プロジェクトシンジケートのジョセフ・ナイ教授のトランプ政治への疑問、The Future of World Order
我々は、まったく新しいアメリカの衰退期に入っているのであろうか、それとも、アメリカの世紀を定義した機関や同盟に対する第 2 次トランプ政権の攻撃は、単なる周期的な混乱なのであろうか。「世界秩序」は程度の問題なので、2029 年までわからないかも知れない。
トランプ大統領は、戦後の国際秩序の将来に深刻な疑問を投げかけている。最近の演説や国連での投票で、彼の政権は、平和的な隣国ウクライナに対して征服戦争を開始した侵略者であるロシアの側に立っている。彼の関税脅しは、長年の同盟と世界貿易システムの将来に疑問を投げかけており、パリ気候協定と世界保健機関からの彼の離脱は、国境を越えた脅威に対する協力を弱めている。
トランプ大統領は、戦後の国際秩序の将来に深刻な疑問を投げかけている。最近の演説や国連での投票で、彼の政権は、平和的な隣国ウクライナに対して征服戦争を開始した侵略者であるロシアの側に立っている。彼の関税脅しは、長年の同盟と世界貿易システムの将来に疑問を投げかけており、パリ気候協定と世界保健機関からの彼の離脱は、国境を越えた脅威に対する協力を弱めている。
これらの反動的だと思えるようなトランプ政策が、世界秩序の未来に暗雲を漂わせていると言うことであろうか。
帝国自体は、ハードパワーとソフトパワーの両方に依存していた。中国は、強力な共通規範、高度に発達した政治制度、相互の経済的利益によって結びついていた。ローマ、特に共和国も同様だった。として、
ローマ帝国崩壊後のヨーロッパには、教皇制や王朝君主制という制度や規範があったと説き起こして、
16 世紀と 17 世紀のプロテスタントの台頭、ローマ カトリック教会内の分裂、国家間の競争の激化により、宗教的熱狂と地政学的野心から生まれた戦争、そして、18 世紀末のフランス革命、その後のナポレオンの帝国、1815 年のウィーン会議で近代国家制度を創設する最初の意図的な取り組み、ビスマルクのドイツ統一のためのさまざまな戦争、その後第一次世界大戦が起こり、続いてベルサイユ条約と国際連盟が成立したが、その失敗が第二次世界大戦の舞台となった。その後の国連とブレトンウッズ機関 (世界銀行、国際通貨基金、世界貿易機関の前身) の創設は、20 世紀で最も重要な制度構築のエピソードとなり、米国が支配的プレーヤーであったため、1945 年以降の時代は「アメリカの世紀」となった。1991年の冷戦終結により、一極的な権力の分配が生まれ、WTO、国際刑事裁判所、パリ気候協定などの機関の創設や強化が可能になった。と、現在までの世界秩序について詳述している。
トランプ以前から、一部のアナリストは、このアメリカの秩序は終わりを迎えつつあると考えていた。21世紀には、権力の分配に新たな変化がもたらされ、通常はアジアの台頭(より正確には回復)と表現されている。アジアは1800年には世界経済の最大の割合を占めていたのだが、西洋の産業革命後には遅れをとって、そして他の地域と同様に、西洋の軍事技術や通信技術が可能にした新たな帝国主義に苦しんだ。
現在、アジアは世界経済生産の主要源としての地位を取り戻しつつある。最近のアジアの成長は、米国よりもヨーロッパの犠牲によってもたらされた。しかし、米国は衰退するどころか、1970年代と同様に、依然として世界のGDPの4分の1を占めている。中国は米国のリードを大幅に縮めたが、経済的にも軍事的にも、また貿易面でも、米国を上回ってはいない。
国際秩序が崩壊しつつあるのなら、米国の国内政治も中国の台頭と同じくらい大きな原因である。問題は、米国がまったく新しい衰退期に入っているのか、それとも第二次トランプ政権によるアメリカの世紀の制度や同盟国への攻撃が、新たな周期的な落ち込みとなるのかということである。
現在、アジアは世界経済生産の主要源としての地位を取り戻しつつある。最近のアジアの成長は、米国よりもヨーロッパの犠牲によってもたらされた。しかし、米国は衰退するどころか、1970年代と同様に、依然として世界のGDPの4分の1を占めている。中国は米国のリードを大幅に縮めたが、経済的にも軍事的にも、また貿易面でも、米国を上回ってはいない。
国際秩序が崩壊しつつあるのなら、米国の国内政治も中国の台頭と同じくらい大きな原因である。問題は、米国がまったく新しい衰退期に入っているのか、それとも第二次トランプ政権によるアメリカの世紀の制度や同盟国への攻撃が、新たな周期的な落ち込みとなるのかということである。
しかし、その帰趨は、2029年まで分からないかもしれない。
と結んでいる。
トランプ政権は、ウクライナではなく侵略者のロシアに味方し、関税脅し(tariff threats)で、長年の同盟関係と世界貿易システムの将来に打撃を与え、パリ気候協定と世界保健機関からの離脱は、国境を越えた脅威に対する協力を弱めるなど反動政策を行っているが、
アメリカの世界的覇権を確立しパクスアメリカーナの維持、すなわち、アメリカの世紀を定義してきた虎の子の機関や同盟に対するこの第 2 次トランプ政権の攻撃は、単なる周期的な混乱なのであろうか、 Are the second Trump administration’s attacks on the institutions and alliances that defined the American Century just another cyclical disruption?
ナイ教授は、2029年まで分からないとしているが、問題意識は、極めて明確である。
歴史的なアメリカの衰退に加えて、第2次トランプ政権の施策が、MAGAではなく逆に、更に、アメリカの退潮に追い打ちをかけるのではないかと危惧させるような論調である。
歴史的なアメリカの衰退に加えて、第2次トランプ政権の施策が、MAGAではなく逆に、更に、アメリカの退潮に追い打ちをかけるのではないかと危惧させるような論調である。