昨年末頃から日経などメディアが、「日本GDPドイツに抜かれて第4位に転落」というニュースを報じていた。
15日の夕方7時のNHKニュースで詳しく報じていたので、考えてみたい。
日本の去年1年間の名目GDPは、平均為替レートでドルに換算すると4兆2106億ドルだったが、一方、ドイツの去年1年間のGDPは、4兆4561億ドルと日本を上回った。
日本の経済規模は、1968年にGNP=国民総生産で当時の西ドイツを上回って、アメリカに次いで世界2位とった。その後、2010年にGDPで中国に抜かれ、世界3位が続いていたが、去年、人口がほぼ3分の2のドイツに逆転され、4位となった。
1993年にGDPが500兆円を超えてから、それ以降30年間も500兆円台をアップダウンしていて、殆ど成長せずに低迷し続けている体たらくであるから当然である。
日本では1990年代にバブル経済が崩壊して以降、長年にわたって低成長やデフレが続き、個人消費や企業の投資が抑えられてきた。
また、円安ドル高の影響で、日本のGDPをドルに換算すると目減りすることや日本に比べて物価上昇率が高いドイツは名目のGDPの伸びがより高くなることも影響した。と言うのである。
それでは、なぜドイツに抜かれたのか?
NHKは、3つの要因を挙げて、次のように報じている。
【円安と物価上昇】
要因の1つは、為替相場と物価上昇率の影響。
円相場は2011年には一時、1ドル=75円台をつける円高水準だったが、去年は平均で1ドル=140円台まで値下がりしていた。円安が進むとGDPを円からドルに換算する際、目減りすることになる。
また、名目GDPは物価の変動に左右される。ドイツでは去年、物価の変動を除いた実質のGDPの成長率はマイナス0.3%だったが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあってエネルギーなどを中心に物価が高騰したことから、名目のGDPはプラス6.3%となった。
【生産性の低迷】
どれだけ効率的に製品やサービスを生み出すかを示す生産性の低迷も続いている。
日本生産性本部のまとめでは、日本の1時間あたりの労働生産性は、おととし2022年、OECD=経済協力開発機構の加盟国、38か国中30位。比較可能な1970年以降で最も低い順位となり、11位だったドイツに差をつけられている。
とりわけサービス業は、製造業に比べてデジタル化や省人化が十分に進んでいないと指摘されている。
また、政府が打ち出してきた成長戦略や構造改革もなかなか実を結ばず、国の経済の実力を表すとも言われる「潜在成長率」も伸び悩んだ。
【国内の消費・投資伸びず】
一方、日本では1990年代のバブル経済の崩壊以降、長年にわたって低成長やデフレが続いてきたことも今回の逆転の背景にあると指摘されている。
賃金が十分に上がらず個人消費が伸び悩んだほか、企業も国内への投資に慎重な姿勢を強めた。
「輸出大国」を支えた製造業では、貿易摩擦や円高の影響で海外向けの製品を現地生産にシフトする動きも進んだ。
日本の名目GDPのうち、「設備投資」の伸び率は、1988年にはプラス16.5%だったが、去年はプラス4.6%にとどまっている。
IMFが去年10月に公表した試算では、日本の名目GDPは再来年・2026年には、人口14億人のインドに抜かれて世界5位となる見通しとなっている。
日本では、今後、さらなる人口減少も予想される中、成長率の引き上げに向けて投資の拡大や生産性の向上にどう取り組んでいくのかが急務となっている。
日経もほぼ同様な記事で、
ドイツ経済は物価高がロシアのウクライナ侵攻以降長く続き、欧州中央銀行(ECB)の利上げもあって、23年は実質でマイナス成長と足元では振るわない。
一方で、自国通貨建てで長期の推移をみると、日本の伸びはドイツと比べて低く、日本経済の生産性の低さを映しているといえる。ドイツでは2000年代以降の労働市場改革が生産性を向上させ、ドイツ企業の競争力を高めている。と報じている。
さて、日本生産性本部の資料によると、経済成長に寄与する生産性要因との関係は、次表の通りである。
このうち、労働生産性上昇要因としては、少子化高齢化による人口減傾向があり、資本ストック増加率は投資の停滞が続いているので、経済成長への寄与は期待出来ない。
さすれば、労働生産性上昇には、全要素生産性の上昇率(伸び率)のアップであるが、
これは、技術革新・規模の経済性・経営革新・労働能力の伸長・生産効率改善など幅広い分野の技術進歩を指しており、日本経済のアキレス腱は、この分野の異常な遅れで、生産性の向上の足を引っ張っている。全要素生産性上昇率と資本装備率の上昇が停滞していては、労働生産性の上昇など期待出来ないのは当然で、経済成長など望み得ない。
実際の22年の1時間当りの労働生産性のの国際比較だが、次表の通りで、ドイツが87.2ドルで、日本は53.2ドルで、G7では最下位で、目も当てられないような惨状である。
ドイツでは、企業競争力を高めるために企業振興公社が輸出を支援したり、労働者に対する教育・支援を定期的に行いスキルの向上を図っており、更に、ドイツには研究資金・税法・イノベーションの促進・税の優遇措置というメリットがあるので国内で投資を続ける価値がある と言うのである。
日本政府は、どうであろうか。
新しい資本主義等と称して「成長と分配の好循環」を唱えているが、生産性を上げ得ずに何の成長か、
分配などはパイを大きくしてからの話である。
失われた30年の間に、経営革新等に成功して成長した日本の大企業が一体いくらあるのか、
優良企業のトヨタでさえも不祥事を起す日本企業の状態を思えば、経団連などで大口を叩く大企業の多くが、ゾンビ化したとしか思えない。
いずれにしろ、生産性をアップして経済を成長軌道に導くこと。生産性のアップ、これ以外に道はない。
人口減で成長が無理でも、全要素生産性上昇率と資本装備率の上昇で労働生産性を上げて国際競争力を涵養して経済の質を向上させることが重要である。
蛇足だが、為替レートが少し円高に振れれば、日独GDP順位が逆転する。
22年の購買力平価によるGDPは、日本が6,144.60、ドイツが5,370.29(単位: 10億USドル)、実質的には、まだドイツには抜かれていない。
いずれにしろ、一人当たりのGDPになるとドイツとは大きく差が開いていて、日本は、G7で最低水準であり、貧しい国に成下がっている。
こんな哀れな日本は、Japan as No.1の時代には想像できなかった。
特に情けないのは、今回の物価上昇による便乗値上げで、多くのメーカーが増益だという、この体たらく、救いようがない。
15日の夕方7時のNHKニュースで詳しく報じていたので、考えてみたい。
日本の去年1年間の名目GDPは、平均為替レートでドルに換算すると4兆2106億ドルだったが、一方、ドイツの去年1年間のGDPは、4兆4561億ドルと日本を上回った。
日本の経済規模は、1968年にGNP=国民総生産で当時の西ドイツを上回って、アメリカに次いで世界2位とった。その後、2010年にGDPで中国に抜かれ、世界3位が続いていたが、去年、人口がほぼ3分の2のドイツに逆転され、4位となった。
1993年にGDPが500兆円を超えてから、それ以降30年間も500兆円台をアップダウンしていて、殆ど成長せずに低迷し続けている体たらくであるから当然である。
日本では1990年代にバブル経済が崩壊して以降、長年にわたって低成長やデフレが続き、個人消費や企業の投資が抑えられてきた。
また、円安ドル高の影響で、日本のGDPをドルに換算すると目減りすることや日本に比べて物価上昇率が高いドイツは名目のGDPの伸びがより高くなることも影響した。と言うのである。
それでは、なぜドイツに抜かれたのか?
NHKは、3つの要因を挙げて、次のように報じている。
【円安と物価上昇】
要因の1つは、為替相場と物価上昇率の影響。
円相場は2011年には一時、1ドル=75円台をつける円高水準だったが、去年は平均で1ドル=140円台まで値下がりしていた。円安が進むとGDPを円からドルに換算する際、目減りすることになる。
また、名目GDPは物価の変動に左右される。ドイツでは去年、物価の変動を除いた実質のGDPの成長率はマイナス0.3%だったが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあってエネルギーなどを中心に物価が高騰したことから、名目のGDPはプラス6.3%となった。
【生産性の低迷】
どれだけ効率的に製品やサービスを生み出すかを示す生産性の低迷も続いている。
日本生産性本部のまとめでは、日本の1時間あたりの労働生産性は、おととし2022年、OECD=経済協力開発機構の加盟国、38か国中30位。比較可能な1970年以降で最も低い順位となり、11位だったドイツに差をつけられている。
とりわけサービス業は、製造業に比べてデジタル化や省人化が十分に進んでいないと指摘されている。
また、政府が打ち出してきた成長戦略や構造改革もなかなか実を結ばず、国の経済の実力を表すとも言われる「潜在成長率」も伸び悩んだ。
【国内の消費・投資伸びず】
一方、日本では1990年代のバブル経済の崩壊以降、長年にわたって低成長やデフレが続いてきたことも今回の逆転の背景にあると指摘されている。
賃金が十分に上がらず個人消費が伸び悩んだほか、企業も国内への投資に慎重な姿勢を強めた。
「輸出大国」を支えた製造業では、貿易摩擦や円高の影響で海外向けの製品を現地生産にシフトする動きも進んだ。
日本の名目GDPのうち、「設備投資」の伸び率は、1988年にはプラス16.5%だったが、去年はプラス4.6%にとどまっている。
IMFが去年10月に公表した試算では、日本の名目GDPは再来年・2026年には、人口14億人のインドに抜かれて世界5位となる見通しとなっている。
日本では、今後、さらなる人口減少も予想される中、成長率の引き上げに向けて投資の拡大や生産性の向上にどう取り組んでいくのかが急務となっている。
日経もほぼ同様な記事で、
ドイツ経済は物価高がロシアのウクライナ侵攻以降長く続き、欧州中央銀行(ECB)の利上げもあって、23年は実質でマイナス成長と足元では振るわない。
一方で、自国通貨建てで長期の推移をみると、日本の伸びはドイツと比べて低く、日本経済の生産性の低さを映しているといえる。ドイツでは2000年代以降の労働市場改革が生産性を向上させ、ドイツ企業の競争力を高めている。と報じている。
さて、日本生産性本部の資料によると、経済成長に寄与する生産性要因との関係は、次表の通りである。
このうち、労働生産性上昇要因としては、少子化高齢化による人口減傾向があり、資本ストック増加率は投資の停滞が続いているので、経済成長への寄与は期待出来ない。
さすれば、労働生産性上昇には、全要素生産性の上昇率(伸び率)のアップであるが、
これは、技術革新・規模の経済性・経営革新・労働能力の伸長・生産効率改善など幅広い分野の技術進歩を指しており、日本経済のアキレス腱は、この分野の異常な遅れで、生産性の向上の足を引っ張っている。全要素生産性上昇率と資本装備率の上昇が停滞していては、労働生産性の上昇など期待出来ないのは当然で、経済成長など望み得ない。
実際の22年の1時間当りの労働生産性のの国際比較だが、次表の通りで、ドイツが87.2ドルで、日本は53.2ドルで、G7では最下位で、目も当てられないような惨状である。
ドイツでは、企業競争力を高めるために企業振興公社が輸出を支援したり、労働者に対する教育・支援を定期的に行いスキルの向上を図っており、更に、ドイツには研究資金・税法・イノベーションの促進・税の優遇措置というメリットがあるので国内で投資を続ける価値がある と言うのである。
日本政府は、どうであろうか。
新しい資本主義等と称して「成長と分配の好循環」を唱えているが、生産性を上げ得ずに何の成長か、
分配などはパイを大きくしてからの話である。
失われた30年の間に、経営革新等に成功して成長した日本の大企業が一体いくらあるのか、
優良企業のトヨタでさえも不祥事を起す日本企業の状態を思えば、経団連などで大口を叩く大企業の多くが、ゾンビ化したとしか思えない。
いずれにしろ、生産性をアップして経済を成長軌道に導くこと。生産性のアップ、これ以外に道はない。
人口減で成長が無理でも、全要素生産性上昇率と資本装備率の上昇で労働生産性を上げて国際競争力を涵養して経済の質を向上させることが重要である。
蛇足だが、為替レートが少し円高に振れれば、日独GDP順位が逆転する。
22年の購買力平価によるGDPは、日本が6,144.60、ドイツが5,370.29(単位: 10億USドル)、実質的には、まだドイツには抜かれていない。
いずれにしろ、一人当たりのGDPになるとドイツとは大きく差が開いていて、日本は、G7で最低水準であり、貧しい国に成下がっている。
こんな哀れな日本は、Japan as No.1の時代には想像できなかった。
特に情けないのは、今回の物価上昇による便乗値上げで、多くのメーカーが増益だという、この体たらく、救いようがない。