2021年07月07日(水曜日)
高柳誠『フランチェスカのスカート』(13)(書肆山田、2021年06月05日発行)
「画家」。
ぼくはとりわけ版画
が好きだ。この世界からあえて色を抜き去り、線の力だけで白と黒
の世界に還元する。
「還元する」という動詞のつかい方が独特である。世界はもともとは色がなかったのか。世界には最初から色がある。そうだとすると「還元する」という動詞のつかい方は、間違っていることになる。もし「還元する」という動詞をこのようにつかうことが正しいとするならば、高柳の世界は、線と白と黒だけで構成されていたことになる。
詩は、こうつづいている。
なんという魔法だろう。対象となった風景にし
ろ人物にしろ、色彩を奪われてもなお、いや奪われたからこそ、幻
想のうちに鮮明な色を得て生き生きとした生命をおびてよみがえる。
「幻想のうちに鮮明な色を得て生き生きとした生命をおびてよみがえる。」それは「鮮明な色を得て生き生きとした生命をおびて幻想がよみがえる。」ということか。「幻想」正しい世界であり、「現実」は間違っている。
この認識が「版画」のように反転しているのが高柳の世界か。
こういうことは、論理的につきつめていくとおもしろくない。いま私が書いたことは、論理的にどこか間違っていないか、という疑問を残したままに放置しておいた方がいいだろう。
私が注目するのは、「色彩を奪われてもなお、いや奪われたからこそ、」という反語的な繰り返しである。「反語」によって意味を強める。そういう「文体の癖」が高柳にはある。
「反語」の「反」は「版画」の「版」とは文字が違うが、音は重なる。そして、
版画には左右が反転するという、印刷と同じ原理
が働いている。
とあえて書いているところをみると、「版画」とは「反転画」の省略形のようにも見えてくる。高柳は「反画」と書きたい欲望を抱えているのではないだろうか。
詩の最後は、
版からは想像もつかない豊かな世界が、線
がもつ生命力だけで立ち上がってくる刷り上がりの瞬間は、息がつ
まるほどドキドキしてしまう。
と閉じられるのだが、「版からは」ではなく「反からは」と読み直したい衝動に、私は襲われるのである。
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