そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

畜産物が健全であるためには、安価な穀物の給与を止めさせるべきである

2023-06-08 | 農業と食

肉食は悪であり環境破壊をするという人たちがいる。特に牛肉を食べると地球温暖化に貢献し、極めて不健康な食料を生産することになるというのである。多くの牛肉は彼らの指摘通りである。安価な穀物を大量に与えて、高価な牛肉や卵を生産するのである。牛たちにとって、”甘い”穀物は嗜好性が高く、死ぬことを恐れずどんどん食べてしまう。畜産農家は、発病寸止めで穀物給与の制限の限界を見極めるのが技術である。
大学時代の恩師は、大型の近代経営の畜産を「まるで発病試験をしているようだ」と述べられたが、全くその通りである。こうした工業型畜産で、出来上がった牛肉は、オメガ不飽和脂肪酸6が異常に高くなる。正常値の数倍になる。オメガ3とオメガ6の比率が、自然界では1:1であるが、1:10~16程度まで上がる。オメガ6は血管を硬直させる。動脈硬化や多くの心臓病や脳梗塞などの、直接的な原因にもなる。
ところが困ったことには、こ。うして生産された牛肉は美味しい。サシが入った赤身の肉は市場では極めて効果である。
日本はこうした赤身のサシが入った牛肉を基準に、Aランクにと位置付ける。不健康になる赤身の牛肉を基準にした評価を見直すように、草(粗飼料)中心に健康な牛の牛肉の評価を見直そうとする運動がようやく始まった。
現行のサシが入った赤身を高評価すシステムは、健全な牛肉を駆逐することにもなる。
穀物生産の場は最悪である。遺伝子組み換えされたトウモロコシ種に、化学肥料に農薬がたっぷりかけられ、生態系を無視し開発された農場で、生産されるのである。
牛肉は世界を潰すと、批判する人の声は正しいが、まともな牛肉生産に戻せばいいのである。穀物メジャーを喜ばすような、大量穀物投与を止めれば済むことである。
牛肉が世界を壊すと、一切の動物食を止めようという方々がいる。ヴィーガンという人たちである。狩りをしていたホモ・サピエンスには犬歯が残っているように、肉食は必要である。忌み嫌うことは逆に人類の否定にもつながる。
肉も牛乳も玉子も、工業型生産方式を止めれば、彼らも納得してくれるであろう。
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「振り返れば未来」と言った山下惣一の予言した時が始まる

2023-05-24 | 農業と食

昨年7月亡くなられた農民作家山下惣一さんの最終本であるが、山下さん自身の著作ではなく。彼をよく知る編集者による発言や著作を集めたものである。
「振り返れば未来」に、サブタイトルのように付け加えられるように。「明日を切り拓くヒントは 未来ではなく 人々が歩いてきた跡、つまり人類の歴史の中にある。」と書かれている。
佐賀県唐津の百姓(山下さんは農民という言葉を嫌い百姓という言葉をこのんでつかっていた)で、中学卒業してからの70年間、この国の農政を百姓として見てきた。日本という国が食を捨てるそうした真っ直中で、農政を厳しく非難してきた。山下さんが農業を引き継いだ10代に国の事業で植えたミカンを、数年後切るという理不尽な政策転換を射強い怒りを持って受けとめた。
一昨年食料自給率が80%を切ったと、中国は大急ぎで農業政策を見直している。しかも、生産量ではなく土壌の有機的保全を打ち出している。
日本農政は、生産過剰になると、生産を抑制した農家に金を出す。足らなくなれば、生産基盤に金を出すというような、農家の持つ農業の抱える勤勉さや生産の循環などお構いなしの、金による生産調整を繰り返し、農村も農業も農民の心さえ疲弊させてゆく。
実体を無視した食料自給率でさえ、37%まで落ち込んでいる。鈴木宣弘東大教授は実質10%程度と危機感を訴えている。山下惣一さんは、懸命の一百姓として抗ってきた。
唯一留飲を下げたのが、国連の家族農業の支援に拍手した。俺が長年言い続けてきたことを国連は打ち出したというのである。今や世界は家族型の小農と有機農業にシフトを切っている。
大量投資の大量生産は、循環を無視した金計算で食料を計算した結果である。今だけ、金だけ、自分だけ政策の結果が自給率37%の日本である。山下さんは十分日本の農業政策を毒づいい兵士生産基盤をなくしてきた。てこの世を去った。為政者はいまだに、生産しなければ金を出す減反政策を続けている。そのぶり返しを繰り返し、農村も農業も農民の心も疲弊し、食料生産基盤はなくなってきた。本書はその本質を長年の経験をもとに書かれた本である。
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食料自給こそが最大の安全保障である

2023-04-28 | 農業と食

鶏や豚や牛に家畜への大量の穀物給与は、給餌が機械化しやすいことがあって、集約的な飼育が可能になり大規模にし易い。アメリカ飼料穀物協会の強力な戦略に乗って、先ずは鶏で、次は豚肉と牛肉で、そして乳牛へと大量の穀物が飼料用として輸入されて来た。今や人の食べる穀物の倍量を輸入されている。国内生産の穀物はコメがほとんどでるが生産量が800万トン足らずであるが、飼料用穀物は1700万トンほどである。人用の小麦などが800万トンほど輸入されているため、穀物自給率は20年前から25%程度と変わらない。輸入穀物のほぼ60%が家畜用の飼料用穀物である。
下の表輸入する食料の、フードマイレージという重量に距離を乗じた係数である。日本は圧倒的に高いのは、地球の裏側から思い穀物を大量に輸入してくるからである。
輸入食料のフードマイレージは、自給国内食料のフードマイレージのほぼ倍量になる。輸入フードマイレージの65%を穀物が占めている。
輸入飼料用穀物のフードマイレージは、国内の人間様のフードマイレージを上回っている。輸入穀物を大量給与する大型畜産は、地球温暖化に大きく貢献しているのである。
輸入飼料穀物のほとんどは、アメリカのトウモロコシである。アメリカでの国内生産量は3億5千万トンであるが、人の口に入るのは10%程度である。75%は家畜飼料とバイオ燃料として使われている。全てが遺伝子組み換えトウモロコシで、食用でないこともあって、肥培管理など明記することもない。危険な飼料といえるが家畜の生産量が上がり、何よりも無関税で安価である。
ロシアのウクライナ侵略や円安で、飼料用穀物は20~40%値上がりした。値上がりならまだしも、やがて供給されなくなる。このところの値上がりで給与量が減り、乳牛の病気はうんと少なくなっている。ちょっとばかり健康になってきたのである。
酪農は危機状態にある。それは事実であるが、大量に穀物を給与し大量に牛乳を生産する人たちの危機である。それは乳業会社であり、輸入穀物業者であり、機械屋、電気屋、水道屋、農協、獣医師たちなのである。健全な酪農家はそれほど起きな打撃を受けているわけではないが、地域は一気に精気を失っている。農業は健全な循環と生態系を戻すことによってしか生き残れない。それは農家の問題ではなく、消費者の問題であり、地球全体の問題でもある。

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漁民から漁場を奪い、農民には減反の中農地を増成し、野鳥たちの生息地を奪った天下の愚策、諫早湾干拓事業結審

2023-03-03 | 農業と食
諫早湾干拓事業は、「官僚の無謬主義」が生んだ机上論に農民と漁民を対立させて問題の本質をそらした公共事業である。
古くから洪水が頻繁にあることの対策と、狭い湾を埋め立てて水田をつくれば解決すると、長崎県知事の要請に国は取り組んだ。1952年のことである。食料問題と洪水問題を同時解決とするものであった。事業が取り組まれたのは、1989年のことである。相も変わらず暢気な公共事業は37年後に始まったのである。真っ先に漁民が不漁の原因は、干拓事業であると中止を訴えている。漁民には金を出して漁業権の放棄させたりしたが、海苔が作れないと佐賀地裁に提訴、佐賀地裁は工事中止の仮処分を命じた。国は控訴し福岡高裁は仮処分を取り消した。
農地の淡水化のために設けられた、潮受け堤防の開門をめぐっては、開門を命じる命じないが幾度も繰り返されている。今日(3日)最高裁は開門を求めた漁業者の訴えを退ける判決を出し結審した。
野村哲郎農相はこの最高裁決定を巡って、開門を命じた福岡高裁判決を上告しなかった民主党政権を長引いた原因と批判したが、事業への反省も何もない。
この事業は防災で多少の意味あったかもしれないが(現在の技術なら環境に配慮した方法も可能)、減反政策を尻目に農地拡大と干拓を進め、干潟と海の環境を大きく破壊した。水田は畑作地に変更したが、干潟を失って海が浄化されなくなったことや、野鳥をはじめとする生物の棲みかを奪ったことなど何ら考慮されていない。野生生物にも環境にも、国を訴える権利が認められていないからである。
幾度も行われた訴訟は、潮受け堤防開門の是非だけである。事業そのものが間違っていたという訴訟はない。机上論で制作された官僚の論文は無謬主義で貫かれ、公共事業は止まらない典型である。事業そのものへの反省も、批判すらない。
ところで国家最大の公共事業は、「戦争」である。
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ペラペラの殻からぺちゃんこの卵黄がヌルっと出る玉子なんて

2023-03-01 | 農業と食
日本中で鶏卵が上がっていると大騒ぎである。かつての、「物価の優等生」はいよいよ姿を露わにした感がある。本ブログで10年以上前から言い続けていることであるが、大量の穀物を、アメリカ産の遺伝子組み換えで肥培管理も何も明らかにされない、アメリカ産のトウモロコシを大量に給与し、大量に飼育することで卵価の上昇を押さえてきた。
上の表はフードマイレージ資料室の表であるが、この50年で食料一般が、3.5倍になったが、物価の優等生の卵価は1,7倍である。この間日本は玉子を下地にしたお菓子やパン類や揚げ物など、ほぼあらゆる食料品の加工に使ってきた。それは安いからである。
万羽の採卵鶏たちは、生まれるとすぐに嘴を切り落とされ、卵を生むまでに幾度となくワクチンを投与され、日光から完全に遮断され、昼夜も季節も人工的に作り出され、トレイに流れ来る食べものをひたすら食べるだけで、羽根を伸ばすことも大好きな砂遊びも水遊びもさせてもらえず、中空に浮いたままのケージで飼育される。あらゆる栄養を産卵に向け、発病寸前で皮膚病を患っていても、骨折していても、肺炎になっていても玉子を産まなくなるまでは、延命される。
ペラペラの玉子の殻からは、割るとぺちゃんこで弾力のない卵黄がヌルっと出てくる。それが鶏たちが生命と賭して生産した玉子の実態である。それが安いというだけで、市場に大量に出回る。消費者は安いというだけで、生産の実態を知らず、鳥インフルエンザで大量の補助金が出されることも知らず、優等生のレッテルを貼る。

日本の家畜には約2万千トンの穀物が給与されている。ほぼアメリカ産のトウモロコシである。人と競合する穀物(現在の穀物は食べることはできない)の、カロリーを玉子と牛肉は90%減らして生産している。輸入穀物は生産形態が問われず関税もかけられていない安価なものである。安価な穀物を給与する大型畜産は、高価な畜産物に変換する畜産加工業に過ぎない。
家畜を不健康にするだけではなく、世界の食料事情を単に悪化させるだけである。先進国の畜産は多かれ少なかれ、こうした実態の中にある。(下の表は10年前の農水省作成のである)
EU諸国では、前述のような飼養が禁止されている。アニマルウエルフェアという考え方であるが、こうしたことがバレては困ると、鶏卵業者は大臣に賄賂送って蓋をした事件がある。牛も豚もあまり変わるものではない。
穀物生産のために、多くの畑や森林が開発され環境悪化に貢献している。今や中国がこうした形態に加わり、穀物生産の4分の1は家畜用である。特に世界で生産される大豆の90%は家畜に給与されているのである。
コロナ禍、温暖化、ウクライナ戦争、円高のクワトロショックは、農の原則、循環を無視した矛盾の露呈に過ぎない。旧に復することなどない。

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金を出しても食料が買えない時代になる、なった

2023-01-03 | 農業と食
食料危機が目前に迫っている。いやもう始まっている。先進国(であるかはともかく)で最低の自給率で、ボー然とするばかりの日本である。
経済大国とは言えない、世界で唯一30年賃金の上がらない日本は、金さえ出せばどこの国からでも買うことが出来ると思っている。鈴木俊一財務大臣は財政制度審議会で、食料自給率向上ど考えていないと、国際分業論を展開し、食料など買える所から買ってくれば良い等と言ってのけた。 農業を、人が生きるために欠かせない食料を生産し、環境の保全と水や空気の浄化をする機能を否定し、価格だけで評価する政策を続けた政策の肯定である。
上図を見ればわかるだろう。コロナ渦、ロシアのウクライナ侵略そして円高の国際情勢の中、食料の輸出規制をする自国ファーストを多くの国が取り組んでいる。これ以外の国々でも、特段国の命がなくても輸出は渋くなる。
オイルマネーが溢れる中東の国々は、安いロシア産小麦を買い占めるだけではなく、食料の国際価格をはねあげる。
世界は変わったと岸田文雄の言う通りである。国際感覚のない主要閣僚が、食料自給を放棄を公言する。世界はどのように変わったのか日本の権力者たちは、軍事に特化して変わったというのである。国民の命などつゆほど考えず、アメリカの顔色を伺うことしかやらないのである。
世界が変わったのは、人口の増加と環境汚染と食料問題である。そしてこれらは国連の提唱する、「家族型小農」がほぼ同時に解決する。さには地域紛争や民族問題や地域紛争をも抑止することになる。
しかしこれでは、世界経済を担うアメリカには金が回ってこない。隷属国家の日本は、車を売り続ける見返りにアメリカの穀物を買い続け、食料生産を放棄し、へき地を荒廃させたのである。GDPは世界第二位になって、胸をそらし驕っていても、国家としての容を持つことがなかった結果である。
食料の安定供給が健康な文化の礎になることを、本来の農業は人の命を守るばかりではなく環境を負荷をかけないことを、国は高く評価するべきなのである。
生産しなければ金を出すなどというという愚策(減反政策)が、また行われる。巨大化を酪農に強いていながら、生産過剰を抑えるために補助金を出すというのである。驚くことはない。これこそがこの国の一貫した農政なのである。それを怠ってきた結果が、下の表である。
日本の農業者、食料の担い手は極端に高齢化している。これは突如としてこの世に現れたのではない。長年の自民党農政の結果でしかない。

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大量の穀物給与は不健全な畜産を生産するばかりではなく環境を破壊汚染する

2023-01-02 | 農業と食
家畜に大量の穀物を給与して大量の畜産物(肉、卵、牛乳)を生産するシステムが、家畜を短命で不健康にするばかりか環境汚染に直接つながる。その幾つかを紹介したい。
上のグラフは、食料に消費地までお距離に重さを掛けた数字を”フードマイレージ”として評価したものである。日本は圧倒的に高く人口半分の韓国の倍以上である。その中でも特筆されるのが、穀物であり日本のフードマイレージの6割を超えている。日本が圧倒的に水分が抜かれた重い穀物を、地球の裏から持ってきているからである。ほとんどがアメリカであるが、輸入穀物の7割は家畜用で飼料である。
日本の国内食料のフードマイレージはこの3割に満たない。国内輸送に係わるCO2の排泄量は、家畜飼料の半分程度なのである。
輸入穀物に大きく依存する、穀物多給の大型で高生産の畜産は、地球温暖化に大きく貢献しているのである。
飼料用穀物は無関税である。安価であるから、畜産農家は肉や乳や卵に価格を押し付けて、経営が成り立っている。ロシアのウクライナ侵略以降その危うさが露わになった。いくらお金を積んでも穀物が輸入できない時代になってきたのである。
輸入穀物に依存する畜産形態は、食料自給を見せかけのものにしてしまう。90%自給しているかに見える鶏卵は、その実5%程度の自給しかない。こうした評価を入れた試算では、食料自給率は10%を切るとまで言われている。
しかもこの安価な穀物は、昨日、本ブログで書いたように、どの様な作付けがされているのかもわからない代物である。そして何よりも、大地を削り、大量の化学肥料や農薬に依存することで、本来は地中に植物がCO2を取り込むべきところを、吐き出す結果になっている。化学肥料を巨大な農機具で擾乱された土壌は保水力を失う。切り拓かれたノッペラボウになった森林は、野生動物がいなくなり、洪水をおこしたり、森林火災の原因にもなる。
大型農業は、地球の循環に反し、家畜の生理に反し、自然の摂理を破壊することになる。
世界の中でも日本は圧倒的に有機農業が少ないが、日本の農政誤りがここにある。
21世紀は、有機農業と家族型の小農経営が人類を救う。未だに政権が大型農業を唱えているのは日本くらいである。

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世界の農業は家族型小農へ、有機農業へとシフトする中、日本だけが逆走する

2022-10-02 | 農業と食
現代は、ウクライナのような事は世界中どこでも起きることである。食料は人が生きていくうえで、なくてはならないものである。都会の人たちは、食べものがどの様に生産されるか、食べものは基本的には太陽が植物に光合成させて作られるものである。転変地変や今回のような戦争で、食料が絶対的に足らなくなることがいくらでも起きる。金を出しても食べものを買えない時が来る・
上の表は、東京大学の鈴木宣弘教授の近未来の予測である。鈴木先生はこれまで幾度にもわたって、日本の食料について警告を発してこられた。それらのほとんどが外れることがなかったが、日本政府は金で解決してきた。解決とは到底言えず、お金でその場をしのいで、単に問題を先送りしてきただけである。
帆の票で最も深刻なのがお米である。コメを生産する人たちの多くは70才を越えている。いくら制度をいじったところで、生産者がいないし土地は放棄されたままである。限界集落の多くは消滅集落となっている。
こうした対策に、へき地に金を配る「中山間地域等直接支払事業」というのもある。現存する人たちに高齢者に金を払うだけである。政治は制度や機能や農業のあり方を検討するわけではない。一事が万事日本の農政はこうである。
農政は目先の短期的な対策ではその場しのぎで、農業生産の基盤を失うだけである。食料生産に拘泥することなく、生産量と金額を重視させた結果、世界で最も単位当たりの化学肥料の量が多くなったのである。
お米よりさらに深刻なのが鶏卵である。採卵鶏の餌の98%以上は輸入穀物である。真っ先に穀物流通の洗礼を受けることになる。豚肉も牛乳も同じような洗礼を受けることになる。
この表は鈴木宣弘先生は、ウクライナ戦争を受けて起きたから発言されているのではない。昨年出版の「農業消滅}の中の一例である。
こうした状況下でも、有機農家はほとんど影響ありませんと述べている。国連は、21世紀の農業は家族型小農を推進している。更に世界は有機農業にシフトしている。環境保全と土壌によるCO2吸収奨励の有機農業が推進される。
日本は世界に珍しく逆走する農政である。
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農業への警鐘を絶やさなかった農民作家山下惣一さんが亡くなられた

2022-07-15 | 農業と食

私が最も敬愛する人物の一人、佐賀県の農民作家の山下惣一さんが亡くなられた。主に月刊誌「地上」掲載をまとめた遺作となった最新著の「農の明日へ」(創森社刊)を通じて、最期まで日本農業への警鐘と指針を示されていた。
山下さんは中学を卒業すると、当時の後継者が誰もがするように、国の新たな指針に沿って、畑をミカン畑に変えた。さて収穫する数年後に国の新たな方針ですべて伐採することになった。ミカンを植えるのも伐採するのも国が金を出したが、強制される日本農政に疑問を持つきっかけになったという。
その後、1961年の農業基本法によって農業は金によって計算、評価されるようになり、20年後の前川レポートが決定的に農産物の輸入が促進された。農業過保護や貿易摩擦の原因とされ、農業バッシングがなされた。この時期から農業の近代化が謳われたが、今日までしっかりと受け継がれ、食料自給率は37%になっている。農業を人身御供にして、日本は世界第二の経済大国になった。
その結果、日本は経済大国の地を大きく滑り落ち、地方は疲弊し農業など一次産業は衰退していった。

山下さんは小農学会を立ち上げ、家族農業にこそ農業の基本であり、昔の百姓であると言って憚らなかった。
山下さんは数年前から、国連が打ち出している世界家族農業年を、ほぼ全面的に支持れていた。長年にわたってアジアの片隅で訴えていたことが、世界的な運動になっていると述べられてる。世界は、小農・家族農業に目を向けて山下さんの時代がやってきた。
日本という国だけが政策的に、バイオ農業やスマート農業などと大型化、キンダイカへのシフトして再び、農業や農村を更なる疲弊した路へと歩ませている。

『農業は自然界の循環を活用して人間や家畜の食べものを生産する仕事である。当然その土台を守るための制約がある。それは①拡大よりも持続、②成長より安定、③競争より共生。昨日のような今日があり、今日のような明日があることが大事なのだ。』農の明日へより
ー老農は死なず消えゆくのみー
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動き出した”培養肉”の恐ろしさ

2022-06-21 | 農業と食

動物から幹細胞を取り出して、人工容器即ち実際は上図のようなバイオリアクターと呼ばれる装置で、培養して肉にする技術の発展が著しい。”培養肉”と呼ばれているが、地球上で40億年にわたって繰り返され獲得された生命の営み、生態系とは無縁の方式で作られるのである。
培養肉は、生物を殺さなくて済む、気候変動やに影響がなく環境に優しい、広大な畑がいらない、SDGsを推進する、抗生物質など使わないので安全である。というのである。
結論から言えば、生物を殺さなくて済む以外は全部嘘である。一方的で偏狭な視点による判断である。
こうした考えの根底には、肉の生産が牛の生理を超える人と競合する穀類や大豆などを集約的に大量に給与する、工業的飼養形態がお行われて売ることに起因する。その指摘の多くは正しい。人類を食料的な危機に招き家畜に苦痛を与えるからである。飼料になる穀物の生産は、遺伝組み換え作物に大量の化学薬品を投与して、集約的に行われている。Co2の大地への固定を放棄する。これを培養肉を生産しようとする人たちは指摘する。それらは全く正しいことといえる。
だから培養肉ではなく、長年人類が行ってきた、人が食べることの出来ない草を主体にした飼料に戻すべきである。そうすることで健全で安全な肉を生産し、大気を汚すことなく、水を汚染することもない畜産に戻せば済むことである。
こうした牛の生理にあった飼養によって、健全で安全な肉や卵や乳が生産されるのである。アメリカなどの多国籍穀物メジャーによって指導された、大量の穀物給与による高度な生産の強要の苦痛から家畜を解放させ、環境に優しく家畜に優しい家族型農業、小農主体の農業に変換すれば済むことである。
肉生産に係わるエネルギーは電気で計算されて、牛よりCo2の排泄が少ないとされている。その計算は牛肉を比較したものであるが、牛は肉だけを生産するものではない。諸臓器も食べるし皮革の利用もなされている。一方的で恣意的な計算でしかない。
何より怖ろしいのは、地上でこれまで生産されたことのない様式を導入することである。科学の驕りであるが、ゲノム編集された生物より人類にとってはより恐ろしい、培養肉といえる。
更に、こうしたこと各企業が数多く参入していることである。相当な政治的な力学が働くことになる。農業に企業が参入してくるとろくなことがない。まるで明るい未来のように、培養肉にSuperMeatとかLaboMeatとか夢のようなネーミングを競っている。怖ろしいことである。

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戦争の元は、今だけ・金だけ・自分だけである

2022-06-16 | 農業と食

日本の農業が崩壊寸前であり、農村は疲弊の極にある。これは国が農民に農業を放棄させたからである。その根幹の思想が、「今だけ・金だけ・自分だけ」を基本思想で推進したからに他ならない。
これは東京大学農学部教授の鈴木宣弘先生の言葉です。この言葉はある講演で用いると評判が良かったので使うようになったの先生はおっしゃられていた。鈴木先生の造語である。
しかし、「今だけ金だけ自分だけは」資本主義の本質を見事に言い当て、か細くなった人々の倫理観に強く訴える見事な言葉である。
経済効率だけを優先し、短期的な成果で自分だけが潤う、こうした経済活動あるいはそれを支える政治体制は、国境をも超える。
農家は一方的に所得を増やしている2,3次産業に追いつけと号令をかける。農家は規模拡大や効率化のために投資はするし、いつの間に農薬と化学肥料大国に膨れ上がった日本は、いつの間にか伝統的な農業を放棄し、世界最小の非有機農業国になってしまっている。
消費者には国産食料安全の神話を流し、農機具と農薬化学肥料を押し付け、行き詰るとスマート農業なる言葉で、農機具メーカーを更に振興する。日本の農業政策は、農業周辺産業を潤して農民にも消費者にも行き届かず、徒に農業予算はばら撒かれる。
農家には残された選択肢は少なく、単作大型農業に手を出す。結局機会と農薬に頼る大型農業は、労働生産高は上がるものの、土地面積当たりの生産量は小農にはかなわない。結局は価格差によって輸入物が勝ることになる。
農業の成長を求めることが間違っている。農業に単年度の収支を優先させれば、機械や農薬に依存することになるが、それが国の農業政策の目的でもあった。
今だけ金だけ自分だけは、新自由主義市のものである。それは国家に対しても言えることであって、今だけ金だけ自国だけは、プーチンの戦争理由にもなったのである。だから戦争は武器で起こすものではない。だから武器を起訴って見ても、平和にはなることができないのである。

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穀物の高騰は日本に食料自給の向上を認識するきっかけなら

2022-06-12 | 農業と食
日本の食料自給率は今や37%即ち63%の食料は海外に依存しているのである。
上図は10年ほど前の資料を基にした、農水省が制作した図である。食料の自給率はカロリーで計算される。魚などはそのままの数字が自給率としてよいが、数段の経過を経て生産される畜産物は全く異なる。
例えば、鶏卵はほぼ100%自給されている。国内産である。ところが、飼料の95%は輸入されたものである。カロリー計算では、生産された鶏卵のほぼ8倍のカロリーの穀物が投与される。鶏卵はまだいい方で、牛肉は最悪である。この表では、40%は自給されているが、国内飼料に依存するのは、11%である。通常の牛肉はほぼ30倍のカロリーの穀物が投与される。サシの入ったAランクになると80倍ほどにもなる。
穀物はほぼアメリカ産の輸入物である。最近は熱帯雨林を潰したブラジル産が増えてきている。飼料用穀物はどのような品種であるかも作付け方法、使用される化学肥料も肥培管理も全く解らない。すべてが遺伝子組み換え作物ではあるが、表示義務が食料でもなくない。
飼料用の穀物はほぼ2000万トン輸入されているが、これによって得られる畜産物のカロリーは10分の1程度でしかない。これ等の穀物はかつては人と競合した穀物である。日本の場合は無関税で、安価に輸入される。
安価な穀物を大量に給与することで、家畜は発病寸前まで追い込まれ、肉や卵や乳を大量に生産する。家畜は短命になるし、発病も珍しくないし、国費で保障される鶏の伝染病は間断なく起きる。健全な飼養管理の家畜は、素tレスもなく健康で長命である。
安価な穀物は高価な畜産製品を生産するためであるが、2000万トンの輸入穀物は食料自給率を極端に下げている。(多分10%ほど)
ロシアのウクライナ侵略で世界の穀物価格が異常に上がっている。プーチンの横暴な戦争であるが、食料にボケた感覚しかない日本人にとって穀物の重要性を認識させる効果はあった。穀物は高いだけでなく、手に入らない状況になれば、自給する重要性やこれまでの農政の誤りを知るきっかけになってくればと思う。消費者は今まで安価な畜産物を享受していた実態を知ってもらうしかない。
乱暴で環境を破壊する工業型畜産業は、アニマルウエルフェアの観点からも、温暖化対策などからも、時を追って淘汰さるべきである。穀物の高騰には、人類にそうしたことを認識させる効果もある
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農業軽視の国の風潮そのままのダム漏水対策、自動車産業には給水し農業には水やらない

2022-05-19 | 農業と食

愛知県の矢作川から農業用水や工業用水を取水する堰「明治用水頭首工」で大規模な漏水が発生した。上図の堰の少し上に大きな渦が巻き、下流左岸に噴出している状態である。堰の川底にうっている土台の手間から抜けている。
施設を所管する東海農政局は原因不明とし、修復のめどが立たないということである。
簡単な話が老朽化したものであろう。これまでの十分な点検などが行われていたのか、これほど大々的な漏水が予測できなかったのかと思われる。
問題はその対策である。
場所は周辺にトヨタ自動車の城下町である。トヨタ関連のグループや企業の工場に給水し、田植えを前にした農家には給水されていない。政治的判断か、GDPの大きさで配慮されたのか。
田植え前の苗は水がなく黄色く変質している。農家は周辺の小川からタンクに水をとり苗に与えているが、焼け石に水である。
これは農業に対する国の政策、姿勢をそのままの地方下級役員の姿勢である。食料が車より重要なものであると、この国では認識されていない。
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生産量しか追わない、農を忘れた日本の農業政策

2022-04-25 | 農業と食
日本の食品は世界一安全と思っている方がこの国に溢れている。プーチンの支持率が83%に驚く国民はなんという無知なことであるか。手前みその国内情報しか関心のない日本は、農薬に関する情報が圧倒的に少ないのである。台湾が200倍もの農薬を使っている日本のイチゴの輸入を禁止したことを本ブログで2年前にとりげた。コメントがかなりあった。驚いたというのと、基準が異なるというのが多いのであった。中国は隠しているとか、遺伝子組み換え作物が入っていないとかいうものであるが、日本の圧倒的な農薬の使用量が変わるわけでもない。
日本人は勤勉で、日本が決めた基準を忠実に守ってはいる(だろう)。その基準が相当手前勝手である。ラウンドアップやネオニコチコイド系の農薬は先進国ではほとんど禁止されているが、日本は捨て場所になっているのではないかと思うほど大量に使われている。ラウンドアップについては、農協が地域ごとの競合をやって表彰すらしているし、国営事業で農地改良すると使用が強制されている。こんなものが入っていない。
更に、近頃はスマート農業やイノベーションという言葉で、報道に披露されて、農薬や化学肥料がどれほど使わなければならないかは、何も示されていなくてこの数字である。
無人のトラクターを導入するには、どれほど費用が掛かるかご存じあろうか?その費用は規模を大きくし反収を増やさなければ返却できない。導入前と農家所得が増えるわけでもない。遺伝子組み換え作物の導入も検討されることになる。すでにNHKなどの解説では遺伝子組み換え作物は安全であると言い続けている。
昨年5月、日本政府は、「みどりの食料システム戦略」(通称:みどり戦略)を発表した。みどり戦略では、有機農地を25%まで高めると示されているが、天文学的数字でしかない。上の表では現在0.2%でしかない。達成不可能のその時は日本はお得意の、有機の基準、ハードルをうんと下げるのであろう。変な国である。
有機とは化学用語で炭素を含むということである。だから有機テレビなどという、堆肥で作られてもいない有機テレビが出現する。
有機とは”Organick”の訳であるが、本来は機能的あるいは互いに繋がっている、という意味である。現在有機農業は、「生態系農業」と言い換えるべきだという人たちの声が大きい。
スマート農業などは、農業外技術であって農民を、土地や生産物や生態系から引き離すものである。生産量で農業を評価するものでしかない。有機では取り組めないだろう。日本はこんな矛盾した政策を平気で行う。そしてできもしない高い目標を掲げる。
外部資本や技術、それに外部(国外)資源に依存した農業は、現在のようなロシア・ウクライナ戦争が起きた時には、耐えられない脆弱な体質の農業といえる。おまけに今頃になって安倍晋三とクロトンが誘導した、円安の被害をもろに受けているのが、日本政府ご推奨の大型農業である。
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石油や天然ガスより食料が無くなる方が恐ろしい

2022-04-01 | 農業と食
ウクライナはなんといっても小麦生産がこの国の人々の生活と経済を支えてきた。ドニエプル川の氾濫原は、悠久の時間をかけて世界有数の腐葉土で肥沃なチェルノーゼム(黒土)の平原を作った。
ウクライナの小麦生産は世界8位で世界輸出量の4%を占めている。世界4位のロシアは10%を占めていて、両国は戦時下と経済制裁の渦中でサプライチェーン(供給網)が滞っていて、世界の小麦の供給と価格に深刻な影響を与えることになる。特に両国の小麦は品質は劣っているが、中東方面に多く輸出されていて懸念される。
ウクライナの小麦は2カ月間輸出は停止されている。ウクライナのミコラ・ソリスキー農業食料相は、ロシアによる侵略の影響により、今年はウクライナの穀物生産量が半減する恐れがあると見通している。更に、今年の生産量は25~50%落ち込む可能性があるが、「この数字は楽観的なものだ」と指摘している。働き手が専横に言っていることと、農場が荒らされていることや農作業そのものが不安の中にある。
昨年は北米の小麦は不作であったが、ロシアのウクライナな侵略で世界の小麦価格は、高騰することになるであろ。高くなるだけならまだましである。国外に出すこと、輸出を禁止する事態も起きかねない。事実1昨年コロナウイルスの蔓延で、世界の食糧輸出国は一斉に輸出禁止を打ち出している。この中にはウクライナも入っている。
世間は石油だ天然ガスだと騒いでいるが、石油が高くなっても天然ガスが輸出禁止になっても、経済は大変だろうが人は死ぬことがない。しかし、食料は別である。明日の食い物がなくなれば生きてゆけない。食料自給は価格の問題ではない。
日本の食料自給率は37%しかない。日本はマヨネーズの値上がりを気にはする一方で、コメについては生産費を下回る価格を平然と農家に押し付けている。自給率の向上など真剣に日本は考えていない。今こそ農業を見直して、食料生産を地道に築かなければならない教訓を頂いているのに。
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羅臼港

春誓い羅臼港