安倍晋三が凝りもせず又々トランプ詣でにアメリカに行った。トランプが大統領選挙に勝って以来、4回目の米国訪問である。各首脳会議などに合わせて行われる会談や、無数の電話会話も数えると、安倍のトランプ接触のレベルは日米関係史においても前例がない多さになる。
しかも、今回はこれまでのすべてのアメリカ訪問とは異なって深刻である。6月7日に予定されている安倍・トランプ会談は、北朝鮮に対して打つ手のない安倍のワラにもすがる思いといった感がる。トランプ大統領が北朝鮮の金正恩との首脳会談を直前にして、安倍晋三は危機感を強く持ったのである。国内では、森友加計問題で事実関係を強引に認めることなく、乗り切ろう押しているが、これを外交で打ち破ろうという魂胆がりありなのである。
北朝鮮へは経済制裁一辺倒と核の不可逆的完全な放棄など、硬直した主張しかすることのない安倍晋三が、此のところ北朝鮮に軟化姿勢を示しているトランプの態度に、危機感が生まれたのであろう。私人の安倍昭惠と伴っての訪米である。
安倍晋三は、北朝鮮の完全な非核化という目標の実現に取り組み、「最大限の圧力キャンペーン」を主張続け「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄 」をトランプに確認したいのであろうが、外交交渉は水物である。同じ言葉をそれぞれが異なる解釈で到達点とすることもあろう。
そもそも、金正恩が核を完全放棄することなどありえないことであるが、それを交渉前にアメリカに縛りをかけることは、同盟国ならやることではない。どういう条件なら此処まで核を手放すかとか、それの見返り支援の額や内容などを交渉するならわかるが、安倍晋三は政治的に自己保全の延命策のためのトランプ詣でである。これでは、金正恩が耐性保全を前提にアメリカと交渉する思いと何ら変わらない。持ち上げられるトランプはご機嫌だろう。
「こんなにすぐにワシントンに来るのは安倍氏にとっては博打だ」と、ワシントンにのシンクタンク、ブルッキングズ研究所で日本研究チェアを務めるミレヤ・ソリス氏は指摘する。
誰の目にも、歴史的会談の4日前におっとり刀でワシントンに出かける、日本の首相姿は奇異に映っているのであろう。