詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

網膜剥離体験記

2009-10-25 23:01:04 | その他(音楽、小説etc)
 2009年09月19日(土曜日)、会社で手を洗っているとき、ふいに視野が欠落しているのに気がついた。顔の中央部、鼻の左側が黒く見える。「あれ、眼鏡に何か汚れがついている?」という感じだが、眼鏡には汚れがない。
 私は強度の近眼、乱視なので、以前医師から気をつけないと網膜剥離を起こしかねないと注意されていた。
 あ、これが網膜剥離か。
 困ったことに、土曜日。しかも気づいたのが午後3時前。眼科はどこもしまっている。ネットであれこれ調べ、ようやく見てくれる眼科を見つけ出した。
 しかし、それからが実はたいへんだった。
 福岡・天神の警固神社近くにあるコンタクトレンズ(眼鏡)屋の2階で開いている眼科である。左目、網膜剥離という診断。そこではもちろん手術はむり。福岡大学病院への紹介状を書いてもらった。そこまではいいのだが、秋のシルバーウィークのため木曜日まで大学病院は休診。自宅で、右側を下にして安静にしているように。木曜日に大学病院へ行くように。
 自宅で右耳を下にして寝ていると、欠落部分がどんどん広がってくる。
 翌20日(日曜日)、不安になり、土曜日には検診はしてくれなかったが「症状が激変するようだったら、もう一度電話してください」と言ってくれた大島眼科に電話する。当直の看護士が医師に相談し、その医師から急患センターを紹介され、急患センターへ急行。急患センターで再度、福岡大学病院への紹介状を書いてもらい、病院へ。
 そのまま、緊急入院。そのとき、
 私「右側を下にして安静にするんですよね」
 医師「左側です」
 私「あ、そうか、目は逆像だから、左か。でも、眼科で右側、右耳を下にして安静にといわれました」
 医師「逆です」
 私は一晩逆のことをしていたことになる。そして、たぶんこれによって、症状が悪化した。

 この週は、今年からはじまったシルバーウィークにぶつかり、手術は早くて木曜日。それまではただ安静にして待機しているだけである。
 この待機中にも、急患が入り、その人の症状の方が重いので木曜日に手術、私は来週の火曜日になるかもしれない、と言われてしまう。えっ、このまま何もせずただ横向きに1週間寝ているだけ? とても不安になる。
 主治医が休日でいなかったので、検診の医師に聞いてみた。
 「入院して1週間も手術待ちということもあるんですか?」
 「私のところは急患対応の病院ですから」
 症状の重い患者が優先ということらしい。
 これは、ある意味では、私の症状はまだ軽い方ということになるのかもしれないが、とても不安だ。それに1週間も寝ているだけで入院費かかるなんて……とつまらないことも考えてしまった。

 24日(木曜日)、朝、突然主治医がきて、「きょう手術します」。
 手術は、網膜剥離の境目にシリコンのテープをまいて、剥がれている部分にマイナス60度くらいの凍傷をおこさせ、凍傷の力を借りてくっつけるという方法。硝子体をとりだし、ガスを利用する手術もあるが、シリコンテープと凍傷の方が感染症の心配がなく安全ということだった。
手術の前日にはふろに入る。きのうふろに入らなかったので、24日の手術はないとあきらめていたので、すこしほっとする。
しかし、途中にやはり急患が搬送されてきて、私の手術の予定は午後3時が午後5時に、さらに前の手術が長引いて午後8時に。終わったのは25日(金曜日)の午前2時ごろだった。朝飯を食べたきり、何も食べていない。
 手術の後は(翌日は)、自分で歩いて検診室へゆくと聞いていたので、そんなことがはたしてできるかなあ、と心配にもなる。

 麻酔から覚めると、まず猛烈な吐き気に襲われる。「先生、吐きそう」と言ったのが、手術後の最初のひとことである。ほんとうに苦しい。でも、吐くものは何もなく、ただ吐き気がある。
 そして、はげしい痛み。
 手術の直前、担当医に「痛いですよ」と突然言われたが、ほんとうに痛い。
 会話が、麻酔がさめるにしたがって、遠くから近くへと動いてくる感じで聞こえる。家人が「夫は痛みに弱いんです」と他人事のように言っているのが聞こえる。
 私はほんとうに痛みに弱い。注射などは平気だが、肉体の内部に原因がある痛みは、とても我慢できない。人の3倍は敏感だと思う。
 おもわず、「痛いから目玉取り出して」と言いそうになるが、あ、そんなことを言っては手術したかいがない――と、ぐっとこらえる。痛み止め(座薬)をつかうが、まったく効果がない。
 
 ふざけたこと(?)に、おもわず書いてしまうが、25日になって自宅に、「右側を下にして安静にしているように」と指示した眼科から、「福岡大学病院の予約がとれたから、26日(金曜日)に受診に行くように」という連絡がとどく。すでに手術の後である。その眼科から福岡大学病院への「紹介状」は24日になって、地域医療連携室(だったかな?)を経由して、やっとFAX送信されたのである。
 福岡大学病院は急患対応の病院なので、連絡さえすれば、休日でも連絡がとれたのである。
 件の眼科医は、そうしたことを言わずに、私に安静を指示したのである。しかも、逆の姿勢を。
 信頼のできるかかりつけの医師をみつけることが大切だとあらためて思った。

 手術後は右側(ガスも利用したので、手術前とは逆になる)にして、ひたすら安静状態。これが1週間つづく。食事とトイレ以外は、ずーっと同じ姿勢である。これはとても厳しい。体が痛い。いわゆる床ずれ状態になる。そして、顔がむくむ。手術した左目もむくんでいるが、下になっている右目の方もむくむ。
 目薬を1日4回さすのだが、目脂で目が開かない。

 視力は非常に落ちている。手術の影響である。視界も白濁している。白濁と書いたが、実際は黄濁かもしれない。黄色が見えない。黄色が白い壁にとけこむ。



 手術から1か月。まだまだ視力が回復しない。文字を読むのがつらい。書くのはもっとつらい。パソコンのそばにタイマーをおいて、30分をめどに書いている。(この文章は2回にわけて書いた。)
 とりえあず、近況。
 あすから、「日記」を再開します。

 お見舞いのコメントをお寄せいただいたみなさん、ありがとうございました。


コメント (1)
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