お金を送金してくるだけで家に戻らない父。留学先から戻ってくることのない弟。介護が必要な母を施設に預けることなく一人面倒を見る青年。
大家族の中でお年寄りや子供の世話を見ていた時とは違う。お金を払えば、施設にも入れる。お金があればヘルパーの人も頼める。生活するための選択肢は確実に増えているはずなのに、彼らはその中から自分のいいと思われる道を選んだはずなのに、幸せそうには見えない。皆自分の選んだ選択肢に捕らわれ、相手の選択肢を受け入れることも出来ず、ただ苦しむのみだ。
やり直しを望む青年を、周囲の人は遠巻き気に見るだけだ。自分の生活も何か一つ歯車が狂えば、あっという間に崩れていく危うさを感じているからだろうか。皆、自分の今の生活を守るために必死で、やり直しをしようとする人を受け入れる余裕もない。青年を排除することで自分の生活を守ろうとするのだ。
誰にも少しも余裕がないのだ。他者を排除することで自分の余裕の中を守ろうとする様子が切ない。
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見終わった後、自分も誰かを受け入れる余裕がなく、排除することで自分の中でバランスを取っていることに気づき、更に切なくなる。
英語タイトルは@MAD WORLD
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追記
初日の鑑賞プレゼントは麻婆豆腐の素だった。あの脇屋シェフの麻婆豆腐の素なので、私でも素敵な味が出せる事だろう。
映画の中で麻婆豆腐を食べるシーンがあるのかと思ったが、気づかなかった。親子二人で持ち帰りのぶっかけごはんを食べるシーンが何度かあったのだが、その中身が麻婆豆腐だったかどうかは分からなかった・・・