企業は、これから物価がどんどん上がることを知っているだけではなく、むしろ、その物価上昇にあわせて自社製品の値上げをもくろんでいるかもしれない。(いわゆる便乗値上げのチャンスだと思っているかもしれない。脱線したが……。)物価が上がるということは、裏を返せば、実質賃金(収入)が減るということである。どうしたって、物価上昇が進む過程で「緊急の賃上げ要求」が生まれてくるだろう。それを見越しての「賃上げ」なのではないのか。つまり、今後何が起きようが「緊急の賃上げ要求」には応じない。すでに春闘で前年を上回る賃上げをしている。賃上げの必要はない、というための「方便」としての「春闘賃上げ 平均2・14%」なのではないのか。
 これは実際に回答をみると、もっとはっきりする。たとえば、トヨタは「回答日」前に「満額回答」をしている。組合の要求をそっくり飲んでいる。ガソリンが値上がりすれば、車だって売れない。その車にしても電気自動車への移行が進んでおり、トヨタは出遅れている。トヨタの車がどんどん売れるということは、想像できない。にもかかわらず、あの慎重なというか、ケチなトヨタがさっさと「満額回答」している。こういうときには、何か、裏がある、と考えた方がいい。絶対に、ウクライナ・ロシア問題が長引けば、さまざまな「物価」が上がる。それに備えてのことなのだ。つまり「追加の賃上げ要求」には絶対に応じない、というための「先手」なのだ。
 ここから波及する問題は、トヨタの社員に限定されない。いや、むしろトヨタ、あるいは春闘で賃上げが確保された社員以外のところに問題が増幅されて広がっていく。
 賃上げが少なかった会社の社員はどうなるのか。あるいは組合に加入していない未組織労働者、簡単に言えば非正規社員やパート労働者はどうなるのか。「臨時の賃上げ要求」もできずに、ただ、物価高に耐えるしかないのだ。
 トヨタのやったことは、トヨタの労働者(連合の労働者)が、そういう未組織労働者と連携し、賃上げや社会保障の充実を求めるという運動を起こさせないための「予防措置」なのだ。「トヨタの社員は賃上げによって生活を保障した。それ以上のことはしない。社員を守るのが会社の仕事。社員以外のことまでは責任を持たない。」
 これは、労働者の「分断」だね。
 連合会長の芳野は、こういっている。
↓↓↓↓↓
「これから回答を引き出していく組合に、この良い流れをつなげていく」と語った。連合は7月頃に最終結果を発表する予定だ。
↑↑↑↑↑
 参院選に向けて、連合の力をアピールするということだろうが、連合がめざしているのは共産党排除からもわかるように、国民全体の「利益」ではない。あくまで連合傘下の労働組合の従業員の「利益」であり、それはその従業員によってもたらされる資本家の「利益」である。
 物価上昇で苦しむのは、連合傘下の組合がある企業に就職できなかったひとの個人責任、ということなのだろう。競争社会を勝ち抜いてきた人間が、競争社会で敗北し、貧乏暮らしをしている人のめんどうまで見る必要はない、という論理である。
 自民党の狙いどおりの論理である。

 ところで、世の中には、春闘の恩恵にあずかる大手企業の従業員でもなければ、未組織労働者でもない人間もいる。これまで働いてきた年金生活者や、いろいろな事情で働くことができない人間である。「賃上げ」どころか「賃金」がない。収入が限られている。物価高に対する対抗手段が節約しかないという人間である。
 私も年金生活者だが、どうなるんだろう。5000円の一時金が話題になっているが、5000円で、これから起きる物価上昇にどう向き合えるのか。物価上昇にあわせた年金の引き上げが必要になるはずだが、この問題には、連合は口をはさまないだろう。

 コロナはウィルスなので、何を考えているか、わからない。けれど、戦争(とくに経済戦争)では、それを支配するのは人間である。何が起きるかは、経済戦争を勝ち抜いてきた企業(資本家)にはわかっているはずだ。そのわかっていることを利用して、貧富の格差拡大政策、貧乏人をますます貧乏にすることで利益を確保するという方法が、これから拡大していくはずだ。
 簡単に言えば、「便乗値上げ」が進むということだ。
 「いまは緊急事態だから、企業は製品の値上げをせず、赤字分はこれまでの内部保留でまかなう。消費者のみなさん、安心してください」とは、どの企業のオーナーも言わないだろう。
 いま、資本主義は、「利益の再配分」などはいっさい考えず、ひたすら「強欲主義」を突き進んでいる。
 物価高が進み、国民が「年金を上げろ、賃金を上げろ」と主張したら、国は(自民党政権は)、あるいは連合は、こういうに違いない。
 違法な戦争をしかけているロシアを追い詰めるには経済制裁しかない。経済制裁は武力をつかわない「安全な戦争」である。ロシアに勝つまでは、物価高に我慢するしかない。「ほしがりません、勝つまでは」の精神をいまこと思いだすべきなのだ、と。
 でもね。
 先に書いたけれど、その「ほしがりません、勝つまでは」を資本家が実践するかというとそうではないのだ。「内部保留を全部吐き出します。戦争が終わったら、企業の製品を買って、私たちを助けてください」とは言わない。多くの市民が困窮しているときも、ひたすら金を儲けるのである。軍需産業を見ればいい。ロシア・ウクライナ問題がつづくかぎりは、軍需産業は潤うのだ。武器は売れるのだ。トヨタにだって、自動車の発注があるかもしれないのだ。

 

 

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ゼレンスキー大統領演説

2022-03-17 13:42:22 |  自民党改憲草案再読

 ロシアのウクライナ侵攻に関連して、ウクライナのゼレンスキー大統領が、オンラインを利用し米議会で演説した。読売新聞によれば「軍事支援の強化を訴えた」(03月17日朝刊、14版=西部版、3面)
 日本でも、ゼレンスキー大統領のビデオ演説を国会に招致すべきではないかということが議論になっているらしい。
 それはそれで、意義のあることだとは思うが。
 私は、とても疑問に思っていることがある。

 日本は、何をしたいんだろう。アメリカは何をしたいんだろう。NATOは何をしたいんだろう。それが、よくわからない。「ウクライナからロシア軍が撤退すること」を各国がもとめているのは、わかる。
 問題は、それをどうやって実現するか。
 ウクライナを軍事支援することで、ロシア軍を敗退させる、という方法は、もちろんそのひとつだろうけれど。

 私の書くことは「夢物語」なのかもしれないが。

 ロシアのウクライナ侵攻を私は肯定するつもりはない。軍事侵攻はぜったいにしてはいけない。そのことを確認した上で、私は、こう考えている。
 戦争が起きたとき(起きるとき)、そこには対立の原因がある。対立というのは、一方的に生まれるものではない。双方の主張に違いがあって、はじめて起きる。
 そうであるなら、一方の主張(意見)だけを聞くというのはおかしくないか。
 プーチンの主張も聞かないと、「妥協点」というものが見出せないだろう。
 「妥協点」を探さない。ただ、ロシア軍をウクライナから撤退させればいい、というのであれば、ゼレンスキーの主張を聞く必要もないだろう。
 NATO(アメリカ)がウクライナに侵攻するのではなく、ウクライナのもとめに応じて、ウクライナにNATOの基地を造る(米軍基地を造る)というのであれば、それは「軍事衝突」こそ起きない行動だろうけれど、そういうことで問題は解決するのか。
 それはロシアが今回の軍事行動を起こした「原因」と思われるものを、そのままロシアに認めさせるということではないのか。
 「民主主義」を主張するなら、最低限、ロシアの言い分も聞き、できれば質疑応答をし、そのあとで国会で、日本がどういう行動をとるべきか議論することが大切だろう。
 はじめから「結論」があって、その「結論」をはやく導くために、ゼレンスキーのビデオ演説を日本の国会でも実施するというのは、何かおかしい、と私は感じる。

 それにまた、私はこんなことも考える。
 日本には沖縄問題がある。沖縄は「中国、北朝鮮から侵略される恐れがある。アメリカ軍の基地がないと安全が守れない」と主張し、アメリカ軍の駐留をもとめているのか。違うだろう。アメリカの世界戦略を実現するために、沖縄に基地が必要だと判断し、沖縄に巨大な基地を造っているのだろう。
 沖縄をウクライナ、米軍基地をNATOと読み替えるとどうなるのか。
 米軍は、いま、沖縄に侵攻し、そこに基地を造ったわけではない。米軍が沖縄に侵攻したのは第二次大戦のときである。そのまま、米軍が居すわっている。
 あるいは、ロシアと北方四島の関係はどうなのか。ロシア(ソ連)は第二次大戦時に北方四島に侵攻し、そのまま居すわっている。
 日本は、それを「正しいこと」とは認めてはいない。しかし、その現状を変更するために、たとえば北方四島に軍隊(自衛隊)を派遣し、領土を回復すべきだ(奪い返すべきだ)という意見が大勢を占めているわけではない。
 なぜだろう。
 単に、アメリカが、ロシアとの間で「北方四島」をめぐって紛争を起こしたくない。戦争に巻き込まれたくない、ということではないのか。
 アメリカ(議会)は、たとえば北方四島問題について、日本の主張の意見を聞くために誰かを議会に招き、演説させたか。あるいは、ロシアの大統領をアメリカ議会に招き、北方四島問題について、意見を聞いたか。
 アメリカは北方四島をロシア(ソ連)に与えることで第二次大戦後の勢力構造を確定した。ソ連の世界戦略とアメリカの世界戦略を合致させた。日本は、アメリカの世界戦略にしたがって、北方四島のロシア占有を受け入れている。
 さらには。
 イラクを攻撃したとき、アメリカ議会は、イラクの大統領を米議会に招き、主張を聞いたか。

 国際紛争の解決には粘り強い交渉しかない。そして、その交渉というものが「ことば」によっておこなわれるものならば、どちらか一方の「ことば」だけを聞く、あるいはどちらか一方の「ことば」だけを広めるという形で、「ことば」を動かしてはいけない。
 実際の「軍事行動」もそうだが、それといっしょに動いている「ことば」が、いったいどこから出てきて、どこへ行こうとしているのか、そのことをみつめる必要がある。
 そして、それを見極めるためには、絶対に「反対意見」が必要なのだ。「反対意見」を封じたところで、一方の意見に加担するのは、とても危険だ。「民主主義」とは言えない。

 私の書いていることは「理想論(空論)」かもしれない。しかし、私は、権力者ではないので、自分が頼れるものは「理想(ことば)」しかない。だから「ことば」を動かす。「理想」を持ち続ける。
 私が現在できるのは、こういう「ことば」を書くことと、フェイスブックで「友達」になっているウクライナのひとの安全をメールで日々確認することである。それをつづける。

 

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ボニー・グレーザー「分析ウクライナ危機/台湾と根本的違い」(アメリカ人の嘘)

2022-03-09 10:40:27 |  自民党改憲草案再読

ボニー・グレーザー「分析ウクライナ危機/台湾と根本的違い」(読売新聞、2022年03月09日朝刊)

 アメリカ人は(と、一概に言ってはいけないのだが)、今回のロシウ・クライナ問題で何が批判されているかをまったく理解していない。そのことを如実に証明する記事が2022年03月09日の読売新聞(西部版・14版)に載っていた。米ジャーマン・マーシャル財団アジアプログラム部長、ボニー・グレーザーが、インタビューで語っている。
(https://www.yomiuri.co.jp/world/20220309-OYT1T50048/)
↓↓↓↓↓
 ウクライナで起きていることを見て台湾の人々の間で「次は台湾だ」と不安が生じている。しかし、台湾とウクライナの状況は根本的に異なる。米国がウクライナに軍事介入しないから、台湾も同じだという議論は、台湾の人々の米国に対する信頼を損なわせることを狙った中国による誤情報だ。(略)米国がウクライナに軍を送らなくても欧州の同盟関係が回復不能なほど傷付くことはないが、台湾の防衛に駆けつけなければ、アジア全体、特に日本や豪州への影響が懸念される。
↑↑↑↑↑ 
 グレーザーは、アメリカはウクライナには軍を送らないが、台湾には軍を送る、と明言している。つまり、中国となら戦争をすると言っている。それも、台湾の人々を救うためではなく、「アジア全体、特に日本や豪州」を中国から守るためだと言っている。
 このことは逆に言えば、台湾を守るという口実のもとに、日本や豪州の軍隊も結集し、組織し、アメリカと中国との戦争に巻き込む、ということである。単に、アメリカ軍だけが台湾防衛のために中国と戦うというわけではない。日本は、こういうことをするために戦争法(集団的自衛権)を成立させた。台湾でアメリカ軍が攻撃されたら、それを日本への攻撃と見なし、アメリカ軍と一緒になって戦う。つまり、中国とアメリカの戦争に参戦を強制される。
 台湾の人がどう考えるか知らないが、私が心配するのは、それだ。アメリカ主導で戦争が引き起こされる。それが心配だ。
 ここから翻って、ウクライナの状況を見れば、もっとほかのことも見えてくる。台湾に中国が侵攻したことを想定して、重書きをすると、こんな感じになるだろう。
 アメリカはウクライナにはアメリカ軍を出さないと言っている。かわりにNATOに増派する。NATOに軍備を提供する。ウクライナで戦うのはNATO加盟の(特にウクライナ、ロシアに隣接した)国の兵士である(まだ、派兵されていないが、武器の提供が提案されている)。
 台湾で問題が起きたときも、同じ方法が取られるだろう。アメリカは実際には台湾には派兵しない。日本や豪州にアメリカ軍を派兵する。武器を提供する。アメリカの応援を受け手(?)、日本や豪州の軍隊が台湾で、台湾防衛に戦う。
 アメリカは、すでにベトナム、イラク、アフガン、シリアその他の国で敗北し続けている。そこで考え出したのが、アメリカ軍が戦うのではなく、アメリカの同盟国が各地で戦う(戦争をする)という方法である。
 ロシアや中国は驚異である、とあおるだけではなく、実際の軍事行動を誘い出し、その戦争に周辺国を巻き込む。
 なぜ、こんな「手の込んだ」ことをする? グレイザーの次のことばが、アメリカの意図を明確にしている。
↓↓↓↓↓
米議会ではロシアの侵攻後、台湾への武器売却を増やすべきだとの意見が上がっているが、武器売却は台湾の防衛の一要素だ。
↑↑↑↑↑
 「武器売却」が目的なのだ。いま、コロナのために世界中の経済が疲弊している。金儲けができない。収入・利益がない。それはアメリカの軍需産業も同じなのだろう。特に、アメリカはアフガンから撤退して以来、「戦争」を引き起こしていない。軍需産業は、軍備を売ることができない。売り先(買い手)を必死になってさがしているのだ。
 金を稼ぐためなら、何でもする。この強欲なアメリカの軍需産業は、いま、ウクライナを徹底的に利用しようとしている。なんといっても周辺にはNATOの加盟国がある。それらの国に「次はおまえの国が狙われる」とあおり、武器を売る。ウクライナには兵を送らないが、ウクライナにその国が兵を送れるようにするためにアメリカ軍を周辺国に派兵する。ウクライナ周辺の各国が武器を提供しても大丈夫なように(その国の防衛が手薄にならないようにするために)、周辺国にアメリカの最新鋭の武器を売却する。
 これは「巧妙」としか呼びようのない方法である。いま起きていることは、これである。いや、それ以上のことである。
 一面には、バイデンがロシアからの原油の輸入を禁止するという方針を打ち出したというニュースが載っている。(https://www.yomiuri.co.jp/world/20220308-OYT1T50187/)しかし、この問題ではヨーロッパ各国と同一歩調をとるところまではいっていない。
↓↓↓↓↓
 バイデン氏は7日、英国のジョンソン首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相とビデオ会議形式で会談した。ホワイトハウスなどによると、首脳らは対露制裁の強化で一致したものの、原油の禁輸措置に関しては結論が出なかった。ドイツの慎重姿勢が影響した可能性が高い。
 ジェン・サキ米大統領報道官は7日の記者会見で、「米国と欧州では輸入量も含め、置かれた状況が違う」と述べ、ドイツなどの立場に理解を示した。
 ショルツ氏は7日の声明で「電力や産業のエネルギーは現時点で他の方法では確保できない」とし、当面はロシアからのエネルギー調達を続ける方針を表明した。
↑↑↑↑↑
 天然ガスもそうだが、ドイツはロシア頼みのところがある。これは、逆に言えば、ドイツの金がロシアに流れる。(あるいは、ヨーロッパの金がロシアに流れる。)ロシアが金儲けできるということである。この強い経済関係(エネルギーがないと社会が動かない)は、天然ガスや石油だけではなく、他の分野にも広がっていくだろう。そして、それは、その経済関係が広がった分だけ、アメリカとヨーロッパの経済関係が薄くなる。アメリカはヨーロッパでは金儲けができなくなる、ということである。
 アメリカの強欲資本主義は、これを許さない。これが我慢できない。アメリカがまず金儲けできるという環境が必要なのだ。そのためになら、何でもする、というのがアメリカなのだ。
 資本主義の「理想」は、たぶん、利益を再配分し、平等な社会をつくる、自由な社会に貢献するということだと思うが、現実は、利益の再配分はおこなわれず、一部の資本家に金があつまり、貧富の格差が拡大している。資本主義は、強欲増強システムになっている。これはアメリカの姿をみればわかるし、日本の現実をみてもわかる。日本では、資本家がよりより収益をあげるために、たとえば「非正規雇用」のシステムが確立された。低賃金で働かせ、カットした賃金は資本家の収益に、ということである。税制をみてもわかる。消費税を増税し、法人税を引き下げる。減った分の税収を消費税でまかなう。ここでも金持ちだけが、金を得られるというシステムが動いている。

 脱線したが。(脱線ではなく、補強のつもりだが。)

 今回のウクラナイ問題を考えるとき、思いださなければならないのが「ワルシャワ条約機構」である。冷戦終結後、ワルシャワ条約機構(ソ連の防衛システム)は解体し、ロシアはロシア一国で、ロシアを守ることになった。しかし、NATOは、そのまま存続し、いまにいたっている。なぜ、NATOが必要なのか。なぜ、NATOは東側へ加盟国を増やしていかないといけなかったのか。
 ロシアが攻撃をしてくるから? 今回のウクライナのように?
 これは「後出しじゃんけん」のような方便である。
 私が思うに、アメリカの軍需産業がNATOが解体してしまったら武器の売り先がなくなるからだ。NATOが加盟国を増やせば増やすだけ、アメリカの武器の売却先が増える(利益が上がる)からだ。
 グレイザーのことばをもう一度読んでみる。
↓↓↓↓↓
米議会ではロシアの侵攻後、台湾への武器売却を増やすべきだとの意見が上がっているが、武器売却は台湾の防衛の一要素だ。
↑↑↑↑↑
 「武器売却」としか、グレイザーは言っていない。「防衛」のための最大の武器は、人間と人間の「友好」である。台湾と中国の「友好」を高めるために、アメリカはこういう提案をするとは言っていない。あるいは中国と台湾が「衝突」しないようにするために、こういうことを提案したいとも言っていない。
 「武器売却」は、安全保障という名目の金儲けであり、いわば一石二鳥作戦なのである。アメリカがウクライナでやっていることは、さらにロシア経済を破綻させるという「一石三鳥」作戦である。ウクライナで成功すれば、必ず、同じ方法が台湾で試みられるはずである。アメリカのあやつり人形のような安倍は、彼自身の人種差別意識とも関係するのだろうが、それを利用して中国攻撃という夢、日本を軍国主義にするという夢を追いかけている。ウクライナで起きている問題は、日本に強い影響を及ぼすはずである。

 

 

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ウクライナとロシア、どう読むか(2)

2022-03-02 10:53:06 |  自民党改憲草案再読

 ウクライナとロシア、どう読むか(2)

 2022年03月02日の読売新聞(西部版・14版、ただし記事はネットから転写)の1面に、

露パイプライン破産手続き/天然ガス 事業会社が検討/ロイター報道

 という記事がある。

 【ロンドン=池田晋一】ロイター通信は1日、ロシアとドイツをバルト海経由で結ぶ天然ガスパイプライン「ノルトストリーム2」の事業会社が破産手続きの検討に入ったと報じた。パイプラインの建設は2021年に完了したものの、ロシアによるウクライナ東部の親露派支配地域の独立承認を受けてドイツが2月22日に計画凍結を決めたことで、稼働のめどが立たなくなっていた。(略)ルトストリーム2を巡っては、米国が2月23日に事業会社への金融制裁を発表し、英シェルは28日、事業撤退を表明した。

 これに先立ち、03月01日の夕刊では「サハリン2 英社撤退/日本の商社も参画」という見出しで、こう書いている。

 【ロンドン=池田晋一】英石油大手のシェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)は28日、ロシア極東サハリンの天然ガス事業「サハリン2」から撤退する方針を発表した。ロシアのウクライナ侵攻で事業継続は難しいと判断した。日本の大手商社も参画する大規模プロジェクトで、日本企業側の対応が注目される。

 こういう流れを受けて、03月02日の2面には「日本むずかしい対応」という見出しで、こういうことを書いている。

 サハリン2は、露国営ガス会社ガスプロムが約50%、シェルが約27・5%、三井物産が12・5%、三菱商事が10%をそれぞれ出資している。日本企業の参加は、サハリン2からの液化天然ガス(LNG)調達が、資源の乏しい日本の悲願だったことを示す。(略)
 サハリン2のLNG生産能力は年約1000万トンで、約6割が日本向けだ。計算上はLNG輸入の7%程度を占めることになる。東京電力ホールディングスと中部電力による発電会社JERAや東京ガスなどエネルギー企業が調達している。
 日本の商社が確保する権益分がなくなれば、日本への供給が将来的に不安定になりかねない。三井物産と三菱商事はいずれも「シェルの発表の内容を含めて詳細を分析の上、日本政府及び関係ステークホルダーと今後の対応について検討を進めたい」とコメントした。

 日本は、簡単に「天然ガス事業から撤退」という方針を打ち出せない。日本も天然ガスが不足するのは予測できるのに、日本はヨーロッパへの天然ガス融通を決めている。
 どうして?
 ここから推測できるのは、きのう書いたことのつづきになるが、今回のウクライナ、ロシアの問題は「武力」(ロシアがNATOに恐怖を感じている)だけが原因ではないというこだ。
 ロシアは天然ガスの輸出を通じてヨーロッパと強いつながりを持っている。経済連携がある。金が動いている。「ノルトストリーム2」が稼働し始めれば、さらにこの関係は強くなる。なんといっても天然ガスはエネルギーである。それがないと生活が成り立たない。
 もし、ロシアとヨーロッパの「経済関係」が強くなれば、アメリカはどうなるか。相対的に弱くなる。アメリカの金儲けがうまくいかなくなる。それをなんとしても防ぎたい。ヨーロッパ各国とロシアの関係を断ち切りたい、というのがアメリカの狙いだろう。
 そして、この「狙い」は、メルケルがドイツの首相を辞めたこととも連動しているように思えてならない。論理的なメルケルがドイツ首相でいる限り、メルケルはノルトストリーム2を優先し(国民生活、ヨーロッパの安定を考慮し)、政策を考えるだろう。アメリカの金儲け主義者にとっては、メルケルという「重し」がとれたことが、一つの「転機」なのだ。これで、アメリカ主導で「アメリカ資本主義(アメリカの金儲け優先)」を遂行できる、というわけだ。
 読売新聞は明確には書いていないが、日本の企業(政府)の対応を比較すれば、このあたりの事情がわかる。
 アメリカ追随一方の、安倍傀儡・岸田政権が、なぜ日本の企業に「サハリン2から撤退しろ」と迫れないのか。日本の企業はなぜ「サハリン2から撤退」という方針を、他国の企業に先立って打ち出せなかったのか。逆に、ヨーロッパに天然ガスを融通するという方針を取らざるを得なかったのか。
 アメリカ資本主義は日本の経済(日本とロシアの経済連携)など気にしていないのだ。北方領土問題に知らん顔をしていることを見るだけでも、それがわかる。日本の経済は、もう完全に「落ち目」。そういうところを相手にしていても金儲けはできない。ヨーロッパの市場を守ることが最優先、ということだろう。(日本とロシアとの経済関係は、天然ガス、石油に限定されるとアメリカ資本主義は見ているということである。)
 これは、逆の見方をすれば(繰り返すことになるが)、アメリカが「ヨーロッパではロシアに金儲けをさせない、ヨーロッパとロシアが金儲けで連携することを許さない」ということなのだ。なんとしても、ヨーロッパでの金儲けをしたいということなのだ。
 2面には、こういう「作文」もある。

 原油を生産する「サハリン1」は政府や伊藤忠商事をはじめ日本の関与がさらに強く、今後の対応が注目される。先進7か国(G7)などからの圧力が強まれば、いずれも関係の見直しを迫られる可能性がある。
 
 この「可能性」に気がついたのは誰か。きっと書いた記者ではない。政府関係者の誰かが、記者に、「今後、日本はむずかしい選択を迫られる。困ったなあ」ともらしたのである。それで記事を書いたのだ。いまごろこんなことを書くのなら、ウクライナ危機が迫った段階で、日本とロシアの「経済関係」に踏み込んだ「予測」を書いておくべきなのだ。(書いたのかもしれないが、私は読んでいない。)
 もし、そういうことにほんとうに気づいているならば、日本の企業と日本のエネルギーに直結したきのうのニュース、「サハリン2 英社撤退/日本の商社も参画」こそ1面で報じなければならない。そういうことに、ぜんぜん気づかずに、誰かが選んだニュースをそのまま垂れ流している。
 ウクライナとロシアの問題を、日本から遠く離れた「領土問題(安全保障問題)」ととらえ、「経済」(とくに日本の経済)を考慮できないところに、重大な「視点の欠如」がある。
 世界はアメリカの「資本主義」に完全に支配されており、そこから逃れられなくなっている。「アメリカ資本主義」は、人間の思考にまでマヒさせている。

 いま問題になっているのは、巨大な金が動くエネルギー産業だが、これから「農業(食糧)」の問題がじわじわとクローズアップされてくるだろう。ウクライナはヨーロッパの穀倉地帯である。小麦をはじめ、シリアル関係の穀物をウクライナから輸入している国は多いはずだ。(私は、スペインの友人と話したが、友人は即座に「スペインはウクライナからシリアルを輸入している」と言った。)食糧の基本である穀物が不足し、値上がりすれば、一般市民の受ける影響は大きい。これもアメリカの農業にとっては、ヨーロッパへの輸出の機会が増える。金儲けにつながるということかもしれない。
 ロシアの「ウクライナ侵攻」に対して、キューバ、ベネズエラは「支持」しているが、これはアメリカの経済政策に反対という意味合いがあるかもしれない。キューバ、ベネズエラはアメリカの経済制裁のために困窮している。ベネズエラは石油大国である。ほんらいなら、ゆうゆうとした経済が可能なはずなのに困窮している。アメリカの指示に従わない国は貧乏にさせてしまう。金儲けはアメリカが優先されるべきだという思想が、アメリカの金持ちの間で横行しているのだろう。
 私はロシアの武力行使、ウクライナ侵攻(戦争)を支持しないが、同時に、アメリカの資本主義のあり方も支持しない。金持ちだけが金儲けをし、幸せになればいい。金儲けをできないのは「自己責任」だという風潮は、日本では正規社員を減らし、非正規社員を増やすという形で具体化されたが、このシステムが形を変えながら世界を支配していく。私には、そういうふうに見えて仕方がない。

 

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ウクライナとロシア、どう読むか

2022-03-01 12:04:32 |  自民党改憲草案再読

 2022年03月01日の読売新聞(西部版・14版、ただし記事はネットから転写)が4面に「中露北の挑発 政府警戒/ミサイル・軍事演習 ウクライナ混乱乗じ」という見出しで日本周辺の様子を書いている。
↓↓↓↓↓
①北朝鮮が27日に日本海に弾道ミサイルを発射した。
②中国軍は、22日に東シナ海で新型揚陸艇で上陸訓練実施を公表した。(略)露軍が(ウクライナ)侵攻を始めた24日は戦闘機を台湾の防空識別圏に進入させた。
③ロシアは、(略)1月には千島列島や、ロシアが不法占拠する北方領土などでの射撃訓練を実施。2月12日には、露艦隊が米国攻撃型原潜の「ロシア領海侵入」を発見したと発表したが、米側は否定した。
↑↑↑↑↑
 これだけを読むと、たしかに「ウクライナの混乱に乗じ」、中国、ロシア、北朝鮮が極東で何らかの軍事行動を起こしそうな気配が感じられるが、こういうことはウクライナ問題以前からつづいている。ロシアの行動は、1月のものである。
 なぜ、こんな「まとめ作文」を、いま、読売新聞は書いているのか。
 最後の方を読むと、わかる。
 「米、タイ両軍主催で(3月)18日からタイなどで行われているアジア最大規模の多国間軍事演習「コブラ・ゴールド」には、日本の自衛隊など約3500人が参加。台湾有事などを念頭に水陸両用の装甲車を使った実戦訓練も実施する。米軍の存在感を維持するのが狙いだ。」と書いたあとに、こうつづけている。
↓↓↓↓↓
現時点で米国がウクライナ防衛のための軍事介入を見送っているため、自民党からは「台湾有事の際に米軍は行動するのか」(中堅)と懸念する声も出ている。台湾への武器供与などを定める米国の「台湾関係法」は防衛義務は規定していないためだ。安倍元首相は27日のテレビ番組で「米国は台湾に曖昧戦略を取っている。米国は曖昧さを捨て去るべきだ」と述べ、台湾防衛を明確にすべきだとの認識を示した。
↑↑↑↑↑
 「台湾防衛」は聞こえはいいが、はっきり言って「内政干渉」だろう。「台湾有事」といいなおし、日本が中国からの攻撃にさらされているとあおるのは、おかしいだろう。台湾は中国の一部であるというのが、日本の公式見解のはずだ。
 安倍の狙いは「台湾防衛」ではなく、「中国攻撃(中国との戦争)」であることは明白である。「台湾防衛」を「台湾有事=日本の有事」と言い直し、中国侵攻を考えていることは明らかである。安倍は、ただただ戦争がしたい。そのだけの人間である。そして、これはあとで書くことと関係するが、戦争をする、アメリカから軍備を買うということをつづけるかぎり、安倍はアメリカの軍需産業から大事にされる(見返りに経済援助がある、金儲けができる)ということだ。
 このことに関連するが、外電面に、上海コミュニケ採択50年にあたり、中国の王外相がビデオ演説した記事がある。
 王は、こう語っている。
↓↓↓↓↓
 王氏は、近年の米中対立について、「コミュニケが確立した原則、精神が適切に守られていないためだ」と主張し、「米国は政治約束を守り、『台湾で中国を抑える』たくらみや中国内政に干渉するいかなる言行もやめるべきだ」と求めた。(略)
 米国はコミュニケで、台湾について、「台湾海峡の両岸のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張していることを認識する」と言及したが、中国政府が主張する「一つの中国」原則を受け入れてはいない。
↑↑↑↑↑
 アメリカは、台湾が中国の一部であるという主張を認識しているが、原則として「一つの中国」を認めていない。
 安倍は、このアメリカの姿勢に従っている。そして、それを利用しようとしている。台湾は「一つの中国」に含まれない。台湾は「中国」ではなく、むしろ、アメリカ、日本の「同盟国」である、という認識である。そして、そこから「同盟国の自由と権利を守れ」という主張し、その主張を戦争へとつなげていくのである。「台湾の自由と権利を守るための戦争」という「名目」を利用したいのである。
 安倍はすでに首相をやめてしまった人間である。その安倍の主張を、まるで「結論」のように展開する読売新聞は、やはり安倍の考えのように日本は「台湾の自由と権利を守る」ために、アメリカと協力して中国と戦争すべきだと考えているのだろう。

 でも、その戦争で何が起きる? なぜ、戦争をしなければならない? なぜ、共存しようとしない? なぜアメリカはロシアや中国と共存しようとはしないのか。
 理由は簡単だ。アメリカは、アメリカ以外の国が金儲けをするのが許せないのだ。
 ロシア、ウクライナの問題にもどって考えてみればわかる。ロシア、ウクライナ問題で、いま影響が出ているのはロシアの天然ガスの供給だろう。ロシアからのガス供給がとまれば、ヨーロッパの多くの国は困る。日本が、天然ガスの融通をするのも、そのためである。
 これは、裏を返せば、ロシアは天然ガスを輸出することで利益を上げている。それがアメリカには許せない、ということなのだ。政治体制が違う国が経済的利益を上げる(金儲けをする)ということが、アメリカの政権に影響を与えているアメリカ人には許せないのだ。さらに、その経済関係を強めることで、ロシアがヨーロッパ諸国と関係を深め、さらに経済関係を拡大する(金儲けをする)ということが、アメリカの一部の金持ちには赦しがたいことなのだ。私は、アメリカ人の金持ちのことを知らないから、名前を特定できないが、そういうひとがアメリカの政治を支配している。中国についても同じように考えているだろう。経済力をつけ、いろいろな商品を世界に輸出し、金儲けをしている。中国、ロシアが金儲けをするということは、それだけアメリカの金儲けの機会が減る(金が儲からない)ということである。これを、なんとかしたい。
 さらに。アメリカは、世界各国を舞台に(つまり、アメリカ本土を舞台にしてではなく)戦争を展開し続けている。そして敗北しつづけているが、戦争がある限り軍需産業は儲かる。さらに日本のような、アメリカ以外の国に武器を輸出すればいっそう金儲けができる。
 NATOに対してもおなじ。NATOはアメリカ抜きの軍事同盟ではない。アメリカが含まれている。よくわからないまま推測で書くのだが、そのNATOの「武器」は、NATO各国の「自前」のものだけではなく、どうしたってアメリカから買うものもあるだろう。高度な軍備になればなるほどアメリカから調達したものになるだろう。軍の行動には「一体感」が必要である。その一体感は「軍備」の一体感につながるはずである。ウクライナがNATOに加盟すれば(加盟させることができれば)、アメリカの軍需産業は潤うのである。もし、ウクライナがロシアの支配下に入ってしまえば、武器はロシア産のものになる。ロシアの軍需産業が儲かる。これは、アメリカにしては、まったくおもしろくない。そういうことだろうと、私は想像している。
 世界は、アメリカの金儲け資本主義のために、破壊されるのだ。「共存」の道が閉ざされようとしているのだ。
 北朝鮮がやっていることも、このアメリカの金儲け資本主義と関係していると思う。アメリカからの援助がない。世界のリーダーを自任している(?)アメリカが、政治体制が違うという理由で北朝鮮を排除しようとしている。排除されたくない。北朝鮮は存在している、ということをアピールするために、軍備を増強させている。この軍備増強を排除するには、北朝鮮を上回る軍備をみせつけても効果がない。これは、これまでの歴史が証明している。北朝鮮がアメリカの軍事力に恐れをなして、軍備を増強しても意味がない、だから軍備を縮小するという動きは一度として取っていない。
 日本からは状況がわかりにくいが、アメリカのアメリカ以外の国が金儲けをするのは許せないという姿勢は、中南米に眼を向けても確認できるだろう。キューバやベネズエラに対するアメリカの経済制裁(経済対策とは言えないだろう)がキューバ国民やベネズエラ国民を苦しめている。

 「戦争」があると、どうしても武力対立、武力支配と、その支配から逃れる難民の問題だけが注視されてしまうが、武力戦争の背後にある「経済戦争」(強欲戦争)にも目を向けないといけない。
 私は年金生活者だが、年金生活者になってわかることは、金は儲けるものではなく、金はいかにつかわないかということが重要になってくる。何に金を使わないか、という問題で言いなおせば、軍備に金を使わない工夫をつづければ、人間の生活はもっと豊かになる。「利潤の再配分」という視点から、世界(経済)を見直さない限り、戦争は必ず起きる。もし、ロシアがウクライナから撤退し、かわりにNATOが支配するという形で戦争が終われば、それは次には、ロシアの内部への「侵攻」(ロシアからの隣接地域の独立)という形に発展するだろうし、台湾問題(台湾有事)にも。直結するだろう。中国が台湾に侵攻する前に、台湾を守るという名目がアメリカが台湾に基地をつくるという形で戦争がはじまるだろう。台湾に設置するのは武器の行使ではないから戦争ではないとアメリカは言うだろう。日本も、それに同調するだろう。しかし、中国から見れば、それはアメリカ軍の台湾侵攻だろう。
 いま必要なのは、国境(領土)だとか愛国心ではなく、国境という概念を捨てること、愛国心を捨てることだろうと思う。金の力で人間を支配しようとする制度とどう向き合い、人間同士が連携する方法を探すことだと思う。

 

 

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また顔を出した安倍

2022-02-27 17:05:33 |  自民党改憲草案再読

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/301826

日刊ゲンダイに興味深い記事があった。
私が注目したのは、この部分。
↓↓↓↓↓↓
 安倍元首相は25日、衆院議員会館で開かれた会合で「(ウクライナ侵攻は)台湾に対して中国がどのような対応をとるかを占う意味で日本にとっても深刻な事態だ」と指摘。
↑↑↑↑↑
安倍の視点は、ロシア、中国がどう対応するかという点からのものだが、これは逆に読むべきだろう。
アメリカの世界戦略(NATO、開かれた太平洋)がどう展開するか。
ロシアはいま世界中から批判されている。そしてアメリカがNATOへ軍隊を派遣し、ロシアが撤退するということになれば、アメリカは次に台湾との軍事関係を強化してくるだろう。
名目はもちろん「台湾の民主主義を守る」である。
安倍は台湾の民主主義などどうでもよく、ただ中国と戦争をしたいがために「台湾有事」を利用するだろう。
日本が「台湾有事」に参戦すれば、アメリカはわきに引いて中国と日本を戦わせ、日本に軍備を次々に買わせるだろう。
いまNATOのヨーロッパだ起きつつあることは、やはり、それだろう。
アメリカは、ベトナムでも、イラクでも、アフガンでも軍事支配に失敗した。
ウクライナでは、なるべくアメリカは参戦せず、ヨーロッパ諸国の参戦を促すだろう。
そこで成功(?)すれば、次は台湾である。
安倍の言っていることは、こう読み替えるべきである。
↓↓↓↓↓↓
 ロシアのウクライナ侵攻に対するNATOの行動、その結果は、アメリカが台湾に対してどのような工作をし、中国を「有事」に誘い出すかを占う意味で重要である。国際世論を中国への批判に集中させる作戦が成功するかどうかを占うことにもなる。もし「台湾有事」が起きたとき、そのとき日本はどう行動するのか、NATOの行動が参考になるはずだ。ウクライナの状況は日本の将来を占う意味で、とても重要だ。
*
いまのところ、ウクライナの状況は、アメリカの「作戦勝ち」である。
NATOの拡大路線(アメリカの世界戦略の一環)には何も触れず、プーチン批判に的を絞って、国際世論をリードしている。プーチンの資産凍結という作戦が、それを端的に物語っている。
アメリカは、ウクライナの国民が何人犠牲になろうが気にしていないだろう。ベトナムでの犠牲者が何人になったのか気にしないように。
ウクライナは、日本から遠い。だから、その「状況」を知っている日本人は少ないが、私の想像では、ウクライナはヨーロッパ諸国にとっては、日本における台湾のような位置を占めているだろう。
いつでも、ウクライナからロシアを攻撃できる。そして、そのとき戦うウクライナ人は、他のヨーロッパ諸国からみれば、よりロシアに近い。(ロシア語を話す国民が多数いる。)
「台湾有事」が発生したとき、まず犠牲になるのは台湾のひとであり、台湾のひとというのは日本人でもアメリカ人でもない。中国人だ。
アメリカや日本、そして他の国が「台湾有事」に参戦するとしても、そのとき一番犠牲になるのは台湾にいるひと(中国人)だ。
私はウクライナのことは何も知らないが、ウクライナをヨーロッパの「台湾」と位置づけると、いま起きていることの深刻な問題がわかる。
プーチンが敗北し、ウクライナがNATO に加盟すれば問題が解決するわけではないだろう。
台湾が中国から独立し、アメリカと台米国安保条約(日米安保条約のようなもの)を締結し、台湾が沖縄のようにアメリカのアジア最前線基地になれば、どうなるのか。
そのことを考えないといけない。

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ウクライナとロシア

2022-02-27 10:38:16 |  自民党改憲草案再読

 ウクライナとロシア。
 ウクライナの国民の命がどれだげ犠牲になるのか、ウクライナの政治体制がどうなっていくのか心配だが、それはロシアがウクライナを制圧するか、ウクライナがロシアを撃退し、自立を守るかというだけにとどまらない。
 私はとても自己中心的な人間だから、どうしても自分の「位置」が気になる。日本がどうなるかが気になる。
 ロシアがウクライナに侵攻した理由を私は明確に把握しているわけではないが、NATOの拡大路線と関係があると思う。ウクライナはロシアの影響下から自立するためにNATOに接近し、NATOもそれを受け入れようとした。これにロシアが反発した、というのが基本的な構造だと思う。
 このNATO対非NATOは、ヨーロッパだけの問題か。日本にも非常に影響があるのではないか。NATOの背後にはアメリカがある。アメリカの世界戦略がある。
 同じことが、アジアでも起きないか。いや、すでに起きているのではない。
 アンチ・アメリカのアジアでの大国は、中国である。中国には台湾問題がある。台湾は中国にとってはウクライナに似た存在だろうと思う。いや、ウクライナ以上に、深い関係にあるだろう。だいたい国連でも「中国はひとつ」という認識である。台湾は中国の一地域である。日本政府もその立場であるはずだ。その台湾に中国が侵攻する恐れがあるとアメリカは言い募っている。台湾の軍とアメリカ軍が共同訓練をしたというニュースもあったと思う。台湾を守るために、アメリカ軍が台湾を支援する。これは、NATO(アメリカの世界戦略)がウクライナを支援するという関係とそっくりではないだろうか。
 つまり。
 アメリカ軍が台湾の軍隊と連携を強化するからこそ、中国はそれを阻止しようとして台湾ににらみをきかせているというのが、いまのアジアの現状ではないだろうか。また、この、中国一辺倒のアメリカの戦略に対して、「私の国もアジアの国である、アジアの安定に欠かすことのできない存在である(だから、援助しろ)」と自己主張しているのが北朝鮮ではないのか。
 そして、このアメリカの台湾支援(?)は、台湾の人々を守るというよりも、台湾の経済態勢(資本主義)を守るということと関係していないか。国民の自由というけれど、本質は資本家が金儲けをできる自由を守るということだろう。金の力で人間を支配したいという欲望(鐘の力で人間を支配できるという世界観)が動いているのではないのか。武器をつかった軍事支配争い(戦争)と違い、金による支配(貧富格差の固定)は直接的には人のいのちを奪わない、自由を拘束しないようにみえるが、ほんとうにそうかどうかは考えてみないとわからない。
 アメリカの世界戦略(資本主義による支配)とどう向き合うか、という問題を抜きにして、世界の平和のことを考えるのは、どうも危険なことではないのか。アメリカの世界戦略、アメリカの主張に世界が従うというのは、危険なことではないのか。アメリカ軍が世界を支配してしまえば、「軍事対立/戦争」は起きないかもしれない。しかし、そのとき人間の自由はどうなるのだろうか。アメリカ資本主義に支配されて、そのとき、私たちはほんとうに平等で自由でいられるのだろうか。資本家が世界の市民を支配する「軍事国家」になってしまうのではないのか。
 こういうことに対して、私は何ができるか。何もできない。
 ただ、NATOというよりも、アメリカの世界戦略には与したくない、と思う。
 プーチンの政策は間違っている。しかし、プーチンだけが間違っているのではないと思う。プーチンに間違いを起こさせる動きもまた、間違っている。軍隊による安全確保という動きそのものが間違っている。プーチンを批判するとき、同時にNATOを拡大しようとするアメリカの姿勢も批判しない限り、この戦争に終わりはない。
 もしプーチンのロシアがNATOに敗北するという結末でこの戦争が集結するなら、つづいて台湾で同じことが起きるだろう。いわゆる「台湾有事」が起きるだろう。日本はそのなかに、ウクライナ問題以上に巻き込まれていくだろう。そして、ある人々は、「巻き込まれる」だけではなく積極的に参入できるように日本国民を駆り立てるだろう。
 そのための動きが、すでにはじまっていないか。
 プーチン批判一辺倒の報道を見ていると、とても心配になる。

 また今回のウクライナ、ロシア問題は、アメリカ軍のアフガン撤退ともどこかでつながっていないか。アメリカはアフガンを思いどおりに支配できなかった。アメリカの戦略に合致した政権を樹立できなかった。だから、他の国へ目を向けた。アメリカの戦略に合致した国を増やそうとした。アフガンのかわりに、ウクライナを。そういうことは考えられないか。アメリカは戦争なしでは生きていることを感じられない国なのだ。武器を売り、金儲けをし、金の力で世界を支配しようとしている。その動きをとめないかぎり、さまざまな衝突が起きるだろう。経済格差への怒りからテロを考えるひとは、さらに増えるだろう。

 

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「敵基地攻撃」改称論

2022-01-30 09:56:05 |  自民党改憲草案再読

 読売新聞の政治面。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220129-OYT1T50255/ 

「敵基地攻撃」改称論…自民「反撃」「打撃」案、公明「先制と誤解も」
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 なぜ「改称」なのか。なぜ「ことば」なのか。
 この問題は、よく考えてみないといけない。「戦争法」のとき「集団的自衛権」ということばが飛び交った。そして、そのことばは、多くの人によって、次のように誤解された。「日本が中国や北朝鮮から攻撃されたら、日本だけでは対抗できない。アメリカの協力だけでも不可能だ。近隣諸国と共同して(集団になって)日本を守る(自衛する)しかない。集団的自衛権は、日本にとって重要な防衛政策である」。
 これは「日本の自衛隊が集団的自衛権を行使する」という文脈を無視している。つまり「集団的自衛権」の「主語」が「自衛隊」であることを忘れた論理である。しかし、この「主語」をぬきにした論理、主語を「近隣諸国」にすりかえた論理が、安倍を支持するサイトで横行した。
 「集団的自衛権の主語は自衛隊」と説明しても、だれひとり納得しない。「集団」も「自衛」も誰もが知っていることばである。その知っていることばを自分の知っている定義で組み立て直して理解する。政治家は、その「国民の日本語能力」を利用する。
 今回の場合、どうか。

 「敵基地攻撃」。「敵」も「基地」も「攻撃」も知っている。敵は中国、北朝鮮。基地はミサイルを配備している場所。攻撃は、ミサイルを打ち込むこと。つまり、中国や北朝鮮のミサイルに向けて日本がミサイルを発射するのが「敵基地攻撃」である。どこにも間違いがないのだが、これでは「自衛」の感じがなくなる。「自衛」の感じを出さないと、国民に受け入れてもらえないのではないか、と心配しているのである。
 「戦争法」では「集団的自衛権」が絶大といっていいほどの効果を上げた。名称が「日米共同戦争権=アメリカが攻撃されたら、いつでもどこへでも自衛隊を派遣し戦争できる法律)」だったら、国民の受け止め方は違っていただろう。
 自民党の一部や公明党が狙ってるのは、どうやって「自衛権」の要素を盛り込むか。どうすれば国民の目をごまかせるか。そのための「ことば探し」である。

 記事にこう書いてある。

 政府・与党内で、敵のミサイル発射基地などを自衛目的で破壊する「敵基地攻撃能力」の呼称見直しが、能力保有に向けた議論の焦点の一つに浮上している。特に、保有に慎重姿勢の公明党には、国際法に抵触する恐れのある「先制攻撃」と混同されかねないとの懸念が強い。
 公明の北側一雄副代表は27日の記者会見で、「もっと違った表現にしてもらいたい。言葉として、『敵基地』も『攻撃』もふさわしくない」と述べた。
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 「自衛目的」と、まず書いている。「自衛目的」なら何をしてもいいという感じを出すための工夫をしようとしている、ということである。まあ、これは、「戦争法」が問題になったとき「創価学会の女性たちが戦争法に反対している」をアピールしたのに似ている。なんとしても「戦争に反対している党」をアピールしたいというだけであって、戦争に反対というわけではないのだ。(反対アピールしただけで、創価学会の女性たちが、自民党、公明党以外の党に投票したかどうかは、結局はわからない。わかっているのは公明党が議席を減らさなかったということだけである。)戦争に反対している(戦争反対という意見は持っている)とアピールするけれど、戦争には賛成というのが公明党(創価学会)の「戦略」なのである。

 問題は。

 こういうとき、こういう「事実」をどう報道するかである。読売新聞は、ただ「こういう動きがある」とだけ書いている。「こういう動き」に対して、読売新聞はどういう立場をとるのかを書いていない。事実を伝えるために、どういうことばを選択するか、という姿勢を示していない。
 政府がつかえば、それをそのまま正確にコピーして伝える、というだけだろう。
 これは平成の天皇の「生前退位」報道のときとおなじである。誰が、何のために「生前退位」という「造語」を生み出したのか。(平成の皇后が、誕生日の談話で「生前退位」ということばを聞いたことがない、と語ったために、「生前退位」という表現を思いついた人間が特定されそうになった。そのため、あわてて「生前退位」ではなく「退位」という表現に切り換えた。まず読売新聞が、その先陣を切った、ということを絶対に忘れてはいけない。)
 「ことば」には「ことばを選択する」ときの「意思」がある。その「意思」にまで踏み込んで「ことば」を見つめないといけない。
 いま見つめなければならないのは、「敵基地攻撃」を「改称」することで、ほんとうに狙っているのは何か、ということである。
 私は、次の部分に注目した。
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 北側氏には、近年は移動式発射台や潜水艦からのミサイル発射が可能となっていることに加え、ミサイル攻撃だけが脅威ではないため、標的は「敵基地」に限らないとの思いがある。
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 「ミサイル基地攻撃だけではダメだ」と、ほんとうはいいたいのだ。つまり、もっと軍備を増強する必要がある。「移動式発射台や潜水艦からのミサイル発射」に対抗するために、日本も「移動式ミサイル発射台」や「ミサイル発射ができる潜水艦」を導入すべきだという方向へ論を展開したいのだ。
 そういう方向へ論を展開していくために、自民党は公明党を利用しているし、公明党はそれを知りながら自民党の「お先棒担ぎ」を嬉々としてやっている。「反戦公明党」をアピールしながら「戦争大好き公明党」を隠せる絶好の機会だからだ。「戦争法」のときとおなじだ。
 そして、この背後には。
 国民への配慮なんかは、まったく、ない。アメリカの軍需産業を儲けさせ、その見返りに「日本の国会議員」でありつづけるという「保身」の思いしかない。
 いったん戦争がはじまれば、極限状況に達するまで、戦争は終わらない。沖縄、広島、長崎だけではない。第二次大戦後のアメリカのかかわった「戦場」を見れば、すぐにわかる。どんな戦争も「自衛」を名目にはじまり、「反撃」を名目に拡大していく。「改称」するなら、そういう事実を隠すのではなく、もっと明確になるように改称すべきなのだ。
 自民党が進めているのは「敵基地攻撃」能力のアップではなく、「敵攻撃誘発」システムの完備なのである。日本が軍備を増強すればするほど、敵(中国、北朝鮮?)は日本の基地を攻撃するための準備を進めるだろう。名目は、やはり「自衛」なのである。日本から侵略されないために。なんといっても、日本は中国や北朝鮮に侵略している。「自衛力/防衛力」を増強しようとするのは当然のことだろう。
 侵略戦争への反省と、その戦争に関する近隣諸国との「共通認識」を形成するということからはじめないと何も解決しない。アメリカの手先になって、というか、アメリカの言うがままにアメリカの軍需産業に金をつぎ込み、国民は貧乏を強いられるだけだ。

 それにしてもなあ。
 こんな記事を嬉々として書いている読売新聞が信じられない。
 「敵基地攻撃」が「敵基地反撃」に改称されたら、読売新聞が報道した通りになった、とはしゃぐつもりなのか。読売新聞が報道したから「敵基地反撃」になった、そして国民が納得できるものになった、読売新聞は世論をリードする新聞である、というつもりなのかもしれない。

 

 

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