熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ドーハ・ラウンドと日本の農業のあり方

2008年07月27日 | 政治・経済・社会
   ジュネーブで開かれているWTOの閣僚会合もほぼ大詰のようだが、日本にとっては、農業問題で大幅な譲歩が求めれるようである。
   大幅な関税引き上げたの例外対象となる「重要品目数」が、全農業品目の4%とされたが、低関税の輸入枠を増やせば、更に、2%上乗せして最大6%に出来る可能性があると言う。
   しかし、日本が主張している8%には届かず、6%の場合では、対象になるのは80品目で、コメ類だけでも17品目あり、これに麦や乳製品を加えると96品目になり6%のラインを超えてしまう。

   詳細は良く分からないが、私が気になったのは、毎日新聞のコンニャクについての次のような記事である。
   重要品目以外は関税を7割削減しなければならず、現在1706%の高関税を課しているコンニャク芋が重要品目から外れれば、税率は一気に約510%に下がり、中国など低価格のコンニャクの輸入量が急増するのは必至で、国内4200戸のコンニャク農家には死活問題となる。
   たかがコンニャクと言う気はないが、17倍も関税をかけているのも驚きだが、それが、4200戸のコンニャク農家を保護していると思っている農水省の時代錯誤振りには呆れざるを得ない。
   そして、それだけではないであろうが、貿易立国であり一等国を自認する日本が、この程度の態度で重要な国際会議に大臣を派遣して国際場裏で国益を死守すると言って議論しているのかと思うと何とも言えない気持ちになったのである。
   
   先日の片山前鳥取県知事の話を思い出した。
   徹底した官依存体質による補助金漬けで、今年は何を作れば良いでしょうか(補助金が出るのは何でしょうか)と聞きに来る農業団体の無為無策かつ無能ぶりを慨嘆していた話である。
   日本の農業を、徹頭徹尾、外圧から遮断して過保護にし、農業から、創意工夫して自活して行く企業家精神を、根底から削いでしまってきたと言うのである。
   話ついでに無駄話を言えば、NHKでも放映していたが、農産品を市場に運搬する目的で何十億円もかけて作った農業空港で、1年の離着陸した飛行機は6機だけで、空港長は、離着陸がないのに、毎日、カラスの落とした小石を拾うために滑走路を歩いている姿を放映ししていたが、飛行場や漁港、農道や水路や灌漑施設等々、日本中に無駄な農業土木による記念構築物が無数にある。

   食料自給率が39%と、先進国でも極端に悪く、食糧安全保障問題に赤信号がついている日本であり、特に最近、食品の安心・安全問題が緊急課題として浮かび上がっており、農業政策の重要性は、最重要課題である。
   特に、食料の輸入については真剣に取り組むべき問題であるが、新聞報道などによると今回の日本の農産物に対するドーハ・ラウンドへの対応には、一切他国からのサポートはなかったと言うから、日本の農業政策は国際基準から異常なのであろうか。
   アメリカの農業への巨大な補助金支出などの強力な保護政策やEU間での農業保護に対する熾烈な争いなど見ていると、どこの国も国益を守る為には必死であり、こと、食料に関しては国運をかけているのだが、ピントがずれているのであろうか。

   貿易に関しては、今も昔も、リカードの比較優位説は厳然と生き続けており、ある程度は、フェアーな自由貿易を維持するために国際社会に譲歩すべきであり、何時までも、農水省の方針を貫く訳には行かないと思うが、もっと大切なことは、高関税や貿易障壁によって海外からの輸入をブロックするだけではなく、日本の農業を構造改革して国際競争力をつけて、輸出志向を目指すことも考えるべきではなかろうかと思っている。
   遺伝子組み換えはともかく、バイオテクノロジーなど日本のハイテクかつ最先端の理工学&農学テクノロジーを活用することによって、グリーン及びフード・イノベーションを追求することが可能であろう。

   余談だが、先日、娘のユカタを買うのについて行った時に、ついでに店の奥で素晴らしい琳派模様の帯を見せて貰ったのだが、これが、本来の西陣の職人さんが手織りしていた頃と比べたらビックリするほど安くなっていた。
   IT革命の技術を活用してコンピュータ制御によって織られているのだが、職人さんの技術をハイテク技術に置き換えて到達した新しい西陣の生き方を見て、日本の製造業は、激しい国際競争に曝されながら日進月歩、進み続けているのに感動を覚えた。

   日本は、最もグローバル化に遅れた先進国だとドラッカーが言っていたが、熾烈な国際競争に打って出ている輸出産業の国際競争力は世界有数の実力を誇っているが、政府の過保護政策に温存されている内需型産業は、非常に能率が悪く生産性が低くて日本の経済社会の進化発展を阻害していると言われている。
   土建や農業等は、その際たるケースだと思うが、農業の構造改革とオープン化、近代経営化は、日本の食料安全保障のためにも最優先課題ではなかろうか。
   それに、農業を、生産者の立場から行政を行うのではなく、消費者の立場に立てばどうあるべきなのか、消費者の視点からの農水行政を考えるべき時期に来ていると思っているので付言しておきたい。
   
コメント (1)
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