ナボコフ「悪い日」(「ナボコフ短篇全集Ⅰ」作品社)
主人公の少年が親類の家で出会った少女に恋こころを抱く描写。
恋こころを、空想そのものとして描く――この描写に「詩」がある。
少年が少女に対してどう思ったかではなく、どう思われたいか――という描写の中に、今の少年と空想の中の少年の間に「断絶」が見えて来る。その「断絶」が「詩」である。
「詩」は現実であり、同時に現実ではない。現実に急激に割り込んでくる「真実」である。
主人公の少年が親類の家で出会った少女に恋こころを抱く描写。
彼がターニャ・コルフにはじめて会ったのもこのときで、それ以来よく彼女のことを考えるようになり、追い剥ぎもどきから彼女を救う自分の姿や、加勢に駆けつけたヴァシーリイ・トゥチコフが彼の勇気を一心に褒めそやす光景を想像したりした。
恋こころを、空想そのものとして描く――この描写に「詩」がある。
少年が少女に対してどう思ったかではなく、どう思われたいか――という描写の中に、今の少年と空想の中の少年の間に「断絶」が見えて来る。その「断絶」が「詩」である。
「詩」は現実であり、同時に現実ではない。現実に急激に割り込んでくる「真実」である。