大学入試を目前にした中国のある高校。生徒たちの机の上には参考書がうず高く積まれ、成績が発表になると、それに合わせて席順も変わる。そんな毎日が大学入試のためにあるような高校生活の中、いじめを苦にした一人の女子高生が校舎から身を投げる。
校庭の中に倒れた彼女に、同級生たちの携帯が興味本位で向けられる中、一人駆け寄り、自分の上着をかける女子高生。
そんな一つの行動から、虐めの対象は簡単にその彼女に移っていくのだ。成績のいい彼女は、同級生たちの嫉妬も混じった感情のはけ口となり、いじめという言葉では済まされないような暴行を受けるようになる。
娘との生活を守るため怪しい商売に手を出す母に娘を助ける余裕などない。そもそも誰かに助けを求めれば、その行為が更なる暴行の理由になっていくのだ。
そんな中、道端で暴行を受ける不良少年を成り行きで助けることになる彼女。そんな偶然が、お互いに頼る人のいない二人を近づける事になるのだ。
今の生活から抜け出すために「いじめも生活苦も、受験に成功し、北京に出ればすべて解決する」と切に願う彼女。あと、少し、試験まであと少し・・・そんな風に毎日を過ごすも、犯罪のようないじめは止むことはなく、同じように行き場のない少年と二人寄り添って毎日を過ごすようになる彼女・・・
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厳しい毎日の中、二人で過ごす日々はまるでおとぎ話のようでもある。お互いがお互いの守護天使のようになるストーリー展開を引っ張るのは、この二人を演じるチョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシーの演技だ。
しかしそんなおとぎ話のような日々が続くわけもない。本来ならもっと前に女子高生を助けなければならない警察官たちを前に、若い二人の見せる決意と行動は、チョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシー、この二人の演技があってこそ真実味を帯びてくる。警察官のやや偽善的な台詞や行動などを帳消しにする二人の演技・・・・
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映画冒頭と終盤にコメントが流れる。「学校ではいじめに悩む青少年がいる。学校でのいじめを撲滅するために、いじめに悩む若者を助けるためにどんな努力がなされているか・・・」
描かれたいじめは犯罪とも呼べる内容の物で、観客は、いじめおよびその背景にある問題も含めて自ら色々考えるはずだ。
ただ、わざわざつけられたこのコメントが無ければ、多分この映画の上映は許可されないのだろうとも思う。
このコメントが付けられた理由も含めて、この映画は非常に痛く重い。
アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート、『少年の君』予告編