詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(90)

2020-08-12 10:18:56 | 嵯峨信之/動詞
* (秋の葉を一枚一枚縫うようにして)

ぼくに何を教えようというのか
わたしは人生にうとい

 「ぼく」が次の行で「わたし」にかわる。そして、この「うとい」は次の行で、こう言い直されている。

樫の大木に蝶たちが疎いように

 「疎い」の主語は、蝶。蝶が「わたし」であり、「人生」は「樫の大木」である。単なる樫ではなく「大木」。
 これは「秋の葉」の「一枚」に対応している。
 一枚の葉と大木は関係はあるが、その関係に「自覚」があるかどうかは、わからない。たぶん「うとい/疎い」とは自覚のことなのだ。その「自覚のうとさ/疎さ」が「ぼく」と「わたし」という呼称のずれのようなものに象徴されているということか。





*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
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嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(87)

2020-08-05 15:24:41 | 嵯峨信之/動詞
* (想像力がとらえていた銀色の小鳩だが)

眼のなかを十字に飛び廻つている

 「十字に飛び廻つている」が私には想像できない。「十字」の水平方向は右から左、左から右でも、あまり違いを感じないが、垂直方向は下から上へと上から下へではまったく印象が違う。上昇と、墜落。
 「異界」を飛んでいるのだろうか。




*

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嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(86)

2020-08-03 09:53:14 | 嵯峨信之/動詞
* (永い時間)

歩きつづけていたので少し疲れた そしてもとめつづけていたものが何かまだわからない
ただ遠いという世界だ

 「つづけていた」が二回くりかえされる。「つづける」が「永い」を生み出す。そして「遠い」をも生み出すのだ。
 つづけなければたどりつかないというよりも、つづけなければ「遠い」は存在しない。「永い」と「遠い」を組み合わせると、「永遠」になる。求めているものは「永遠」なのだが、「永遠」の定義は、きっと「つづける」という動詞のなかに隠れているのだろう。


*

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嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(61)

2020-05-31 22:06:25 | 嵯峨信之/動詞
月の出に泳ぐ女

一日のひろい布を縫うために
ぼくの心からぬけだした女が泳いでいる

 海を「一日のひろい布」と言い直し、「縫う」を「泳ぐ」という動詞で言い直す。二行の中で比喩が交錯して、世界を立体的にする。
 その間にはされまた「ぬけだした(ぬけだす)」という動詞の動きがおもしろい。
 「縫う」と「閉じこめる」につながる。
 ここには、だから「矛盾」があるのだが、矛盾があるために、イメージが固定化されない。いきいきと動く。




*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(100)

2019-08-30 09:32:46 | 嵯峨信之/動詞
* (--そうだ)

ぼくは川霧の中から詩のFormを探してこよう

 詩のことばではなく、「Form」と嵯峨は書く。突然あらわれたこの外国語を私はどう読んでいいのかわからない。

ぼく自身を忘れなければならない
知識を 経験を
愛を
憎悪を

 これは「詩のFormを探してこよう」を言いなおしたものだろう。「ぼくを忘れる」ための方法である。「ぼくを忘れる」とは、新しく生まれ変わると言いなおせるだろう。
 知識も経験も愛も憎悪も、いままでとは違う形として生み出す。嵯峨は、その方法を自分を捨てるということのなかに見つけようとしている。日本語を「外国語」のように、新しいものとしてとらえようという「意味」をこめて「Form」ということばをつかったのかもしれない。







*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(99)

2019-08-29 08:09:29 | 嵯峨信之/動詞
* (一対-無数)

一からながれでる透明なピアニシモはとどまるところがない

 「とどまるところがない」の強さに打たれる。
 このときの「ところ」というのは、文法的には何というのだろうか。「ところ」というと「場所」のようだが、「場所」を超えた次元を指しているように思える。「こと」というのに似ているし、「とき」というのにも似ている。いや、そういう「名詞」で言いなおすよりも、「ところ」ということばから引き返すようにして、動きつづける「運動」そのものをあらわしているように感じる。
 「とどまる」自体は「動かない」のだが、それを否定することによって、おさえようとしてもおさえようとしても、内からあふれてくる運動。
 「一」と「無数」が対比されているように、「ながれでる」と「とどまる」が拮抗して、「動き」そのものが「具体的な力」になっている。





*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(98)

2019-08-28 08:19:49 | 嵯峨信之/動詞
* (小さな港に出た)

ここに来て
海の隅に
緑が休んでいる

 「来て(来る)」「休んでいる(休む)」の「主語」は何か。海の「緑(色)」が港に来て、その港の隅で休んでいる。何もしないで、ただ緑(の色)のままに、そこにある、ということか。
 海はどこまでもつながっている。そのつながりのなかで、つながりから隠れるようにして、そこにある緑。
 それは嵯峨の自画像だ。
 書き出しの「小さな港に出た」の「出る」という動詞がとても興味深い。港に来ようとしていたのではない。歩いていたら港に出会ったのだ。「出会い」の「出る」なのだ。
 それは隠れていた自分自身との「出会い」でもある。

 「油津港」という註釈がついている。





*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(97)

2019-08-27 08:50:56 | 嵯峨信之/動詞
* (晴れた日はどこへも行くところがない)

立つたまま 水晶になり 霧になり 鶏頭の花となつて
黙つて立つている

 「立つたまま」「立つている」と繰り返される。書かれていないが「座る」と対比されている。「立つ」と視線は高い。つまり、遠くまで見える。遠くを、ここではないところを見たいから「立つ」のである。
 それを強調するのが「黙る」である。意識を集中するために「黙る」。
 「黙つて立つている」は「黙つたまま立つている」である。引用の一行目と二行目は「まま」ということばで強くつながっている。








*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(96)

2019-08-26 08:34:20 | 嵯峨信之/動詞
* (旅びとは)

行く
ただ行くだけだ

 と「行く」が繰り返される。この「肯定」は「自画像」にも見えるが、そうではない。

かつて立ちどまつたことはなく
帰つてきたこともない

 すぐに二つの「否定」があらわれる。
 この「肯定」と「否定」を比較するとき、嵯峨の重心は「否定」の方に傾いている。「意味」は「否定」の方におかれている。その「意味」は最終行で結晶する。

そのひとは父であつた







*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(95)

2019-08-25 10:25:47 | 嵯峨信之/動詞
* (言葉からぬけ落ちた小さな仏の子を)

湯浴みさせ 名をつけよう
裸のままもう歩きだそうとする

 「名をつける」は美しい動詞だ。名前がなくても「仏の子」は存在する。もしかすると生まれたときからすでに名前を持っているかもしれない。それでも、「名をつける」。
 その存在に、そうやって近づいていく。「名をつける」ことは「関係する」ということだ。そして、それは一方的な働きかけではない。「名をつけ」たそのときから、「仏の子」から何かが返ってくる。
 嵯峨は「名」を呼びながら、「仏の子」が歩きだす方向へと追いかけていく。









*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(94)

2019-08-24 09:46:06 | 嵯峨信之/動詞
* (一方から他方へ)

ぼくを移動させる透明な車がある

 「透明な」は「見えない」。「ある」は嵯峨が「ある」という状態にさせている。想像力が「ある」を生み出す。

どこにもない国へつれていつてくれる〈時の車〉だ

 「時の車」ならば、つれていくのは「どこ」というよりも「いつ」になる。「時」はふつう過去から未来へうごいているととらえられている。しかし嵯峨の「時の車」は「過去」や「未来」へゆくわけではない。「どこにもない」時間へと嵯峨を連れて行く。
 「時」がある方向へ(一方から他方へ)動く前の「時」という概念のなかへ。







*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(93)

2019-08-23 09:15:58 | 嵯峨信之/動詞
* (未知のあいだに愛がかくれている)

 「未知のあいだ」は矛盾に満ちたことばである。「未知」は知られていない。「あいだ」はどうやって認識するのか。
 「未知」そのものの「あいだ」なのか、「未知」と「既知」の「あいだ」なのか。後者だろう。

だれの口からも漏れない愛の言葉がある
石が知つている

 「だれの口からも漏れない」なら、それは「他人」には「未知」のことばである。でも自分は知っている。その知っていることを「石」にあずける。そのことを知っているのは、嵯峨だけだ。







*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(92)

2019-08-22 16:29:54 | 嵯峨信之/動詞
* (ぼくをたずねあぐねて)

〈時〉はしだいにぼくから遠ざかつていつた

 「ぼく」ではなく「時」が主語。「時」には「過去」「現在」「未来」と三つの時制がある。嵯峨は、そういう「物理的」な時間ではなく、時間という「抽象的概念」そのものが「遠ざかつていつた」と言っているのだろうか。
 だから、

一枚の枯れ葉が
ぼくの眼のなかを漂う

 と「一枚の枯れ葉」という具象が「時」にとってかわる。もちろん「枯れ葉」は比喩であるが、逆に「枯れ葉」の比喩として「時」が描かれているとも読むことができるだろう。







*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(91)

2019-08-21 11:47:04 | 嵯峨信之/動詞
* (ぼくが引き返すのは)

知識の戸口に立つたときだ
その向うにある厖大な世界がぼくを芥子粒のように呑みこんでしまう

 この詩は「知るということの遠さは」で始まる詩のつづき、あるいは言いなおしになる。二連目は、こうつづく。

目眩がしてひきかえした
小屋のうらの草むらで蟋蟀がないている

 「知識」と「蟋蟀(自然)」が対比されている。
 「知識」を突き破っていくという方法もあるのかもしれないが、嵯峨は敗北を選び取る。自然の、あるがままという「智恵」へ帰る。「あるがまま」という自然へ帰る。







 


*

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嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(90)

2019-08-20 07:54:25 | 嵯峨信之/動詞
* (知るということの遠さは)

もはや読むことでも歩くことでもたどりつけない

 このとき嵯峨は「知る」という動詞をどう把握しているのか。
 「知る」と「読む」をどこかで結びつけている。読んで知ったことを「知識」というかもしれない。ここでは「頭」が動いている。
 一方、遠さを「歩く」という動詞でとらえている。「肉体(全身)」が動いている。肉体で「遠さ」を「たどりつけない」ととらえなおしている。

失つたものが日を浴びてきれいな列となつて並んでいる

 これは「目」で見ている。「目」は「読む」に通じるかもしれない。「見る」である。このとき「肉体(全身)」は動いていない。
 嵯峨は「精神」で苦悩する。「肉体」では苦悩しない。





 


*

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