生半可な知識で解説する評論家はいつの時代にもいる。この頃マヨネーズが値上がりしたし、インスタントラーメンが来年に10円ほど値上がりする。それは、バイオ燃料のせいだと解説するのである。
現象的にはその通りである。アメリカは、今まで家畜に向けていた、トウモロコシ(コーン)を補助金を出して、エタノール生産を奨励している。そのため、家畜に投与されていたコーンが値が上がり畜産製品価格が上昇する。また、コーン生産へ多くの農家がシフトするため、小麦農家もコーンに転作する。結果、インスタントラーメンが値上がりする。
構造的にはその通りである。アメリカ産の穀物に依存する日本の畜産体系と、アメリカが多くの選択肢がある分野を潰してでも、コーン一辺倒のバイオエタノールの生産をやっていることを、説明はしていない。
こうした構造を許しているのが、日本の食料自給率の低下である。あるいは食糧海外依存率が、高くなっているために、彼の国の思惑に翻弄されることになるのである。アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪をひく構造である。
コーンからのエタノール生産は、中東情勢の不安定や石油価格の高騰を睨んだ、戦略的な利用に抗するものである。そのための国家的戦略の一環として、信じられない補助で育成する、バイオ燃料事業である。コーン生産に大量の、石油などのエネルギーが 投与され、蒸留にさらに大量のエネルギーが必要になり、結果的には1.1の効果しかないとされている。
又、バイオエネルギー生産には、コーンのように人や家畜と競合する穀物ではなく、廃棄物や人が消化できない、セルロースなどや、あるいは廃棄された食糧や農産物に依拠するのが本来の「バイオ」の考え方である。
地球上には、8億人を超える人たちが飢餓にある。人に食べさせる可能性のある食料を、家畜やましてや車に食べさせるなどという、非倫理的な食糧事情は許されるべきではない。
お人好しの国民からは、「地球にやさしいバイオ燃料のためだから、少々高くなっても我慢しよう」などという発言が出てきたりする。評論家諸兄は、現象の説明に止まるのではなく、食料の問題や地球環境の本来あるべき姿を忘れすっかり歪になったこの国に、こうしたことを踏まえた提言をするべきな のである。