「独ソ線の実態に迫る、定説を覆す通史 2020新書大賞第1位」という金色の帯に引かれて手に取った本だ。新書大賞第一位という単語につられての購入だったため、全部読んだものの、どんな風に感想を書いたらいいか分からずそのままにしてしまっていた。
ウクライナ侵攻の事が非常に気にかかり、今回改めてこの本を読み返す。
読み返す事により、当時読んだ時には読み飛ばしていただろう箇所が気にかかる。
今回のウクライナ侵攻に関し、ロシアは綿密な作戦を立てて侵攻しているということが何度もニュースで紹介されていたが、この独ソ戦 でも、軍経験者の粛清が続いているソ連の軍実力を過小評価し、不十分な作戦で戦闘に入っていたドイツ軍に比べ、地の利だけでなく、綿密な作戦を立ててドイツ軍に挑むソ連軍の様子が非常に詳しく語られている。私はその作戦の意味する事を半分も理解していないのだが、それでも綿密に作戦を立てているということは非常に良く分かった。多分これは脈々と今のロシア軍にも受け継がれていることだろう。
ウクライナの反撃を甘く見ていた事で今は苦戦をしているのだろうが、作戦をこのまま遂行していけば多分・・・ということはなんとなく分かる。
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この本は、ドイツがどのようにソ連に侵攻していったかを、地図で詳細に示してくれている。
ヒトラーは東方植民地帝国の建設を戦争の目的の一つに考えていたのだが、今のウクライナの首都のキエフはその東部総合計画としてドイツに占領される。ウクライナ第二の都市としてニュースで何度も名前を聞くハリコフは軍政地区の中に入っている。ドイツの青号作戦の渦中にハリコフがあるのだ。
ソ連はその後綿密な作戦によってドイツに占領された場所を少しずつ奪還していく。その場所はまさしく今のウクライナがある場所なのだ。作戦の説明と共に地図を見ていると、プーチンがソ連崩壊後、独立したウクライナの事を今でも自国と思っているのではないかということが簡単に想像できる。ウクライナが独立後歩んできた年月等は関係なく、「独ソ戦 の際に取り戻した土地を今また取り返し、西側との緩衝地帯にして何の問題がある」と本気で思っているのではないかと思えてくる。
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1933年に権力を握ったヒトラーは軍拡を続ける。財政は逼迫し、軍拡を続ける中で労働力は不足する。ヒトラーの掲げるナチズムの理念だけで戦争に向かっていったのではなく、資源や労働力の奪取を目的として戦争に向かっていったドイツ。
この本を改めて読むと、先日見た映画@ミュンヘン: 戦火燃ゆる前にや先日読んだ本@ベルリンに堕ちる闇がまた違った風に思えている。ヒトラーの存在は絶対だったかもしれないが、それ以外の複合要因についても色々考えて見たり読んだりしなければいけなかったなと思う。