何度も繰り返される侵略戦争の正当性は、ワンパターンと事実誤認で満ち溢れている。今回またもや、日本の行った戦争の正当性を主張する人物が現れた。しかも現職の航空幕僚長長官である。
早速事態が大きくなるのを恐れた、ハマコーの息子の防衛大臣はこの男を更迭した。政権への影響を懸念してのことである。田母神利 雄なるこの男の論文を読んでみた。かなり短い論文である。段落に乏しくタイトルも何もなく、ただ「日本は侵略国家だったのか」という、総じてできの悪い稚拙な論文である。
ホテルグループの懸賞論文であるが、応募タイトルが「真の近現代史観」で、右翼思想・国粋主義者の投稿を煽るものである。この男の論文が最優秀論文になって、300万円ももらった。
この男の論文は、中国や朝鮮に要請されて日本は派兵したというのである。そんな国家があるか!あるのは、傀儡政権と裏取引で行う侵略隠し行為しかない。歴史も政治も無視したものである。
蒋介石がコミンテルの支持を受けていたとか、近衛が暴支を抑えるために派兵したことも、中国のシナリオだというのである。こうした国粋主義者が必ず主張する、大東亜共栄圏は、白人からの解放だったとするのは全く身勝手で、お節介な主張である。
中国の満州地方が日本によって豊かになったなどとは、侵略で追い出されたその地の人たちに向けて言えるようなことではない。大東亜共栄圏思想も同じである。
東京裁判についても、敗戦国家が裁かれる不当性を論じている。それでは、勝てばよかったのだろうか。この男の主張は、戦争の内容や被侵略国家のことなどでなく、勝てなかった戦争の技術問題に閉じ込めていることである。
確信犯がいつまでも絶えない。日本が戦争の本当の意味での検証も総括も反省もしてこなかったためである。たまたま、しっぽを出しただけであり、自衛隊幹部にはこの種の男ばかりなのであろう。恐ろしい国である。
彼の論文といわれる文のレトリックを組み換えるとその本質が見えてくる。
タイトル「日本は侵略国家ではない」の具体的内容は「もし日本があの時大東亜戦争を戦わなければ、現在のような人種平等の世界が来るのがあと百年、2 百年遅れていたかもしれない。」という文に示されている。
とんでもない誤解だ。アメリカの黒人解放運動を知らず、単一民族発言を繰り返す国会議員以下の確信犯である。
次の文からも容易に読み取れる。「昔も今も多少の圧力を伴わない条約など存在したことがない。」続いて、自衛隊が横田や横須賀の基地で「米国軍人及びその家族などを暴行、惨殺する」ようなものだったと言う。
田母神氏は「日本が侵略国家であったというのならば、当時の列強といわれる国で侵略国家でなかった国はどこかと問いたい。…我が国は他国との比較で言えば極めて穏健な植民地統治をしたのである。」とも書いている。侵略国家と言われているのは日本だけと言いたいらしい。
結論は彼が言うように「日本の軍は強くなると必ず暴走し他国を侵略する、だから自衛隊は出来るだけ動きにくいようにしておこうというものである。」
これだけ明快に歴史を歪曲する「論文」が、民間の懸賞に応募し最優秀賞を受賞した。審査員には前外務政務官が加わり、麻生首相は「立場が立場だから適切でない」と発言したという。
夢も希望も見えづらくなった日本に、戦前回顧の亡霊が徘徊しだしたことに危機感を覚える。
嫌な予感しますね。
「そんなのカンケネェー」と言った男です。