私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

殺人者の記憶法

2018-01-28 18:52:38 | 映画鑑賞
元連続殺人の犯人でありながら、今は田舎町で獣医をしながら一人娘と暮らす中年男性。

以前起こした交通事故の後遺症もあり、50代という年齢でありながらも痴呆症の症状が出てきた父親を心配し、娘は「ここに今日やったこと、今やったことを録音してね。」とICレコーダーを準備して彼に手渡す。
病気のせいで、元殺人犯の男は新しいことを覚えられず、今やったことをすぐに忘れてしまうのだ。
しかし、長い間の習慣はまだ記憶に残っている。人を殺めたその感覚は、同じ種類の人間を察知するその感覚は、少しずつ色あせていってはいるもののまだ男の中に残っているのだ。

そんな時、町で女性を狙った連続殺人が起こる。娘に近づいた男に自分と同じ香りを感じる中年男性。

*****
元連続殺人犯を演じるソル・ギョングの風貌にまず驚く。実年齢50歳とは思えない老いを見せるうつろな視線と、過去の記憶が鮮明になる際の目つきが混在する。

自分でコントロールできないその混沌とした記憶におびえながらも、娘を若い連続殺人犯と思われる男から娘を守ろうとする。
記憶の混濁は、坂道を転げ落ちるように、一定の方向に進むわけではない。穴の底に落ちたようになる日もあれば、突然目の前が開けたようになる日もある。

見ている方は、彼の視線の中にある生気を見て、今目の前の映像が実際にあることなのか、それとも空想なのか、それとも現実であっても一部記憶の混濁があることなのかを判断するしかない。

しかし後半になると、彼の視線にある生気を信じていいのかどうかさえも怪しくなってくる。
目の前で起きていることがすべてが、娘を守る父親を演じたい彼の空想かもしれないと思えてくる。
元連続殺人犯の男はで自分の記憶を書き換えているかもしれないのだ。
記憶の曖昧さから来る恐怖がひたひたと忍び寄ってくる・・・・・

*****
ソル・ギョングの風貌に説得力がありすぎて非常に怖い。
娘役のキム・ソリョンがいてくれてよかった。彼女がいなかったら、辛い場面がもっと多かっただろう。