日本の食料自給率は、物単位では40%ほどである。生産工程などを考慮した、実質自給率はでは、20%程度まで下落している。
生産家=農民の減少と、自給率の下落に反比例して、日本人の食卓は豊かになる奇妙な現象に国民は慣れきっている。今では誰もが、この摩訶不思議な現象を当然のように受け入れて、飽食を満喫しているようでもある。
飽食国家では当然のように、食べ残しが生じている。食品ロスの統計調査によると、一般家庭では8%ほど、外食産業では5%ほど、宴会では16%ほど、結婚披露宴ではなんと24%にもなる。
国全体では、年間2200万トンも廃棄されていることである。このうち再利用されているのは、わずかに12%程度である。私が獣医師になったころには、都会の周辺に食品加工業者からの廃棄物を乳牛に与える「カス酪農」や食堂などからの残飯を与える「残飯養豚」が盛んであった。食べ残しが有効に利用されていたのである。
本来の畜産とは、人が食べることができないものを家畜に与えて、それを家畜の生体を利用する形で、肉や卵や乳に変換する産業である。 ところが、この国の経済力が増すに従い、あるいは円が力を付けることで安価な輸入穀物を買い与えて、生産効率を上げる畜産へと変わってきたのである。
犠牲になったのは、生産を強制される家畜ばかりでなく、飼料用穀物を大量に輸入する、この国の食料自給率である。そして廃棄される食料と貧困国家の食料自給率である。
なんと、”MOTTAINAI”ことであるか。今では、賞味期限などが設けられたおかげで、食料の廃棄のスピードが増したように思える。