別海9条の会の例会で、イラク戦争の事態のドキュメントDVDを見た後、次のような質問を受けました。「日本が戦争に負けたのは、しっかりとした思想がないまま戦争したからでないか」と。
迂闊にも私は「戦力的にアメリカとは歴然とした差があった」と答えました。この回答は明らかに、日本国憲法の精神に反します。このような、戦争を勝ち負けの範疇で考えるのは、間違っています。勝つ戦争ならやっても良いのかということです。
戦争は勝ち負けの問題ではなく、戦争そのものが非人道的行為、殺人行為なのです。むしろ戦争に勝った方が、より多くの人を殺傷し、より多くの文明を破壊し、より多くの人権を蹂躙し、より多くの国土を侵略したことを意味しています。
戦争を勝ち負けで理解しようとすると、戦争の本質を見失います。戦争を勝ち負けでとらえるから、より強大な軍隊が欲しくなり、より殺りく性の高い武器を開発をし、思想教育に力を入れるのです。
日本では、いまだに日中戦争は欧米の侵略から中国を守った、太平洋戦争はアメリカの経済封鎖にしてやられた。戦争に負けたから、悪者扱いにされる。戦争には勝たなくてはならない。この戦争にどうして負けたか「反省」をする人たちが、日の丸を掲げ靖国に参拝します。今度の戦争は勝つための思想を持たなくてはならない。
戦争は殺人行為です。戦争は他国の文化の否定であり、領土侵略であり、人権の否定であり、環境破壊そのものなのです。戦争そのものが否定されなければならないのです。戦力を持たず武力を放棄し、交戦権を認めないとする日本国憲法9条の精神はこうしたことなのです。