浜矩子氏の新書本を、旅の手慰みに読んでみた。「「通貨」はこれからどうなるのか」PHPビジネス新書である。浜氏はテレビでは強面の、とても印象に残る女史である。
新書でありながら、内容的には極めて解り易いものであった。私は経済学者を信用していない。同じ現象に対して、まったく異なるアプローチや解決策や原因それに今後の予測を平然と、それぞれが非難し合って論じるからである。人が作った人為的に形成されたシステムを、学者どもが異なる見解を持つこと自体が、不完全であると言えるからである。
浜氏は、経済学者でありながら、通過のグローバル化に疑問を持たれているようである。戦前の大恐慌の時に、地域通貨で立ち直ったところがあった。
通貨にはどうやら信用が必要なようである。1944年に、ポンド建てからドル建てへと世界通貨は変わった。金本位制と強力な国力によって、ドルは一定程度の期間任務を果たしたと言える。
ところが、ソビエト崩壊後10年ほど経つを、アメリカの一国支配は瓦解し多極化が始まった。ヨーロッパは、2度の大戦などの反省から統合へ向けて動き出し、まずは通貨の統合を行った。
通貨の統合には、「経済実態の完全収斂」と「中央所得配分装置の存在」が不可欠であると、浜女史は述べる。即ち、経済の地域間格差や所得間格差があってはならないことと、政治が貧困を産まないことであるとするのである。
要するに、経済が平準化し、国家予算などが統一されていなければならないというのである。その意味で、欧州の通貨統合は破たんすると断言している。ギリシャはたまたまそのきっかけになったに過ぎない。
どうしてのユーロを維持したいのなら、せめて国力差を反映した二段階にするべきだというのである。とても解りやすい。
共通通貨としてのドルはいずれ消滅する。円は1ドル50円になる日が来ると予測する。女史の明確な主張にはなっていないようであるが、通貨には地域性を持たせるべきである。
共通通貨はの設定には無理がある。経済実態がなくても、金融に強いところが一方的に収奪するからである。
女史は増税を容認する。むしろ避けて通れないとする。しかし出費内容が決まらないままの増税には懐疑的である。
全体を通して、円やドルそれにユーロの価格変動には、彼女はあまり左右されることはないとしている。身近は例の引用も解り易い。どうも実体経済活動を女史は押しているようである。金融経済への疑問とも思える。