そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

農業の6次化は食糧自給とは無縁である

2013-05-12 | 政治と金

Photo政府のご要望に応えて、メディアがさかんに攻めの農業が喧伝される。農業は一次産業である。これを加工する2次産業と、売り込む販売の3次産業を掛けて、合計で6次産業と呼んでいる。因みに、足しても6次産業になる。

この考えは、農家がお金もうけをするためには、2次・3次産業で儲けているのを、取り込もうというものである。そんなことできるのか?一般の農家には、加工や販売などする時間がない。ましてやその、ノウ・ハウも持っていない。

早い話が、百姓は極めて身勝手で偏屈者が多い。篤農家ほどその傾向がある。頭をPhoto_2下げることが不得手である。お天道さんと風向きを見ながら、誰にも頭を下げることなく生きてきている。

今はその時代でないと言われても、百姓根性が俄かに変わるものではない。何よりも、多くの農村は消費地など縁遠いところに位置している。好例として紹介されるほとんどが、消費地に近い農家である。

更には、販売されている多くの農産物は、野菜である。特に鮮度が要求される、葉物は鮮度が求められそれを売りにしている。とてもじゃないが、専業農家の多くは遠い消費地まで手足を伸ばせたものではない。それに、人が生きていくために必要なカロリーが、野菜にはほとんどない。

農業の6次化には、単独の農家が取り組むことなどできない。資金的にも人材的にも技術的にも、農協や自治体などの手助けが必要になる。相当な労力と資金が必要になる。

農業の6次化は、農家の収入を増やす目的のものでしかない。それはこれまでの農業政策が、農家にばら撒かれていることと同じ思想である。本来は、農家の保護ではなく農業の保護支援、食糧の生産の支援が必要なのである。

食料の自給率を上げることは、農家を保護することでもなければ、農家の収入を増やすことなどではない。健全な農作物を消費者に届けることである。特定の地域の、特定の農作物を対象にした、農家収入の増加を求める政策は、いずれ農家以外のものにとって代わられるに違いない。真の食料自給への取り組みこそ必要である。

左にフォトアルバム<春の知床連山>をアップしました。

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3 コメント

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先生の理論通りだと思います。 (秋田の田子作)
2013-05-13 20:06:10
先生の理論通りだと思います。

私の周りにも、減反にて野菜作りを行っている方々がいますが、いくら作っても赤字の為、野菜作りを辞める農家が続出しています。

あまりにも値段の乱高下が激しく、ヘタに投資すると破産してしまう危険が高く、怖くて本腰を入れるのはギャンブルみたいで、堅実な農家には不向きかと?

秋田から首都圏までの移送費や、寒冷地でのハウス栽培は暖房費だけで採算割れするなど、雪国での野菜栽培は勝算は皆無です。


6次産業化と政治家様は簡単に言いますが、言うだけなら私にも出来る訳で。


先生の言われる事の他に、農家だけで加工や販売までしてしまえるとしたら、もっと怖い現象が発生しますよね。

国内産農産物を流通販売する職業に関わっているサラリーマンらは、農民より悲惨な状況に追い込まれます。

仕事が無くなり、収入源を失い生活保護世帯だらけになるでしょう。


百姓って、いつの時代も生かさず殺さずの政策の中で、ぼそぼそと生きて来た。

こんな現実を知っていながら、やはり就農するしか無い方々もたくさん居ます。

日本は、士農工商の身分制度が廃止されて、農民の子でも医師になったり教師や公務員になれます。
ひと昔前と違い、コネで学科試験は通りませんから、ある意味とても平等な環境にあります。


先生にリクエストですが、確かシンガポールは自国での食糧生産をあきらめて、通商だけで国が成り立っているみたいですが、現実的な所はどんなものなのでしょうか?

もしかしたら、日本はシンガポールのような国作りを目指しているんでしょうか?
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田吾作様 (そりゃないよ獣医さん)
2013-05-13 22:04:33
田吾作様
すごくいい質問です。シンガポールは農業を限りなく放棄したと言えます。そのために結んだのが、今や世界的に名の知れたTPPです。
シンガポールとニュージーランドそれにブルネイとチリが、それぞれ得手不得手があって、互いに関税をなくそうとして始まったのが、TPPなのです。
農業国と工業国と商業国が上手く凸凹が見合っていたので、仲良くやっていたのですが、オーストラリアなどが参入して、ついに狼藉物のアメリカが参入して、日本も引き込まれたというわけです。
ハイ
私は声を大にして言いたい。
ふざけるな!!
返信する
こんにちは。いつも読ませていただいています。 (マイミー)
2013-05-14 16:19:56
こんにちは。いつも読ませていただいています。
2回目のコメントです。

先日安倍首相の訪ロのとき、TBSの「ひるおび」という番組でその話題を取り上げ、ロシアの日本大使館でパーティーが行われ、日本の著名料理人が料理を担当して日本の農産物が紹介されたことが放送されていました。
キャスターたちが「例えばこの日本のブランドいちごが日本では1箱2、3000円なのにロシアに持っていくと7、8000円で売れるんです、これは日本の農業にとってすばらしいことですよねえ」などとワイドショーらしく大騒ぎしながら紹介してましたが、そのような例外と言って良い商品で一体日本の農業が守れるのだろうか(守れるはずがない)と疑問いっぱいでその番組を見ました。世界の富裕層向けに農産物を売り込むと言っても、果たしてどれほどの需要があるのでしょうか。
でも、ああいう番組を見た多くの人たちは安倍首相はすばらしい経済政策、外交をやっていると刷りこまれてしまうのだろうかと暗い気分になってしまいます。
私は福岡県在住なのですが、この間筑後地方の農村地帯を車で行くと、あちこちで「売り地」「貸地」の看板を見かけました。それでも大きく育ち実った麦畑を見て、本当に農業を担ってくださっている方々に頭が下がります。
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