中国には、毛沢東が1957年に作った、労働矯正制度(中国名:労働教養制度)がある。司法を経ずに、現場の行政官や警察官が、矯正所に収容し矯正のために労働させる制度である。
かつては反体制者の弾圧に用いられ、その後民主活動家や法輪功のメンバーの弾圧に、そしてウイグルやチベット族の活動家の拘束に大活躍している。今ではノーベル賞作家まで収用してい制度である。
先ごろ失脚した、薄熙来が暴力団を拘束するためにこの制度を使ったことでも知られている。最近では、ネット上での反政府発言者を抑えるに有効に使われている。
矯正所は全国に、310~360ほどあるらしく、約16万人が収容されていると言われている。法的な手続きを経ていないこともあって、労働による矯正を行って社会に戻すなどと言う美名とは程遠く、矯正所では恒常的な暴力や拷問が行われている。中国の人権侵害の象徴的制度である。
最長4年間の矯正所労働を終えた、法輪功の人たちが矯正所の内容を語っている。15時間労働と、休日のない作業である。単純商品の生産が行われているようである。
2012年に、アメリカのオレゴン州ので中国製のハロウィングッズから、馬三家労働
教養所からの、手紙が見つかった。手紙は労働実態と不法な拘束に対する告発であった。
労働矯正制度は、中国の人権問題の象徴的制度で、世界各国からの批判が強い。政府もこの制度は、非民主化と抱合せて恐怖政治の、一方の基盤をなすもので、なくしたくない本音がある。
今年の1月になって、孟建柱中央法委員会書記が、この制度を今年中になくすると、いったん表明したが、その後の具体的な動きはなかった。
今月になって、雲南省が夏ごろまでに労働矯正所の撤廃を表明した。具体的な動きは初めてである。気になるのが、省の撤廃理由である。「公権の濫用である」「行政の私物化につながる」というものである。
しごく当然の内容であるが、こうした表現は中国共産党が最も嫌うことである。共産党に潰されないかと思うのは、余計なことかも知れないが、雲南省の出方を注目したい。
中国という国の事情もわからないわけではありませんが、それを超えて、この人口13~15億の世界最大の国で、こうした信仰や伝道の自由が一日も早く実現するよう、何より祈らずにはいられません。
その時まで、中国国内の迫害・弾圧の苦難の中にある無数の方々の命が、生活が守られますように。