熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

納富 信留 著「プラトン哲学への旅: エロースとは何者か」(1)

2024年09月30日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   プラトンの「饗宴」はまだ読んではいないのだが、手っ取り早くと思って、『饗宴』のなかに、語り手の「私」(「現代からの客人」)が列席し、ソクラテスら演説者たちと「愛(エロース)」をテーマに競演する、類を見ない教養新書 だというので手に取った。「愛(エロース)」と言うと、何となく色っぽい感じがするのだが、「哲学(フィロソフィア)」という言葉は「知(ソフィア)」を「愛し求める(フィレイン)」という意味の合成語であって、哲学=愛であることが説かれているという。 

   私が知っていたのは、ギリシャ喜劇詩人アリストパネスの話、人間がゼウスに真っ二つに分断されたという話である。
   かって人間は球形をしていて、手足が4本、顔や生殖器が2つあった。男性と女性、その2つに加えて、両性を具有するアンドロギュノスと呼ばれる男女の三種類が居て、それぞれが太陽、大地、月の子だった。その人間が、腕力が強くて傲慢で放埓のあまり、神々に戦いを挑んだので、怒ったゼウスは、人間を半分に切断して力を弱めておとなしくさせた。
   人間は、その頃の記憶から、自身の片割れを常に探し求め、抱擁してできるだけ一緒に居たいと欲し、その喜びを求めている。
   エロースとは、人間が「全体」という本性を要求するその統合者であり、治癒者なのだ。と言うことである。

   難しい話はともかく、アリストパネスは、パートナーが死んだら、別のパートナーを求めていくと言っているので、この人でなければならない掛け替えのない人、自分の本当の片割れを求めるというのではなく、また、個人と個人の愛が問題なのではなく、あくまで、種族の間で愛が成立することが説明されている。のである。
   エロースは、自分にはないもの、より美しくより素晴らしいものを希求するのであるから、求めるベターハーフは、自分より美しくて賢い者であってしかるべきだと言うことであろうか。
   自分の片割れだと言われると、一寸逡巡するが、これでホッとした。

   私は、一目ぼれというか、直覚の愛を信じている。
   この話とアリストパネスの愛とどんな関係があるのか分からないが、自分の片割れ、ベターハーフを探し求めるという話は、非常に面白いと思っている。

   議論は、美しい神エロースを讃嘆する弁論の競争から、美を求めるエロースの真理を語る哲学の吟味へ、美の賛美から愛の本質へと展開されていくのだが、
   途中で、脱線してしまったが、次にソクラテスのエロースについて考えたい。
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石破内閣で日本経済はどうなるのか

2024年09月28日 | 政治・経済・社会
   経済成長優先の高市政権の夢が潰えて、石破茂総裁の誕生が決まると、一挙に、金融市場は、株安・円高・金利上昇で反応 して、日経平均の先物は現物終値比で2000円超下落する場面があった。財政刺激・金融緩和を主張する高市早苗の勝利を事前に織り込んでいた反動が強く出た格好で、「高市トレード」の巻き戻しがいつ収まるのか、石破政権誕生で日本経済への疑念は収まらず、日本株はこれから停滞しかねない、来週明けには、株は更に下落筆致だという。
   新政権の新しい経済政策が始動して政局が治まるまで、紆余曲折があるであろうが、日本経済そのものがほぼ健全である限り、程ほどのところで安定するであろう。

   石破総裁は、経済に弱いということだが、就任後、「物価上昇を上回る賃金上昇を実現するために、新しい資本主義にさらに加速度をつけていきたい」と強調した。「デフレからの脱却の確実化」にふれ、アベノミクスではなく、物価高対策や労働市場改革など岸田政権の経済政策の基本的な方向性を継承する考えである。 「さらに加速度をつけて」という政策なり戦略なりが問題であろうが、あまり期待でいないが、しかし、大きなブレはないであろう。 

   経団連は、「石破氏は、閣僚や自民党幹事長などの要職を歴任され、地方創生や防衛分野をはじめとする幅広い政策に精通されており、経験豊富な政治家である。 」と歓迎してるのだが、地方創生と防衛分野しか知らないということであろうか。

   選挙戦で注目を浴びたのが税を巡る発言で、税の応能負担の原則を掲げ、株式の売却益など金融所得への課税強化や法人税と所得税の引き上げ余地があるとした。
   これは、金融所得課税の強化は、配当などの利益が非課税となる少額投資非課税制度(NISA)の拡充など岸田政権が進めてきた「貯蓄から投資へ」の流れに逆行する政策であると批判を浴びたが、これは慎ましい庶民への投資促進制度であって、
   もっと強力な富裕者や強者に対する課税の強化、すなわち、余裕のある企業、富裕な個人に負担を求めることで、財政や社会保障制度の持続性を高め、弱者をより支援することができるというリベラルな発想に基づくもので、所得の平準化や格差拡大の抑止にもなり、成長戦略としても有効なので、大いにやるべきであろう。

   さて、NRIの木内 登英 氏が、
   「自民党新総裁に石破氏が選出:地方創生を中核に据えた成長戦略の推進に期待・・・」で、アベノミクスに触れている。
   興味のある部分だけについて触れるが、
   成長戦略の更なる推進に期待として、石破政権の経済政策では、アベノミクスの第3の矢に相当する、企業の投資を引き出すような成長戦略の推進を最も期待したい。それこそが、労働生産性の上昇、実質賃金の上昇を通じて、国民生活の改善につながるのである。石破氏は、地域創生、地方経済の活性化を長らく掲げており、それが石破政権の成長戦略の中核となるのではないか。 というのである。
   他方で、石破政権には岸田政権の成長戦略も是非引き継いでほしい。それらは、「資産運用立国実現プラン」を通じ「貯蓄から投資へ」の流れを加速すること、「三位一体の労働市場改革」で、労働生産性向上と産業構造の高度化を実現すること、「外国人材確保(外国人実習制度改革と特定技能制度拡充)」を進め、労働供給と需要創出を促すこと、「インバウンド戦略」でインバウンド需要を地方に呼び込むこと、などである。 ともいう。

   安部でも岸田でも、何でも良い。
   高市早苗が連呼したように、「経済成長、経済成長、経済成長」である。  
   あらゆる手段を駆使して、生産性をアップして、日本経済を高みに引き上げる、これしか道はない。

   石破政権が、旧態依然とした自民党政治を引き摺って走るのなら、明日は暗い。
   トップクラスのテクノクラート頭脳集団を糾合して、最強の政権を構築して、日本の舵取りを進めてほしい。
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危ないスクランブル交差点

2024年09月27日 | 政治・経済・社会
   スクランブル交差点で、もう少しで、轢かれるところだった。
   スクランブル交差点は、横断歩行者と自動車の交通を完全に分離する方式の歩車分離式信号機が使用される交差点で、歩行者用の信号機が青の時は、どの車も停止すべきで動けないはずである。
   ところが、歩行者信号が、前方で一気に青に変わったので、スクランブル交差点とは知らなかったのであろうか、最前列の車が、勢いよく飛び出してきて、杖をついて歩きだした私の前で、急ブレーキをかけて止まった。中年女性の運転する小型車であった。

   西鎌倉の住宅街にある唯一のスクランブル交差点で、人と車の交通量の少ない田舎の交差点がスクランブル化された典型的な例で、地元の人間は良く知っているので問題はないのだが、
   大船と江の島、鎌倉と藤沢とを結ぶ道路の交差点なので、よそ者の運転者が多く居て、こんな田舎にスクランブル交差点があるとは思わず、車道歩道に関係なく、一番よく見える所にある歩道用の信号が青くなれば突っ走る。
   数日前、孫にもこのような経験があり、近所の老人たちも何度か事故にあいかけて困っており、信号無視で通過してゆく車が後を絶たない。

   警察へ電話を掛けた。
   要するに、結論は、このような信号無視の運転者はいるのだという前提で、歩行者の方も、渡るときに、前後左右をよく見て、安全を確認してから渡れ。違反車に遭遇すれば、車体番号をメモするなり写真を撮って警察に通報すれば取り締まる。パトロールしているが、通報以外に、違反者を見つける方法はない。
   年寄りで歩行が困難で、スクランブル交差点を斜めに横切るのに、信号が変わってすぐに歩き出しても、途中で赤信号に変わるので、歩く前に前後左右を確認する余裕などないと言ったら、
   斜めに渡るのではなく、L字型に、まず反対側に渡って、2度に分けて信号を渡れ、すなわち、十字交差点で歩行者が斜め向かい側(対角線上)に渡る場合、2回道路を横断 しろと言う。

   スクランブル交差点には、案内標識に「歩車分離式」「スクランブル式」「スクランブル信号」などと表記されていると言うのだが、誰が見ているのか。
   スクランブル交差点は、住民の要求によって設置するのだが、交差する交通が交互に通行するよう信号機で制御されている一般的な交差点の方が良いので、警察も出来れば、設置を避けたいと思っている。という。       
   スクランブル交差点は、人通りの多い繁華街の交差点において主に採用されていて、渋谷でもなし、
   人と車の交通量の少ない鎌倉の片田舎、それも、高齢者人口が過半の住宅街には全く不釣り合いである。
   インテリかぶれの多い鎌倉の文化文明気取りの住人が要望して設置されたのかもしれないが、迷惑である。

   素人考えだが、運転者が、青い歩道用信号を見てGOサインと誤認するのなら、車道用信号機は離れたところにあるので、左右2つ並んでいる歩道用信号の真ん中か直近に並んで、車道用の補助信号を設置して、注意を喚起するのも、一つの方法かと思って提案したが、無回答。

   私は、オランダとイギリスで長く住み、ヨーロッパ各地で車生活を送ってきた。ドイツ、スイス、オーストリア、デンマーク、フランス、ベルギーなど遠出もした。
   相対的に言って、日本よりヨーロッパの方が、交通規則も規制も、はるかに厳しいと思っているのだが、運転者のモラルは、日本よりもずっと高い。
   多少の飲酒運転を容認していても事故が少ないし、日本のように教習所もなく厳しい免許取得制度もないにも拘わらず、問題なく機能しているのは、その査証であろう。
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世界ふれあい街歩き フィラデルフィア

2024年09月25日 | 海外生活と旅
   NHKの「世界ふれあい街歩き」で、フィラデルフィアが放映された。
   1972年から2年間、ペンシルベニア大学で留学生活を送っていたので、無性に懐かしくなって見た。
   最も最近に訪れたのは、2008年8月で、このブログの「ニューヨーク紀行」に書いている。卒業後何回かフィラデルフィアを訪れているが、もう、随分前の話である。

   フィラデルフィアは、独立宣言を起草しわが母校の創立者でもあったアメリカ最大の偉人ベンジャミン・フランクリンが活躍したアメリカ独立宣言の地である。
   最初の議事堂であった独立記念館を何回も訪問してアメリカの歴史と偉大な民主主義を反芻していた。



   この番組は、センターの市庁舎からデラウエア川の間の旧市街の街歩きなので、反対側に位置する大学街は映らなかった。
   しかし、街の雰囲気は、半世紀以上も前のフィラデルフィアと殆ど変わってない感じで、タイムスリップした思いで見ていた。
   



   わが母校ウォートンスクールは、創立1881年、全米屈指の最古のビジネススクールで、古色蒼然としている。
   懐かしいのは、フィラデルフィア管弦楽団のコンサートのために良く通ったアカデミー・オブ・ミュージック。指揮者ユージン・オーマンディの楽屋も訪ねて行った。
   


   

   さて、フィラデルフィアの鳥観だが、シティセンター越しに、緑地がデラウエア川沿いに広がっていて、小高い丘の上にフィラデルフィア美術館が建っている。この手前の石段が映画「ロッキー」の舞台で、途中に「ロダン美術館」があり、よく、市庁舎から歩いた。
   


   街歩きで、興味を感じたのは、全米唯一だという手動式タイプライターの店。修理もしていて、愛好家が各地から訪れてくる。
   牧師さんが、説教の原稿をこの古いタイプで打つと心が通うと言い、街頭詩人が即興の詩を吟じてファンに差し出す、デジタルで消えてしまったホンワカとした人間味が漂うのが、古都フィラデルフィアの命なのかも知れない。
   無粋ながら、留学時代に、レポート書きで忙殺されていた頃、スミスコロナの重い電動式手動タイプと格闘していたのを思い出したのである。
   日本に持ち帰って、長い間千葉の倉庫の奥に鎮座ましましていたのだが、消えてしまっている。
      
 

   

   アメリカで最古だというお菓子屋さん。
   昔から、アメリカ一美味しいアイスクリームだとか、随一絶品のロブスター料理だとか、とにかく、フィラデルフィアには、名物店が多い。
   貧しい勉強一途の大学院留学生であったので、思うようには漫遊できなかったが、フィラデルフィアは、懐かしい心の故郷である。
   



   
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NHKBSP4K:バイロイト「トリスタンとイゾルデ」

2024年09月23日 | クラシック音楽・オペラ
   NHKBSP4Kで、2024年7月25日に収録されたバイロイト祝祭劇場バイロイト音楽祭2024 楽劇「トリスタンとイゾルデ」が放映された。
    ワーグナー 作曲   
   演出:ソルレイフル・オーン・アルナルソン
    出演:トリスタン:アンドレアス・シャーガー 、イゾルデ:カミッラ・ニールント 、国王マルケ:ギュンター・グロイスベック 、クルヴェナール:オウラヴル・シーグルザルソンほか、
   合唱:バイロイト祝祭合唱団  
   管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団   
   指揮:セミョーン・ビシュコフ  

   私が初めて見た最初の本格的なオペラが、このワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。
   大阪国際フェスティバル1967でのバイロイト祝祭劇場の引っ越し公演で、4月の某日に、月給1か月分を叩いてチケットを買って出かけたので、よく覚えている。(ピエール・ブーレーズ指揮、NHK交響楽団)
   丁度、直前に、カール・ベーム指揮のバイロイトのレコードが出て、イゾルデがビルギット・ニルソン、トリスタンがウォルフガング・ヴィントガッセン で主役が同じなので、何度も聞いて予習をした。
   しかし、ロンドンに5年居たので、ハイティンクがロイヤルオペラで振ったお陰で、ワーグナー・オペラの舞台は殆ど観ているが、このトリスタンとイゾルデを、実際の舞台で鑑賞したのは、
   先述のウイントガッセンとニルソンのバイロイトを皮切りに、ロンドンで、ウエールズ・ナショナル・オペラとロイヤル・オペラ、それに、ウルトラウト・マイヤーのベルリン・オペラだけで、あれだけレコードやCDを聴いてワーグナー節が頭にこびりついているのに、鑑賞機会は非常に限られているのである。
   最も最近に聴いたのは、METライブビューイングの舞台で、もう、随分前になり記憶は殆どないのだが、
   大阪フェスティバルのワーグナーの孫・ウイーラント・ワーグナーの演出は、幽かに原色のバックが浮かび上がる殆ど真っ暗で何もない舞台の奥の、全くと言って良いほど動きの止まった空間から、延々と歌手達の歌声とオーケストラのうねるようなコワク的な音楽が迸り続けると言う感じは、今でも覚えている。
   今回の舞台は、演出のソルレイフル・オーン・アルナンソンによる新演出版 で、船底ようの舞台に擬古的な芸術品や装飾品で飾った趣向を凝らした舞台で、なかなか趣があって興味深い。

   このオペラは、ワーグナーには珍しく神が登場しない至上の愛の物語。
   コーンウオールのマルケ王に嫁ぐ為に帆走されてきたアイルランドの王女イゾルデが、それが嫌で、着船間際に死のうとするのを、侍女のブランゲーネが避けるために、毒薬と愛の妙薬をすり替えて与えた。マルケ王の甥で迎えの使者として来た自分の許婚を殺した憎いトリスタンと一緒に飲んでしまった二人は、たちまち恋に落ちてしまう。
   王妃ながら王の目を盗んで密会していた二人の愛の絶頂に、マルケ王達に踏み込まれ、禁断の恋が露見する。トリスタンは、裏切った忠臣メロートに刺されて重態となり故郷に帰り養生するが良くならず、会いに来たイゾルデの前で息絶える。
   こんな話を、ワーグナーは3幕ものの4時間以上のオペラに仕上げたのだが、主要登場人物も限られていて、心情描写の微妙な対話が延々と続き、殆ど舞台にも動きがなく、壮大な合唱もなければスペクタクルもない息詰まるような重厚なオペラ。
   
   私が一番気に入っているのは、第二幕の、トリスタンとイゾルデが、禁断の恋に酔いしれて歌い続ける「愛の二重唱」。
   長大な螺旋を上りつめて行くように延々と続くあまりにも甘味で美しいトリスタンとイゾルデの愛の交歓で、これを聴きたくて出かけて行くようなものである。
   


   ウィキペディアによると、この長大な「愛の二重唱」は、実演では「愛の二重唱」前半の「昼の対話」部分が342小節に及びカットされる場合がある。約15分間にわたるこのカットは、第3幕のトリスタンの長丁場のために、スタミナを温存させる配慮からなされたものである。1951年のバイロイト・ライヴ以降、こうした短縮は基本的に禁じられた。という。
    ところが、今回の演出は、短縮版で、トリスタンとイゾルデがサワリを歌うだけで、急にマルケ王とメーロトたち従臣が踏み込んでくる。 
   全くの拍子抜けで期待外れであった。
   

   コンサートなどで、「前奏曲と愛の死」が、演奏されることがあり、素晴らしい録音も多いが、傑出したワーグナー歌手が歌う終幕のイゾルデの「愛の死」は、感動的である。
   
イゾルデの愛の死

   さて、カミッラ・ニールント は、 1968年生まれのフィンランドのソプラノで、世界中で活躍しており、レオノーレやヴェルディのエリザベッタ、ワーグナーのエリザベートやジークリンデと言ったリリックードラマチックなロールで国際的名声を博している。バイロイトでは、2011から14まで、タンホイザーのエリザベートを歌っており、祝祭デビューは、2017年のワルキューレのジークリンデ。
   「トリスタンとイゾルデ」を始めて歌ったのは、2018年4月のカーネギーホールでのアンドリス・ネルソン指揮のヨハネス・カウフマンとのボストン交響楽団の演奏会だったという。

   アンドレアス・シャーガー は、オペレッタのテノールからキャリアーをスタートしたオーストリアの歌手で、ワーグナーのトリスタン、ジークフリートやパルジファルと言ったヘルデンテノールに進み、ベルリン国立歌劇場の歌手として、スカラ座やバイロイトなどの国際舞台で活躍している。
   バイロイト祝祭でのデビューは、2016年にさまよえるオランダ人のエリクで、2017年と18年に、パルジファルを歌っている。

   指揮者のセミョーン・ビシュコフは、ロシア出身の卓越した指揮者で、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の指揮を打診されるが、政治信条を理由に公演が流れ、1974年にソ連から亡命して、欧米で活躍。数奇な運命を辿りながら、 現在はチェコ・フィルの音楽監督であり、カラヤンを尊敬していたというから、膨大なクラシック音楽要素が結集した指揮者なのであろう。
   
愛の妙薬を握りしめながら
カーテンコール

指揮:セミョーン・ビシュコフ
   
   

   
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時事雑感:気になる世界情勢

2024年09月22日 | 
   晴耕雨読、現役を離れて20年も経つと、やや、体力的にも晴耕の比重も軽くなって、無為の悠々自適生活というところだが、相変わらず、世界情勢には気になっている。
   
   この頃、歳の所為もあってか、時事情報は、テレビやインターネットや新聞などと言った身近にある短絡的な手段に頼っている。これまで意を用いていた専門書や雑誌などのような多少荷の重い手段から遠ざかってきたということである。

   テレビでは、NHKの世界トップニュースと国際報道2024は必ず見るようにしていて、ほかは、殆ど定時のニュースである。  
   しかし、そのニュースも無意味な情報ニュースが大半なので、NHKプラスの再放送を、殆どスキップして時間短縮して見ている。

   インターネットは、まず、ニューヨークタイムズとワシントンポストのHPを開いて、世界の情勢を俯瞰して、同時に経済記事をチェックする。その後、インターネット上で興味のある記事を読む。新聞社の電子版は購読者限りの限定記事が多いのだが、タイトルとイントロだけ見れば中身は分かる。

   新聞は、日経だけしか取っていないが、大半のニュース記事は、テレビやインターネットと同じで、特集記事や寄稿や解説など毛色の変わった記事しか新鮮味がない。私は、まず、最終ページの履歴書や小説、文化分野の記事から読み初めて、1面に移る。ロンドンに居た時、ファイナンシャルタイムズの時も文化面ファーストであった。

   インターネットでは、ニューズウィーク日本版、Reuters、ブルームバーグから、毎朝ニュース記事をインターネットで受けていて、結構役に立っていて面白い。

   極力時間短縮して、効率よく、新鮮な情報にアプローチしようとしているのだが、残念ながら、殆ど同じような変化に乏しい記事ばかりで、食傷気味である。

   現下の国際情勢に関しては、
   ウクライナロシア戦争については、ウクライナびいき
   ガザイスラエル戦争に関しては、パレスチナびいき
   アメリカ大統領選挙では、ハリスびいき
   欧米民主主義対中露等専制国家対立に関しては、民主主義
   結構、色々と勉強してきたつもりだが、先入観というか、無意識のうちに好き嫌いがはっきりとしてきて、多少バイアスがかかった形で、ニュースに対している感じである。
   

   
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mail adressを変えるべきか

2024年09月19日 | 
   私のメールアドレスに、毎日多数ののフィッシング詐欺と思しきメールが送られてくる。amazon、ヤマト、銀行やカード会社、イオン、ETC、東電等々、全く関わりのないアドレスからも、数限りない。

   ただ、一つ嫌なのは、私のメールアドレスのplalaを騙ったなりすましメールである。
   plalaのバージョンアップの案内だと思って、一度、引っかかって困ったので覚えているのだが、全く、同じ趣旨のメールが、毎日3~4通くるのである。

   送り先のmail adressを見ると、noreply@mail.plala.or.jpであり、このアドレスのmailや@の文字の前に、aがついたり、bがついたり、変化はあるが、そのたびに違ったメールがくる。
    アルファベットの文字を変えれば、いくらでも増やせる。
   迷惑メールに指定して削除しているのだが、一向に終息しない。

   困って、plalaに連絡した。
   これは、フィッシング詐欺メールであることは間違いないという。
   それなら、メールアドレスにplalaを使っているのであるから、plalaの方で削除するなり処理してくれないかと頼んだ。
   ところが、これはplalaとは何の関係もないなりすましメールアドレスで、plalaとしては、何もできないという。その後の<>に、個人のメールアドレスが載っているので、これが、送信者なのであろうか。(乗っ取られたメールと思しきなので、口絵写真はブルーで消去)
   避けるためには、メールアドレスを変える以外にないという返事である。

   理屈は良く分からないが、plalaのスタッフがどうしようもないと言うのであるから、打つ手がない。
   いつまで続くか、消去を続けることになろう。

   メールアドレスを変更するのは簡単だが、20年近くも使っているので、あっちこっち訂正するのが厄介である。
   新しいメールアドレスを作って、徐々に移すのも手かもしれない。
   しかし、この世の中、メールアドレスを新しくしても、すぐに、流出してしまうであろうから、フィッシング詐欺メールとは鼬ごっこで、注意する以外に方法はなさそうである。
   色々考えているのだが、どうするか。
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日本製鉄によるUSスチール買収計画の再申請を許可

2024年09月18日 | 政治・経済・社会
   各メディアが、「日本製鉄によるUSスチール買収計画の再申請を許可する」と報じている。
   買収計画は、11月の米国大統領選挙を前に政治的論争の種となっているのだが、対米外国投資委員会は、日本製鉄の提案再提出の要請を認め、買収を承認するかどうかの決定は選挙後まで延期される。というのである。

    ジェフ・メイソン、アレクサンドラ・アルパーによるロイターの「米国による日本製鉄のUSスチール買収の決定、選挙後まで延期」という記事が詳しいので、これによって考えてみる。

   日本製鉄によるUSスチール買収の149億ドルの買収を審査している米国国家安全保障委員会は、両社に買収承認の申請を再提出することを許可し、政治的に微妙な合併に関する決定を11月5日の大統領選挙後まで延期した。
   この動きは両社にとって一筋の光明となる。両社の提携提案は、対米外国投資委員会(CFIUS)が8月31日に、この取引が米国の重要な産業の鉄鋼サプライチェーンを脅かすことで国家安全保障上のリスクをもたらすと主張したことで阻止されるかに見えた。
   関係者は火曜日、CFIUSは、この取引が国家安全保障に与える影響を理解し、当事者と交渉するためにさらに時間が必要だと述べた。再提出により、提案された提携を審査して決定を下すための新たな90日間の期限が設けられる。
   バイデン、ハリス、トランプ、そして、全米鉄鋼労働組合が、この買収に反対していることは、周知の事実なので、ここでは省略する。

   CFIUSは、日本製鉄の合併により、重要な輸送、建設、農業プロジェクトに必要な鉄鋼の供給が損なわれる可能性があることを懸念していると、ロイターが独占入手した8月の両社宛ての書簡で述べた。
   また、CFIUSは、安価な中国製鉄鋼が世界的に供給過剰になっていることを挙げ、日本企業である日本製鉄の下では、USスチールが外国の鉄鋼輸入業者に関税を求める可能性は低くなると述べた。さらに、日本製鉄の決定は「国内の鉄鋼生産能力の削減につながる可能性がある」と付け加えた。
   一方、ロイターが独占入手したCFIUSへの100ページに及ぶ回答書簡で、日本製鉄は、本来なら休止状態になっていたであろうUSスチールの施設に数十億ドルを投資し、「米国国内の製鉄能力を維持し、潜在的に増強する」ことを「議論の余地なく」可能にすると述べた。同社はまた、USスチールの生産能力や雇用を米国外に移転しないという約束を再確認し、不公正な貿易慣行に対する米国法に基づく貿易措置の追求を含む、貿易問題に関するUSスチールの決定には一切干渉しないとした。
   日本製鉄は、この取引は「米国と日本の緊密な関係を基盤とした、中国に対するより強力なグローバル競争相手を生み出す」と付け加えた。

   新日鉄とUSスチールは3月に審査を申請し、CFIUSは6月に再申請を許可し、9月23日に期限を迎える2回目の90日間の審査期間が始まったとロイター通信は金曜日に報じた。12月にCFIUSは、国家安全保障上の懸念に対処する措置を講じて取引を承認するか、大統領に取引を阻止するよう勧告するか、または再度期限を延長する可能性がある。CFIUSの厳格な審査には90日かかるが、審査委員会の懸念に対処する時間を増やすために、企業が申請を取り下げて再提出することはよくある。というのである。

   同じくロイターは、「USスチールCEO、日鉄による買収成立を確信」と報じて、
   デビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は17日ミシガン州デトロイトで講演し、日本製鉄による買収成立に楽観的見方を示した。CEOは買収の審査プロセスは「非常に堅牢」だが、「われわれはそのプロセスを信頼し、尊重している」、とした。
   この統合は、両者の将来のみならず、国家安全保障、経済安全保障、雇用の安定を強化することは非常に明確であり良いことだと強調したのである。
   USスチールのHPは、
   NIPPON STEEL CORPORATION AND U. S. STEEL COMBINATION IS THE BEST DEAL FOR AMERICAN STEEL 一色、疑いの余地なし。

   9月5日に、このブログで、「米国の愚行:日鉄のUSスチール買収反対 」を書いて、アメリカにとって、この買収阻止が如何に愚行かを論じたので、蛇足は避ける。
   いずれにしろ、米国の財務省や国防省でさえコメントを控えていて、アメリカの政治経済社会に大きな影響を与える微妙な問題、
   新大統領の対応如何にかかっていると言うことであろうか。




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シェイクスピア観劇の思い出

2024年09月15日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   ぼつぼつ、倉庫のガラクタを整理しようと思って、段ボール3箱の封を開いたら、ぎっしりと詰まった劇場関係のパンフレットなどが出てきた。
   一箱目は、ロイヤルオペラ関係のパンフレット類で、何度か開けているのだが、ほかの2箱は、1993年にロンドンで箱詰めして日本に持ち帰ったままなので、30年ぶりである。
   まず、出てきたのは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)の公演パンフレットなどヨーロッパでの観劇関係の資料である。

   まず、何冊かRSCのパンフレットを書斎に持ち込んで読み始めたら、懐かしくなって前に進まず、まだ、2箱目の半分をチェックしただけで、後は手つかずで玄関に広げたままである。

   シェイクスピアについては、ロイヤル・ナショナル・シアターなどほかの劇場にも出かけたが、大半はRSCで、ほぼ5年間、ロンドンのバービカン・シェイクスピア劇場とストラトフォード・アポン・エイボンの大劇場とスワン座に通ったので、相当の回数である。
   ロメオとジュリエット、リア王、冬物語、アントニーとクレオパトラ、テンペスト、お気に召すままに、ハムレット・・・等々、シェイクスピア戯曲の半分以上は鑑賞したであろうか。
   イギリス人ではないので、パンフレットを読んだくらいでは良く分からないし、それに、古語で独特のシェイクスピアの長セリフの理解にも難渋して、最初は楽しめなかった。
   しかし、小田島雄志先生の翻訳本を友にして何十回も劇場に通っていると、不思議にも、シェイクスピアに魅せられ始めてきたのである。

   この口絵写真は、ハムレットのパンフレットの一部で、ケネス・ブラナーである。
   迂闊にも、チケットを買うまでは、ケネス・ブラナーが東西超一流のシェイクスピア役者であることを知らずに、何時でもチケットが買えるので、しばらくほっておいて買おうとしたら、ソールドアウトもあって、ようよう手に入れたのを覚えている。
   それ以降、ファンになって、著書を読んだり映画を見たりしているが、劇場では、この時(93年1月27日夜)の1回きりであった。

   シェイクスピア戯曲では、ロンドンで蜷川幸雄の「マクベス」と「テンペスト」を観ている。
   「恋に落ちたシェイクスピア」の劇場によく似たグローブ座は、帰国してから完成したので、この劇場でのシェイクスピア観劇は、その後のロンドンへの旅行の度ごとである。シアター舞台のRSCと、シェイクスピア時代の青天井の舞台のグローブ座とでは、相当雰囲気が違っていて、興味深い。

   もう一つ思い出深いのは、1991年のJAPAN FESTIVAL 。 
   

   このロンドンで、日本の古典芸能に感激して、帰国してからは、鑑賞三昧に明け暮れていたオペラやクラシックへの機会が減るので、乗り換えようと思ったことである。
   歌舞伎は、この口絵写真の”染五郎(現幸四郎)と澤村田之助のハムレット(葉武列土倭錦絵)”と、”玉三郎と勘三郎(当時、勘九郎)の鳴神、鏡獅子、鷺娘、ロイヤル・ナショナル・シアターでの公演”
   文楽は、竹本住大夫、吉田玉男、吉田文雀の「曽根崎心中」
   狂言は、野村万作萬斎父子の「ファルスタッフ 法螺侍」
 
   結局、東京行きが苦痛になり始めた最近まで、20年近く、これも、劇場に通い続けたことになる。 
   ゴルフやスポーツには縁が遠かった分、観劇と旅行で文化鑑賞に勤しんできたと言うことであろうか。
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旅は道づれツタンカーメン 高峰 秀子; 松山 善三

2024年09月13日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   1980年6月に出版された 高峰 秀子と 松山 善三共著の『旅は道連れツタンカーメン』、もう、半世紀近く前のエジプト旅行の紀行記録であるから、古色蒼然とした昔の海外旅行の雰囲気がムンムン漂っていて、実に懐かしい。
   当時、私は、ブラジルで仕事をしていて、帰国したころで、直後に、文革が終わって門戸を開いた中国を訪れた激動の時代であったので、時代離れをしたエジプトの雰囲気が面白かった。
   アジアや欧州や南北アメリカなどには旅行経験があり、結構旅をしているのだが、残念ながら、アフリカ大陸には機会がなくて、エジプトには行ったことがない。
   ギリシャ・ローマの歴史に興味を持ち、世界史、特に、東西交渉史を意欲的に勉強してきたのだが、肝心の4大文明の発祥地のうち、訪れたのは黄河だけで、エジプト、メソポタミア、インドには行っていない。

   さて、この本のエジプト漫遊だが、歴史行脚にのめり込んで期待に胸を膨らませて感嘆頻りの夫君と、不本意ながら旅に出た妻との往復書簡風の旅行記。ちぐはぐ珍道中の雰囲気が、二人の夫婦生活での人間関係が増幅していて、非常に面白い。エジプト古王朝の歴史を追求して死生観を展開する善三と、バカでかいピラミッドを何のために作って人民を苦しめたのかという何事にも動じない秀子。スフィンクスは実在したが雌が居なかったので絶えてしまったという脚本家の善三を秀子は笑い飛ばす。冒頭から面白い。

   善三は、目的があってエジプトに行ったので、事前に知識情報を蓄えて理論武装しており、結構、旅日記に託して、エジプトの歴史や文化芸術、地理、国民性など詳細に書いていて、それなりにエジプト旅行記になっている。
   ギザのピラミッドからスタートして、アスワンハイダム、アブ・シンベル、王家の谷、ツタンカーメン、カイロ博物館、アレクサンドリアなど、中身の濃いエジプト旅行記である。
   一方、秀子は、行き当たりばったりの旅日記で、食べ物や出会った人々との交流や印象などじかの描写が多くて、エジプトのムンムンとした雰囲気を醸し出している。この旅日記を縦線にして、夫・ドッコイとの結婚話や子供をつくれなかった思いなど、人間秀子の生きざまを横線にして、随所に生身の心情を吐露していて味わい深い。
   善三の普通の旅行記に、秀子の温かい旅日記が、多彩な彩を添えていて面白い、そんな本である。

   善三の趣味というか意向で二人はアフガニスタンにも行っていて、旅行記を著しているのだが、なぜ、欧米ではなく中東なのか、
   秀子は、一人でパリに行って生活していた。

   高峰秀子の映画は、随分見た。
   高峰 秀子の「わたしの渡世日記 上下」も読んでレビューしているが、秀子の本は他にも結構読んでいて、稀有な体験をした偉大な名優なので、非常に含蓄がある中身の濃い本なので印象深かった。
   久しぶりに、高峰秀子文化を楽しんだ。
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PS:スティグリッツ「トランプの選挙勝利が米国経済に及ぼす影響 What a Donald Trump election victory would mean for the US economy

2024年09月10日 | 政治・経済・社会時事評論
プロジェクトシンジケートのジョセフ・スティグリッツ教授の「ドナルド・トランプの選挙勝利が米国経済に及ぼす影響 What a Donald Trump election victory would mean for the US economy」

   先に、「ノーベル賞受賞の経済学者16人がトランプ再選に警鐘」にふれて、この経済学者たちの代表であったスティグリッツ教授の「トランプよりバイデン、米国経済にとってどちらがよいか議論の余地なし There’s No Debating Who Would Be Better for the US Economy」を紹介して、トランプの経済政策がバイデンよりはるかに悪いことを論じた。
   今回のこの論文は、ハリス擁護、トランプ拒否のダメ押しである。

   論旨極めて明快なので、抄訳する。
   11月の米国大統領選挙は多くの理由で極めて重要であり、危機に瀕しているのは米国民主主義の存続だけでなく、経済の健全な管理であり、それは世界の他の国々に広範囲にわたる影響を及ぼす。米国の有権者は、異なる政策だけでなく、異なる政策目標の間で選択を迫られている。
   民主党候補のカマラ・ハリス副大統領は、まだ経済政策の詳細を完全に明らかにしていないが、バイデン大統領の政策の中心となる原則は維持する可能性が高く、その原則には、競争の維持、環境の保護、生活費の削減、成長の維持、国家経済の主権と回復力の強化、格差の緩和など、強力な政策が含まれている。
   対照的に、対立候補のトランプ前大統領は、より公正で強固で持続可能な経済の創出には関心がない。その代わりに、共和党候補は石炭や石油会社に白紙の小切手を提供し、イーロン・マスクやピーター・ティールのような億万長者に接近している。さらに、健全な経済運営には目標を設定し、それを達成するための政策を設計する必要があるが、ショックに対応し、トランプは前政権下で新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応で惨めに失敗し、100万人以上の死者を出した。

   前例のない事態に対応するには、最善の科学に基づいた難しい判断が必要である。ハリス側の米国には、トレードオフを検討し、バランスの取れた解決策を考案する思慮深く実用的な人物がいるが、トランプは、混乱を好み、科学的専門知識を拒否する衝動的なナルシストである。60%以上の一律関税を導入するという提案だが、価格が上昇するだけであり、コストの矢面に立たされるのは低所得層と中所得層の米国人で、インフレが上昇し、FRBが金利引き上げを余儀なくされると、経済の成長鈍化、インフレ上昇、失業率上昇という三重苦に見舞われることになる。
   さらに悪いことに、トランプはFRBの独立性を脅かす極端な立場をとっている。トランプが再び大統領になれば、経済の不確実性が絶えず生じ、投資と成長が抑制され、インフレ期待が高まることはほぼ確実である。トランプが提案する税制も同様に危険で、企業と億万長者に対する2017年の減税は、追加投資を刺激できず、自社株買いを促しただけであった。トランプのようなポピュリストの扇動家は財政赤字を気にしないが、米国と海外の投資家は心配すべきである。生産性向上につながらない支出による財政赤字の膨張は、インフレ期待をさらに高め、経済パフォーマンスを低下させ、格差を悪化させるだろう。

   同様に、バイデン政権の代表的なインフレ抑制法を廃止することは、環境や、国の将来にとって極めて重要な重要分野における米国の競争力に悪影響を及ぼすだけでなく、医薬品のコストを下げてきた条項も廃止し、生活費の上昇を招くことになる。
  トランプは、また、バイデン・ハリス政権の強力な競争政策を撤回したいと考えている。この政策もまた、市場支配力を固定化し、イノベーションを阻害することで、格差を拡大し、経済パフォーマンスを弱めることになる。また、所得連動型学生ローンをより適切に設計することで高等教育へのアクセスを増やす取り組みを廃止し、21世紀の革新的経済の課題に対応するために米国が最も必要としている分野への投資を最終的に減らすことになるだろう。

   これが、米国の長期的な経済的成功にとって最も厄介なトランプの政策の特徴である。トランプ政権が再び誕生すれば、過去200年間の米国の競争優位性と生活水準の向上の源泉である基礎科学技術への資金が大幅に削減されることになる。トランプは前任期中、ほぼ毎年のように科学技術への大幅な予算削減を提案したが、非過激派の共和党議員らがこうした予算削減を阻止してきた。しかし今回は状況が異なる。共和党がトランプの個人崇拝の対象となっているからである。

   トランプがベンダーや請負業者への支払いを拒否してきた長い実績は、同氏の性格を物語っている。同氏は権力を行使して誰からでも奪おうとする横暴者である。だが、暴力的な反乱分子を公然と支持するようになることで、さらに大きな問題となる。法の支配は、単に私たちが大切にすべきものというだけでなく、経済と民主主義の健全な機能にとって極めて重要である。2024年の秋を迎えるにあたり、今後4年間で経済がどのようなショックに直面するかは分からない。しかし、これだけは明らかだ。ハリスが当選すれば、2028年の経済ははるかに強くなり、より平等になり、より回復力が高まっているであろう。

   さて、この論文で、特に強調しているのは、トランプが、最善の科学に基づいた難しい判断が出来ず、科学的専門知識を拒否する衝動的なナルシストであること。
   米国の長期的な経済的成功にとって最も重要な経済政策である科学技術振興に対して消極的で、トランプ政権が再び誕生すれば、過去200年間の米国の競争優位性と生活水準の向上の源泉である基礎科学技術への資金が大幅に削減されることになる。イノベーションを阻害するのみならず、経済パフォーマンスを弱めて国の将来にとって極めて重要な分野における米国の国際競争力を棄損する。
   トランプの一枚看板「MAGA」の真逆の愚行である。

   ここでは論じられていないが、トランプは勿論、保守党の基本政策は、弱肉強食の市場経済至上主義であって、強者・富者優先であり、労働者や経済的弱者のための経済政策など微塵もない。
   なぜ、疎外された白人労働者たち、保守党が見向きもしない弱者貧者たちが、トランプを岩盤支持層となって囃し立てるのか、
   今や、保守党は、穏健派が弱体化して、トランプ一色のカルト集団のように変身してしまっているので、独裁者トランプの脅威は尋常ではない。

   民主党は、今回の選挙で、明確に主義信条において一線を画すべきであって、徹底的に、中間層重視の政策を協調して、本来のリベラル色を前面に押し出して、真の国民政党に脱皮すべきである。
   リフレッシュしたハリスなら出来る。
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10歳までに読みたい世界名作

2024年09月08日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   先日書いたように、3年生の孫娘に読書習慣を付けたくて、インターネットで本を検索していたら、「10歳までに読みたい世界名作」という恰好のタイトルが出てきた。ほかにも参考になる資料もあるのだろうが、学研の記事なので信用に値する。先に選択した「小学館 世界の名作」で、本を選んであるので、追加資料として、参考になればと思ったのである。

   口絵写真は、その第一期の8冊である。
   学研の説明では、「10歳までに読みたい世界名作」シリーズとは、
   時代を超えて世界中で読みつがれてきた名作。
長い間、読みつがれてきたということは、それだけたくさんの人々が、「これはおもしろい!」と太鼓判を押した証拠。そこには、生きるために必要なエッセンスがつめこまれています。

   それ以降で小学館のとダブっているのは、アルプスの少女 ハイジ、西遊記、ふしぎの国のアリス、シンドバッドの冒険、フランダースの犬、家なき子、十五少年漂流記
   ほかで私でもよく知っているのは、ロビンソン・クルーソー、巌窟王、三銃士、海底2万マイル、長くつ下のピッピ、宝島、などであろうか。
   
   これを見ていて気付いたのは、私の子供のころから、丁度、70年以上も前のことになるのだが、子供への推薦図書世界の名作のタイトルが、ほとんど変わっていないと言うことである。
   あの頃は、終戦の直後で日本は貧しくて学制や教育も激変期で、子供が世界の名作に勤しむと言った雰囲気はなかったと思うのだが、その後の印象だとしても、日本の教育が、それほどぶれていなかったと言うことであろうか。
   古典の揺るがぬ価値というべきか、子供の世界においても、良いものは良いのである。

   子供を取り巻く環境は激変して、子供の価値観も問題意識も感性も様変わりしてしまったが、世につれ人につれ、新世代の子供たちが、どのように世界の名作に対応するのか、興味津々である。
   
   
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米国の愚行:日鉄のUSスチール買収反対

2024年09月05日 | 政治・経済・社会
    日鉄が買収しようとしているUSスチールは、世界を制覇していた頃のアメリカ経済の最高峰のシンボル企業であり、アメリカ資本主義の命そのものであった。
   そのUSスチールが落ちぶれて、日本企業に買収されようとしているのだから、腐っても鯛は鯛、
   墓穴を掘っても、誇り高きアメリカ国民にとっては耐え難い。

   米大統領が、日鉄の買収阻止へ最終調整に入り、統合話が消える公算が高くなり、これに対してUSスチールが反発というニュースが日米のメディアの話題になっている。  

   買収計画には、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対していて、11月の米大統領選を控え民主党候補のハリス米副大統領は2日、USスチールについて「米国内で所有、運営されるべきだ」と述べ買収に反対の姿勢を示し、トランプ前大統領も再選すれば買収を阻止すると明言している。 
   買収は対米外国投資委員会(CFIUS)が審査していて、CFIUSが日鉄に対し安全保障上の懸念があると伝えたと言うことで、バイデンはCFIUSの勧告に基づき、買収を禁止する行政命令を出すとみられている。 

   それを受けて、USスチールのデービッド・ブリットCEOは、日本製鉄による買収が不成立なら、製鉄所を閉鎖することになり、本社をピッツバーグから移転する可能性も高いと米紙ウォールストリート・ジャーナルに語った。ブリット氏はインタビューで、日鉄はUSスチールの老朽化した製鉄所に約30億ドル(約4300億円)の投資を約束しており、それが競争力を保ち雇用を維持する上で不可欠だが、日鉄買収が不成立に終わるなら、それは実現されない。と述べたという。 

   さて、USスチールの情報を知ろうと、HPを開いたら、日本製鐵とUSスチールのロゴが横並びで表示されて、口絵写真の真ん中に、次の表示のみ、
MOVING FORWARD TOGETHER AS THEBEST STEELMAKERWITH WORLD-LEADING CAPABILITIES  
   LEARN MORE をクリックすると、
Nippon Steel Corporation + U. S. Steel
Moving Forward Together as the ‘Best Steelmaker with World-Leading Capabilities’
Nippon Steel Announces Transformative Investments at U. S. Steel's Mon Valley Works and Gary Works
日鉄の投資提案を提示し、加えて、
The Steel CityとStandard Steel’s Comebackとの短い動画で明るい未来を描く。
   HPには、2社の統合に関する情報以外に記事はない。統合によって、USスチールの未来が如何に明るく起死回生を図れるかのオンパレードである。
USスチールにとっては、日本製鐵との統合以外には眼中になく、破談すればその未来はないと思っている。

   詳細は省くが、既に、USスチールの命運はほとんど尽きており、日本製鐵との統合がだめになれば、衰退の一途を辿るだけで、反対する労働者の生きる道もなくなってしまうのに。と思っている。
   なぜ、買収反対がアメリカにとって愚の骨頂かは、2月22日のこのブログで、プロジェクト・シンジケートの論文アン・O・クルーガー 「 アメリカの鉄鋼狂気 America's steel madness」を紹介したので、一部引用する。

   バイデンは、3つの主要な経済政策目標を定めている。外国直接投資の奨励などにより「良い仕事」の数を増やす。 米国の製造と現地生産を強化する。 そして最新テクノロジーの導入を加速する。 バイデンはまた、より多くの貿易、特に重要な物品の輸入を米国の同盟国に振り向けること、いわゆるフレンドショアリングを目指している。
   この鉄鋼合併はこれらすべての目標を前進させると同時に、米国の主要同盟国との関係を強化する可能性がある。
   日本製鉄による 買収とそれに伴う技術の向上により、US スチールの衰退は逆転するはずである。 取引条件は、この買収により米国の鉄鋼業界の生産性が向上する可能性が高いことを意味している。 米国の鉄鋼価格が下落すると、鉄鋼を輸入するインセンティブが低下し、冷蔵庫や自動車などの製品を製造する米国のメーカーはコストを削減できるため、競争力が高まるだろう。 これらすべてが米国の製造業と技術基盤を強化し、米国での「良い仕事」の継続的な提供、そして可能性のある創出を確実にするであろう。
    US スチールの運命を逆転させ、アメリカの鉄鋼産業の見通しを改善する本当の機会を意味するこの出来事を歓迎すべ きであって、このチャンスをミスるのは、America's steel madness正気の沙汰とは思えない。 と言うことである。

   日鉄はUSWに譲歩案として、少なくとも、現行の労働協約が失効するまでは従業員のレイオフ(一時解雇)、工場閉鎖は実施しないとも公約したのだが、この公約を「空約束」として、USWは首を縦に振らない。しかし、このまま、衰退して解雇されるよりは、USスチールが技術革新によって生産性が向上して起死回生すれば、雇用機会も増え労働条件も良くなると考えるべきであろう。

   選挙ともなれば、「アメリカファースト」も色あせてしまって、金の卵を殺すのも知らずに、労働者票を取りたいばっかりに、定見も知見も欠如したUSWにすり寄る悲しさ、
   トランプは勿論、ハリスも。

   日鉄のUSスチール買収反対は、アメリカ製造業凋落の象徴ともいうべき現象で、葬送行進曲の序章がかすかに聞こえてくる、と言えば言いすぎであろうか。
   米鉄鋼メーカー、クリーブランド・クリフスが買収合併に動いているようだが、斜陽の弱者同士の統合は死期を早めるだけ、
   アメリカ政府が、国内企業の統合だけで危機を乗り切ろうとするのなら、先は見えている。


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PS:ダロン・アセモグル「トランプによる民主主義への脅威は増大するばかりThe Trump Threat to Democracy Has Only Grown

2024年09月04日 | 政治・経済・社会時事評論
   プロジェクトシンジケートのダロン・アセモグルの「トランプによる民主主義への脅威は増大するばかりThe Trump Threat to Democracy Has Only Grown」注目に値する。
 
   アセモグルは、本論で、トランプによる民主主義への脅威を詳細にその理由を説明して、
   トランプの米国制度に対する脅威が如何に深刻か真剣に受け止めなければならない。米国の民主主義を守る唯一の方法は、彼を倒すために民主的な手段を使うこと、すなわち、11月の大統領選挙で彼に勝つことである。民主主義は、現実世界で成果をもたらし、人々が願望を叶えるのに役立つときに繁栄する。実際には、それは経済的繁栄、安全、公平性、有能な統治、そして安定性を促進することを意味する。これは、民主主義自体への脅威を含む定期的なショックや課題に耐えるために特に重要である。と民主主義の堅持を説く。

   米国の制度は、1930年代後半のチャールズ・コフリン神父によるプロトファシストの挑戦、1950年代と1960年代のジム・クロウ法の南部における黒人公民権への抵抗、人種差別主義者のジョージ・ウォレスの1968年の大統領選挙、そしてウォーターゲート事件に耐えた後、より強くなってきた。トランプが今年11月に敗北すれば、米国の制度は再びより強くなるであろう。と言う。
   アメリカの制度は、このような困難を乗り越え、さらに強くなることができるが、しかし、それは民主主義支持勢力が結集し、システムが一般の人々にとって意味のある結果をもたらすことができることを実証した場合に限られる。
   すなわち、「トランプによる民主主義への脅威は増大するばかり」であり、すべからく、アメリカの制度、民主主義を死守するためには、11月の選挙で、トランプに勝利することである。と言うのである。

   貧困との戦い、労働者階級の生活改善、共和党からの愛国心の回復、民主主義の強化に焦点を当てたカマラ・ハリスとティム・ウォルツの経歴、キャリア、最近の選挙演説には賞賛すべき点がたくさんある。しかし、これらの美徳を脇に置いても、民主党候補を支持する十分な理由がある。結局、代替案はトランプであり、トランプは米国の制度に非常に深刻な脅威を与えているため、彼に対抗するまともな候補者なら誰でも強力な支持を受けるに値する。という。

   トランプが米国の民主主義を脅かすのは、米国の制度が規範や法律さえも破ろうとする独裁的なポピュリストに対処するように設計されていないためでもある。2017年に指摘したように、米国の有権者と市民社会は、そのような人物を阻止できる唯一の力である。米国の民主主義は2017年から2021年にかけてトランプの大統領職に耐えたが、トランプは見つけられるあらゆる制度上の弱点を利用し、すでに二極化していた社会の分裂を深め、敗北した自由で公正な選挙の結果を覆そうとした。
   2021年1月6日のトランプのクーデター未遂にもかかわらず、民主党は2020年の選挙でホワイトハウスを奪還することに成功したが、それは彼らに大きなアドバンテージ、すなわち、それはトランプ自身が無能だったからである。長年の政治規範は深刻なダメージを受けたが、民主主義は生き残った。
   大統領としてのトランプの無能さには2つの側面がある。第一に、彼は一貫性を示すことができなかった。彼の唯一の本当の目的は権力を自分の手に集中させ、家族や取り巻きを昇進させて裕福にすることだったが、それをやり遂げる規律と集中力に欠けていた。もちろん、もっと規律のある人ならもっと大きな損害をもたらしたかもしれないという恐ろしい含意がある。第二に、トランプは多くの部下から無条件の個人的な忠誠心を勝ち取ることができず、その結果、彼の最も突飛な計画や決定のほとんどが内部から暴露されたり阻止されたりした。

   残念ながら、トランプは次の5つの主な理由から、今日のアメリカの民主主義にとってはるかに大きな脅威となっている。
   第一に、彼は怒りを募らせるばかりで、それは権力を自分の手に集中させ、それを敵に対して行使する決意を強めることを意味する。彼がホワイトハウスに戻れば、彼はより凶暴になるだけでなく、個人的な目的を追求する上でより一貫性を持つようになる可能性がある。
   第二に、トランプとその思想的同調者たちは、すでに暗黙の統治計画であるヘリテージ財団のプロジェクト2025で行ったように、高官および中堅職員の任命にもっと多くの考えと精査を注ぐだろう。トランプはこの包括的な政策の青写真を放棄すると主張しているが、これはすでに政権の人材候補を見極めるための貴重なツールとなっている。ヘリテージ財団の暗いビジョンを支持することはリトマス試験であり、今度は内部告発者や民主主義の擁護者が「部屋の中の大人」として機能できないようにする。
   第三に、共和党は今やトランプの個人的なカルトであり、つまり全国の地方共和党職員はトランプの命令に何でも従うだろう。中には選挙を不正に操作し、地方の法執行機関や公共サービスを掌握しようとする者もいるかもしれない。トランプが再び地方選挙管理官に自分に有利な票を「もっと見つける」よう要求すれば、トランプは望みをかなえるかもしれない。
   第四に、知識エリートや民主党指導者によるさまざまな誤り(国境開放や警察予算削減など、極端な「目覚めた」立場を主張するなど)により、多くの右派、中道派、非大学有権者は民主党を左翼過激派と結論付けている。民主党に愛国心が欠けていると考える人々は、ハリスやウォルツが彼らにアピールする措置を講じているにもかかわらず、トランプと決別する可能性ははるかに低いだろう。
   第五に、これらすべての理由から、トランプに反対する効果的な市民社会の行動はより困難になっている。左派が独自のイデオロギーの純粋さテストを適用し、それに満たない者を恥じ入らせてきた数年後には、大規模な反トランプ連合に加わろうとする無党派有権者や中道派共和党員は少なくなるだろう。進歩派民主党員は、彼の違憲または反民主的な行動に単独で対抗することになるかもしれないが、それだけでは十分ではない。

   これらすべての理由から、トランプの米国制度に対する脅威は真剣に受け止めなければならない。米国の民主主義を守る唯一の方法は、彼を倒すために民主的な手段を使うこと、選挙で落とすことである。

   しかし、民主主義が、これまでのように幾多の困難と試練に耐えるためには、投票用紙に良い選択肢が必須であり、人々は、問題を解決し、人々を鼓舞し、自由な制度を守るという優れた実績を持つ政治家に投票できなければならない。ハリス・ウォルツの組み合わせは、その条件を満たしており、これから、人々を動員し、民主主義への支持を回復するという大変な作業が始まる。しかし、さらに困難な作業は、貧困と不平等と闘い、両陣営の分極化と過激主義を減らし、政府が一般の人々のために働いていることを示すことによって、民主主義の約束を果たすことである。と結んでいる。

   以上が、アセモグルの見解であるが、
   先日、マーク・ジョーンズの「ファシズムはどのようにして起こるのか」について書いて、トランプ現象がナチズム台頭前夜に酷似していて危険であるという見解を紹介した。
   殆ど同じ趣旨であり、アメリカの資本主義の命運が、トランプの勝利如何にかかっており、トランプを阻止しなければ、アメリカの制度が崩壊する危険があるという警告である。

   しかし、大統領選挙論争は、「MAGA」など口から出まかせのトランプ節や個人的な批難中傷など末梢的な議論に洗脳されて、最も大切なアメリカにとっての死活問題、民主主義の死守には殆ど及ばない。
   ハリスは、この一点に絞ってでも、トランプを論破すべきである。

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孫娘に世界の名作を読ませよう

2024年09月02日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   先日日経を読んでいたら、子供が動画ばかり見ていて本を全く読まなくなって困っているという記事が掲載されていた。
   我家の3年生の孫娘も似たり寄ったりで、私のパソコンをハイジャックして、ゲーム感覚で動画を見ている。

   わが小学生の頃は、テレビもなければパソコンもなし、ナイナイ尽くしの貧しい生活を送っていたので、読書が恰好の遊びであり愉しみであったので、疑いもなく、本は子供の大切な友であった。

   さすれば、読書習慣がなくなり、動画やゲームで、パソコンやテレビ漬けの子供を、どうして、これらから引き離して、本を読ませるのか、容易なことではない。
   勿論、読む読まないにかかわらず、両親は、子供のために、結構色々な本を買って与えている。
   孫娘に、一冊何でも良いから本を選んで持ってくるように言ったら、小学館の世界の名作の「アンデルセン童話」を持ってきた。
   大型本で、個々の童話に応じて綺麗な挿絵が描かれていて、本文も簡略ながら本格的な翻訳であり、全く手抜きのない絵本と子供用単行本の中間の位置づけの本で、丁度、小学校中学年に頃合いの本である。

   世界名作全集の中から、適当な本を選んで読ませようと思って、インターネットでどんな本が良いか、どの会社の本が良いかなど検索を始めたが、どれも甲乙つけがたく、これという決定版はない。
   この小学館の本は、20年以上も前の出版だが、まずまずと思ったので、参考のために、「グリム童話」と「イソップ物語」を買って読ませたら、結構効果的であった。
   興味を持てば、一寸背伸びして岩波の少年文庫や本格的な世界文学作品に移行すれば良いので、とりあえず、3年生のうちは、このシリーズの中から適当な本を選んで、読ませることにした。
   とにかく、成功するかどうかわ分からないが、本を読む習慣をつけることである。
   子供時代の勉強の基礎は、なによりも読解力なので、その涵養のためにも、読書は必須である。

   一応、読むべき本がどんな本なのか、インターネットを叩いて検索した。
   学研が、「10歳までに読みたい世界名作」を発表している。30冊ほどで、先の小学館の本と重なっている本もあるが、参考として、これらの推薦図書から適当に追加すれば、十分だと言う気がしている。
   
   当然、日本の本も選ぶべきだが、録画していた「日本昔話」を見ており、多少の知識があるので、世界の名作の読書に目鼻がついてからにしようと思っている。
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