天文学者とその助手は、新たな彗星を発見するも、その軌道を計算してみると6か月後に地球に衝突し壊滅的な被害を与え得る事に気づく。専門家たちもその事の大きさに気づき、大統領に進言するに至るも、自分のイメージ維持と選挙の事にしか興味がない彼女は「だから?」という気の抜けたような返しをするのみ。ショックを受けとにかく危機を伝えたい彼らは、つてを頼って朝のニュース番組に出演するも、視聴者に与えるインパクトは大統領関連のお下劣スキャンダル以下でしかない。科学的な正しさを説明しようとしても、「数字の説明は視聴者が嫌がる。深刻な話は笑いに変えて話半分に・・・」という事で取り合ってもらえず。
しかし、スキャンダル→中間選挙敗北という流れを変えようとする大統領は、天文学者の意見を聞き入れた風を装い「アメリカをそして世界を守る偉大なリーダー」というイメージ戦略を取り入れようとする。
朝のニュース番組のキャスターは、地球の危機をやや感情的に語る助手の女性と違い、天文学者のやや専門的な事を語りながらもややオドオドしたその語り口が女性に受けるキャラクターであることを直感的に感じ取ると、やや脇が甘く世間知らずな彼に近づいていく。
権力が大好きで自己顕示欲の強い二人の女性に翻弄され、いくら真面目に危険を訴えても、自分の理解出来ない話には耳を塞ぎ「陰謀だ」と片づける世の中の流れにも逆らえず、もがき苦しむ天文学者。更に大統領の計画の後ろには、自分の企業の利益になる事しか考えていないIT企業家がいる事を知る。自分の訴える科学的な事実は、世の中ではその企業家のアルゴリズムの足元にも及ばない事に打ちのめされるのだ。
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『彗星が地球に衝突し壊滅的な破壊を受けるまであと6か月』で『主義主張が違う他人の話に耳を傾けない』という話は、コロナ、環境破壊等々身近に起こっているどんな話にも置き換える事が出来る。見たくない真実は見ないようにしても決してなくなる事はない。笑いながら見ていても、最後にはそれがキチンと分かるようになっている。ただ、それに気づいた時はもうやり直しの出来ない所に来ているのだ。
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レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、ケイト・ブランシェット、メリル・ストリープそしてアリアナ・グランデ。とにかく出演者が豪華だ。ティモシー・シャラメの演じるやや力の抜けた若者は、一番現実的で地に足の着いた役柄だった。
-Netflixで鑑賞。
『ドント・ルック・アップ』予告編 - Netflix
【和訳】Ariana Grande & Kid Cudi - Just Look Up / アリアナ・グランデ&キッド・カディ(NETFLIX映画『ドント・ルック・アップ』より)