ブッシュのイラク侵攻を批難して、大統領選挙を勝利したオバマである。核廃絶を掲げて、ノーベル平和賞を受賞した経緯も含めて、オバマは自らが政権に就いた意味を失おうとしている。
一旦はイラクの空爆を決めてはみたものの、盟友のイギリスでは深夜まで喧々諤々の論争をした結果、僅かの差でころを否決した。背景には、強硬にイラクに攻め入った、10年前の亡霊がある。
軍事介入について、世論調査も芳しくない。イギリスもアメリカもフランスも、反対が半数を超え積極派も30%足らずである。フランスも圧倒的に反対が多く、軍事介入から撤退した。
オバマは責任転嫁をして、議会にこれをかけた。空爆による軍事介入の出口が見えないのである。議会は反政府勢力の支援を提案したりしてはいるが、民主党の議員にも反対派が出て否決されることになる。手法や成果や意義を求められると、もともと無法である空爆には反論する根拠が薄くなる。
シリアではもうすでに、30万人が殺害され200万人が国外脱出をしている。アサド政権は国民の側を向いてはいないが、ロシアや反イスラエルの勢力が支援している。ブッシュが決めつけた、テロ側かアメリ
カ側に付くかという問いは正解のない状況である。
アメリカは反政府勢力の支援が、アルカイダに流れると武器支援も地上戦の支援も躊躇している。加えて、アラブの春が吹き荒れた周辺国家は、その結果さらなる混乱を招くことになっている。
悠久の歴史を刻む敬虔なイスラム国家のシリアは、大国の思惑に翻弄されて、出口すら見えない。