具合の悪い母の治療費を稼ぐために賭博格闘技で金を稼ぐ青年マルコ。
フィリピン人の母と韓国人の父の間に生まれ、コピノとして差別を受けてきたであろう彼にとっては、生きていく為の選択肢は少ないのだ。
そんな彼の元に突然やって来た父の使いという韓国人弁護士の男性。金の工面の為に母をフィリピンに残して渡韓する事になるマルコだが、その前に突然現れるのは白いスーツを着こなし、常に満面の笑みを浮かべる若い男性。飛行機の中での挑発は単なる予兆でしかなく、マルコが弁護士の男性とともに父の元に向かうのを何故か笑顔を浮かべながら拳銃で阻止。
襲われる意味がわかっていれば覚悟も出来る。恐ろしいのは笑顔で意味もなく襲われる事だ。
父の元に送り届けるのがミッションという弁護士、そして常に満面の笑みを浮かべマルコを付け狙う男(貴公子?)から彼を守る女弁護士。
弁護士の彼らは誰かに雇われ、何かの目的をもってマルコに近づいてきている事は分かる。ただ、カーチェイス中も、銃弾が飛び交う中でも満面の笑みを浮かべて、マルコに近づき、マルコを挑発する白いスーツの貴公子の目的は何も分からない。金が目的なのか、復讐が目的なのか、理由を明かさず、満面の笑みを浮かべたままマルコの後をついてくるその貴公子。
貴公子の笑顔に翻弄され意図が分からずに追い詰められるマルコと、韓国でマルコが来るのを待ちわびるキム・ガンウ演じる財団の理事、さらに弁護士でありながらとんでもない瞬発力を見せる女性と、これらの登場人物だけでも十二分に殺伐として陰湿なノワール映画だ。そこに一点の曇りもない軽めの笑顔で映画の雰囲気を完全に掌握するキム・ソンホ演じる貴公子。
韓国映画らしい重量級の痛さが感じられる場面はキム・ガンウ演じる財団の理事にまかせ、キム・ソンホ演じる貴公子は部外者然とした軽さと満面の笑みでその場の空気を支配する。
一点の曇りも躊躇もなく拳銃を討ち続ける姿はどこか突き抜けた様子あり。