時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

ハドソン河の奇跡

2009年01月18日 | 雑記帳の欄外

ハドソン河遠望(ウエスト・ポイント付近)


  このたびのニューヨーク、ハドソン河での航空機事故と全員無事救出という奇跡的な出来事の報道をみていて、大変感動した。第一は、いうまでもなく、機長の沈着、冷静な判断だ。素人からみれば、管制塔から指示されたニュージャージーの空港に着陸できないとなれば、次の目標はハドソン河の河口付近、大西洋かと思ったのだが、機長は着水後、迅速な人命救助が最も期待できることまで考え、ハドソン河下流を選択したらしい。双方のエンジンが機能しなくなった上に、満席状態の航空機をとっさの判断で、冷静に操縦し不時着させた。ハドソン河は橋梁も多く、航行する船舶を回避しながらの着水は、見事としかいいようがない。航空機史上、特記される出来事との航空評論家のコメントがあったが、「ハドソン河の奇跡」miracle of the Hudsonは長く語り継がれるに違いない。

 今回の出来事について、別の点で感動したのは、不時着した航空機の乗客救出に沿岸警備隊ばかりでなく、現場付近を航行していた多数の民間の船舶が迅速に協力したことである。最初に事故機に到着したのは、
サークルラインという名で知られるハドソン河の観光フェリーだった。このフェリーは、その名の通り、ニューヨークのマンハッタン島をぐるりと一回りする観光ラインとして知られる。初めてニューヨークへ行った時、そしてその後も何度か乗船したことがあり、思わぬことでその名を思い出した。不時着の連絡を受けて、なによりも人命救助を優先させて直ちにフェリーを救出に向かわせることにしたとの船主の話に、感動した。TVで見ると、沈み行く機体の周囲で数隻のフェリーが救出に当たっていた。このフェリーもハドソン河の歴史に名を残すだろう。

 そして、沈み行く機体からの脱出に際しては、子供、高齢者が優先されたようだ。パニックになることなく、今回の全員救出につながった。これも素晴らしいことだ。

 思いもかけないことで、ハドソン河にかかわるさまざまなことを思い出した。かつて、この流域の美しさに魅せられ、友人と旅をしたことがあった。ハドソン河を遡り、モホーク河に入り、エリー運河、オスウエゴ運河を経由して、オンタリオ湖に入った。さらに別の機会には、セントローレンス河を下るという旅を試みた。これらの河川の流域には、開拓時代からのさまざまな史跡が残り、美しい景観に恵まれた地域である。とりわけ、ハドソン河の開発、エリー運河掘削、セントローレンス河の探検については、大変興味があり、出来ればもう一度試みてみたいと思っているほどだ。今はとにかく、この不幸中の幸いを喜びたい。一番ほっとしているのは、就任式を目前にしたオバマ新大統領だろう。

コメント (4)
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