熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ギリシャ 過去30年間で最悪の熱波

2021年08月09日 | 地球温暖化・環境問題
   毎日新聞によると、
   記録的な熱波が続くギリシャで山火事が相次ぎ、AFP通信によると、8日までに5万6000ヘクタールを焼失し、2人が死亡した。首都アテネ北東にあるエーゲ海のエビア島では火の手が島の南と北から押し寄せ、2000人以上の住民がフェリーなどで避難した。ギリシャでは北部テッサロニキで3日、気温47・1度を記録するなど40度を上回る日が続き、過去30年間で最も深刻な熱波に襲われている。強風も伴い、アテネの北郊など150カ所以上で山火事が発生し、西部オリンピアの古代オリンピック遺跡にも一時、火の手が迫った。

   まず、ギリシャの気温だが、次のインターネットで得た資料によると、アテネの気温は、ほぼ、東京に匹敵し、最高温度は多少高いかも知れない。
   何度か、ギリシャには行っているが、地中海性気候で、乾燥地帯なので、最も暑い7月でも、平均27.7度で最高35度に達しても、湿度の高い蒸し暑い東京とは違って快適であった。
   もう、何十年も前になるが、サンパウロに住んでいたときに、4月だったと思うが、一時帰国の途中、南国だから温かいであろうと思って、ブラジル用の夏の背広姿でギリシャに行って、寒くて困って、バーバリーのコートを買ったことがある。
   ところが、その近辺が、気温47・1度を記録するなど40度を上回る日が続いていると言うから驚きである。
   
   
   AFPが、”ギリシャ山火事、エビア島で住民避難”と報じており、その記事の写真を借用して掲載しておくが、焼け爛れた大地は無残で、乾燥しきっているから止めようがないのであろう。
   
   

   さて、山火事多発による宇宙船地球号の危機的な状況だが、今日、日経が、”北米やロシア、高温乾燥で山火事多発 温暖化進む悪循環(青木 慎一)”と報じた。
   記録的な熱波に見舞われた北米やロシアで、大規模な山火事が広がる。高い気温と少雨で草木が乾燥して燃えやすくなっているうえに、落雷が増えて自然発火する事例も目立つ。大量の二酸化炭素(CO2)が発生しており、温暖化が加速し、熱波や山火事が悪化するという負の連鎖を危惧する声もある。と言うことである。
   この議論を展開するために、まず、この記事の解説図を借用しておきたい。
   山火事が、広大なアマゾンやアジアの熱帯雨林に飛び火していないのは、せめてもの幸いか。
   この写真のカナダ西部のリットンはセ氏49.6度と同国の観測史上最高気温を記録した後、大規模な山火事に見舞われ、町の9割が焼失した。と言うから、ギリシャのケースと同じである。
   

   北米以上に深刻なのは、シベリアで、2019年以降、3年続けて大規模な山火事に見舞われており、深刻化するのは温暖化の影響とみられている。
   研究者が危惧するのは「山火事の増加が温暖化を加速させる」ことだ。高緯度地方には落ち葉や枯れ木が炭になった泥炭層が広がる。これらが燃えるとCO2がより多く生じる。欧州中期予報センターなどの分析によると、北極圏で山火事によって排出されたCO2の量は20年夏に、日本の年間排出量の2割に当たる2億4400万トンと過去最多だった。今年も20年の水準に近づいている。
   日本大学教授の串田圭司さんは「ツンドラ地帯で山火事が増えているのが気になる」と指摘する。ツンドラの下には永久凍土があり、山火事は本来なら起きない。永久凍土には、大気中に含まれるCO2やメタンのほぼ2倍の炭素が閉じ込められている。山火事が相次ぐとこれらが一気に放出され、温暖化を促す負の連鎖が広がるおそれがある。
   大規模な山火事の影響は地球規模に及ぶ。負の連鎖を食い止める手段は温暖化ガスの排出を抑えることしかない。と言うのである。
 
   日本各地で引き起こされている深刻な異常気象による大被害も、すべからく、自然摂理を無視して、傍若無人に地球環境を破壊し続けてきた人類への自然界からの挑戦であり報復である。
   原発反対や電磁波による深刻な健康被害のある携帯無線基地局建設反対運動と同じで、殆どの国民が無知無関心で、眼に見えない被害であるから、直接自分に関係なければ、頬被りしてただ乗りに便乗しているのだが、結局は回り回って自縄自縛で、茹でガエル状態となって、悲しいかな、人類を滅亡の淵に追い込み、虎の子の文化文明を棒に振ってしまう。
   そんな未来が見え隠れしてきて実に悲しい。
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地球温暖化~氷点下20度以下の世界

2021年02月20日 | 地球温暖化・環境問題
   jiji.comが、「氷点下20度以下の世界」記事で、積雪と氷結のヨーロッパの写真を掲載して、その一枚が、口絵のアクロポリスの丘の雪景色である。
   同じく、「1400万人が飲料水確保できず 米テキサス州、寒波で水道管破裂」「大寒波襲来~ナイアガラの滝も凍る」と報じて写真を掲載した。
   
   
   

   地球温暖化の影響については、海面上昇、降水量の地域的な変化、熱波などの異常気象の頻発、砂漠の拡大などが挙げられ、気温の上昇局面について語られることが多いのだが、異常気象を引き起こすという現象であるから、台風、地震・ツナミ、旱魃・乾燥、豪雨・豪雪等々、これまで経験したことのないような異常な現象に遭遇し、今回のように、逆に、寒波の襲来に見舞われることにもなる。

   トランプは意にも介さなかったが、アメリカを襲った異常な台風被害やカリフォルニアの異常火災、今回のテキサスの寒波などは、地球温暖化によって引き起こされた異常気象の結果であることは、明白であろう。
   バイデン政権は、「パリ協定」に復帰して、正気の沙汰とも思えないようなトランプの地球環境破壊政策から脱皮して、地球温暖化対策を軌道修正することになったので、燭光が見えてきた。
   しかし、既に、チッピングポイントを超えてしまったという観測もあり、地球温暖化によるエコシステムの破壊阻止には一刻の猶予もなくなっているという喫緊の課題であると言うことも事実であろう。

   加東大介が、南方の戦地で芝居した「南の国に雪が降る」時代に、実際になってしまったのである。

   モスクワの吹雪や寒波は風物詩だが、これまで普通だと思って詠んでいた季語が無意味となり、四季の歳時記を書き換えなければならない、と言う事態には絶対してはならない。
   既に、桜の開花が早まり、紅葉の季節が初冬にずれ込んでおり、私たちが口ずさんでいた童謡のイメージがずれ始めてきている。
   季節が変ったと言うだけなら問題はないのだが、我々は、「茹でガエル」、
   依って立つ宇宙船地球号をどんどん窮地に追い詰めている。
   

(注記)写真は、 jiji.com等から借用させて貰った。)
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今年の10大リスク「TOP RISKS 2021」の環境汚染問題

2021年01月13日 | 地球温暖化・環境問題
   ユーラシアグループの今年の10大リスク「TOP RISKS 2021」の第3は、気候問題:ネットゼロとGゼロの交差 そして、第4は、米中の緊張は拡大する
   バイデン政権に移行すると、即時に、パリ協定に復帰すると報道されているので、地球環境問題がどのように進展するのか、そして、最大の温暖化ガス排出国であり環境保護に影響の大きい米中の協力が必須であることから、この問題で、イアン・ブレマーが、どう考えているのか、興味を持って、この項を読んでみた。

   ユーラシアグループの、これらに関する記述を纏めると、ほぼ次のとおりである。

   バイデン政権のアプローチは、気候に関する長期的なコミットメントや目標を次々と生むことになり、その多くは、今世紀半ばまでに排出量を実質ゼロにすることを目指す。2021年の気候変動に関するコミットメントは、未だかつてないほど重要となる。
   しかし、報道を彩る見出しの先では、エネルギー転換は各国間の競争の場と化し、協調を欠く。
   要は、気候変動は、世界各国が協力して取り組む友好的な場から、世界的な競争の舞台へと変化するのだ。クリーンテクノロジー全体で、特に電池や電力制御システムなどの21世紀型エネルギー経済の「管制高地(競争優位)」において、中国が掲げる長期的な産業政策に対抗し、米国も太 平 洋の向こう側で同 様の政 策を打ち出す。クリーンエネルギーのサプライチェーンの一部は、変換機器など、これまで以上に複雑なグリッドのセキュリティに関わる場合、5Gのサプライチェーンと同様の二分化への圧力にさらされる恐れがある。
   ネットゼロの推進が、民間資本、特に蓄積するドル建て・ユ ーロ建ての E S G( E n v i r o n m e n t / 環 境 、S o c i e t y /社会、Governance/ガバナンス)資金にとって、莫大な機会となることは間いない。しかし、政治が決定的な役割を果たすことが予想され、純粋な市場原理以外の要素が勝者と敗者を決するようになる。
   その結果、すでに分断されている世界は、一層細分化されていくのだ。もちろん、新たなネットゼロ宣言が続く中で、協力に向けての勝ち誇った握手は交わされ、気候変動対策の進展があるように見えるだろう。皮肉なことに、2021年ほど温度上昇を産業革命前のレベルの摂氏2度未満に抑える力が強まることはない。しかし、Gゼロを無視してネットゼロだけに注目すると、企業は大きな損失を被る恐れがある。

   また、緊張している米中関係だが、
   トランプの退陣により、米中間の対立は今までほどあからさまではなくなり、双方が一息つこうとする。しかし、事態の沈静化につながるこうした要因も、米国の対中関係の緊張がもたらす同盟諸国への波及、世界を回復させようとするなかでの競争、そして世界をよりグリーン化するための競争という、新しくこれまであまり注目されてこなかった三つの要因によって相殺されるだろう。全体としては、今年も昨年同様、緊張に満ちたライバルとしての米中関係は続くのであって、それは危険をはらんでいる。
   その新たな緊張要因となるグリーンテクノロジーをめぐる競争だが、中国は、2030年までに炭素排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと表明し、バイデンの就任前にパブリック・ディプロマシーで点数を稼ぎ、米国を劣勢に立たせようとしている。中国はまた、バッテリーから電気自動車、太陽光や風力発電を含め、21世紀の主要なクリーンエネルギーのサプライチェーンの多くで、すでに米国を大きくリードしている。ここでも米国は、第二次世界大戦後に続いてきた新自由主義からの脱却となる産業政策ツールを活用して、ひたすら中国に追いつこうと躍起になるだろう。また米国は、クリーンエネルギーのサプライチェーンを自国に取り戻すために大規模な投資を行い、海外で石炭に投資する中国の面目を潰し、気候変動とクリーンエネルギーの問題について中国にさらに圧力をかけるために、同盟国を結集させる。中国も、トランプ時代に気候変動対策におけるソフトパワーの活用になじんでいるため、こうした米国の動きを容易に看過することはしない。
   
   このユーラシアグループの見解では、米中協調して、地球環境の保全のために協力するというニュアンスではなくて、グリーンテクノロジーの熾烈な開発競争によって、両陣営の分断化が、さらに進展するという予測だと言えよう。
   アメリカが、パリ協定に復帰しても、あまり期待できないということであろうか。

   さて、問題のパリ協定だが、
   パリ協定では、次のような世界共通の長期目標を掲げている。
   ★ 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
   ★ そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
   この国際的な枠組みの下、主要排出国が排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指す。ということで、トランプが、脱退したが、バイデン・アメリカは、この世界的なイニシアティブに復帰してもとの鞘に収まるということである。

   世界政府が成立していない以上、また、確固たる国際機関が機能していない以上、幾ら高邁な理想を歌った協定でも、各構成メンバー国の善意ある協調協力がないと絵に描いた餅に終わる。
   哀しいかな、地球温暖化の悲劇は、学者が騒ぐだけで、時折、襲ってくる大自然の脅威的な破壊行為たる地球を揺るがす大災害に遭遇して恐れおののくくらいで、目に見えて地球環境を破壊するのではなくて、少しずつ徐々に、宇宙船地球号を蝕んで破壊に追い込むので、まさに、人類は、茹でガエル。自分が生きている間は、問題が起こりそうにないので、子孫の未来などサラサラ考えない。

    話を元に戻すと、パリ協定を前進させて、地球環境を保全するためには、高邁な哲人政治のような理想に燃えた高潔なリーダーあってこその協定だと思っているので、グリーンテクノロジーの開発競争に目の色を変えるようなグローバリゼーションの展開が予測されるという不幸を、どう考えたらよいのか。
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国連「大気中の温暖化ガス濃度最高」と警鐘

2020年09月11日 | 地球温暖化・環境問題
   日経が、10日朝刊に、
   ”国連は9日、大気中の温暖化ガス濃度が過去最高にのぼったと発表した。新型コロナウイルスで世界各国で経済活動が止まった結果、排出量は減ったものの、影響は限定的だった。国連のグテレス事務総長は排出削減対策の徹底や、石炭火力から再生可能エネルギーへの転換の必要性を訴えた。”と報じた。

   グテレス氏は同日の記者会見で、米カリフォルニア州で広がっている山火事の問題などを受け、「(気候変動の影響で)記録的な猛暑、山火事、洪水や干ばつが起こり、問題は悪化しかねない」と警告し、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では気温上昇を産業革命前比で1.5度未満に抑える努力目標を掲げているが、今後5年の間に気温上昇が1.5度に達してしまう確率が上がっており、「目標達成の軌道から世界は外れている」と懸念を表明した。

   化石燃料から再生可能エネルギーへの転換についてグテレス氏は、アジアやアフリカで石炭火力発電所の新設が続いていると指摘し、「日本、中国や韓国に石炭火力発電所の輸出や融資を抑えるように呼びかけている」と述べた。と言う。
   恥ずべき日本への指摘だが、
   「今日から二酸化炭素の排出量を減らしても気候変動の進行は止まらない。」現状に直面している以上、化石燃料によるエネルギーの造出は断じて避けるべきで、再生可能エネルギーへの転換以外に選択肢はない。
   有馬 純教授は、温暖化防止という一神教的な考え方に立ち、石炭オプションを国内外で否定する立場の人びとに対して、
   彼らが主張するように日本が石炭火力も原子力もやめ、石炭火力の輸出もやめ、なおかつ温室効果ガス削減目標を引き上げればどうなるか。日本の電力料金は大幅に値上がりし、日本経済は疲弊し、製造業は海外流出し、その結果、CO2排出は減少するだろう。と言うのだが、そう、それで良いのである。

   地球温暖化については、このブログでも随分論じてきているし、それに、十分な情報が流布しているので、多言を要しないと思うので省略する。
   今年の初めに、ナショナルジオグラフィックが、50回目を迎えるアースデイに因んで興味深い特別号を出版した。
   表紙の一方は、「守られてきた地球」2070年、世界は暮らしやすくなる
   反対側の表紙は、「傷つけられた地球」2070年、世界は暮らしにくくなる
   それぞれ、ページを上下逆にして、明暗を分けた視点から、2070年の世界を展望していて、非常に興味深い。
   分りやすく、そして、詳細に準備された記述が魅力的だが、たとえば、「ダメージは一様ではない」というページには、気候変動に対する都市の脆弱性が表示されていて、パリやロンドン、シカゴ、ブエノスアイレスとリオ、サンパウロ以外は危険指標で、貧しい都市ほど、社会基盤や社会サービスの需要に対処できずに、人口増加を支えきれないとして、急成長を遂げるアフリカ諸国の大都市の未来は深刻だという。
   東京、大阪、名古屋の脆弱性は、北京、天津より高くて悪く、コルカタやダッカ並、
   悲しいかな、目先の小事の論戦ばかりで、如何に、総裁候補の哲学ビジョンなき思考の次元が低いかが、分ろうというものである。
   
   

   環境問題については、悲観的な見解が主流だが、中には、これまでに人類が築き上げてきたように、時代を変える新しい科学やテクノロジーの進歩によって、人間の大部分は、近いうちに、今は富裕層にしか手が届かないような豊かな生活を経験できるようになるとか、指数関数的に生まれるイノベーションによっていかなる困難も克服されて、潤沢な世界への道が切り拓かれると言う考え方に全幅の信頼を置いて輝かしい未来論を展開する学者や識者もいる。
   このブログで取り上げてブックレビューした、
   P・H・ディアマンディス&S・コトラー著「楽観主義者の未来予測」上下
   スティーブン・ピンカー著「21世紀の啓蒙 上下: 理性、科学、ヒューマニズム、進歩 」などがその典型であろうと思う。
   根底には、今まで、上手くやってきではないかと言う楽観論がある。

   この問題についての私の結論だが、科学技術や世の中の進歩発展によって良くなったとしても、それは、終末を伸ばすだけで、人類が賢く対処しなければ、結局は、煮えがえる状態で、人類社会の破綻を結果するだけだと思っている。
   人類の活動が、もう既に、地球規模の限界に達してしまった以上、今度こそは、半世紀以上も前にローマクラブが提示した「成長の限界」が、マルサスとシンクロナイズしてしまって、取り返しがつかなくなるのである。
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新型コロナで観光客減りベネチアの運河がきれいに

2020年03月20日 | 地球温暖化・環境問題
   AFPニュースで、「ベネチアの運河がきれいに 新型コロナで観光客減り」というタイトルの記事が報じられて、人気の全く消えた綺麗に水の澄んだヴェネツィアの風景写真が掲載された。
   先日、このブログで、F・ブローデルの「都市ヴェネツィアー歴史紀行-」をレビューした後でもあり、印象的である。

   新型コロナウイルスの影響によりイタリア全土で封鎖措置が敷かれる中、水の都として世界的に知られる同国のベネチア(Venice)では、観光客の出すごみがなくなり水上交通量もほぼ皆無となって、きれいに澄んだ運河の水が住民の目を楽しませている。ベネチアは3月9日以降、他の国内各都市と同様にいわゆる「危険区域」とされた。ホテルや飲食店、大半の会社は閉鎖され、住民は自宅にとどまり移動を控えるよう命じられている。ベネチアの運河の水は通常、底にたまった泥がモーターボートで巻き上げられたり、観光客の捨てたポリ袋やごみが浮かんでいたりと汚染された状態だが、移動制限により劇的な効果が出ている。と言うことである。
   この記事の写真をいくらか借用して掲載させて頂くと、
   
   
   
   

   ブローデルは、ヴェネツィアの水は、石同様に重要だが、安全を保証すると同時に呪いであり、豊かさであると同時に悩みの種であり、類い希なる美であると同時に死の脅威でもある。と言っている。
   水害や地盤沈下で水没する危険が有名だが、ヴェネツィアは、ラグーナのまっただ中で、呪いに他ならぬ塩に囲まれており、飲料水の確保は絶えざる拘束で、井戸や雨水を貯めたり、幾層もの砂で濾過したりしたが埓があかず、数え切れないほどの水運び船が行列をなして運航されていたが、それでも足らず、供給制限をして鐘を鳴らして分配していたという。
   今日では、近代的な水道設備で、この飲み水問題は解決したが、自動車が全く使えないヴェネツィアでは、ラグーナや運河を走る水上輸送が命で、船乗りたちが操る大きなはしけペオーテが、リアルト市場へ物資を運んでいるという。
   上の写真のドカーレ宮殿前の大運河やリアル橋前などの運河の水は、目を見張るように美しい。

   しかし、大分以前のことになるが、ヴェネツィアの町歩きはまさに迷路を歩くようなもので、間違って、路地裏に入ると、小さな運河が入り組んでいたり、殆ど通れないような細道に迷いここむと、綺麗な表通りと違って結構貧しい雰囲気に遭遇することがある。
   私の手元に、1977年刊のライフ社の世界の大都市ベネチアがあるのだが、その中に、”宮殿や巧妙に作られた眺望はなく、あるのはごみごみした小さな運河、狭いとおり、崩れ落ちそうな橋などで、夏だとひどい悪臭が立ちこめる。”と記されている。
   今も、それ程変らないのかどうかは分からないが、このあたりの環境も、新鮮な水が流れれば、綺麗になるのであろう。
   ロンドンに、僅かに小川が流れる簡素な住宅街に、リトル・ベニスと名づけた高級地があったが、水の都ヴェネツィアは、やはり、世界中の憧れなのであろう。

   さて、今回問題にしたいのは、人々の生活が、いかに、自然環境、エコシステムにダメッジを与えているかと言うことである。
   生活環境は、ともかくとして、自然のエコシステムに任せて、自浄作用で運河やラグーンを元に戻せば、ほんの数週間で限りなく美しくなって、水が澄んで魚や生き物たちが帰ってくると言うことである。
   しかし、これらの写真を見ていて、美しいが、何の味も感動もないし、なぜか、無味乾燥で面白くない。
   往時の繁栄と観光客のメッカとしての雰囲気があってこそのヴェネツィアなのである。

   この美しい景観と雰囲気を維持しつつ、人類の営々と築き上げてきた貴重な文化文明の遺産を、如何にして、守り続けていくか、人類の重要な課題であろうと思う。
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ベネチアで記録的な高潮、サンマルコ大聖堂も浸水被害

2019年11月13日 | 地球温暖化・環境問題
   AFPが、”水の都ベネチアで記録的な高潮、サンマルコ大聖堂も浸水被害 ”と報じている。
   イタリア・ベネチア(Venice)は12日夜、過去50年以上で最高水位の高潮に見舞われた。潮の監視センターによると、今回の「アクアアルタ(Acqua alta、イタリア語で高潮の意味)」の水位は最高で187センチに達し、記録がある1923年以降、1966年の194センチに次ぐものとなった。海抜が低い地域にあるサンマルコ広場(St Mark's Square)は特に影響が大きく、同広場にあるサンマルコ大聖堂(St Mark's Basilica)は入り口付近が水に漬かった。と言うのである。

   口絵写真は、AFPBB Newsからの借用だが、サンマルコ広場が水浸しになっており、朝日新聞の報道では、
   ”最も標高の低いところにあるサンマルコ寺院は、12日の高潮で深刻な被害を受けた。伊紙レプブリカ(電子版)によると、寺院入り口近くの柱廊では高さ70センチまで浸水し、大理石の柱や建物のれんがが被害を受けた。「1200年の歴史で6度目」という深刻な被害で、同寺院を担当する国の財物管理官は「水が引いた後も残る塩害が心配だ」と懸念する。”と報じている。
   AFP記事の写真を借用させてもらうと、高級ホテルも水浸しである。
   

   サンマルコ大聖堂のHPを見れば、
   On Wednesday November 13 2019 St. Mark’s Basilica and Bell Tower will open at 1:00 p.m. due the high tide.と書いてあるのだが、こんな時にもオープンしているのであろうか。

   船着き場の正面に、聖マルコと聖テオドーロの円柱が立っていて、その背後の広場を、ドカーレ宮殿を右に見て進むと、すぐ右手に壮大なサンマルコ大聖堂が立っていて、その前の広いサンマルコ広場まで、海岸縁から、僅かな距離しかなく、広場の高さは海抜2メートルもないくらいであるから、一寸した高潮でも、水浸しになる。
   ベニスの旧市街は、海水と淡水が混じる水深の浅い潟に木の杭を打ち込んでつくられた街であるから、地球温暖化の影響による海水面上昇による被害は致命的で、平均海面が2050年に最大約42センチ、2100年には最大約108センチ上昇すると想定されているとかだが、これに満潮時の上昇分が加わり、高潮などが起こると冠水は免れようがない。
   7世紀から地中海の文化文明の中心として燦然と輝いていたベニスが、今まで、その雄姿を維持しながら、その発展による地球温暖化によって、いつかは、アトランティスのように消えて行くかもしれないと思うと寂しい。

   尤も、政府も座視していたわけではなく、大洋につながる3つの水路の3ヶ所にフラップ式の可動型ゲートを設置し押し寄せる海水を止めようとする巨大な公共工事モーゼプロジェクトを推進している。
   しかし、2003年にスタートして8年間で完成する予定だったのが、そこは、イタリアで、汚職で首長が逮捕されるなど頓挫していて、いまだに、完成しておらず、完成しても、ベニス全土が冠水から免れる保証はないという。

   私は、1973年正月に、初めて、あのキャサリン・ヘップバーン主演の映画「旅情」の冒頭とラストシーンの舞台になったサンタ・ルチーア駅についてヴァポレット(水上バス)に乗って運河を渡って、サンマルコ広場近くの船着き場について、仰ぎ見たのがドカーレ宮殿と、このサンマルコ大聖堂と鐘楼、
   ヨーローッパ歴史を勉強していたので、ベニスの栄光の輝きを想起して感激しきりであったが、その後、ヨーロッパに8年住んで居たので、何度かベニスを訪れていて、中世にタイムスリップしたような雰囲気の中で、文化文明の軌跡を追って歩くのが楽しみであった。

   さて、先にレビューしたヘンリー・ポラックが、「地球の「最期」を予測する」で、ベニスの洪水に触れている。
   運河は外界に繋がり、海は手袋のように市を囲んでいて、サンマルコ広場は、海からの強風、高潮、豪雨などによる洪水の影響を受けやすい。
   水面はIPCCの予測の上昇の範囲内だが、海面は徐々に上がっているので、3つの原因が同時に起こらなくても、更に頻繁に洪水に見舞われるようになる。と言う。

   問題の根本は、地球温暖化による海水面の上昇で、2つの原因があると言う。
   1つ目は、単純な物理学で、海水温度が上がると海水が膨張すること、2つ目は、大陸に何千年間もあった氷が溶けて海に戻ることで、地球温暖化を阻止する以外にない。と言うことである。
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東日本直撃のスーパー台風被害

2019年10月25日 | 地球温暖化・環境問題
   関東に上陸した台風15号と台風19号による大被害の悪夢が冷めやらぬのに、また、台風21号崩れの大雨が、東日本を襲って、首都圏から東北に氾濫や土砂崩れを起こして、更なるダメッジを与えている。
   今日、国立能楽堂の企画公演が終わって、玄関を出ようとしたら、猛烈な豪雨で、今まで経験したことのないような激しさで、大自然の怒り・咆哮のような恐ろしさを感じて、外へ踏み出せなかった。

   自然の猛威とはいえ、これだけ、東日本を徹底的に叩き、それも、大被害となると、あらためて、その元凶を、地球温暖化の所為だと言いたくなる。

   アル・ゴアが、同時にノーベル平和賞を受賞したヘンリー・ポラックの「地球の「最期」を予測する」の序文で、
   私たちが見て見ぬふりをしてきた所為で、世界中で海面が上昇している。干ばつは深刻になり、嵐は一段と狂暴になり、感染症は蔓延し、収穫は失われ、手つかずの自然が減り、気候難民が増えて、各国の政治を揺るがせている。
   と言っている。

   アル・ゴアは、環境活動家として地球温暖化問題について世界的な啓発活動を行っており、これまでにも、ゴアの著書であり映画である『不都合な真実』をはじめとして、随分書いてきており、ローマクラブの「成長の限界」以降からだから約半世紀前、地球温暖化など環境問題への危機意識は、一気に強くなって、勉強を続けてきた。
   その前に、ガルブレイスの「豊かな社会 The AFFLUENT SOCIETY」を読んでいて、大企業の利益追求志向が、social balanceを崩したとして、税金で構築せねばならない不十分な公共財と売らんかなで益々豪華に上等になって行く民間財との質の異常な格差を経済発展の違いによって明らかにして、社会のあるべき姿を説いていたので、自由市場経済がドライブする資本主義体制が良いのかどうか、疑問を持ち始めた時期でもあった。
   経済成長を最高の善として経済学を学び始め、今でも、経済成長は人類にとって必要だと思っているが、人類の独りよがりの経済活動で、宇宙船地球号が限界に近づきつつあり、エコシステムを破壊しようとしていると悟ってからは、大分、市場経済や資本主義システムに対する考え方が変わって、外部経済をも十二分に考えなければならないと思うようになった。

   地球温暖化による地球環境破壊については、蛇足なので、これ以上書くつもりはない。
   しかし、前述のゴアの”嵐は一段と狂暴になり"と言う部分で、今回のスーパー台風の東日本への痛撃を考えると、識者の見解では、今後、台風や地震・津波など自然災害が、益々、スケールを拡大して、凶暴さを増して、「百年に一度」とか「これまでに経験したことのないような」痛撃を、宇宙船地球号に与え続けると言うので、どうすれば良いのか、空恐ろしくなってくる。

   スウェーデンの少女グレタ・トゥンベリが巻き起こした若者主導の地球環境を守ろうとするグローバルスケールの運動さえ、横やりを入れて揶揄する世界のリーダーがいるような現状では、益々、地球のエコシステムの悪化は避けられそうにはないが、
   このまま、手をこまねいてばかりいると、先の3.11の大地震や大津波、今回のスーパー台風が、日本列島を直撃したよりも、はるかにスケールの大きな大自然の怒りが爆発することは、間違いなさそうなので、心しておくべきであろう。

   地球環境破壊で、種の多様性が、どんどん消えて行く今日この頃、
   風雨に耐えて咲いた一輪の椿、
   いつまで、この美しさを見せてくれるのか。
   
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原始林破壊の元凶は欧米先進国?

2019年08月23日 | 地球温暖化・環境問題
   先に、ブラジルのアマゾン熱帯雨林の大火災に伴う、宇宙船地球号の危機について書いた。
   アマゾンの自然環境や原住民の保護を後退させて、経済成長を策するボルソナロ大統領は、正に、人類の命運を左右する暴政を行っている。と非難した。
   しかし、もう少し、歴史の時間軸を伸ばして考えてみれば、人類の科学技術の急激な発展で、人類の営みが、自然環境を破壊するまでに至った現時点では、この大自然の破壊は、忌々しき問題だが、ほんの百年前、いやもっと直近に至る段階まで、自然環境を破壊してでも、経済開発は、善であって、望ましい経済政策であった。
   日本でも、田中角栄首相の日本列島改造論が、持て囃されていて、私なども、経済学部の学生であった頃、卒論などテーマとして勉強したのは、経済成長論であった。

   しかし、ローマクラブが資源と地球の有限性を問題にして、デニス・メドウズたちが、1972年に出版した、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘ならしたレポート「成長の限界」を読んで、衝撃を受けた。
   その前にも、ガルブレイスの「ゆたかな社会」などの著作を読んで資本主義の暴走や、ぼつぼつ、出版されていた公害の発生など外部不経済を問題提起した経済学書から、経済成長は必ずしも総て善ではないと、その片鱗には気づいていたが、その年からアメリカの大学院に留学したので、勉強する機会を得た。
   田中首相の日本列島改造論が出たのもこの年だと言うから面白いのだが、私の経済成長論が、多少方向を変えて動き出したのも、この時からである。

   さて、一気に、表題の「原始林破壊の元凶は欧米先進国?」に話が飛ぶのだが、結論から先に言うと、問題の核心は、同じ地球であるから、ヨーロッパやアメリカにも、アマゾン級とは行かないとしても、広大な原始林・原生林が、繁茂していた筈だったが、今では、破壊と言うか開発されてしまって、その片鱗さえも殆ど残っていないと言う現実である。

   本来、ヨーロッパの森の概念は、森は生活の場から乖離されたいわば海の様なもので、一度入り込むと下界に戻れない極めて危険な所であった。
   しかし、肉食を旨とするヨーロッパは、牧畜の為に、この人を寄せ付けなかった原始の森を完全に破壊しつくしてしまったのである。
   CULTUREと言うのは、CULTIVATE、即ち、耕すと言うことであるが、文化とは、原始林を破壊して畑を耕すことだったと言う、笑うに笑えない皮肉。

   シェイクスピアの描く森は、優しくて美しい、暗い雰囲気は全くなく、時には夢のような雰囲気を醸し出す豊潤な物語の世界である。
   このように、イングランドは、何処を走っても、絵のように美しい田園風景が展開する。   
   全く原始林が残っておらず、徹底的に破壊されて、美しい田園地帯に変えられてしまって居て、コンスタブルやターナーの描く牧歌的で、しみじみと田園生活の幸せを感じさせてくれるような、そんな優しくて美しい田園地帯が延々と続く。
   山がなくて起伏が緩やかなので、いっそう、野山の風景は美しさを増す。
   私は、5年間イギリスに住んでいて、コツワルドや湖水地方は勿論、あっちこっちを車で走ったので良く知っている。
   しかし、世界への雄飛と言えば聞こえが良いが、世界を制覇する為、軍船を建造する為に、木を切り倒して、原始林を破壊し、自然を囲い込んで森や林を破壊して羊や家畜の牧場にしてしまった。
   美しいが、英国人好みに改造され訓化された人工美の国土なのである。

   パリ協定でも問題になったのは、先進国と開発途上国の問題。
   ”開発途上国からすれば、今日の地球温暖化を招いた主な原因は、産業革命以後、化石燃料を大量に消費しながら経済発展を遂げてきた先進国にあり、先進国がより多くの責任を負うべきとの考えが根強い。他方、先進国から見れば、過去の経緯はともかくとして、現在、そして将来においてより多くの排出が見込まれるのは新興国・開発途上国であり、それらが排出抑制に強く取り組まない限り、温暖化抑制は不可能である。”と言うもの。

   ここでは触れられてはいないが、環境破壊のもっと源初の問題に戻って、
   ブラジルのような発展途上国が、遅ればせながら、欧米先進国がやったように、自分たちも、国家発展のため、国民の生活向上のために、自国のの原始林・原生林を切り開いて、CULTIVATEして、何が悪い。と言う議論が、現時点で暴言であったとしても、成り立つかも知れないと感じている。

   従って、先進国が、権力を傘に着て、発展途上国に、地球温暖化対策を強要するのではなく、まず、これまでに、先取りした、環境破壊と言うタダ乗りで得た利益を還元して、発展途上国に相当の対価を支払うべく、積極的にサポートする姿勢を示さない限り、前に進めないと思う。
   アマゾンの自然環境を保存したいと考えるのなら、ブラジルへ、開発を阻止する見返りに、その権利を買い取るなり、代替すべき対価を払うべきだと思っている。
   トランプような大統領が続けば、お先真っ暗だが、ヨーロッパなり先進国に哲人政治家が登場することを願っている。
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ブラジル大統領のアマゾン破壊

2019年07月05日 | 地球温暖化・環境問題
   今日の日経夕刊のトップ記事は、「異常気象 世界襲う 仏で46度・メキシコでひょう」
   さらに、「中印水害 観光経済に打撃」
   世界各地で異常気象の影響が広がっていると、九州を襲った豪雨など、最近の危機的な状況を報じている。

   さて、NHK BS1 が【キャッチ!世界のトップニュース】 で、「ブラジル・ボルソナロ政権でアマゾンに危機」を放映した。
   アマゾンの熱帯雨林は550万平方kmで世界最大で、地球温暖化の抑制に大きな役割を果たしているが近年、農場開発や違法伐採などによって急速に面積が縮小している。
   ボルソナロ大統領が、アマゾンの開発を積極的に進める方針を打ち出し先住民や科学者の間で反発が広がっている。というのである。
   アマゾンの面積の20%以上を占める先住民保護区では区域内の開発を禁止されているのだが、ボルソナロ大統領は就任後、環境保護局の予算を大幅にカットし、先住民保護政策の担当機関も格下げし、鉱物資源の採掘や発電所の建設を進める方針を打ち出した。
   先住民保護区はアマゾンを森林破壊から守る最後の砦になっているだけにその開発は取り返しのつかない影響を生態系にもたらす。と言われている。
   テレビは、アマゾンのジャングルを住みかとする昔ながらの伝統的な原始生活を営んでいるインディオが、生活の場を追われる悲劇や、伝統的な衣装を身に着けたインディオの集団が、ブラジリアにデモに繰り出す様子を放映していたが、巨大な原始林が無残に破壊される映像など見せられると胸が痛む。

   さて、口絵写真は、2006年12月30日に、このブログで、ナショナルジオグラフィックの記事を引用しながら、「地球の悲鳴・・・消え行くアマゾン熱帯雨林」を書いたときに使った口絵なのだが、既に、あの時点で、
   ナショナル・ジオグラフィックは、
   「ブラジル・アマゾンの熱帯雨林は、この40年間に20%近くが消滅した。これは、欧米諸国が南米に進出し始めて450年の間に失われた森林の総面積を上回る広さだ。今後20年間に更に20%が失われると見られ、そうなれば森林の生態系は崩壊する。」と言った出だしで、如何にアマゾンの熱帯雨林が危機的な状態にあるのかを語っている。

   当時でさえ、政財官の癒着などで、アマゾンの自然環境の保護は勿論、行政を司る現地政府機関は殆ど有効に機能せず、アメリカの巨大な農機具や食料会社など多国籍企業が跋扈しており、原始林は、危機に瀕していたのだが、今回のボルソナロ大統領のように、逆に、環境保護の予算を削り、先住民保護区を破壊して、積極的に開発するとなると、アマゾンの命運は風前の灯となり、地球環境の破壊と地球温暖化に拍車をかける。

   私は、ブラジルに4年住んでいながら、アマゾンも、ベレン、マナウスを垣間見て、近郊の川を上ったくらいなので偉そうなことは言えないが、アマゾンの上空を何度となく飛行機で飛んでいるので、その凄さは分かる。
   それに、4年間のブラジル生活で、ウルグアイを除いて、南米の国は殆ど訪れており、多くの未開の原始林や自然環境に触れているので、これらが、開発と言う名目で破壊されるとなると実に悲しい。

   環境問題に関心が強いので、これまでも、アマゾンの悲劇については随分書いてきた。
   わが青い宇宙船地球号を守り抜きたいと希っている。

   こともあろうに、G20で来日したボルソナロ大統領が、安倍首相に、無謀なアマゾン開発を一緒にやろうと勧誘したと言う。
   どう答えたのかは知らないが、

   もっと悪い環境破壊の元凶は、トランプ大統領、
   地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱に至っては、これに極まれりである。

   もう一つ気になったのは、昨日の日経のFINANCIALTIMES特約記事
   ギデオン・ラックマンの「危うい気候変動対策 選挙の壁越えられるか」
   詳細は省略するが、オーストラリアの選挙で、気候変動対策としてあまり過激な政策を提案する政治家は、選挙に敗れるリスクが高いと言う教訓が生まれたこと、ヨローッパ各地でも、この傾向が広がっているとする指摘である。
   潮目が変わると恐ろしい。
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訪日客、暮らしかき乱すと言うのだが

2018年08月26日 | 地球温暖化・環境問題
   昨日の日経夕刊に、「訪日客、暮らしかき乱す 車道に広がり踏切撮影/病院トイレ無断使用」そして「観光公害」マナー対策急務 と言う記事が、大きく報道されていた。
   口絵写真は、稲村ケ崎から江の島へ向かう帰途、車窓から写した問題となっている鎌倉高校前駅の江ノ電の踏切あたりの写真だが、確かに、いつも、中国人と思しき観光客が屯している。

   最初は、そこから、江の島が綺麗に見えるのに、そっちのけで、何故、面白くもないこんなところで写真を撮っているのか不思議に思っていたのだが、1990年代に「週刊少年ジャンプ」で連載された人気バスケットボール漫画「スラムダンク」のアニメに登場した踏切のモデルとされ、数年前から人気の撮影スポットになっている。のだと言う。
   中国・四川省の10代女性は「交流サイト(SNS)でこの踏切を投稿すれば日本旅行の象徴になる」と満足顔。登場人物にふんしてバスケのユニホームやセーラー服を着ている姿も目立つ。と言うのだから、若者たちの夢の実感体験であろう。私が、はじめてパルテノンの丘に立った感慨と同じかも知れない。
   近くの踏切に観光バスが何度も止まり、数十人単位の中国人観光客がひっきりなしに訪れ、写真撮影のために車道に広がって交通を妨げたり、病院のトイレを勝手に使ったりと、観光客増加で生じる住民への悪影響は「観光公害」とも呼ばれ、行政などが対応に追われている。とも言う。

   いわば、ここは、中国人観光客にとっては、ミシュランの星ではないが、絶対に訪問して写真を撮るべき聖地のような存在なのであって、大仏や鶴岡八幡宮よりも、鎌倉観光では、マストの観光スポットなのである。
   問題は、この場所が、観光には何の縁も所縁もなく、何の準備も整っていない住宅地の真ん中であり、タダでさえ渋滞の激しい極めて交通のビジーなボトルネックである三差路であって、住民生活の安寧を妨げ、混乱を来しかねないことである。
   
   さて、中国の観光情報誌などが、この江ノ電踏切スポットをどう扱っているのかは知らないが、ミシュランのグリーン本などを参考にして、世界中を何十か国も歩いた私自身、やはり、観光案内書やガイドブックで、三ツ星スポットは勿論、星のついた見るべきとか行くべきとか表示されている場所には、極力足を向けて訪れる努力をした。
   ミシュラン・ガイドJapanを持った外人客が、鎌倉では、東慶寺や報国寺に多いのも、このミシュラン効果である。
   このように観光スポットを目指して訪れるのは、観光客の趨勢であろうから、受け取り手が、どう判断するかは、その人夫々だろうが、私は、今回の中国観光客の江ノ電の鎌倉高校前駅東寄りの三差路詣では、当分、止めることは不可能だと思っている。
   
   したがって、これに対処する方法は、この現実を容認して、如何にして、近隣の住民の日常生活の安寧と秩序を維持するのか、そして、交通問題の悪化を避けるのか、その対策なり方策を考えて打ち出すことである。
   観光立国を標榜する鎌倉が、この問題を、観光公害などと言った後ろ向きの捉え方をして、対応を考えたら、根本から、臍を嚙む失政となろう。

   7月19日に、このブログで、同じような問題を抱えてアムステルダムが困っていると言うことで、「アムステルダム観光客急増で規制強化」を書いたが、今や、グローバリゼーションと経済成長のお陰で、世界中の人々が豊かになり移動が簡単になった所為もあって、世界中の観光地が、パンク寸前飽和状態になって、混雑を極めている。
   白洲正子が誘うような隠れ里といったような魅力的なスポットは、瞬時に、消えてしまうのである。
   余談だが、この傾向に鑑み、金と暇を持て余す団塊の世代の人に、足腰が弱ると旅の魅力は台無しになるのは必定なので、出来るだけ早い機会に、海外旅行に出立することを勧めたい。

   さて、世界中からの観光客が急増して、インバウンドの経済効果が日本経済を支えていることは事実であり、日本の国際理解と文化伝統などソフトパワーの発信にも大きく貢献しているのであろうから、外国からの観光客の受け入れは、前向きに精神誠意対処すべきだと思う。
   
   
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ガイナ塗装、エネファーム、散水ポンプetc.

2015年06月01日 | 地球温暖化・環境問題
   ガイナ塗装、エネファーム、散水ポンプetc.と言う一寸変わったタイトルを付けたが、これは、私のささやかな省エネ努力の一端である。

   トマトのプランター栽培記録を書いているが、殆ど毎朝、かなりの水を、このトマトや鉢花、そして、庭木などに撒く。
   特に、夏になると、その水量もバカにならず、水道料金が、一気に上がる。
   誰でも考えることだと思うが、この節水対策として、毎朝捨てている風呂水を、散水に使えないかと言うことである。

   早速、インターネットを叩いて検索すると、家庭用の小型のポンプがあることが分かった。
パナソニックのミニミニバスポンプ N-30Pが目についたのだが、5000円くらいで、どうも、風呂水を洗濯機に吸い上げるミニポンプのようで、キャパシティが不足のような気がしたので、更に、ファミリーポンプで検索を続けて行くと、ポンプに関連するメーカーの製品が結構出てきた。
   アマゾンなどのユーザーのレビューなどを参考にして、ポンプ専業メーカーの製品が良かろうと考えて、実物も確認せずに、寺田ポンプの二種類あるファミリーポンプの内、キャパシティの大きい150Wの方を購入した。
   最安値で9800円、使えなくても、それ程、損にはならないと思ったのである。

   池水の循環、散水、排水用 と言う能書きだが、実際に、20メートルのホースに繋いで、タカギのノズルから放水した限りでは、水道の水圧より、かなり、弱くて、最強のストレートでも、飛ぶのは1メートルも行かない。
   シャワーだと、1メートル50センチくらいであろうか。
   水圧は弱くて、自由なコントロールは不可能だが、プランターのトマトや鉢花への散水には、まず、満足すべきかと思っている。
   これで、トマトプランターへの水撒きによる節水効果は、満たされることとなった。

   次は、自然エネルギーによる自家発電だが、
   千葉にいた時にも考えたのだが、一戸建てでかなり面積のある日当たりのよい屋根があるのだから、ソーラーパネルを使って太陽光発電を試みようとしたことがある。
   ところが、聞いてはいたのだが、何かの拍子に、東京ガスの説明を受けて、家で使う電気とお湯を一緒につくりだすエネファームと言うシステムの有効性に興味を感じた。 
   屋根にパネルを貼り付けなくても、コンパクトな発電機を取り付けるだけで良いと言う。

   燃料処理装置で、都市ガスと水蒸気を反応させ、水素を取り出し、この水素を、燃料電池スタックへ供給して、空気中の酸素も取り込み、電気と水を発生させる。熱回収装置で、燃料処理装置や燃料電池スタックから発生する熱を回収し、この熱で貯湯タンクの水を加熱してお湯をつくり、給湯として利用する。
   と言うのであるから、要するに、CO2を出さずに、燃料電池で、湯を沸かしながら発電するので同時に二兎を追っており、電気代が半減すると言うのである。
   ガスの使用量が増えるのだろうが、ガス代が特別価格でやすくなると言うことであり、将来のエネルギーコストが減少して環境に優しいと言うことなので、それほど疑問を感じずに、エネファームを設置した。
   確かに、電気代は、随分安くなったし、CO2を排出していないと言うことなので、満足している。

   もう一つは、屋根と壁の塗装を、ロケット開発技術から生まれた断熱材と言う最先端のテクノロジーを取り入れたガイナと言うセラミックを多層化した塗装材を開発した日進産業にお願いして施工して貰って、暑さ寒さ、そして、防音などに、かなり、効果を上げて、省エネに貢献しているらしいことである。
   寒い冬など、早朝の室温と戸外の外温とで相当大きな差があり、夏にひんやりとするのなどは、この断熱効果の結果であろうか。
   本当は、内装の塗装も、ガイナでやれば、もっと効果が上がったのであろうと思う。

   自動車は、処分して乗っておらず、偶に、電動自転車で動いている程度なので、この方も、環境の負荷をかけていないと思っている。
   とにかく、国の膨大な借金が、次世代への大変な負担になることが、大きな問題だが、出来る限りサステイナブルな美しい宇宙船地球号を、次世代に託すことも、もっと重要なことだと思っており、出来ることから、まず、省エネに心掛けるべきだと肝に銘じている。
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地球温暖化はクリアできる・・・マット・リドレー

2014年03月31日 | 地球温暖化・環境問題
    横浜市で開かれた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会で、地球温暖化に関する最新の報告として、地球温暖化は「すべての大陸と海洋で影響を与えている」と強調、温暖化のリスクとして、熱波による死者や病気の増加など、海面上昇や高潮による被害で移住を迫られる住民の増加や大都市での洪水のリスクの上昇、気温上昇や干ばつによる穀物生産への影響が大きいと考えられるリスク等を明示し、世界経済への損失については「収入の0.2~2.0%」との推計結果を盛り込むなど警鐘を鳴らしている。

   ところで、先日、ブックレビューしたマット・リドレーの「繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史」では、本のタイトル「Rational Optimist 合理的楽観主義者」の面目躍如で、人類の歴史は、紆余曲折はあっても、進歩と繁栄であるから、地球温暖化や気候変動などによる悲劇は、クリアできると説かれている。
   この本が、総ての悲観主義を論破すべく論陣を張った、FTのベスト・ビジネス本で、英米でも脚光を浴びたベストセラー だと言うから、私など、IPCCの見解の方が正しいと思っており、人類の終末論が見え隠れする悲観論に偏っている方なので、どう考えたらよいのか(何故、この本を識者が高く評価するのか)、非常に疑問でもあり悩むところである。

   この本では、リドレー流に個々の事例毎に、詳しく反論を展開しているのだが、詳論は避けて、リドレーの結論だけに絞れば、ローマクラブの「成長の限界」も、マルサスも、テクノロジーの変化の速度と大きさ、すなわち、世界を再配列する一連の新しいレシピを過小評価しているからで、
   地球上に残された石油の量、世界の農場総てを合わせた生産能力、更には、生物圏の回復能力ですら、固定された数字ではない。それは、人間の発明の才と自然の制約が絶間なく相互に働きかけることによって生成される、動的な変数なのだ。と言うことである。

   石炭がなければ、イギリスで産業革命が起こらなかったし、人類の繁栄に対する電気の貢献はいくら強調しても足りないし、20世紀の繁栄は石油が支えてきたのだが、これら化石燃料を活用したエネルギー技術の進化発展のお蔭で、地表の多くが産業化から免れて、自然環境がより自然のままに維持保全されてきたのだ。と言う逆転の発想とも言うべきリドレーの見解が、非常に興味深い。
   アメリカの人口3億人に現在の需要エネルギーを供給しようと思えば、再生可能エネルギーなら、
   スペインの広さのソーラパネル
   または、カザフスタンの広さの風力発電基地
   または、インドとパキスタンの広さの森林
   または、・・・   必要だが、
   実際は、一連の火力・原子力発電と一握りの製油所および天然ガスパイプラインが、ほぼすべての現在アメリカ人のエネルギーを供給している。と言うのである。
   土地をむさぼり食うモンスターのような再生可能エネルギーを、「地球に優しい」だの、人道的だの、クリーンだのと呼ぶのは、奇妙だとまで言う。

   FUKUSHIMAの原発事故で、一気に、反原子力発電への運動が加速し、地球温暖化への対応で、化石燃料への依存から脱却するために、再生可能エネルギーへの期待が大きいのだが、リドレーの言うように、風力発電機が海岸線の景観を害し、ソーラーパネルが広大な面積の地表を覆い、食糧用の農地を圧迫してエタノール用の農地が拡大し、・・・等々、確かに地球環境に負荷をかけつつあることは事実であろう。
   しかし、善意に解釈すれば、あるいは、イノベーションに全幅の信頼を置くリドレー説に従えば、いずれは、再生可能エネルギー産出へのイノベーションが生み出されることによって解決可能である筈である。

   余談だが、アベノミクスがどうかと言うことは別にして、景気は、「気」のものである要素が強く、経済は感情で動くとする行動経済学が説く如く、長い間停滞していた日本経済が、日本人の気持ちが上向き加減に向き始めた所為もあって、少しずつ、上昇気流に乗りつつあるような気がしている。
   リドレー説は、謂わば、元気印の未来の預言書、悲観論ではなく、無理にでも、前向きに、人類の未来を展望したいものである。

(追記)
   このリドレーの「繁栄」だが、下記の書評の如く、楽観論に終始しているが、非常に示唆に富んだ貴重な本で、一読に値すると思う。
“A fast-moving, intelligent description of why human life has so consistently improved over the course of history, and a wonderful overview of how human civilizations move forward.” (John Tierney, New York Times)

“The Rational Optimist will give a reader solid reasons for believing that the human species will overcome its economic, political and environmental woes during this century.” (Fort Worth Star-Telegram)
 
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中国の深刻な下水処理問題

2013年08月30日 | 地球温暖化・環境問題
   この表題は、日経ビジネスに掲載されている「新世紀週刊」の特約記事のタイトルである。
   この表題の下に、次のような要約が記されている。
   「下水処理とは、下水を処理した後の汚泥を処理することを指す。だが、中国では汚泥処理施設を持つ処理場は少なく、汚泥の多くは畑などに投棄される。重金属などを含む汚泥の環境への影響が懸念されるが、政府の取り組みは始まったばかりだ。」

   精華大の傳涛主任などがまとめた「中国の汚泥処理・処分に関する市場分析レポート(2012年版)」によると、中国では少なくとも80%以上の汚泥を無公害化する処理をしないまま直接、自然環境に排出していると言う。
   北京からなどの汚泥が処理されないまま、近隣に「堆肥」として運ばれ、耕地や林に投棄され、その汚泥の上に、トウモロコシや落花生、果物、野菜などが栽培されている。住民らは、その汚泥を、業者の購入した”特殊な肥料”だと思って、汚泥塗れの耕地で、トウモロコシとスイカを作っていたが、味が良くないので食べずに外に売っている。と言うのである。
   「新世界週刊」は、終われぬ不法投棄と、続報で報じている。

   
   私は、5年程前に、上海に行った時に、水や食品には気をつけようと、果物なら大丈夫だろうと、意識して、大型店で上等そうな果物を買って、水代わりに食べていたのだが、はずれであったと言うことかも知れなかった。
   僅か、1週間足らずの滞在だったが、大気汚染など公害の酷さは凄いもので、這う這うの体で帰って来たのだが、半世紀前の日本を思い出しながら、経済成長とは、こう言うものかと、感慨深かったのを思い出す。
   そこで、再会したブラジル時代からの知人の御嬢さんに会って旧交を温めたが、昨年、がんを患って帰国し、時すでに遅く若い命を散らしてしまった。


   中国の急速な経済成長とエコシステムとの関係については、以前から非常に興味を持っていたのだが、あの中国文明を育んだ黄河が断流現象を起こしていると知った時には、大変な恐怖を感じた。
   杉本元上海総領事の言を引用すると、
   この中国文明を支えてきた大動脈「黄河」が、断流現象を起こして、97年には、河口から華南省鄭州までの1千キロに及んで226日間断流して、その年、黄河に水が1日中海に流れ込んだのは僅か5日しかなかった。
   かっては、黄河の中上流には豊かな森林と草原が存在していたが、唐代以降森林破壊が続き、今では、上流に建設された3千百余りのダムで水を止め、水を乱用し、無駄に蒸発させて自然な還流システムが働かなくなってしまっている。
   1億5千万の人口を要する流域で水の取り合いが深刻となり、三門峡ダムなど8つの発電所の稼働率は3分の1だ。と言うのである。

   ところで、この黄河だが、ナショナルジオグラフィックが、5年前に中国特集で、黄河汚染で急増する「ガンの村」に言及している。
   当時の私のブログを引用すると、
   「黄河崩壊 水危機が生む”環境難民”」と言う記事で、「黄河はチベット高原に源をもち、中国北部の大地と人々を潤し続けてきた。だがいま、目覚ましい経済成長の陰で、母なる大河が深刻な危機に陥っている。」とのサブタイトルに記された冒頭ページは、何十年も前の日本のような黒い煤煙を吐き出す化学工場から汚水が、赤茶けて草木一本もない大地の小川に湯気をたてて排出され、黄河上流に流れて行く悲惨な光景を写し出している。
   黄河の下流域には、水質汚染で、ガンの発生率が異常に高く”ガンの村”が沢山あると言う。
   黄河流域を大きくΠ型に蛇行して流れる河流の過半は汚染されていて、特に、韓城あたりからの下流域と、西安を流れる渭河など多くの支流や合流地点の河は大半過度に汚染されていて、農業、工業用水にも不適だと言う。
   蛇足ながら、他の資料で、中国の河川の70%は、汚染されていて飲用に供せないと言う記事を見たことがある。

   昨今、大水害や大飢饉、異常な竜巻や台風など、これまでになかったような異常気象が、世界全体で頻発している。
   地球温暖化によるエコシステムの逆襲だと言うことは、大方の識者の見解だが、依然われ関せずと、地球環境の保護とエコシステム維持に最も無頓着な国が、アメリカと中国。
   悲しいかな、地球環境の悪化は、所謂、茹でガエル現象。徹底的な宇宙船地球号の逆襲に打ちのめされなければ悟り得ないのであろうが、しかし、中国では、もう、既にあっちこっちで、目覚めた国民の蜂起によって、外堀が埋められつつある。
   文明とは、どう言うことか、積読のジャレド・ダイアモンドの本を、ぼつぼつ、紐解こうと思っている。

(追記)口絵写真は、憧れであった西湖、しかし、長い間抱いていた面影は幻想に近かった。
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持続可能な人類社会・・・ジェフリー・D・サックス

2012年02月08日 | 地球温暖化・環境問題
   先日、日経に、サックス教授のアディス・アベバでのエッセイ「Sastainable Humanity」が、多少省略して掲載された。
Project Syndicate の記事なので読んでみたら、冒頭から翻訳文が正確ではなく、ニャンスが大分違うので、私なりに約してみると、
   ”持続可能な発展とは、地球の生命維持に必要な資源を広く分配し、保護する経済成長のことである。しかし、現在のグローバル・エコノミーは、10億人以上の人々が、経済発展から取り残されており、地球環境は、人類の活動によって恐ろしい被害を受けていて、持続可能ではない。持続可能な発展のためには、共有された社会価値に導かれた新しいテクノロジーを動員する必要がある。”Sustainable development means achieving economic growth that is widely shared and that protects the earth’s vital resources. Our current global economy, however, is not sustainable, with more than one billion people left behind by economic progress and the earth’s environment suffering terrible damage from human activity. Sustainable development requires mobilizing new technologies that are guided by shared social values.
   サックス教授は、冒頭から、地球規模の貧困層の存在と地球環境破壊で、グローバル経済は、サステイナブルではないと明言している。

   続いて、サックス教授は、国連の「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル」のGSP報告について触れて、三つの柱、すなわち、極端な貧困の撲滅、経済発展によって得た富の社会全体への公平な分配、自然環境の保護について語り、これらを、持続的な発展のための経済的、社会的、環境的の柱、もっと簡潔に、持続可能発展の“triple bottom line”と称することが出来ると言っている。
   更に、サックス教授は、脱炭素社会から近年の異常な気候変動による大参事などにも論及しながら、人類を、特に、貧困層に、更に電力や交通利便を提供することは、不可能であり、解決策は、現在のテクノロジーを劇的に改善する以外にないと言う。

   現在のテクノロジーについては、半世紀以上も前に、ガルブレイスが、「豊かな社会」で説いていたように、たった一人の人間を運ぶのに1トンも2トンもの機械が必要なのか、とか、内燃エンジンの非効率などに触れて、或いは、GPSなどICT技術の更なる効率的な活用の必要性など、その不十分さにも言及しており、それ程、科学技術の未来を悲観しているようには思えないのが私には興味深い。
   そのためか、日経記事のタイトルは、Sustainable Humanityを、「発展持続への技術総動員」としているのだが、サックス教授は、最後に、持続可能な発展のためには、テクノロジーだけの問題ではなくて、さらに、市場のインセンティブ、政府のレギュレーション、R&Dへのパブリック・サポートの問題でもあり、政策やガバナンスよりももっと基本的なのは、(真の)価値への挑戦だと言う。
   そして、我々は、現在および将来のすべての人類に対して、運命を共有しているのだと言う認識を持って、社会正義への共通のコミットメントとして持続的発展を肝に銘じなければならないと結んでいる。
We must understand our shared fate, and embrace sustainable development as a common commitment to decency for all human beings, today and in the future.

   サックス教授の論点は、やはり、the challenge of values、最早、このままでは持続不可能となったグローバル経済にとっては、何が人類にとって一番大切か、その本質的に大切なvaluesを死守するために、唯一可能な手段として存在するテクノロジーのイノベーションの追及によって、持続可能な人類社会へのディベロップメントへチャレンジすることだと言うことであろう。
   そのvaluesの根幹をなすのが、運命共同体としての社会正義の実現、等しく生きる権利と尊厳をすべての人類が共有することが出来る社会であろう。

   アメリカの大統領選への予備選挙がたけなわだが、これだけ、貧困が深刻化し貧富の差が拡大して、アメリカンドリームが風前のともしびであるにも拘わらず、まだ、富裕層の富の拡大を図ろうとする候補者がいること自体が、驚きだが、あのシリアの惨状も堪えがたいが、今、この時点でも、どんどん餓死している人が居るアフリカや最貧国の現状を思えば、どこかで、先進国の成長を止めてでも、地球環境を死守すべき時期に来ていると言う気がしている。
   人類社会のサステイナブルと言えば、どうしても、資源の有限性や地球環境の方に視点が傾きがちだが、本当は、今、この宇宙船地球号上で運命を共にしている人々との真の共存共栄を、もっともっと考えなければならないのだろうとも思っている。
   私自身、経済発展論者ではあるが、本当に、人口がどんどん増えて行き、人々の生活が益々豊かになって行き、尚且つ、持続可能な地球環境を維持できるようなテクノロジーの進歩と経済発展があるのかどうか、日本社会もそうだが、世界全体の雲行きが益々風雲急を告げ始めて来ると、段々信じられなくなってくる。
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BLIZZARD OF 2010~大荒れ気候異変の欧米

2010年12月28日 | 地球温暖化・環境問題
   昨夜のABCニュースのトップは、「BLIZZARD OF 2010」と言うタイトルで、アメリカの東部大都市を襲い、雷を伴った強烈な雪吹雪がニューヨークなどの機能を麻痺させ、地下鉄のドアが凍り付いて開かず8時間もカンヅメ状態だったと報道していた。
   雨が殆ど降らない筈のカリフォルニアに大洪水をもたらした気候異変の延長のようだが、このアメリカ東部の異常寒波は、昨年に続いた自然の人類への強烈な挑戦と言うべきで、同じく、ヨーロッパでも大雪で空港が閉鎖されるなど交通マヒが極致に達していると言う。
   
   ずっと前のことになるが、私は、アメリカに2年、ヨーロッパに8年住んでいたけれど、特に異常と言うほどの経験をしたことがないので、この欧米の冬の厳寒、夏の猛暑の異常ぶりは、想像外である。
   一度だけ、ヨーロッパで大きなGALEを経験した。これは、キューガーデンの何百年も経た巨木が、何本もなぎ倒された程で大変な突風ではあったが、日本の大型台風と言った程度で、当日、アムステルダムからヒースロー経由で、日本への出張の途次に、JALへの乗継には遅れたが、後のBAで帰れたので大したことはなかった。
   それに、アムステルダムで、大雪と寒波を経験したが、一度だけで、リア王の世界のような陽のないヨーロッパの冬にはなじめなかったが、寒さ暑さは、むしろ、東京よりも快適で、自然が美しかったと記憶している。

   ここ異常気候現象は、これまで、何度も科学者たちが、地球温暖化によるものと予言を続けていたことで、驚くに値しないのかも知れないが、愈々、宇宙船地球号も、自分自身で、地球のエコシステムを制御できなくなったと言うことであろうか。
   この地球温暖化問題の危機的な状況にはついては、何度も触れて来たので、ここでは、多言を避けるが、問題は、世界の人々が、この異常気候現象を、病んだ地球の命の叫びであることを理解していないと言うことである。

   ハリケーン・カタリーナで、アメリカ人は、大変な自然の脅威と言うかしっぺ返し・挑戦を受けたにも拘わらず、何の教訓も学んでいないと言うことが、折角、オバマ大統領が宣言したグリーン・ニューディールへの戦いを、経済不況克服を理由に後戻りさせ、ないがしろにしようとする風潮からも良く分かる。
   結局、石油がぶ飲みのアメリカは、カタリーナ級の自然の挑戦が、何度も何度も直撃して、その脅威の凄まじさを経験して身に沁みない限り、目覚めないであろうと言うことであろう。

   もう一つの地球温暖化対策に消極的な公害大国中国だが、多くの中国人がラッシュして訪日するのは、殆ど買い物の様で、偽物や公害に汚染された中国製品を嫌って、間違いなく、本物の価値ある品物・商品を、日本で買えるからだと言うことである。
   私が学生の頃には、阪急電車で神崎川を越える時には悪臭が鼻を突き、尼崎の街に出ると、煤煙で洗濯物が真っ黒になっていたのだが、とにかく、明日を目指して突っ走っていた国民の殆ど誰も公害など意に介していなかった。
   外部不経済が、将来、如何に、社会的コストを増大させて、国民に過酷な負担を強いるかと言うことさえも、一部の経済学者だけの関心事で、公害はタダだと言う認識で垂れ流し状態であった。その典型は、水俣であろうか。
   ところで、私は、上海の凄まじい雑踏しか知らないが、例えば、黄河が断流し、国土の殆どの川水は汚染されていて飲料に適さなくなってしまっていると言うのだから、今の中国の公害ぶりは、当時の日本の比ではないのだろうと思う。
   自縄自縛、この国の民も、生活に一所懸命で、自分自身が窮地に立たなければ、エコシステムを破壊しながら、自分たちの生活圏をどんどん蚕食していることに気付かないのであろうと思う。

   私は、ガーデニングで、草花や花木を育てているが、残念ながら不注意や怠慢で、枯らせたり痛めてしまったりすることがあり、いつも、痛く反省している。
   植物は、犬や猫のように鳴き声を出して訴えないし、子供のように泣き叫ぶことが出来ないので、何も言えずにじっと耐えて自然環境に馴染もうと、必死になって生きている。
   世話をする人間が馬鹿だと、生物は生きて行けないのである。
   私は、地球も、この植物と一緒で、何も言わないので分からないのだが、最近の異常気象は尋常ではなく、声なき声を振り絞った地球の命の叫びのような気がしている。

    隣国が非常事態の戦時体制を敷いているにも拘わらず、太平天国を決め込んで、国家の命運を背負って立つ筈の政治家が、詰まらない政争に明け暮れている能天気な国の姿が、どこか、この悲劇に重なるのだが、結局、煮えガエル状態になって、悪化の一途を辿って行くのかも知れないと言う気がしている。

(追記)口絵写真は、NYTより借用。
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