JR紀勢線御坊駅の片隅から発車する紀州鉄道は、もともと廃止の危機にあった超零細私鉄・御坊臨海鉄道を、「鉄道」のネームバリューに着目した不動産デベロッパーが買収して存続している路線として知られていますが (公式HPを見ると一目瞭然 ^^;)、趣味的には大分交通出身のバス窓DCであるキハ603・604の存在が突出していると言えましょう。そんな紀州鉄道、個人的にはこれまで縁がなく……高校生の頃、御坊駅で駅寝をしたことがあるのですが、それも天王寺発新宮行の165系夜行で御坊到着後、朝一番の和歌山行きに乗って、今は亡き野上電鉄に行くための仮の宿としただけ。釣掛式電車専門だった中学・高校時代、まだまだ「新しい車両」に見えた昭和30年代DCは歯牙にもかけなかったのでした……(^^;;;)。
その後約10年の非鉄のブランクを経て撮り鉄趣味に戻り、昭和の気動車も追い求めるようになってからは、俄然紀州鉄道も訪れてみたい場所となりまして、10代の頃の不明を恥じるようになったのですが、多忙の身にとって紀勢線沿線は遠い……(-_-;)。気がついてみると、キハ604は北条鉄道出身のキテツ1に取って代わられて紀伊御坊駅片隅のオブジェとなり、さらに今年改めて北条鉄道から2軸レールバスが入線したということで、これはついに一度もキハ603を味わう機会がないままとなってしまうのか……という後悔の念が……(苦笑)。しかし、ちょうどそのようなタイミングで和歌山出張の機会に恵まれまして、既に整備を終えたキテツ2が試運転を始めたというネット情報が流れる中、キハ603がいつ引退してもおかしくない最後のタイミングにうまく出張が重なったことは、本当に「ありがたや……」の一言。そこで、昨日昼までの用務が終了した後、和歌山13:04発の「くろしお」に飛び乗って勇躍御坊へと向かったのでした。
昨日の和歌山は、既にニュース等でも伝えられている通りの天候不順の影響で極めて天気が宜しくなく、日中はやや明るい空になったものの、御坊駅に到着してさっそく地図上で目をつけていた撮影スポットに歩いて行こうとした瞬間にポツポツと雨が……。当初はにわか雨で済むだろうと期待したものの、それも空しくやがて本降りに……(T_T)。それでも、踏切が鳴って無事キハ603が現れた瞬間、「ぬををっ!シブ過ぎる! 雨だろうが何だろうが来て良かった……!」という感動が炸裂! その後は次第に雨も激しさを増し、光量は最終的にISO400で1/125秒、f4.5という「昼間なのに真っ暗」レベルまで激減 (号泣)、さらには傘も無意味な滝の雨で全身ズブ濡れとなってしまったのですが (地獄だ……)、とにかくキハ603は満身創痍、茨交のキハ112や鹿島鉄道の旧型DC群の末期と比べても「動くこと自体が不思議」という雰囲気が漂い、いつ突然致命的な故障が発生してそのまま廃車という運命をたどるとしてもおかしくないように見えるだけに、「今撮らなければもう永遠にキハ603を撮る機会はない!!」という覚悟を以て撮り続けたのでした……。そして、奮闘の甲斐がありまして、絞り開放によるアマアマな描写や被写体ブレが懸念された各カットも、何とかうまく撮影出来ていて大満足……(^O^)。
というわけで、悲惨な土砂降りの中、撮影スポットを求めて御坊駅から歩き続けたところ、約1時間ほどでいつの間にか終点の西御坊に到着~(爆)。既に日本最短の民鉄の座を芝山鉄道に譲っている紀州鉄道ではありますが、途中駅がある鉄道としては相変わらず日本最短ではあり、あくまで御坊市内からJRへの連絡鉄道として存在しているのだなぁ~ということを思い知った次第です (笑)。
西御坊からはいよいよ念願のキハ603乗車! (って……フツー誰でもJR御坊から体験乗車するだろ、という声が聞こえて来そうですね ^^;) ほとんどのキハ603体験乗車客 (「鉄」だけでなく家族連れなども……) は先頭付近にかぶりついている中、私は思いきり距離を置いてエンジン真上のボックスシートに座ったのですが、本当に骨董品に近いエンジンと車体が辛うじて時速20~30km程度で最後の力走をするのを味わいながら、改めてキハ603の現役走行に間に合った喜びをかみしめ、またこうして一つ消えゆく「昭和」を惜しんだのでした……。
それにしても……返す返すも昨日の雨は悲惨でした。列車が無事定時運行していたのが救いでしたが……。明日いよいよインドネシアに行くというのに、台風来ないでくれぇ……(-_-;)。