安倍晋三の、「国葬」で昭恵夫人の指名で7年8か月官房長官を務めた菅義偉の弔辞が評判である。デモなんか変だ。
「彼方の判断はいつも正しい」とは、政権のイエスマンの官房長官なら致仕方ないとはいえ、全体を通じて余りにも歯が浮くような内容であったが、おやっと思ったのが、岡義武著、「山縣有朋」という本のエピソードの件である。田崎史郎などは、国葬のハイライトとまで褒めちぎっている。
菅は、「衆議院 第一議員会館、1212号室の、あなたの机には、読みかけの本が一冊、ありました。岡 義武 著『山県有朋』です。ここまで読んだ、という、最後のページは、端を折ってありました。そしてそのページには、マーカーペンで、線を引いたところがありました。 」と述べた。
それが、盟友伊藤博文を偲ぶ『かたりあひて 尽し丶人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ 』という歌である。
そもそも、安倍晋三が本など読むかと直感である。それに余りにも運命的な出来過ぎのエピソードである。まるで死を予感した安倍晋三が、菅義偉に託したような出来事といえる。
ところがこの歌は、一昨年亡くなった、安倍晋三を支える極右翼の財界人のJR東海名誉会長葛西孝行の葬儀に、安倍が弔辞で引用した歌でもある。安倍が引用したのは、この本を葛西から頂いたものであるからの、いわば返礼のように引用したのである。しかも頂いたのは2014年であるから、菅の弔辞が正確なら安倍晋三は8年間も、本を開いで机の上に置いていたことになる。
もしくは、葛西氏が亡くなられたときにマークを付けてそのままなら、3年間も放置していたことになる。
このエピソードは安倍晋三がいかに本嫌いであったかということになるが、これは相当面白い話でもある。これなら合点がいくことといえる。
それにしても、弔事まで失敬するとは菅らしい。しかもその故人の弔辞のパクりである。バレないと思っていたのか。それにしても、なんとも国葬の品位もなさである。