ジャカルタ市街の中心部にあるゴンダンディア駅から乗車した103系「エコノミーAC」は、終点のデポックへ向けてひたすら勾配を登って行きます。その激しいシャウトにすっかりうっとりしつつも、一方で撮り鉄にふさわしい場所はないものかと窓外をじーっと注目……。一応パサール・ミング周辺までは、ゴチャゴチャと住宅街が建て込んだ風景が続きますが、さらに南下すると文教地区兼田園都市 (?!) という風情が漂うようになり、どこで下りても良さそうだなぁと判断しまして、とりあえずインドネシア大にて下車。インドネシア大は言うまでもなくインドネシアの最高学府でありまして、駅周辺を歩く学生さんの雰囲気はさすがに知的で洗練されたものがあります。では、井の頭線の駒場東大前との違いはと申しますと……街路樹や線路脇の植え込みがそのまんまジャングルになっていることでしょうか。あと、列車の発車直前の横断多過ぎ (笑)。
インドネシア初入国の翌朝からイキナリこんなシーンの真っ直中に身を置く酔狂なヤツはそうそういないだろうなぁ……と我ながら思いつつ、早速踏切の脇で構えていますと……ぬををっ! ボゴール方面からやって来たエコノミー(非冷房の普通電車)、屋根もドアもマジで鈴なり過ぎ……(@o@)。既に夜明け前のゴンダンディア駅で、早朝だというのに屋根にも人が乗ったエコノミーを目にして衝撃を受けていたのですが、ちょっとこれはムチャクチャ過ぎるレベルではないのかと……。
勿論、屋根の部分には「直流1500V危険!登るな!」という警告がラッピングされていたり、主要駅のホーム上屋には屋根乗車を妨げる柵が設置されていたり、鉄道当局としてもあの手この手で対策を講じているようですが、とりあえず観察するにつけ、以下の理由で屋根乗車は止めきれない状況であるのも事実です。
(1) ただでさえジャカルタへの人口集中、郊外へのベッドタウン拡大、そしてとにかく渋滞する悲惨な道路状況ゆえ、鉄道への乗客集中は激化の一途。
(2) それを緩和し快適な通勤通学環境を提供するべく日本の中古冷房車が集中的に投入されるも、線路容量自体は増えず、すでに2~3分間隔運転で限界。
(3) そこで、故障が相次ぐ非冷房VVVF車からどんどん離脱が進み、低所得者でも乗車できる非冷房エコノミー普通列車は減便の一途。(エコノミーACはジャカルタコタ~ボゴール間均一運賃で6000ルピア、非冷房エコノミーは区間によって1000~2500ルピアで、大幅な開きがあります。100ルピア=約1円)
(4) というわけで、行き場を失った低所得利用者がいっそう非冷房エコノミーに集中。車内は激しく混み、乗る余地がなければ屋根に乗るしかなし。
(5) より現実的な問題として……通気が悪い車内よりも、100%新鮮な外気に触れられる屋根上やドアの方が気分爽快! (笑……別の記事で改めて触れます ^^;)
……とまぁこんな感じで、ジャカルタ近郊の通勤通学輸送は誠に過酷な利用環境となっているのが現状ですが、それを長年担ってきたのが日本製の抵抗制御車です。最初に1976年に製造された車両は2扉車で、78~84年に製造された車両は3扉車ですが、性能的には103系と極めて近似しているとされ、相互に混結可能です。こんな過酷な環境でも故障も少なく (?) 30年以上走ってきたのはまさに日本製車両の面目躍如といった感じでありまして、現場の信頼感も都営6000系以降の冷房車輸入に大いに与っているのではないかと想像しています。