1982年生まれの女性、キム・ジヨン。
不本意な差別と認識する前から、現実として立ちはだかる壁の数々。女性として生まれたことだけが理由の壁を、不思議に不本意に思いながらも、やり過ごしていくしかない日々。
母も家族も労ってはくれるものの、解決策を示してくれるわけでもない。選択肢を増やしてくれるわけでもない。
壁など気にしないかのように過ごす日々の中で、心の中にたまった澱が、ある時堰を切ってあふれ出す。ある時は実母の声で、ある時は友人の声で・・・・自己防衛とも思える、他者の言葉で自分の思いを伝えようとする様子に胸が詰まる。
本は明確は解決策を示してはくれない。話は現在形で続いていくかのようだ。
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小説というより、新聞の特集記事を読んでいるような気分になる。「プライバシー保護のため詳細は少し変えていますが、ほぼ事実です。」というコメントがどこかに見えるような気がする。
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この本を読みながら、私も忘れたつもりになっていた昔の色々な事を思い出した。
「女の子なのに男勝りで困ります」と書かれた小学校の通信簿の言葉。
「点数は、女性は一律7掛けにするから。男性は項目によって加点があります。」と注意を受けながら、作成した人事評価一覧表。
「30過ぎても結婚出来ず、子どもも生まないで仕事をしている女の人の事を、本当は惨めだと思っているんだよ。皆、遠慮して本当の事は言わないから・・・・僕は君の事を思って教えてあげているんだ」と真顔で私に忠告してくれた知人男性。
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